ジゴワットレポート

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感想『仮面ライダージオウ』第48話「2068: オーマ・タイム」ZI-O signal EP48

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『仮面ライダージオウ』第48話は、柴崎監督&下山脚本による、最終章中編。『ジオウ』の物語も、遂に残り2ページ。佳境も佳境です。しかしまあ、毎週言っている気もしますが、一年って早いですね。こうやって、歳を取るごとに体感が加速して、死に近付いていくんだよなあ・・・ などと、この時期は毎年少しセンチな気分になります。

 

『ジオウ』は来週が最終回。そして、新番組『ゼロワン』が幕を開けます。毎年恒例のVシネ展開ですが、今年も最終回当日に発表されるのかな。先週までは「無難に『ゲイツvsウォズ』あたりかなあ」などと思っていたのですが、ここにきて『ツクヨミ』の名を冠する単独作の可能性が出てきた・・・。あるいは、ISSA主演で歴史の管理者の背景を描くスピンオフとかも観てみたいですが、どうなるかな。

 

東映公式サイトには白倉プロデューサーの「直近の47話や48話で振った謎すら、軽く3つくらい回収されずに終わるでしょう」との文言が踊っていますが、この、「ちゃんと着地できるのか!?」とヒヤヒヤする感じ、懐かしいなあ。

 

というのも、近年の作品はシリーズ初期の頃に比べていくらかロードマップが敷かれている印象が強いんですよ。最終回前に大方の謎は明かされていたり、「こいつを倒して終わりだな」という何となくの着地点が見えていることが多かった。しかし、例えば『龍騎』や『ファイズ』の頃なんか、最終回が始まってもギリギリまで着地点が見えなかったものです・・・。『ファイズ』の最終回なんか、もう尺が残り少ないというのに、コスプレしての病院への潜入作戦が始まりますからね。

 

ということで、もう残り2回となった『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。

 

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世界の崩壊、士の作戦

 

「平成ライダーそれぞれの世界が存在する」「ソウゴがウォッチを集めてきたこれまでの戦いは、スウォルツを手伝っていたようなもの」「引き合い融合した世界が崩壊しようとしている」・・・といった、今回士から語られた設定面については、概ね前回の理解で良さそう。

 

www.jigowatt121.com

 

その上での、士が提唱する作戦。それは、ツクヨミを仮面ライダーにする、というもの。

 

まず、どこかの世界が破壊を引き受けなければならない現状において、その貧乏くじは、諸悪の原因になってしまった「ジオウの世界」に振り分ける。「ジオウの世界」がこのまま壊れれば、吸引力がなくなり、「クウガの世界」〜「ビルドの世界」は別個で生存。ここまでで、ディケイドの本来の目的は達成されることになる。

 

そもそも、この世界構造自体が「仮面ライダーが司る世界」という恰好なので、「スウォルツとツクヨミの世界」にも概念としての仮面ライダー(仮面ライダーツクヨミ)を新たに立たせる、というのは妙な説得力がありますよね。現状、その世界に立っている仮面ライダーはアナザーディケイドなので、そりゃあ、アナザーより正真正銘のライダーの方が存在権の効力が強いのでしょう。

 

しかし、「ジオウの世界」がそのまま崩壊するとそこに住んでいる人々も死んでしまうことになる。なので、何らかの方法で、人々を「スウォルツとツクヨミの世界」に移す。ソウゴが死を覚悟した作戦の一部がここに活きてくるのか、あるいは、仮面ライダーツクヨミの力でそれを行うのか。ともかく、「ツクヨミを仮面ライダーにして、その後、ジオウの世界の人々を逃した後にその世界を見捨てる」というのが、作戦の大筋な訳です。

 

このため、過去のツクヨミにブランクウォッチを渡す必要があった。ツクヨミにとっての過去は、ソウゴにとっての未来。2068年にて、ツクヨミの服にブランクウォッチを仕込み、オーマジオウの猛攻を食い止めている最中に2018年に向かわせる。これにより、「2019年のツクヨミ」の手元にはウォッチがすでにある、という状態が完成する。「君はもう『持って』いるッ!」的な台詞、なんともジョジョみがある・・・。

