山の中にもトイレはある?
登山を始めたい!と思っていても不安や疑問がいっぱいですよね。中でもトイレが心配……と悩んでいる方は多いもの。そもそも、山にトイレはあるのでしょうか?
トイレのある山、たくさんあります
安心してください。トイレのある山は意外とたくさんあるんです。アルプスや富士山といった山小屋がある山をはじめ、初心者にも人気の高尾山などの低山にも。
ただ街中にあるような水洗トイレは少なく、排泄物を微生物の力で生分解する「バイオトイレ」など、日常と違うタイプもあります。
山にトイレがあるのはありがたいからこそ、マナーを守って使いたいですね。
そこで今回は、山のトイレマナーやトイレがない場合の対策方法、おすすめトイレグッズなどをご紹介します!
知っておきたい「山のトイレ事情」
山にもトイレがあるとはいえ、登山中いつでも行けるわけではありません。登山当日に困ることのないように、まずは基本的な山のトイレ事情について知っておきましょう。
・ルート上のトイレを把握しておいて計画的に利用する
・利用時はトイレチップを払う
・トイレが使えないときは携帯トイレを使う
地図で登山道のトイレをチェック!
トイレチェックは登山計画の一部
登山用の地図には、トイレの場所も記されています。地図を見ながら登山計画を立てる際に、ルート上のどこにトイレがあるのかを確認しておくことが大切です。
不安な場合は登山口をトイレのある場所にすることもポイント。
一部のトイレを除き、トイレットペーパーはそのまま流せないことがほとんどです。使用済みのペーパーを入れるためのゴミ箱が設置されていることが多いので、案内に従いましょう。
中には備え付けのペーパーやゴミ箱がないトイレも。その場合は、ペーパーやゴミ袋を持参する必要があります。
地図上はトイレがあっても、時期によっては閉鎖されてしまうことも。山小屋や自治体のホームページ、最近行った人の情報などを、インターネットや登山アプリでチェックしておくと安心です。
携帯トイレブースが設置されている山も
トイレマークがなくても携帯トイレブースが設置されている場合もあります。
携帯トイレブースとは、携帯トイレを使用するための目隠しスペースのこと。小屋のようなものから簡易テントのものまでさまざまなタイプがあり、携帯トイレが買えるブースもあります。
使用方法は、トイレの個室と同じように中に入り、携帯トイレで用を足すだけ。
使ったものは必ず持ち帰りましょう。ルート上や登山口に使用済み携帯トイレの回収ボックスが設置されていることもありますが、ない場合は自宅に持ち帰って処分します。
山のトイレは基本有料。小銭は多めに持っていこう
山のトイレは、100円〜500円ほどのチップを払って使うところがほとんど。入り口付近に設置された料金箱に支払うタイプが主流です。何度か使用する可能性も考慮し、100円玉は多めに持っていったほうがいいでしょう。
中には、料金を入れないとトイレのドアが開かない仕組みになっている場所もあります。
水の乏しい山上では排泄物の処理は難しく、ヘリコプターで運搬している山小屋も。山ではトイレを維持するために莫大な費用がかかることも踏まえて、使用料は気持ちよく支払いたいですね。
なお、宿泊する場合は基本的にトイレ利用料も宿泊代に含まれています。
万が一に備えて携帯トイレなどのグッズも必ず準備
我慢できなくなった場合やトイレが使えない可能性もあるので、携帯トイレセットは必ず持っていきましょう。一緒にトイレットペーパーやウェットティッシュなども忘れずに。
そのまま野に放つことは山の環境にダメージを与えるため、携帯トイレを持参することは山のマナーです。
ちなみに登山用語では、“用を足すこと”を“お花摘み(女性)”、“キジ撃ち(男性)”と言います。
登山仲間を待たせてトイレに行くのは気を遣って言い出しづらいと感じたら、「お花摘みしてきま〜す」「キジ撃ちしてきます!」と言ってみるといいですよ。
