アイキャッチ画像撮影:ポンチョ
2足目に履いてみてほしい、軽快に歩けるトレイルランニングシューズ
さまざまな登山道具において、U.L.=ウルトラライト(超軽量化)が浸透している昨今。元々、軽量コンパクトが登山道具の基本ではありますが、シンプルでアイデアや経験によって多用途に使える道具が増えています。それにより、選ぶべき道具の選択肢も広がっています。
つまり、正解はひとつではないのです。
例えば、登山をはじめる際に選ぶ1足目のシューズは、防水透湿機能を備えたミッドカットシューズが基本です。私も多くの初心者ハイカーに、そうしたシューズをオススメしています。
でも、定期的にいくつかの低山を登り、最初の頃よりも足や身体への負担が軽くなってきていると思えたら、ローカットシューズを試してみることを提案しています。それは、通気性のよいメッシュアッパーで、クッション性にすぐれたトレイルランニングシューズです。
「ランニング」というカテゴリーなので、山を走るなんてことはしない、できない自分には、無縁のシューズだと考える人が多くいるでしょう。けれども実際に履いてみれば、その軽さ、足運びのしやすさ、想像していた以上の安定感に、「山で試してみたい」と思うようになる人も、また多くいるんです。
「パースート2」を推薦!地面に裸足で立ったときと同じ感覚のゼロドロップシューズ
2足目に履いてみてほしいトレイルランニングシューズで、今シーズン私が注目しているのが、Topo Athletic(トポアスレチック)の「パースート2」です。メンズモデル、ウィメンズモデルともに用意されています。
重量は295g(メンズ27cm)と軽量。スタックハイトと呼ぶソールの厚さは、28mmある厚底シューズ。しかしカカトとつま先の高低差がなく、地面に裸足で立ったときと同じ感覚のゼロドロップと呼ばれるシューズです。
はじめてこのパースート2に足を入れて歩いた時、私は思わず「おぉ~!」と声を出していました。
これまで履いてきた100足以上のトレイルランニングシューズのなかで、フィット感、クッション性、そして安定感が、もっともバランスよく融合しています。それぞれ、なにか1つ、2つがよいシューズはありましたが、3つともによいトレイルランニングシューズはパースート2が初めてでした。
やさしい履き心地は、パースート2ならではの機能
機能性に長けたパースート2の特長を一言で表現すると、「やさしい」シューズです。米国のランニングシューズブランド「トポアスレチック」が手掛けるシューズの多くは、米国足病医学協会の認定を受けていて、足の健康に有益なプロダクトなんです。ちなみにパースート2は、その認可を受けていませんが、認可を受けたシューズとつくりは同様です。
まず足を入れると、トポアスレチックが開発したミッドソール、ZipFoamの低反発素材のようなソフトさに、心地よさを感じます。この素材は、弾力性と柔軟性を持ったEVAと、摩耗に強いTPUという樹脂素材の配合を、シューズごとに変えて採用しているとのこと。同社のこだわりを具現化したものといえます。
また、日本人典型の私の足が、欧米人仕様のはずのシューズにすんなりと収まります。ヒールは丸み帯びたカップにすっきり収まり、ブレがありません。シューレースを締め込むと、土踏まずから甲の部分に、これまでに感じたことのないフィット感が出てきます。
そのフィット感は、なんとも「やさしい」んです。
ゼロドロップシューズならでは裸足感覚が、安定感をもたらす
そしてトポアスレチックの特長である、前足部のワイドさによって、足指を動かせ、歩きはじめると、地面を掴む動作を自然に行なうことができます。
もし足指を動かせない足だったとしても、中足部はしっかりサポートされフィットしているのに、前足部は締め付けられることがないので、裸足のような感覚を得られるでしょう。
さらに、地面に裸足で立ったときと同じ感覚のゼロドロップが機能します。片足を上げても、スッと立てます。
片足でのバランス立ちは、トレーニングやインソールの調整でうまくできるように補正したりするのですが、パースート2は、そのままでスッと立てます。
これにより歩いたり、走ったりしたときにブレが減り、安定感をもたらします。また左右の片足立ちがスムーズにできるようになると左右差を解消できるので、身体、足腰に出る痛みも減ると、私は考えています。
パースート2は、そうした点でも、身体にやさしいシューズなのです。
足を自然に前に運べるロッカーソール形状も“巧妙”なつくり
上の画像を見て、わかりますよね?
