ここだけ黒川あかねが演技モンスターだった世界(【推しの子】 二次)
- 2023/05/30
- 20:00
※黒川あかねの性格改変物。人によってはヘイトと感じるレベルかもしれないので閲覧注意。
照明が消された暗い部屋にスマホの画面だけが浮かび上がる。
疲労が色濃く残る顔つきの黒川あかねは弱々しい手つきでスマホを操作する。
SNSで「黒川あかね」と検索するとそこに並ぶのは罵詈雑言の数々。自身の名前でエゴサしたのだから自身の話題しか出ないのは当然だが、まるで世界中が敵になったような錯覚に陥る。
ネットの書き込みはニュアンスが伝わり辛いと言われるが前後の投稿を踏まえて類推すれば本気であかねの行動に義憤を感じている人間は少数だと分かる。
大多数は「黒川あかねは叩いてもいい」という世間の風潮に乗っかって優越感を満たしているだけだ。それでも暴言は人の心を壊す力を持つ。
画面の向こうに生身な人間がいるとは想像もせず、面白半分に放たれた言葉の刃は無防備なあかねを切り刻む。
「──っ」
たまらずスマホを投げ捨てて顔を覆うあかね。
様々な感情がとめどなく渦巻き心を掻き毟る。
娯楽として人の人生を消費しようとする世間への怒りや悲しみ。
口先だけで守ってくれないマネージャーへの怨み。
自分と違って上手く立ち回り人気を獲得する共演者への妬み。
家族を巻き込んでしまうかもしれない申し訳なさ。
合わないのが分かりきっているのにこの仕事を引き受けた自分への嫌悪。
自分の中にこんな激情が眠っていたのかとあかねはどこか冷静に分析し──口の端を吊り上げた。
「なるほど。ネットで炎上した女の子ってこんな気持ちなんだ」
数ヶ月前、あかねは旧知の劇作家から内々にオファーを受けていた。現在脚本を書いている舞台のヒロインに抜擢したいと。
演技が好きな彼女に断る理由はなかった。
読ませてもらったプロットによれば、内気なヒロインが空回りからネットで晒し上げられ憔悴した所を主人公に助けられるという物語。
劇作家から伝えられた性格や家族構成から逆算して半生をイメージ。それをトレースして役作りに勤しんできた。物語開始時点のヒロインについては完璧に演じられる自負がある。
だが物語の転換点と言える場面は精度が甘いと感じた。
概ね品行方正に生きてきたあかねは大勢からの悪意に晒された経験はない。
無論、役者として「経験していない事は演じられない」などと恥知らずな事を言うつもりはない。体験談を読んだり想像を膨らませて「それらしい」演技は出来る。
視聴者の中にヒロインのような経験をした人は少ないだろうし、ありきたりな「本当」より劇的な「嘘」の方が感情を揺さぶる事は多々ある。故に現状でも十分と言えるが、それでもあかねは実際に体験する事を望んだ。
その時に抱く感情が自分の想像と違っていれば糧になるし、想像通りなら自信に繋がる。やってみて損はないと思った。
そんな矢先に事務所から恋愛リアリティーショーの仕事が来たのはまさに天命だと感じた。
消火に失敗すれば役者生命を失うだろうがその時はその時。
自身の演技に疑問を抱きながら舞台に立つよりは遥かにマシだ。
そしてあかねは恋愛リアリティーショー「今ガチ」に出演した。
どんな形で炎上するかは決めていなかったが、試運転として内気で要領が悪い女を演じていたあかねは目立てない焦燥から話題の中心にいる鷲見ゆきの顔に爪を突き立ててしまう。
放送時にカットされる可能性もあったがスタッフが話題性を優先させてくれて助かった。更に番組公式や事務所に先んじて謝罪を行えば矛先が向くと考えたらこれも的中。黒川あかねは見事火ダルマとなった。
ゆきに怪我をさせてしまった引け目があるが、この罪悪感もまた血肉となって演技に深みを与えてくれる。
スマホを拾い上げると再びネットの反応を確認。
羅列される容赦のない批判に今までの努力も人格も全てが否定され心がズタズタに引き裂かれる。
世界は暗闇で、誰も助けてくれない絶望が全身を支配していく。
──考えるの疲れた。もう何も考えたくない。
台風の中、ふらふらとした足取りで家を出てコンビニで買い物。その帰り道、眼下に流れる車のヘッドライトの光に引き寄せられるように歩道橋の欄干の上に立つ。
──そろそろスイッチを切らないと。
流石に本当に自殺するほど飲まれてはいないが、このまま死んで楽になりたい気持ちも確かにある。
これで救世主が颯爽と助けに来てくれたなら最高だ。グループチャットで不穏な雰囲気を匂わせたとはいえ、そんな都合良くいく筈がない。だが、もし叶ったなら役者として更にワンランク上に行ける確信がある。だから──
「俺は敵じゃない。頼むから落ち着いてくれ」
君は本当に素敵だよ、アクア君。
漫画なら最後のシーンは目に星が宿ってそう。
このあかねちゃんはアクアに惚れないけど「根が善良な復讐者」の在り方を喰らう為に協力してくれるよ。やったねっ!
(黒川あかねは使える)
(星野アクアは使える)
発端は
>芸能界を舞台にした作品で天才役者が恋愛リアリティーショーに参戦!
>これだけだと役作りの一環に見えてくる。
>熊と戦ったり川に飛び込んだ明神阿良也(アクタージュ)とか想像妊娠したり母親に弟が死んだ時の気持ちを聞きにいった三ツ谷御幸(マチネとソワレ)みたいな感じで。
なんだけど、プロファイリングでアイをコピー出来た原作のあかねちゃんより弱体化してる気がしないでもない。
そして書いてる途中で解釈違いを起こしてしまい「これはやって良い事じゃない」となった。
レアティーズを演じてる途中で壊れかけた誠の気持ちがちょっと分かった。
閑話休題。
原作読み返したんだけど
今から
ガチ恋♥️
始めます
のシーン、ケンゴの右隣、ゆきの上にいる7人目の女の子は誰? 誰なの 怖いよおッ!!
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