持続可能な開発目標(SDGs)が国連で2015年9月に採択されてから、30年の目標達成に向けた社会的関心が高まっています。日本経済新聞社は19年12月、国連が世界の主要な報道機関などに参画を呼びかけている「SDGメディア・コンパクト」に署名しました。報道はもちろん、イベントなども通じて企業や個人が求める解決策を積極的に提案します。また、社内での対応も進め、社会的責任を果たしていきます。
SDGs関連の報道を充実させ、その目標や目標達成に向けた行動を促進するため、世界の報道機関とエンターテインメント企業が参画しています。国連によると参加企業数は世界で100社以上に達し、160カ国、20億人以上にSDGsにかかわるコンテンツを届けています。
人権は「自由」なくして成立しません。一人ひとりが自由に物事を考え、自分の生き方を決められない社会では、幸福な生活を送ることはできないからです。人権の確立をめぐる歴史は、自由の獲得をめぐる歴史でもありました。日経は人権尊重を自らの行動基準の真ん中に位置付けることはもちろん、国内外で人権を脅かす行為を見つければ、厳しく追及し警鐘を鳴らします。
このような考えのもと、日経グループの事業活動から影響を受けるすべての人々の人権を尊重することをより明確にするため、私たちは「日経グループ人権方針」をここに定めます。本方針にのっとり、私たちのパーパス(存在意義)である「考え、伝える。より自由で豊かな世界のために。」を実行に移すことを通して、真に人権尊重が根差した社会の発展に貢献していきます。
日本経済新聞社は、障がい者の活躍推進に取り組む国際組織「Valuable 500」の趣旨に賛同し、加盟しました。「Valuable 500」は2019年の世界経済フォーラム年次総会で発足し、障がい者がビジネスの分野で潜在的な価値を発揮できる社会を目指し、ビジネスリーダーが改革を起こすことを目的とした取り組みです。
日本経済新聞社は「考え、伝える。より自由で豊かな世界のために。」をグループのパーパス(存在意義)としています。「より自由で豊かな世界」の実現には、一人ひとりが自分の個性を大切にすることはもちろん、それぞれの個性をお互いに認め合う寛容さも欠かせません。障がいの有無も含めた個々人の違いが例外なく尊重され、多様性から豊かさが引き出される社会の実現をめざします。
日経は行動規範に則り、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを進めています。
日経の新卒採用に占める女性の割合は2023年に5割を超えています。
日経グループは2013年に女性活躍を支援して経済活性化につなげる「日経ウーマノミクス・プロジェクト」を立ち上げ、20年にはジェンダー平等・多様性を経営視点で考え、各企業や組織、日本経済の発展につなげるための「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」を創設しました。年間を通じて大型イベントやコンソーシアムを企画し、情報を発信しています。
日経グループは2018年7月に「日経SDGsフォーラム」を発足させました。日本経済新聞や日経グループの各種メディアとともに、パートナー企業・政府・地方公共団体・教育研究機関・民間団体とのネットワークづくりを促進し、日本のSDGsの推進エンジンとしての役割を果たします。日本経済新聞社が日経BP、英フィナンシャル・タイムズと連携して開催する日本最大級のSDGsイベント「日経SDGsフェス」を年4回開催。日経SDGsフォーラムシンポジウムはそのメインイベントとなっています。
(注)日経グループは日経と連結対象会社で、スコープ1・2は自社の燃料燃焼やエネルギー消費などに伴う排出分
日経グループは企業の社会的責任としてすべての事業活動で環境負荷の低減をはかっています。温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」の目標を2022年12月に設定し、グループをあげて取り組みをさらに推進しています。2030年までにスコープ1・2(19年は約4.5万トン)の実質ゼロを実現し、さらに50年までにはバリューチェーンの排出(スコープ3)を含めた実質ゼロをめざします。
目標を着実に達成するために、2025年にスコープ1・2をグループで2万トン、日経本社単体で1,200トンとする中間目標も2023年7月に設定しました。グループのスコープ1・2排出量は2023年に2万トンとなり中間目標を前倒しで達成したため、24年7月に25年中間目標を1.5万トンと新たに設定しました。今後も、排出量の算定を精緻化していくとともに、引き続き報道機関として社会全体の脱炭素化を推進する責務を果たしていきます。
