調査と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 03:06 UTC 版)
「土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故」の記事における「調査と対策」の解説
運転士は前日まで6日間インフルエンザのため欠勤していたが、当日の点呼では異常が見られなかったとしている。事故調査報告書では平田駅出発後に運転を正常に行えなくなる何らかの異常事態が運転士に発生したものと推測し、眠気を催しやすい食事後の乗務であったことなどが指摘されているが、その異常事態が何であったかを特定するには至っていない。 駅手前にある安全装置(保安装置)である自動列車停止装置のATS-SSは、停止信号警報であるロング地上子も、過走防止速照である時素速照地上子も正常に動作して非常制動を掛けた。しかし、その設置位置がロング地上子は最高速度対応ではなく、運転士による減速で約51km/h以下に減速される前提の位置に設置されており、また2対の過速度防止速照地上子対は全く根拠のない位置に設置されており、地上子配置及び配置規則が適正なものでなかったため(当初、宿毛線の最高速度は70km/hで計画されていたが、建設中に120km/hに引き上げられた)、最高速で進入してきた列車を停止させることができなかった点が指摘され、最高速度100km/h以上の全事業者に対し、行き止まり駅に限ってそれぞれ是正通達(平成17年3月29日国鉄技第195号)が出された。なお、行き止まり駅以外は最高速度に対応しない設定が、国交省通達上はそのまま残されている。 事故車両は前側2両(2008・2218)が原形をとどめないほど大破したため、2006年3月31日付で罹災廃車となり解体処分された(高松側の先頭車1両(2116)は損傷が少なかったためJR四国多度津工場で修繕後、運用に復帰)。 この事故を契機に、土佐くろしお鉄道では宿毛駅に過走防止装置としてATS-SS時素式速度照査地上子3対を新設、2対を有効な位置に移設して運行を再開した。JR四国では、行き止まり式の配線を持つ駅(香川県内では高松駅、琴平駅、愛媛県内では宇和島駅、高知県内では新改駅、徳島県内では徳島駅、鳴門駅、坪尻駅)計7か所を対象に、宿毛駅と同様の過走防止用ATS地上子を増設(駅から離れた場所)することを決めた。また、高松琴平電気鉄道でもこの事故を受けて、ATS装置を時素式速度照査機能付に更新するとともに、行き止まりの配線を持つ駅(高松築港駅、瓦町駅、一宮駅、琴電琴平駅、長尾駅、琴電志度駅)6か所を対象に、過走防止用地上時素式速度照査地上子(駅構内に照査速度20km/h、15km/h、10km/h、5km/hの4段階で設置)を増設することを決めた。
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