通常のトレッキングシューズやトレイルランニングシューズよりも、パースート2はつま先がグイっと反り上がっています。
歩行時、走行時の足の動きに合わせてソールを強くカーブさせることで、軽く踏み出すだけで、自然と体重移動ができるようにしているんです。
だから余計な力を使うことなく、進むことができます。
こうしたソール形状はロッカーと呼ばれ、厚底シューズの多くが取り入れている機能でもあります。ですが……。
安定感の高さが、軽い履き心地をサポート
単なる厚底シューズだと、そのソールの厚さ=高さが上がることにによって、登山道やトレイルのような不整地ではバランスを崩しやすい……なんてことがあります。
でもパースート2、そしてトポアスレチックのシューズは、前足部に幅を持たせたルーミーな形状です。
つまり、幅広のデカ底のアウトソールなので、厚底であっても横ブレすることなく、歩行、走行に安定感があるんです。
実際に山を歩いてみると、ロッカー形状による推進力と安定感の高さから、歩きが軽くなることを実感できました。
ビブラム・メガグリップ採用で、安定感に安心感もプラス
アウトソールには、ソフトな材質で路面によく食い付き、高いグリップ力が評判のビブラム社メガグリップを採用しています。
施された凸凹のラグは、トレイルランニングシューズとしては深めです。メガグリップの濡れた路面でもグリップ力が加わり、歩行の安定感に安心感をプラスしてくれています。
ソフトなメガグリップは、耐久性をアップさせているのかも
メガグリップはその材質のソフトさによってグリップ力を発揮しているというのは、前述の通り。舗装路を多く歩く際には、摩耗しやすいことを念頭に置いておく必要があります。
しかし今回、登山で合計約50キロ、舗装路のランニングでも合計50キロ、その行き帰りの街歩き等で合計10日間ほど履いてみたのですが、アウトソールがすぐに削れてしまうことはありませんでした。
ラグが深い分、削れやすくなることを考慮して、耐久性を上げているのかもしれません。これは、うれしいことです。とはいえ、メガグリップがソフトなことは間違いないので、長持ちさせたいなら、登山やトレイルラン等、未舗装路での使用に限定して着用したほうがよいと思います。
専用ゲイター追加で、ストレスも解消
トポアスレチックのトレイルシューズの全モデルには、別売のパフォーマンスゲイター(6,050円)を固定するフックを装備。ローカットシューズにおこりがちな土や小石、小枝の浸入を防げます。多少の雨や露も弾いてくれ、濡れによる冷えも予防。面テープでフィット感を調節、着脱も簡単です。
ミッドカットシューズのように足首を固定する機能はありませんが、ゲイターを巻いていると、不思議と足首がサポートされているような感覚があって、安定感が上がったようにも思えます。たぶん、そっと支えられるだけでも、ヒトによってはしっかりとしたサポートに感じられたりするのでしょう。
やさしいだけでなく、身体の力を発揮させる
今回紹介したトポアスレチック同様に、足にやさしいトレイルシューズとして知られているブランドには、アルトラやゼロシューズがあります。装備を軽量化するU.L.ハイカーの多くが、愛用するシューズです。私もそれらのシューズやサンダルを愛用しています。
いずれもカカトとつま先に高低差がない、裸足で地面に立った状態と同じ姿勢で歩ける、ゼロドロップシューズです。U.L.ハイカーがそうしたシューズを選ぶ理由は、「自然をできる限り感じたい」という考えからです。シューズであれば足を守るために履くのではなく、人間が本来持っている、身体や足の機能を発揮させるために履くのです。
そうした点でトポアスレチックのパースート2は、厚底ソールで足を守りつつ、動きやすい形状で足の機能を促進、軽さと安定感によって、少ない力でラクに歩き続けることを可能にしています。
ローカットシューズは不安定で心配……という人も、短い距離や時間で登れる低山で足を鍛え、本来持っている力を発揮させるために、ローカットシューズを履いて登山をしてみてください。パースート2は、十分に歩ける機能を持っています。
そしてミッドカットシューズに戻って縦走をしてみれば、自分の足の違いに驚くことでしょう。
それでは皆さん、よい山旅を!
トポアスレチック パースート2(メンズ)
サイズ | 26.0~29.0cm |
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スタックハイト | 28mm |
ドロップ | 0mm |
重量 | 295g(27.0cm) |
クッション性 | ミドル |
サポート力 | ニュートラル |
柔軟性 | ミドル |
最適な用途 | トレイルランニング |
トポアスレチック パースート2(ウィメンズ)
サイズ | 22.5~25.0cm |
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スタックハイト | 28mm |
ドロップ | 0mm |
重量 | 230g (23.5cm) |
クッション性 | ミドル |
サポート力 | ニュートラル |
柔軟性 | ミドル |
最適な用途 | トレイルランニング |