アイキャッチ撮影:筆者
ユニクロのダウンは登山用にしてもいいの?
撮影:筆者
秋冬シーズンになると、山で休憩する時にけっこう冷えますよね。寒さに負けず快適に過ごすために、ダウンがあると安心です。
でも、「機能が良いのはわかるけれど、正直なところ出費を抑えたい」という人もいるのでは?
そんな人に人気なのが、ユニクロが販売する『ウルトラライトダウン』。
ダウンジャケットが1枚6,990円(2024年現在)で購入できるので、「登山に着ていけるのかな?」と思っている人も多いようなんです。
でも、ちょっと待ってください!
出典:PIXTA
しかし、ウルトラライトダウンジャケット(以下、ウルトラライトダウン)はあくまでも街での着用を想定して作られた商品。
いざ使ってみたら「めちゃくちゃ寒くて耐えられなかった」なんてことも、環境によっては起こりえます。しっかりと、登山用ダウンジャケットとの違いを理解した上で、使って問題ないかを判断する必要があります。
ウルトラライトダウンはこんな商品!
撮影:筆者(身長180cm 体重約60kg、Lサイズ着用)
それでは、まず簡単にユニクロのウルトラライトダウンについてみていきましょう。
公式サイトを見てみると、
- フィルパワー750※のプレミアムダウンで軽くて暖かい。※IDFB法による測定値
- 独自技術でダウンパックをなくし、驚きの軽さに
- 小雨程度の水をはじく撥水加工
- ポケッタブル仕様で持ち運びにも便利
- インナーからミドラーまで幅広く使えるレギュラーフィット
- シンプルなデザインと低めの襟、そして細いキルト幅ですっきりとしたデザインに
引用:ユニクロ(2024年時点)
と記載されており、まとめると……
- 軽い
- コンパクト
- 暖かい
- 少量の雨ならOK
- 見た目もスッキリ
という特徴を持った商品のようです。これだけ見ると登山でも使えそうな気もしますが、もう少し詳しくみていきたいと思います。
撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
今回は、アウトドアメーカーのダウン代表として、「モンベル スペリオダウンジャケット(以下、スペリオダウン)」との比較を交えながら、登山に必要な「①暖かさ」 「②軽さ」 「③コンパクトさ」 「④撥水性」に加えて「⑤見た目とディテール」を調査してみました。
調査①:暖かさ
暖かさの部分は、ウェアの作りを中心にみていきます。
まずは実際に着てみた感想から
撮影:筆者
11月末の早朝に、標高500mほどの山での休憩中に寒さを感じるかどうかをテストしました。当時の気温は約8℃前後。ダウンの中は、ウール素材の長袖ベースレイヤーシャツのみです。
ウルトラライドダウンを着て30分間じっとしていましたが、時折風が吹くと露出している部分が寒く感じるものの、特別に体が冷えた感じはしませんでした。
さすがに登山用のアウターダウンを着ている時のような、暖かい空気に包まれている感覚とまではいきませんでしたが、ジャケットの厚み以上の十分な保温力を感じることができました。
使われているダウンは「高品質」
出典:PIXTA
ダウンの暖かさの指標として、「フィルパワー」というものがあり、この数値が高いほど「空気をたくさん含み、保温性が高いダウン」と言われています。
■ウルトラライトダウン
・750フィルパワー超(2024年時点)
■スペリオダウン
・800フィルパワー
一般的に600~700フィルパワーのダウンが「良質」、700以上のものが「高品質」とされているため、スペリオダウンが高品質であることはもちろん、ウルトラライトダウンも十分品質の高いダウンが使用されていることがわかります。
保温性はスペリオダウンに軍配
同じ環境で着比べてみてると、スペリオダウンの方が暖かに感じられました。それは、ダウンのフィルパワーの違いに加え、構造の違いにも起因していると考えられます。
異なるキルティングパターン
2つのダウンを並べてみると、縫い目に違いがあるのがわかります。
撮影:筆者
一般的なダウンジャケトは中わたの偏りを防ぐためにステッチが入っています。この縫い目からも冷気が侵入してしまうのですが、スペリオダウンは、冷気の侵入を極力抑える独自のステッチパターンになっているんです。
◆ウルトラライトダウン
部屋が大きく膨らみやすい一般的な縫い方を採用。ダウンは膨らんで温かい空気の層を作り保温するため、大きく膨らむというのは暖かさの確保に繋がる。ステッチ幅は狭めで、ダウンの偏りを防ぐ一方で、縫い目が多くなり冷気の侵入口も増える
◆スペリオダウン
縦横に縫い目があるのでダウンがより片寄りにくく、全体を均一に保温できる。また、縫い目を少なくすることで、軽量化しながらコールドスポット(冷えやすい部分)を減らし、保温力を高めている
撮影:筆者
撮影:筆者(厚みを比べてみると、ボディ部分も腕部分もスペリオダウンの方がふっくらとしている)
また、スペリオダウンが使用している「EXダウン」は、一般的なダウンよりダウンボールが大きく、小羽枝の密度が高いため、空気を多く蓄える特性があります。つまり、空気の層により冷気を遮断し、暖かさをキープしてくれるというわけです。