<GHG排出削減のイメージ>
※GHGプロトコルや環境省のガイドラインにのっとって算定した。CO2以外は5%未満のため省略。
▼電源構成や人口の変化
国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや政府による見通しに基づく電源構成や、日本の将来推計人口。
▼各業界による削減目標の達成
製紙業界が2050年までに生産活動で排出するCO2を実質ゼロとする長期ビジョン。航空業界による50年のカーボンニュートラル(CN)
▼トラック・バイクの販売規制
40年までに新車は電気自動車(EV)か燃料電池自動車(FCV)にしなければならないトラック販売規制や、35年までにバイクのガソリン車の新車販売をゼロにする東京都の規制
▼自社グループの再生エネ由来の電力への転換
22年に19年の電力使用量の4割を再生エネ由来に切り替え
▼再生エネで稼動するデータセンターなどの利用
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|
80.6万トン | 72.7万トン | 60.4万トン | 55.8万トン | 54.1万トン |
※2021年は算定をより精緻にしたことによる減少も含みます。 2024年7月には、新聞用紙購入に伴う排出量(スコープ3に該当)について
「購入金額」ベースから「購入物量」ベースに、過去の排出量を含めて算定し直しました。
気候変動が企業の事業環境や経営に与える影響は大きくなるばかりです。日本経済新聞社は企業に対して影響の分析と開示を求めるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同することを表明しました。
TCFDは主要国の金融当局などで構成する金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した組織です。17年に公表した提言は、気候変動で企業が財務諸表に現れないリスクを抱え、金融システムの安定を損なう要因になりかねないという危機感がきっかけでした。
提言は開示を推奨する4項目を示しています。気候変動に対応する社内体制を明らかにする「ガバナンス」、財務への影響のシナリオ分析などを示す「戦略」、リスクの識別・評価方法がわかる「リスク管理」、そしてリスクの管理・評価に用いる「指標と目標」です。提言に沿った情報開示に取り組んでいきます。
2021年4月に「NIKKEI脱炭素(カーボンZERO)プロジェクト」を立ち上げました。2050年までのカーボンゼロ社会の実現に向けて行動する企業・団体のトップと有識者でNIKKEI脱炭素委員会(委員長・高村ゆかり東京大学未来ビジョン研究センター教授)を定期的に開催。国内外のモデルケースの共有と課題の整理、脱炭素を目指す企業のイメージ調査や、積極的に取り組む企業、団体、個人への表彰事業を行っていきます。
日本経済新聞社は環境問題に対する取り組みを深めるため、2007年11月に「環境基本理念」及び温室効果ガス削減の数値目標を盛り込んだ「環境基本指針」を定め、環境配慮への先進企業となると宣言しました。2017年9月には「環境基本指針」を改定し、継続的に取り組んでいます。
◇環境宣言の基本理念と基本指針
〔基本理念〕
地球環境の保全は人類社会の持続的発展に欠かすことのできない最重要課題です。日本経済新聞社は企業の社会的責任として、事業活動のすべてにわたり環境負荷の低減をはかります。またメディアの特長を活かした環境情報の提供に努め、経済発展と地球環境の調和がとれる世界の実現に、全社をあげて行動します。
〔基本指針〕
(1)事業活動が環境に及ぼす影響をできるだけ軽減するため、適切な保全策の実施と効果の評価を定期的に行い、環境マネージメントシステムの継続的な改善を実行します。
(2)省資源、省エネルギー、リサイクルや廃棄物の削減など環境問題への持続的な取り組みを通して、循環型社会の実現に努力します。
(3)事業活動に関わる環境関連法令及び当社が同意するその他の要求事項を順守します。
(4)紙面やネット、各種イベントを通して、環境保全の重要性を世界に向けて発信します。
(5)社員一人ひとりが環境問題に対する自覚を深め、意欲と責任を持って行動できる環境型人材の育成をはかります。
(6)温室効果ガスの排出源となるエネルギー消費を年平均1%削減することを目指します。また、パリ協定などの国際的な枠組みを尊重し、長期目標として取り組みます。