ピンチ!トイレまで我慢できないときのマナーと対処法
予定していたトイレが使用できなかったり、急にお腹の調子が悪くなったりなど緊急事態が起こらないとも限りません。そんないざという時のために、携帯トイレの基本的な使い方と注意点を覚えておきましょう。
・携帯トイレを使うときの場所選び|安全で人目につかない場所で
・携帯トイレの使い方|簡単3ステップ
・おすすめの携帯トイレグッズ|携帯トイレ5アイテム+ポンチョ
・携帯トイレが使えないときの注意点|大は穴を掘って埋めましょう
・オムツはお守り程度に|使う場合はムレや衛生面に要注意
登山道から少し離れた、安全で人目につかない場所を選んで
山中にトイレがなく、どうしてもの緊急時には持参した携帯トイレを使用します。携帯トイレブースがない場合は、大きな岩や木立などで自身の姿を隠しましょう。
他の登山者からは見えないような、登山道から少し離れた足元の安定した場所が適しています。ただし、あまり離れすぎると遭難のリスクが高まるとともに、植生を乱す原因にも。
ギリギリまで我慢すると望ましい場所が見つからない恐れがあるので、「次のトイレまで間に合わないかも」と思ったら早めに身を隠せる場所を探すようにしましょう。
簡易ポンチョがあれば他の登山者に見られる心配がなく、必要以上に登山道から離れずに済むので、安心・安全に用を足せます。間違えて透明のポンチョを選ばないように要注意!
携帯トイレの使い方|簡単3ステップ
さまざまなメーカーの携帯トイレがありますが、基本的に使い方は同じです。
セット内容は、用を足すための「便袋」、排泄物をかためる「吸水凝固剤」、汚物が入った便袋を収納する「防臭袋」が主流。便袋と凝固剤が一体化しているタイプもあります。
簡易ポンチョやポケットティッシュが付属しているものなら、別途用意する手間も省けて忘れ物防止にもなります。
【携帯トイレ使用方法】
①開封後、はじめに便袋を広げて、地面に置きます
この時点で凝固剤を便袋に入れるタイプもあります
②用を足し、凝固剤でかためます
凝固剤と便袋が別になっている場合は、凝固剤を振りかけて水分をかためてください
③袋の口をしっかり閉じたら防臭袋に入れます
必ず防臭袋の中の空気を抜き、密閉して持ち帰りましょう
まずはひとつ手に入れて中身をチェックし、使う練習や使用時の注意点をマスターしておきましょう。より詳しい使い方は、以下の記事でも紹介しています。
おすすめの携帯トイレグッズ
【男女ともにおすすめ】携帯トイレ(大小対応)
大小ともに使える汎用性の高い製品を3つ紹介します。いずれも地面に広げて使うタイプの定番商品です。
総合サービス Sanita – clean(サニタクリーン)
重さ | 95g |
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内容物 | ・ECOサニタクリーン便袋:1枚 ・高密閉チャック袋:1枚 ・水溶性ポケットテッシュ:1個 |
対応範囲 | 男女ともに大小対応 |
おしゃれなデザインで匂いが漏れにくい
便袋と凝固剤が一体になっているタイプ。消臭袋には、匂いが漏れにくいタイプのチャックが使用されています。デザインがおしゃれなのもうれしいポイント。
エクセルシア ほっ!トイレ
重さ | 50g |
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内容物 | ・ほっ! トイレタブレット(トイレ処理剤):1袋 ・ビニール袋:1枚 ・ポケットティッシュ:1セット ・ポンチョ:1枚 ・簡易トイレ型枠:1枚 ・巾着袋:1枚 |
対応範囲 | 男女ともに大小対応 |
簡易ポンチョやポケットティッシュが付属
簡易ポンチョやポケットティッシュといった付属品が充実。富士山で配布されたこともあるアイテムです。より確実に匂いを密閉したい場合は、チャック付きの袋を別途用意したほうがベター。
モンベル O.D.トイレキット