 

オーマジオウを食い止めるための最善の策は、トリニティ。以前、ディケイドアーマーでは負けてしまったし、グランドジオウはウォッチが壊れた影響で使用することができない。現状、ソウゴが持っている最高戦力はトリニティということになる。

 

仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 3

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トリニティに変身して、2019年のウォズとゲイツが2068年に飛ばされるシーン、さらっとやってますが、結構な出来事ですよね。タイムマジーンも無しに時を越えている。これは、演出というか仕込みが非常に巧いと思っていて、この前段としてエターナル戦での「トリニティの強制変身は時空の壁を越えて発動できる」が描かれているんですよ。これが先にあったからこそ、今回の(ゲイツとウォズの)強制タイムトラベルに説得力がある。

 

加えて、トリニティは「オーマの日」の正史を覆した存在なので、その姿でオーマジオウと戦うこと自体が、文脈的に熱い。オーマジオウを前に闘志を燃やすゲイツも頼もしいですが、反対に、成り行きとはいえ主(あるじ)に楯突いてしまっているウォズの、どこか苦い表情もすごく良い。オーマジオウもソウゴも、どちらにも忠誠を誓っているけども、感情のベクトルがソウゴに傾いているウォズ。絶妙な表情の演技。

 

また、ここでラスボス格のオーマジオウを倒しても問題は解決しない、という前提を改めて両者が承知しているのが良かったですね。これが『ジオウ』のポイントなんですよ。ラスボスを倒してはい終わり、という話ではない。オーマジオウを倒すことは、それ即ち自分殺し。スウォルツを倒したとしても、おそらく世界の破壊は止まらない。「ソウゴが魔王になってしまう」という決められた運命と、それに対する反抗こそが、最後まで引っ張ってきた『ジオウ』の本筋なんですよね。

 

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未来が過去に。『ジオウ』が描いてきたもの

 

仮面ライダーツクヨミという最大のサプライズは、それ自体が『ジオウ』という作品の本懐に繋がっているのが熱い。

 

『ジオウ』がずっと描いてきたのは、シンプルに形容すれば、「未来は変えられる」の一点に尽きる。「未来への可能性」と、それを成し遂げるための「今」。このメッセージを、『ジオウ』はずっと訴えてきた。主人公・ソウゴは、最低最悪の運命を何とか最高最善に変えようともがく。過去を絶対視していたゲイツは、やがて、ソウゴという「過去」を新しい「未来」に導こうと決心する。ウォズは、決められた道筋だけが正解ではないのだと、己の行動を見つめ直すに至る(『Over Quartzer』)。

 

過ぎ去ったはずの平成ライダーの「過去」にも、次々と「未来」が描かれてしまう。終わったはずの物語でも、その世界ではずっと進行していくのだ。バトルファイトが集結し、弟子は師匠がいない所で成長を遂げ、他の者が戦士としてカブトに変身する。「未来」は、いかようにも変化していく。視聴者の「終わった物語をそっとしておいて欲しい」という願いを傲慢だとあざ笑うかのように、『ジオウ』は、「過去」に「未来」を付与してきた。

 

トリニティ登場回では、ゲイツとウォズの確執がクローズアップされた。仲間を裏切ったウォズの行動と、それを許せないゲイツ。しかしソウゴは、彼らの「過去」は同時に「未来」でもあると語る。反転し、巡回する時間。だからこそ、「その時その時の今を懸命に生きる」ことこそが、「過去」すらも肯定しながら新しい「未来」を創る。愚直なまでに未来への可能性を信じ、そこに向かっていくことが大事なのだと。

 

仮面ライダージオウ 変身ベルト DXジクウドライバー

仮面ライダージオウ 変身ベルト DXジクウドライバー

 

 

オープニングの映像でも、くるくると画面が回転する「反転」の意匠が印象的な『ジオウ』。ジクウドライバーが一回転するギミックからの着想だと思われるが、奇しくも、物語の構造にも符合している。未来は過去になり、過去は未来になる。大事なのは「今」で、その「今」の行動こそが、時に過ぎ去った「過去」すら補正・肯定し、まだ見ぬ「未来」へ繋がっていく。

