祝還暦! 「シトロエン2CV」の特別展が本国で開催中
2008.05.01 自動車ニュース祝還暦! 「シトロエン2CV」の特別展が本国で開催中
クラシックカーの祭典「レトロモビル」でもスポットライトを浴びた「シトロエン2CV」は、今年でデビュー60周年。その集大成といえる特別展「2CV EXPO SHOW」が、パリ北東部の「LA CITE DES SCIENCES ET DE L'INDUSTRIE(科学・産業シティ博物館)」で2008年4月15日にスタートした。
■これぞ元祖「2CV」
開幕日にはシトロエンの貴重な歴代モデルを保管、管理する「パトリモワンヌ」の責任者ドゥニ・ユイル氏自らプレス向けの案内役を務めてくれるという、おもてなしがあった。
まず案内されたのは、完璧にレストアされた1939年製の「2CV A」のところ。左側にヘッドランプが1つ、フロントウィンドウには中心から伸びるワイパーが1本、フロント中央にはエンジンを始動させるためのレバーが下がっている。広く認知されている「2CV」とは似て非なる試作品、いわゆる“プロトタイプ”と呼ばれているものだ。
が、ユイル氏は「このモデル、実際にはプロトではなく“量産車”だったんです!」と強調した。もちろん、そう聞いて目を丸くしたのは私一人ではなかった。
■戦争の悲劇
2CVの誕生は、1930年代半ばまでさかのぼる。シトロエンのピエール・ブーランジェは、当時最も安価な大衆車を作ろうとプロジェクトをスタート。4人乗り、時速50km、低燃費……といった条件のみならず、「カゴいっぱいに卵をのせて、1つとして割ることなく荒れ地を走破できるように」、乗り心地のよさも重要視した。
試行錯誤を繰り返し、ようやくできあがったのが「2CV A」で、1939年8月23日、正式に量産車としてホモロゲーションを取得した。台数はぴったり100台だったという。
ところがその数日後、9月3日には第二次世界大戦が勃発。このプロジェクトは急遽、封印されることになってしまった。ドイツ軍に技術情報が漏れないよう、車両はもちろん関連資料も破壊、隠蔽された。
そして、大戦が終結してから、1948年のパリサロンで2CVは遂に正式デビューしたのである。
39年製の「2CV A」が量産車だったと判明したのは1968年のこと。パリの西130kmのフェルテ・ヴィダムにある同社のテストセンターを工事中に、それを裏付ける証拠が発見されたという。クルマと共にホモロゲーションに関する書類やナンバープレートなどが出てきたのだ。
100台あったうち、現存するのは4台のみ。この特別展には、シトロエンが保有する、レストアを済ませたクルマが運び込まれた。
……ということは? 2CVが世間的に正式デビューした1948年から数えると、今年で確かに“還暦”だが、その9年前には既に量産車として存在していたのだから、来年は“古希”を祝ってあげることもできそうだ。
■まさに“2CVづくし”
特別展では、この希少モデルの他に、1948年のパリサロンでお披露目されたのと同じ“正規の初代モデル”(1950年)や、「Ami6」からインスピレーションを受けたデラックス版「2CV AZEM」(1966年)を展示。さらに、ラリーに参戦した4WDの「サハラ」(1961年)や、「クロス」(1976年)などのスポーツモデル、黒と赤のカラーリングが斬新な「チャールストン」(1988年)や「ドーリー」(1988年)といった、選りすぐりの限定車や特別仕様車などが、17台集められた。
その他、古い映像や写真、パーツ、ミニカーなども展示。革新的なサスペンションの構造をモニターや実車でも解説してくれるなど、コンパクトなスペースながら、見て、聞いて、触って、驚くこともできる空間が広がっている。
2CVが凝縮された、今回の特別展。パリ旅行をする予定のある人は、幻の初代モデルなどを見に、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
「2CV EXPO SHOW」
場所:LA CITE DES SCIENCES ET DE L'INDUSTRIE(科学・産業シティ博物館) 30 avenue Corentin Cariou 75019 Paris
開催:2008年4月15日〜11月30日 (月曜日休館)
会館時間:10時〜18時 (日曜日のみ19時まで)
入館料:8ユーロ
関連ウェブサイト
(文と写真=野口友莉/YUYU)