再開から約1年。二の池ヒュッテの今!
登山者がいつもお世話になっている“山小屋”。山の中で安心して寝食ができる、ありがたい場所です。
そんな“山小屋”を徹底取材する当企画。第3段の今回は2014年の噴火により営業停止になっていた二の池小屋新館より新たに生まれ変わった、御嶽山の《二の池ヒュッテ》に行ってきました。
二の池ヒュッテに向かう途中、大きな荷物を背負っている女性を発見。
この方が二の池ヒュッテのオーナーの高岡ゆりさん。まさかこんなカタチでお会いするなんて。
異色のカタチでオーナーに就任
高岡さんは東京でOLを経験した後、金峰山小屋で山小屋仕事の経験を積みます。
2017年に、二の池ヒュッテの前身である「二の池山荘新館」のオーナーが小屋の譲渡先を探してるというニュースを発見し、高岡さんはすぐに御嶽山に登りました。
そこで、御嶽山の魅力を伝えることや安全を確保する重要性を感じ、新たなオーナーとして「二の池ヒュッテ」を2018年8月に営業を再開させました。
基本的に、親から子供に受け継がれる世襲が多い山小屋経営。ですが、高岡さんは前オーナーから小屋を譲渡してもらうカタチでスタート。
山小屋再開から1年経った今、高岡さんはどんな気持ちで山小屋を運営しているのでしょうか?
御嶽山という山でしか味わえない山の魅力
―――歩荷お疲れ様です。スゴい荷物でしたね。
今日の荷物の重さは29kgでした。やれば多少慣れてくるんですけど、さすがにちょっときつかったですね(笑)。
―――あんな悪天候の中、尊敬しかないです。
でも、小屋に上がる時は何かしら持って上がらないとね。明日は土曜日で予約も入ってるから。
―――今回はじめて御嶽山に登ったんですけど、変化に富んだおもしろい山ですね。ロープウェイを降りてすぐの道は木のチップが敷かれていて歩きやすいし、樹林帯から始まって、途中からは完全に岩がむき出しになった火山っぽい道もある。
さらに継子岳の方面は、こっち側(剣ヶ峰)の火山のような雰囲気と違って緑が広がってるんですよ。
『いろんな人が楽しめる、幅の広い山なんです』
―――3,000mの標高の山っていうと、初級者の人はチャレンジしにくいイメージがありますけど、御嶽山はちょっと違いますよね。
ロープウェイもありますし、山小屋も一合ごとにあるので3,000m級という標高の割にハードルの低い山だと思います。もちろん高山病にならなかったり、天候に恵まれればということはありますが。
―――噴火で登山道が荒れたという話も聞いていたので、どこまで登山道が歩きやすいかは気になっていたんですけど、普通の登山道とあまり変わりないと感じました。
山頂付近以外はそうですね。でも、山頂付近には屋根が壊れたままの山小屋なんかもまだ残っていて、悲しい景色も残っているんです。うちの小屋も、当時落ちてきた噴石をそのままにして置いてます。
『ヘルメットを持ってくる〈意味〉を考えて欲しい』
―――このサイズの石が落ちてきたら、ヘルメットしていてもひとたまりもないですね。この部屋をきれいにしないのは、なにか理由があるんですか?
ええ。悲しい事故なんですけど、剣ヶ峰付近の壊れた小屋が撤去された後には、噴火の事実を伝えられる場所が無くなってしまうので。きっとこの部屋は、しばらくこのままにすると思います。
―――自然の厳しさや、そういう場所に登っているという心構えを忘れないためには大切なのかもしれません。
ただ、今年からヘルメットの携帯が義務から推奨に変わった影響か、ヘルメットを持っていない人もチラホラ見かけました。「ヘルメットの準備」というハードルが下がって多くの登山者が訪れやすくなるという面もあると思うんですが、「本当に持っていなくても良いのか?」という疑問があります。
宿泊の予約をいただく時に、「ヘルメットを持ってきて欲しい」ということは伝えるようにしています。山頂に行くためだけでなく、ヘルメットを準備してくる意味を考えて欲しいですね。
―――そういった意味も考えながら登るほうが、御嶽山という山の魅力やそこから学べることが増えて、より充実した登山になりそうですね。
火山らしい岩の感じだけでなく、継子岳なんかは花畑もきれいです。ひとつの山の中にたくさんの楽しみや学びがあるので、その全部を感じてほしい。本当にいい山なんですよ。