お盆のこの時期の東京もなかなかいい。流れている空気がどこか優しく、波動がゆるやかに感じられる。朝方に聞こえる鳥の声も不思議と大きな声で聞こえる。中心部の交通量は嘘の様に少ない、青山通り、日比谷通りなどの主だった道路はがらがらで快適にドライブを楽しむ事ができる。公園も映画館も人が少なめでゆったり過す事ができる。
週末の東京湾の花火は素晴らしかった。自宅の部屋から1時間以上に渡って打ち上げ続けられる大型花火を眺めながらやる一杯は最高であった。思わず、一番良いウイスキーを開けてしまった程である。バカラのウイスキーグラスに注ぐ琥珀色の芸術品と日本の花火。これはもう最高!!東京のお盆も捨てたもんじゃない。
問題と言えば、レストラン。特に和食、鮨屋はほぼ全面的に休みである。やっているのはホテルだけと言った感じである。まあ築地も休みなので仕方が無い。鮨が食べられるのは、まあ早くて17日ぐらいからである。築地は何があっても4日以上(土日を含む)続けて休んではいけないルールがある。
会社の中は?と言えば、とてもお盆の最中とは思えない。もちろん休んでいる社員も見受けられるがまあ、ほとんど出勤していると言ってよい。この混雑する時期を休むのではなく、ピークを外して休暇を取って旅行や里帰りする方が効率的であると考える方が普通なのであろう。客先やパートナー企業も営業している方が多いのではないだろうか。それに9月の上半期の締めの決算が近くなり、数字が気になる。ラストスパートの準備を整える。
社長室から眺めても、街は何となく静かに感じられる。この東京が、焼け野原だったと言う事が本当に信じられないぐらいである。
京都は明日が、確か、大文字焼き。所謂、お盆のメインイベントである。暑いだろうなあ。しかしなぜか懐かしい。何だかんだと誰かの家に集まって、屋上や窓から大文字を眺め一杯やる。そして終わる頃に街に繰り出し、また一杯。これが京都流である。市内のどこからでも大文字が見れたのであるが、今は所々大きなビルがそれを邪魔する。悲しいことだ。これが終われば秋を迎えると言うことであるが、残暑が厳しい近年では後一ヶ月は暑さが続く。
日本中で色々な形のお盆がある。花火、大文字焼き、お祭り。終戦を偲ぶ。故人を思い出す。家族、親戚が集まり宴席。酒を持って集まる友人。それぞれが日々の辛さ、悲しさを忘れ、そのひと時を楽しむ。年を取って、この「お盆」と言う日本語の響きがいいんだよねえ。「サマー・バケーション」何て言葉に決して置き換えることのできない、日本の風物詩なんだよね。
暑い夏も、「人生で、後、何度の夏を迎える事ができるのであろうか?」と考えれば、ほとんどの人が数十回程しかないんだ。そう考えれば、暑い夏も貴重なひと夏なんですよね。
貴重な、一回しかないこの2006年の夏ももうすぐ終わろうとしている。
山村幸広
【関連リンク】