背中の短さが気になる
撮影:筆者
着用時に気になったのは、登山用のものに比べ、ウルトラライトダウンは丈が短いという点です。しゃがんだ時に、背中が出てしまうのでは?と思い、実際に前屈した状態で比較してみました。
撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
ウルトラライトダウン(L)の方がスペリオダウン(M)よりワンサイズ上のはずですが、それでもインナーが見えるまで丈が上がりました。
少しの差ですが気温が下がってきた場合に、腰回りの冷えにつながる可能性も。登山用で購入する場合は、注意しておきましょう。
袖にも若干の違いが
撮影:筆者
隙間が少ない方が、暖かい空気が逃げにくくなるため、保温性は高くなります。未着用の状態で見てみるとどちらも、袖の部分がキュッとしまっていて、フィットしやすい作りになっています。
撮影:筆者
実際に着用してみると、スペリオダウンの方が袖部分の隙間が若干少なくなっています。ただスペリオダウンはMサイズ、ウルトラライトダウンはLサイズのため、サイズの差が結果に影響している可能性もあります。より細かい比較は実際の同サイズを試着してみるのが良さそうです。
さらにジッパーの裏側を見てみると
撮影:筆者
裏側からジッパーを見た様子です。スペリオダウンには裏に1枚布地があるため、隙間風を防いでくれます。一方でウルトラライトダウンは裏地なし。シビアな環境になった場合には、使用には注意が必要でしょう。
調査①:暖かさ|まとめ
どちらも高品質なダウンを使用。ただし、細かな作りに違いがあるので、使用環境によっては注意が必要。
スペリオダウンをはじめ、より過酷な環境で着用することを想定して作られたアウトドアメーカーのダウンは、保温性を最大限に高めるための工夫が随所に施されている点が、ウルトラライトダウンとの大きな違いと言える。
調査②:軽さ
多くの荷物を運ぶ登山においては、できるだけ荷物は軽いに越したことはありません。
その差はだいたい500円玉4枚分
撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
スペリオダウンとウルトラライトダウンでサイズが異なりますが、実測値の差は33g。公式サイト記載のスペリオダウンの平均重量は190gのため、ウルトラライトダウンの方が約30g(だいたい500円玉4枚分ほど)重量があると言えます。
実際に着ると重さの違いを感じます。ですが、休憩中に着用するのであれば、重くて疲れるということはないくらい、十分に軽やかさな着心地です。
撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
収納時の重さで比較しても、その差は実測値で36g。グラム単位で重さを削りたい登山者であれば別ですが、低山を楽しむのであれば荷物に入れても不都合なく使える範囲です。
調査②:軽さ|まとめ
持っていく時の重さに大差はなく、いずれも十分に軽量。重量に強いこだわりがなければ、気にしなくて大丈夫。
調査③:コンパクトさ
ザックの中に荷物をすべて入れる登山では、なるべくコンパクトで収納性が高い製品が好まれます。
大きさは2回り分くらいの違いが
撮影:筆者
大きさのイメージを持ちやすいよう、iPhone11とナルゲンボトル(500ml)、スペリオダウンと比較してみました。収納後の大きさは2回りくらいウルトラライトダウンが大きいです。
撮影:筆者
手で持ってみるとこれくらい。「手のひらサイズ」とまではいきませんが、携帯しやすいサイズ感です。
ちょっとした工夫でコンパクト化も可能
撮影:筆者(ダウンが出ているのは中が見えるようにです。実際は完全に収納可能です
ウルトラライトダウンをよりコンパクトにしたい場合は、より小さい収納袋に入れればOK。スペリオダウンの袋に入れることもできました。
収納袋が大きい方が出し入れはスムーズ。携行する状況に合わせて、適当なサイズの袋を選ぶとよいでしょう。
調査③:コンパクトさ|まとめ
付属袋の大きさの差により、収納サイズには違いがでるも、別の袋を活用するなどの工夫次第でもっとコンパクトにできる。
調査④:撥水性(はっすいせい)
基本的に休憩中などの停滞時に着用するダウンジャケット。中のダウンが濡れてしまうと乾きにくく、保温力も失われてしまうため、雨を弾く機能がついているのがうれしいポイントです。
撮影:筆者
ウルトラライトダウンの表地には、素材の会社で有名な東レと共同開発したという、撥水性能のある生地が使われています。また、撥水性のある糸で縫い合わされているんです。
実際に濡らしてみても、ご覧の通りしっかり水を弾いてくれます。なので、突然雨が降ってきても、上からレインウェアを着るまでに間、ダウンの濡れを防げるでしょう。
ただし、防水機能ではないので、雨に濡れ続けると染みてきます。
調査④:撥水性|まとめ
小雨程度なら○。でも、油断せずに雨が降ってきたらレインウェアを着よう。
調査⑤:見た目とディテール