重さ | 43g |
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内容物 | ・便袋:1枚 ・吸水ポリマー:1回分 ・防臭袋:1枚 |
対応範囲 | 男女ともに大小対応 |
軽量・コンパクトで匂いにくい
最低限のセット内容で軽量・コンパクト。ダブルチャックの消臭袋で匂いをしっかり封じ込めます。モンベルからはトイレットペーパーやガベッジバッグ(繰り返し使えるゴミ袋)も販売されているので、一式揃えるのも◎
【特に男性におすすめ】携帯トイレ(小のみ)
ケンユー プルプル(3個入)
重さ | 50g(3個入) |
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内容物 | ・凝固剤入り蓄尿袋:3枚 ・持ち帰り袋:3枚 |
対応範囲 | 男性の小便に対応 |
手持ちタイプで男性向け
手持ちタイプ携帯トイレの定番商品。凝固剤の入ったコンパクトな筒状タイプで、基本小のみでの使用を想定しています。男女兼用の商品ですが、男性に使いやすいタイプで、別途女性向けのモデルもあります。
【特に女性におすすめ】携帯トイレ(小のみ)
ケンユー ニュープルプルレディ(2個入)
重さ | 53g(2個入) |
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内容物 | ・凝固剤入り蓄尿袋:2枚 ・持ち帰り袋:2枚 ・水溶性ティッシュ:1個 |
対応範囲 | 女性の小便のみ対応 |
手持ちタイプで女性向け
上記で紹介したケンユー「プルプル」の女性向けアイテム。男性用よりも受け口が広くなっています。こちらも小のみに対応。
【人目から姿を隠したい人におすすめ】ポンチョ
ケンユー ベンリーポンチョ
重さ | 95g |
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人目から姿を隠すのに最適な透けにくい簡易ポンチョ。頭からかぶるだけの仕様で扱いも簡単です。さらにフード付きなので顔を隠すことも可能。
▼より多くのアイテムをチェックしたい方はこちら
やむを得ず携帯トイレが使えないときの注意点
生理現象であるがゆえ、持っていった携帯トイレを使い切ってしまった場合など、地面に排泄せざるを得ないことも。その場合は、周囲に配慮して対処しましょう。山小屋やテント場の近くはもちろん、沢や水源のそばは避けてください。
大の場合は穴を掘り、事後は土をかぶせましょう。景観を乱さないだけでなく、微生物が分解しやすくなります。
もちろん、ティッシュなどのゴミは必ず持ち帰ること。小さいスコップも一緒に持っていくと便利ですよ。
ミゾー モグ
重さ | 24g |
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サイズ | 3.5×15.8cm |
お守り代わりにオムツを使う人も
トイレに行きたいと感じてからトイレスポットを探していたら間に合わないかも……と不安な人の中には、万が一に備えてオムツを使う人も。
ただし登山用のものではないため、ムレや衛生面には要注意。使う場合でも、あくまでもお守り代わりという位置付けで考えたほうがよいでしょう。
こまめに取り替えられる尿とりパッドを併用する、通気性のあるスポーツ用モデルを使うなど、少しでも快適に過ごせる工夫も必要です。
トイレの心配を減らすためにできる対策
トイレの心配をなくすには、なるべく尿意・便意をコントロールできるのがベスト。ここでは、トイレを気にせず山歩きを楽しむためのトイレ対策をご紹介します。
・利尿作用のあるコーヒーや緑茶を控える
・登山口や最寄りの駅などで必ずトイレに寄る
・水分は少量ずつこまめに摂る
・お腹をくだしやすい人は腹巻やカイロを活用する
利尿作用のあるコーヒーや緑茶は控える