 

この「反転」という意味で、仮面ライダーツクヨミは、『ジオウ』のテーマから生まれたと言っても過言ではない。「未来」に託されたウォッチが、「過去」で発現し、新しい「今」を創る力になる。ソウゴがオーマジオウ相手に言い放った、「あんたにとっては過去でもオレにとっては未来なんだ」の台詞も、まさにテーマそのもの。混濁した時間軸を飛び回ってきたソウゴたちの戦いの帰結として、非常に綺麗な登場だったなあ、と。

 

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ソウゴの覚悟、おじさんとの別れ

 

今回、生瀬さん演じるおじさんがすごく良かったですね。もう誰もが分かっていることですが、最終回にして「時計屋のおじさんが壊れたライドウォッチを修理する」という展開も熱い。

 

声だけでソウゴだと気づき、ライダーの力を「王様のようだ」と評し、真っ直ぐにソウゴを送り出す。この一連のシナリオが非常に良い。そしてここに生瀬さんの鉄板の演技力が乗っかってくるので、そりゃあ、グッときますよね。対する奥野くんも、全力でこれに応える。一年前には線の細い印象があった青年が、こんなにも決意を感じる表情をするなんて。嗚呼、一年間戦ってきたんだよな、と、心に響きますね。

 

あと、細かいところですが、このシーンの高岩さんのスーツアクトがすごく良いんですよ。おじさんを助けて、そのおじさんを気にかけながらも敵に向き合う、あの絶妙な焦燥の演技。こういった感情表現が素晴らしいんですよね、高岩さん。電王のクライマックスフォームのような幅のある演じ分けが取り上げられることが多いけれど、こういうさりげないシーンもすっごく上手い。マスクが向いている方向や角度から、肩、胴へのラインで表現するキャラクターの感情。流石ですわ・・・。

 

あと、ソウゴがクジゴジ堂で壁にかけられた時計を見上げるシーン、オープニングのそれと同じなんですよね。柴崎監督の狙いを汲み取るようにオープニングと見比べてみると、奥野くんの表情の作り方が全然違うのがよく分かる。

 

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チェイスと「仮面ライダー」

 

先週書き漏らしたことだったのですが、チェイスに「仮面ライダー」を語らせるの、ほんと憎いですよね。というのも、『ドライブ』の物語における「仮面ライダー」の概念は、他でもないチェイスが初代ドライブとして確立させたものだった。その後、仮面ライダーチェイサーとしてまたライダーに復帰する訳ですが、彼にとっての「仮面ライダー」は、単なる名称を越えた意味がある。

 

 

ただ、「自分はロイミュードだと叫ぶ」「人間を守る」を短い間に何度も行ったり来たりするシナリオだったので、少し唐突な印象もあったかな、というのも本音。

 

今まさにソウゴという「友」を想うゲイツが、それを語りながらチェイスを看取るのも良かったのですが、せっかく終盤なので『ジオウ』の本筋にもう少し絡めて欲しかったなあ、とも。例えば、霧子と少しダブらせながら「チェイスはツクヨミに感化されて人間を守るに至る」という筋で、その末にツクヨミこそが「仮面ライダー」になる、とか・・・。

 

そしてそのツクヨミですが、「仮面ライダーアルピナ」じゃないのがすごく良いですよね。変身音声も、これでもかと「ツクヨミ」推し。彼女の出身ではなく、彼女が生きてきた「今」を反映させた結果。しかし、だからこそ、次回早々に彼女が裏切るという展開に背筋が凍る訳ですが・・・。(裏切る、と見せかけるところまでが計画のうち、という可能性もあるけど)

 

そんなこんなで、『仮面ライダージオウ』は、次回で最終回。泣いても笑ってもあと一回。時の雨を仲間と共にすり抜けた先に、まばゆい世界はあるのか。最後の一秒までも、最大の加速で駆けろ!

 

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダージオウ 約145mm PVC&ABS製 塗装済み可動フィギュア

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仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 4<完>

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