野村一夫『子犬に語る社会学』(洋泉社、2005年)詳細目次


刊行当時の「ソキウス」からの抜粋。
2005年1月7日に洋泉社から発売された『子犬に語る社会学』の原稿全文です。これは2003年10月に刊行されたムック『子犬に語る社会学・入門』の前半80ページまでを占めていた私の担当部分を単行本化したものです。
本書では「人間のためのあとがき」以外では、読者に語りかけておりません。「子犬に語る」というのは私の発案なんですが、我が家ではふだんから犬たちに向かって日本語でしゃべっていますので、とりたてて奇異なことではありません。犬たちはそれなりに通じたふりをしています。 そんな孤独な社会学者のひとり語りを脇でこっそり聴いていただくような感じで気楽に読んでいただければ幸いです。
内容的には、あくまで私がそう思う社会学像について語っています。難しい問題もさらっとすませるようにしています。専門家には不満が多い本だと思いますし、私としても語り足りないところが多々あるのですが、全体像をなるべくコンパクトに説明するのが今回の目標でしたので、その点はまずまずだと思っています。新書本の三分の二ぐらいの字数ですから、まあ、一気読みしていただける分量でしょう。入門書は、なによりコンパクトでなければなりません。
社会学入門ではありますが、いわゆる学生向けの教科書ではないつもりです。そういうものはこれまでさんざん書いてきたので、私としてはもういいのです。それよりも、一般の方が社会学という学問に興味を持ったときに軽い気持ちで手に取っていただけるような本にしたいと思って企画したものです。中学生から中高年まで、幅広い層に読んでいただけることを願っています。

以下は単行本化するさいの原稿です。ながらく紛失していると思っていましたが、この夏にクラッシュした先代のiMacから救出されたデータの中にありました。一気書きしたものですので、ざっくり一気読みしていただけると幸いです。



子犬に語る社会学
野村一夫(国学院大学教授・社会学者)
目次
第1章 社会学の遠心力と求心力

第2章 窮屈だけれど自由な近代

第3章 システムからはみ出す

第4章 「自分」という物語

第5章 なぜ人はささいなことで傷つくのか

第6章 想像された境界をまたぐ

第7章 メディア空間を生きる

第8章 ことばが現実をつくる

第9章 命の限界に向かって
人間のためのあとがき


細目次(草稿ヴァージョン)
1 人間は特別か
ためしに子犬に語ってみる
人生という概念
反省する動物
生物世界の社会
環境問題と人間特例主義
自然科学に気をつけろ
家族としてのペット
2 近代という鉄の檻
犬のお仕事
監獄に似ている社会
近代という大きな物語
近代的身体
音楽の近代
荒ぶるシステム
3 システムの周縁
癒しを求めて
親密な世界
縮図としての家族
残余概念の逆襲
4 自分という社会現象
私という現象
鏡の中の自己
役割のマトリックス
ジェンダーのはざまに
ぶれる分割線
アイデンティティの闘争
5 生活世界のレトリック
ささいなことで傷つくのはなぜか
閉鎖的集団の内部世界
生活世界の合理性
日常生活の微細な意味的世界
6 祈りの文化、暴力の文化
宗教と国家と地球社会
理解するという戦略
カリスマの誕生
ダブル・スタンダード
国民国家と暴力
トランスナショナルなアクター
7 交錯するメディア空間
何もかもメディア仕掛け
メディア仕掛けの音楽
メディア・情報・コミュニケーション
カルチュラル・スタディーズ
メディア・リテラシー
ネットという新しい社会空間
8 ことばがつくる現実
予言の自己成就
レッテルを貼られること
言説と権力作用
社会問題の構築
言説としての社会学
9 命の限界に向かって
社会的身体であること
健康と病の社会学
グリーフワークとしての社会学

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