少しでも尿意を抑えたい場合、登山中の水分補給や休憩時に、利尿作用のあるカフェイン入りのお茶(緑茶・紅茶など)やコーヒーは避けましょう。カフェインが抜けるまでは数時間かかると言われているため、できれば当日の朝から控えたほうが安心です。
とはいえ、行きの運転中にカフェインを摂りたい場合もあれば、山頂でのコーヒータイムだって山の楽しみのひとつ。身体の状態やその日のルートに合わせて、適量を判断することが大切です。
なお、水や麦茶であればカフェインは入っていません。
登山口や最寄りの駅などで必ずトイレに寄る
登山計画の段階で山中にトイレがあるとわかっている場合でも、登山開始前には必ず登山口のトイレに立ち寄りましょう。
山中のトイレは使用できないこともありますし、できるだけ登山中にトイレに行かなくても済むように心がけたいものです。
登山口にトイレがない場合は、最寄りの駅や公衆トイレ、コンビニなどで済ませておきます。
人気の山は最寄り駅や登山口の女性用トイレが行列になることもあるので、トイレに並ぶ可能性も考慮して一本前の電車に乗るなど、時間に余裕を持っておくと安心です。
水分は少量ずつこまめに摂る
トイレに行きたくならないようにと水分を摂らないのはNG。脱水症状や熱中症の原因にもなり危険です。必ず水分補給はしてください。
その場合、こまめに水分を補給した方が一度に大量に摂取するよりも体内に吸収され、結果的にトイレの回数を減らすことにつながります。
お腹をくだしやすい人は腹巻やカイロを活用する
お腹が冷えるとくだしやすくなるため、腹部を温めるのも有効です。スポーツ用の腹巻やカイロなどを活用しましょう。もともとお腹が弱い体質の方は、下痢止めもあるとより安心ですね。
女性登山者のお悩み。生理のときはどうする?
ここからは口に出しにくい、女性特有の悩みの種「生理」について。トイレが少ない山では、どうしたらよいのでしょうか。
生理中も登山は可能
女性であれば、「登山と生理が重なっちゃった……山に行ってもいいのかな?」と悩むことも。生理は病気ではないので登山は可能です。ただし、生理は人によって重さも症状も違うもの。工夫や対策も「コレをすれば完璧!」とは言い難く、自分の体調と相談することが基本です。
それに、生理中の女性にとってトイレの有無は死活問題。より入念に事前準備をして山へ出かけてくださいね。
「突然やってきた」でも困らないための持ち物と対処法
山に行ったら「予定日ではないのに生理がきた」なんてこともちらほら。そんな突然の事態に備え、生理用品は必ず持ち物に入れていきましょう。痛み止めやカイロなどもあるとより安心です。使用済みの生理用品は持ち帰る必要があるため、そのためのゴミ袋もお忘れなく。
登山では体を動かすため、漏れが不安な場合はタンポンや吸水ショーツを使用したり、黒系のパンツを着用したりするといいでしょう。
また、保温用の巻きスカートもおすすめです。冷え対策はもちろん、緊急時や着替えの際に目隠しとしても役立ちます。登山用の製品は携帯性にも優れているので、ザックにお守りとして入れておけば安心ですよ。
生理中は登山をお休みするという選択肢もアリ
日常であっても生理中はいつも通りに過ごせない、という方も多いのでは。そんなときに、よりハードな状況となる登山は楽しめないかもしれません。
ここは無理をせず「スケジュールを組みなおす」など、生理中は山には行かないという選択肢もアリですよ。自身の体を労ることも大切です。
トイレを心配せずに登山を楽しもう!
はじめは街中との違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、山のトイレ事情を正しく理解し、慣れてしまえばすぐに対処できるようになります。
登山計画の段階でルートを確認することは、トイレ問題の解決だけでなく安全登山にもつながるので、まずはそこから始めてみましょう。どこにトイレがあるのか把握しているだけでも、心に余裕が出てきます。
しっかり準備して登山を楽しみましょう!