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PMS・PMDDで暴力的になる2児の母 「死にたい」「消えたい」と思うことも…生理前の症状は我慢すべきもの?

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 イライラする、気持ちが落ち込む、体がむくむ……。月経(生理)が始まる前に起こるこうした不調は、「月経前症候群(PMS)」と呼ばれていて、多くの女性が経験しています。漫画家のなおたろーさん(33)もその一人で、自身の経験をもとにコミックエッセー「生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞く PMS・PMDD攻略法」(KADOKAWA)を執筆しました。ご自身の経験について話を聞きました。(聞き手・利根川昌紀)

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排卵が始まる2週間前から…

PMS・PMDDで暴力的になる2児の母 「死にたい」「消えたい」と思うことも…生理前の症状は我慢すべきもの?

(C)Naotarou,Rena Takahashi

――症状が出始めたのはいつ頃ですか。

 はっきりとは覚えていないのですが、中学1年生の秋か冬ごろ、自宅でテレビを見ていたら急に焦燥感に駆られたことを覚えています。何かに追われている感じがして、仕事に出かけていた母親に「早く帰ってきて」と電話をしました。母親の姿を見たら安心しました。

 ただ、当時は生理前に、心身の不調が生じるとは思っていませんでした。なので、その時も、生理前だったかどうかは分かりません。

――焦燥感に駆られるような番組を見ていたのでしょうか。

 いいえ。録画していたお笑いの番組でした。

――そうした精神的な不調は、生理が始まるどのくらい前に起こるのですか。

 生理が始まる2週間くらい前です。感情のコントロールができなくなります。例えば、「携帯電話が見つからない」「子どもがちょっと食べ物をこぼした」といった場合、普段ならその程度ではイライラしないのに、抑えられなくなります。子どもにものすごく怒ってしまったりして、あとになって「そこまで怒らなくてよかったのに」と反省してしまいます。

 物事に対する考え方もネガティブ(物事に対して否定的)です。2児の母親になった今でもそうですが、「死にたい」「消えたい」という思いが、頭の中で追いかけてくることがあります。自己肯定感が低く、そんな自分のことが嫌いです。

受診してもいいの?

――精神的な不調が、生理の影響によるものだと気づいたきっかけは何だったのでしょうか。

 市販薬のテレビCMで、「生理前のイライラに……」という宣伝文句を耳にした時、「私って病気なの? 市販薬があるということは治せるの?」と思いました。

 そこで、日記を書くという意味合いも込めて、100均(100円ショップ)で手帳を買い、記録をつけてみることにしました。それまでは、生理周期さえ気にしたことがありませんでしたが、2か月続けると、生理が始まる2週間前から精神的に不安定になることが分かりました。インターネットで調べると、「3か月間記録を取る」とあったのですが、私の場合、2か月続けて同じタイミングだったので、婦人科を受診してみようと思いました。

――受診してどうでしたか。

 ところが、すぐには受診できませんでした。生理前に不安定な気持ちが2週間続き、始まれば1週間おなかが痛い。1か月のうちで体調が良いのは1週間くらいしかありません。二十数年間、生きてきて、それが当たり前だと思っていました。

 生理による体調不良くらいで医療機関を受診してよいものかと迷いがありました。ネットで調べて、生理前に心身の不調が生じるPMSというのがあるということを知ったのですが、それで医療機関を受診したという体験談はありませんでした。なので、この程度で私なんかが病院に行っていいものかという思いがあったのです。

――でも、最終的には受診されました。

 もう「死にたい」「死にたくない」という思いで気持ちが揺れて、パニックになっていました。子どもにだけでなく、夫にも暴力的な言動をしてつらくあたってしまい、大事な家族に迷惑をかけていると思い、医療機関に行くと決めました。「『こんなことで来ないで』と拒否されたらどうしよう」と不安でしたが、受付でPMSのチェック表を渡されました。「こういうものがあるということは、治療を受けている人がいるんだ」と思い、安心しました。

 はっきりと診断を受けたわけではありませんが、私の場合はPMSの中でも精神症状が強い「月経前不快気分障害」(PMDD)でした。「精神的に不安定になるのは、ホルモンによるもので、あなたのせいではない」と言われて、ほっとしました。

当初はピルに抵抗感

――どのような治療を始められましたか。

 低用量ピルか漢方薬の服用を提示されましたが、「何となく」漢方で様子を見ようと思いました。ピルに関する知識がなく、避妊薬というイメージがつきまとっていたからです。漢方薬は確か、(生理周期の治療などに使われる) 加味逍遙散(かみしょうようさん) だったと思います。

――服用してみてどうでしたか。

 飲み始めたら、すぐに次男を妊娠していることが分かり、服薬はやめました。つわりはひどかったですが、生理がこないので精神的に不安定になることはありませんでした。イライラすることもなく、人間らしくとても快適な日々を過ごせました。

 それまでは、ネガティブな感情しかなかったのですが、「今の私なら何でもできる」と思えるほど、気持ちが前向きになりました。

 でも、出産してから半年ほどたったある日、「死にたい」という気持ちが湧いてきました。「産後うつなのか、それとも低気圧のせいなのか」。数日後、生理が再開しました。こんなに早く戻ってしまうのかと思いましたが、今度は、ピルも治療の選択肢に入れてみようと思い、少し勉強してから医療機関を受診することにしました。

 最初は、1か月(28日)のうち4日間、休薬するタイプを服用しました。1年くらい続けましたが、休薬している間はイライラの感情が抑えきれなくなり、とてもつらかったです。そこで、今度は最長120日間連続して服用するタイプに切り替えました。

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