首都圏近郊に暮らしていると、この時期のアウトドアはほぼ海に限られてくる。(狩猟免許のある人は別ね)
山菜やキノコも0になるわけではないが、選択肢が非常に少なくなり、労力・お金をかけて行く気になれない。
特にキノコの場合、この時期はもうエノキタケとヒラタケくらいしかない。
彼らは街路樹や公園などで簡単に見つかるので、散歩がてら探してみる、といった軽いノリが相応しい。
海の生き物たちも寒いときは活動が鈍るものが多いが、陸上ほど寒暖の差が激しくないので元気な奴らは遊んでくれる。
加えて、敢えて冬に釣りをしたくなる理由はいっぱいあるのだ。
1.人が少ない
狙っていたポイントに先客がいることほど腹立たしいことはない。
この時期はそれが少ない。
2.魚が美味い
冬に脂がのる魚は多い。また鮮度保持が楽で味が落ちにくい。
3.夜釣りが楽しい
冬は夜の間に潮が大きく動くので、夜釣りで好釣果を得られることが多い。
冬の夜釣りというと苦行に思えるが、最近の防寒具の性能はなかなかのモノで、氷点下にならない限りはそれなりに耐えられる。
ただ当然ながら、冬も遊んでくれる魚を探す必要がある。
一般の釣り人にとってはフカセ釣りのメジナがそれにあたるのだろうが、ふつうに格好良くてふつうに美味しいタイみたいな体型の魚はこのブログ的にちっとも盛り上がらないので、自分は基本的に
昼:穴釣りで五目(ウツボ・ギンポ・ドンコ・ベラ・アナハゼetc.)
↓
夕方:サビキで五目(メバル・シコイワシ・ネンブツダイ・ベラ・スズメダイetc.)
↓
夜:ブッコミで五目(ゴンズイ・ベラ・ウツボ・ドンコ・クロアナゴetc.)
というラインナップで隙なく変な魚を狙っている。
穴釣りのお友達ダイナンギンポ
さて、そんな冬の釣り物のなかで最も手軽なのがダイナンギンポ。
魚としてはかなりマイナーな存在だと思うのだが、近年注目度合いが高まっている。
それはきっと様々なサイトでギンポ釣りが紹介されたからだろう。
潮が引いたゴロタ浜で、棒に針とエサを付けたものを指し込んでおくと釣れる、というゆるーい釣り方に人気が出たようだ。
自分はコンパクトロッドでアタリを取ってかけるのが好きなのでやらなくなったのだが、春先の磯遊びの時には適当な棒を携えていくことがある。
このダイナンギンポ、不思議なのは、いわゆるギンポとは科が違っており全く別の魚と言えるのだが、見た目・味ともに非常に似ているのだ。
ダイナンギンポは体表に輪切りにされたような模様が入っているのでギンポでないことはすぐわかるのだが、かといって特に区別の必要性を感じないのでギンポ釣りと簡単にまとめられてしまっている。
江戸前の一流天ぷらたね「銀宝」として知られるギンポは、どうも僕の行く範囲の転石下にはあまり生息していないようで、姿を見たことが無い。
「ギンポ釣り」を紹介しているサイトでもほとんどがダイナンギンポをギンポとして掲載している。
無知の上で間違うのは恥ずかしいが、知ったうえで区別を放棄するのはまぁ、アリかな…というとても図鑑編集者とは思えない失言。
ダイナンギンポの刺身って美味しいの?