あまり窮屈だと下にウェアを着にくいものですが、そういった部分はどうなのでしょうか。アウトドアだけでなく、日常でも着るなら、やはり見た目も気になるところです。
撮影:筆者(身長180cm 体重約60kg 左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
撮影:筆者(身長180cm 体重約60kg 左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
撮影:筆者(身長180cm 体重約60kg 左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
◆ウルトラライトダウン(Lサイズ)
街着としてスッキリとしたシルエットにするため、丈は短め。とくに窮屈感はないので、登山の休憩中に着ても不自由なく行動できる。
今回はLサイズを着用したためか、お腹周りはスペリオダウンよりもゆったりめ。アウターとしても使いやすいシルエット。
◆スペリオダウン(Mサイズ)
ウルトラライトダウン(Lサイズ)よりもややすっきりとしたシルエットながら、丈は長めで腰回りまでしっかりカバーできる。
また、全体的にスペリオダウンの方が空気を含んでしっかりと膨らんでいて、着た感覚でも見た目にも暖かな印象。
薄手だからこそ、レイヤリングしやすいのがウルトラライトダウン
街着のインナーダウンとして使う前提で作られたウルトラライトダウンは、レイヤリング(重ね着)がしやすいというメリットがあります。
それぞれのダウンの上にジャケットを羽織ってみましたが、ウルトラライトダウンの方がモコモコとしづらいため、重ね着による温度調整が簡単。暖かい時期はシャツの上に、寒い時期はアウターを重ね着するなど、より長いシーズンに使いやすいのがウルトラライトダウンの良いところです。
ジッパーにも違いが
撮影:筆者
スペリオダウンは山で手袋をしていても開閉しやすいように、ジップの先端がつまみやすい形状になっています。
さらに、ジッパーが肌に当たらないようにする工夫も。これは顎を保護する「チンガード」と呼ばれ、アウトドアウェアでは定番の仕様です。
撮影:筆者
サイドポケット部分のジッパーの引き手も同様の作り。ウルトラライトダウンは操作性に欠けるものの、ジッパーが正面から見えないようになっているので見た目がスマート。
撮影:筆者 (ウルトラライトダウンの収納袋を取り付けるバックルと内ポケット)
ウルトラライトダウンのみ、収納袋をワンタッチで着脱できるバックルが付いています。収納袋をなくす心配なし。
また、どちらのジャケットも内側に大きなポケットを搭載。グローブなどの小物を収納しやすいサイズ感です。
調査⑤:見た目とディテール|まとめ
ダウンの下に厚手の服を着ることは難しいものの、インナーとして着やすいのがウルトラライトダウン。ジップの仕様はアウトドアメーカーの快適性や操作性には劣るが、短めの丈感も含めシンプルでスッキリとした印象。
キルティングパターンの違いは、「調査①:暖かさ」で紹介したように、保温性の差にも直結している。見た目のデザインとしては、ウルトラライトダウンはキレイ目なスタイルにも馴染みやすい表情。スペリオダウンはスポーティな雰囲気。
結論:試す価値アリの優秀なコストパフォーマンス!
撮影;筆者
実際に着てみるとその機能性の高さに驚きです。雨や雪が降っていない状況であれば、山での休憩中に着用しても問題ないように思いました。
もちろん、スペリオダウンの方が細部まで高スペックで、山での操作性や快適性に優れていましたが、ウルトラライトダウンの価格は半分以下。それを踏まえると、コストパフォーマンスに優れた魅力的な商品だと感じます。
もし、ウルトラライトダウンを山で着用する場合は、今回紹介した特性を踏まえて、他のウェアとの組み合わせや、自分が行く山の環境に適しているのか、という部分を考えて選んでみてください。
スタッフバッグを使えば、ダウンをさらにコンパクトに!
オクトス UL スタッフバッグ 3L
容量 | 3L |
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平置きサイズ | 縦26cm×直径13.5cm |
平均重量 | 17g |
素材 | 30Dコーデュラナイロン(表:シリコンコーティング、裏:PUコーティング) |
撥水性に優れたスタッフバッグ
30Dコーデュラナイロンを使用したスタッフバッグ。衣類や食料など濡らしたくないものを収納するのに便利です。縫い目には止水加工(シームテープ)が施されています。
グラナイトギア エアバッグ 2L
容量 | 2L |
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サイズ | 11.6×6.8×26cm |
重量 | 12g |
素材 | 30Dシルナイロンコーデュラ |
収納しやすい楕円形のスタッフバッグ
30Dシルナイロンコーデュラ素材により、軽量ながらしっかり水を弾いてくれるスタッフサック。バックパックの中に収納しやすい楕円形状もポイント。