さて、先日いつものゴンズイフィールドに行き穴釣り⇒ブッコミ釣りの勝利の方程式を展開したところ、素晴らしい釣果に恵まれた。
穴釣りで釣れたダイナンギンポはどちらも24~5cmほどの良型で、穴からぶっこ抜く瞬間は脳汁がドバドバでた。
夕方からのブッコミ釣りでは、自己記録の27㎝を頭に5匹の良型ゴンズイが釣れ、さらに合間のブラクリ釣りで10~23cmのカサゴを5匹釣ることができた。
繁殖期のためリリースを優先したが、活性が高くブラクリを呑み込んでしまうほどで、鰓を傷つけてしまったもののみ持ち帰ってきた。
堤防にはフカセ釣りの先客の方がいたが、こちらがすぐ横でブッコミ釣りを始めても嫌な顔ひとつせず、非常にフレンドリーに話しかけて下さってとても楽しかった。
その方は別の釣り物に振られて「ゴンズイでも釣ろうか…」と思ってここに来たというのだが、メバルやカサゴ、メジナを連発させていた。
やはりゴンズイを信じる者は救われるのである。
閑話休題。
ダイナンギンポについて、これまで天ぷら以外の料理を試したことが無かった。
天ぷらがあまりにおいしかったからというのがその理由だが、向上心を持たないと真の美味・奇食には出会えない。
ここはひとつ、刺身で試してみよう。良型が釣れたし。
ということで捌いてみる。
通常ヌメリの多い魚は塩をまぶして体表のヌメリを取ることが多いが、片栗粉でも同様の効果を見ることができる。
何にしてもまずはしっかりとぬめりを取り去ろう。
さて、ギンポは一見寸詰まりのアナゴのようにも見えるが、大きく違うところが1点ある。
それはかなり側偏しているということだ。
ウナギ目の魚たちは体の断面が円に近く、丁寧に捌くと意外に身がたっぷりとれる。
しかしギンポ・ダイナンギンポはどちらもスズキ目の魚、要は普通の体型の魚が前後にびよんと伸びて長くなったと考えたほうがいい。
従ってかなり丁寧に捌かないと、ただでさえ薄い身がよりぺらっぺらになってしまうのだ。
そのため捌くときは、片面は目打ちをしてウナギを捌くときのように開けばいいが、
もう片面はウナギのように中骨をすくい上げるのではなく、中骨が下になるように置き直して目打ちを打ち直し、3枚おろしをするように捌いた方が中骨に無駄な身が残らない。
中骨と鰭は魚体のサイズの割に固く、「中骨の身は骨せんべいにしよう」なんてウナギ的発想でいると泣きを見る。
尻尾の部分をやや失敗したが、無事に開きが完成、
半身ずつに切り分け、固い背鰭を落とす。
1匹はそのまま皮を引いて、刺身に。
もう1匹は皮目を活かしてみようと思い、焼き霜に。
皮目をフライパンで焼いてみると、
見る見るうちに3分の2程度に縮んで、白ミル貝の水管のようになってしまった。
こちらも半分に切って
…(・~・)
…
…(無言)
歯応えは、ある。特に皮付きは十分すぎるほどだ。
身の味も、わずかだが感じられる。
ただ甘さはアナゴなどと比べると非常に薄い。
そして、後味にエグ味のようなアクのような、舌の上に引っかかる味が残る。
これがどうもいただけない。
ヌメリが身に移ってしまったか?
味:★★☆☆☆
価格:★☆☆☆☆
…いやー、やっぱりダイナンギンポは天ぷら魚だな。
ひょっとするとギンポは刺身で美味しかったりするのか?
いや、それでも絶対天ぷらの方がもっとおいしいはず。
目打ちをして捌く手間を考えるなら、やっぱりポテンシャルを最大限に生かしてあげる方がいいもんね。
分類学って味の上でも重要かも
いわゆる長物で、刺身にして美味しくないなーと思ったのはこのダイナンギンポが初めてだ。
確かに皮は強靭でゼラチン質が多く、ウナギやアナゴのそれと似ているように思えるが、細かい鱗が存在して舌触りはよろしくない。(アイゴの皮に似てるかも)
また身も、アナゴのようなとろけるもちふわではなく、よく締まったハタのそれに似ている(甘み旨味は比べるべくもないが)
この差はやはり目の差によるものなのだろう。
外見上の形質は、分類上遠い存在でも収斂進化によって似てくることが多々あるだろうが、味の面においてまで似る必要はないのだから(結果的に似ることはあろうけど)
そういう意味でもやっぱり、いろいろ食べてみることは大事だと思うよ。
DNA鑑定とか顕微鏡鑑定ばかりに頼っていないでさ。。
コメント
銀宝は実家の倉敷ではアナゴ同様にかば焼きにしていましたよ。
アナゴも銀宝も蒸さずに焼きながらタレをつけていました。
ぎゅっとしまった身が美味かったです!
後は煮付けですね~。身がしまっているので、煮崩れないのが良かったですね。
佐渡では「がつなぎ」と言っていましたが、食べる話は聞かなかったです。
晩秋からこいつが夜の堤防や磯の周りを泳ぐ「がつなぎ」パターンでスズキが良く釣れました。もれなく胃袋にこいつが入っていましたよ。