ジゴワットレポート

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感想『仮面ライダージオウ』第28話「オレたちのゴール2019」ZI-O signal EP28

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『仮面ライダージオウ』第28話は、田崎監督&下山脚本によるアナザージオウ編の完結編。いやぁ、実にこう、胸にグッとくる回でした。一種の最終回といったところで、これまでずっと積み上げてきた「ソウゴとゲイツ」の関係性をひとつ上のステージに到達させる感じ。そこをしっかりとメイン監督&メインライターが担当し、キャスト陣も脂ののった演技でそれに応える。見応え抜群の回でしたね。

 

ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。

 

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王選抜の儀式、その後

 

2009年のスウォルツによるバス爆発事故、それは2000年生まれの子の中から王を選抜するための血をかけた儀式。前回の27話では、①スウォルツが2000年生まれの子をイチゴ狩りバスツアーに招集、②乗り込んでバスジャック、③バスが爆発する瞬間に子供たちを時間移動させる、という流れが語られた。ダイマジーンが街を破壊している20XX年(少なくとも2019年以降と思われる)に飛ばされた子供たちは、その惨劇を目撃。そして、飛流に危機が迫ったその時、幼いソウゴが謎の力を発揮させる。その、「アブナイ」という文字の発動を目撃し、スウォルツは彼こそが将来の王であると確信するのであった。

 

まず驚いたと同時に感心したのが、「アブナイ」の描写。これ、言うまでもなくジオウのマスクの「ライダー」からの発展ですが、ここにきて文字という意匠を物語に組み込んできたのが面白いなあ、と。「ライダー」に始まり、「ジュウ」「ケン」、そして「ビルド」から「ディケイド」に至るまで、ジオウは文字をデザインのメインに据えたライダー。それは、平成ライダーならではのインパクトと「引っ掛かり」、そして何より、多彩なアーマーチェンジにジオウならではの共通の個性を付与するためのものだと思われる。そんな文字という要素が、ここにきて物語の中で活きそうなのがとても良いですね。ソウゴ固有の謎能力なので、実態は未だ不明ですが、ここが広がっていくとすごく面白そう。

 

あと、『ドラえもん』の「コエカタマリン」を思い出した人は多いかも。

 

 

そして、注目すべきはその後。スウォルツは、ソウゴに紫色のオーラを注入する様子をみせる。つまりこれ、彼に王になる思想を植え付けるだけでなく、何らかの能力のようなものを身にまとわせている、と。こうなるとやはり仮面ライダー的には、「改造人間」というワードが出てくる訳ですね。

 

初代となる1号が文字通りの改造された人間であったことから、仮面ライダーの歴史においては、「人間ではない」、つまりは何らかの過程を辿った広義の「改造人間」というパターンが幾度となく用いられてきた訳です。平成ライダーでいくと、むしろこの「改造人間」要素をベクトルの基ではなくその先に持ってくるパターンが多く、『クウガ』『剣』『オーズ』『鎧武』など、広義の「改造人間」になってしまうリスクと恐怖が描かれた作品は多い。また、その「非人間性」を「敵と同種のパワーソースを使う」に読み替えることで、ガイアメモリやコアメダルにロックシードなど、アイテム商法の拡大に一役買っている設定とも言える。

 

近年の『ビルド』では、まさに文字通りの「創られた主人公」が登場し、内面的・精神的な「改造人間」の葛藤が描かれた。そしてその次作である『ジオウ』では、ただの9歳の少年が、スウォルツの陰謀により「王になる」という思想を植え付けられ、更には何らかの力を注入された。これにより、将来はオーマジオウとして世界を混沌に陥れる運命を決定付けられてしまう。

 

こりゃあもう、平成ライダーお得意の、「広義の『改造人間』」なんですよ。「非人間性」、そして、敵であるタイムジャッカーによってもたらされたパワーソース。ソウゴという人間の悲哀度がグッと上昇してきた感じですね。

 

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士の目的とは

 

そんな2009年と20XX年を観測した士。「この世界を破壊すべきかどうかを見極める」と語る彼だが、非常にメタ的なディケイドらしい動機である。

 

そもそも、『ディケイド』において、士は自ら世界を破壊しようとして巡っていた訳ではなかった。いわれのない「破壊者」の異名を投げつけられながらも、その混沌を持ち前の横柄な態度で制してきたのだ。そして、『ディケイド』における「破壊」は、平成ライダーというコンテンツの再編成(各々独立していた世界観を持つ作品群をライブラリ化する)ことも指しており、メタフィクション抜きには語れない存在なんですよね。

 

 

そんな士も、あの頃から10年が経ち、今や自ら破壊者を名乗るようになった。これもまた『ディケイド』に倣ってメタ的な解釈をほどこすなら、『ジオウ』という物語は、ライブラリ化された平成ライダーの歴史そのものに影響を与えてしまう存在なので、それを破壊したい、と、こういうことだと思うのです。『ジオウ』という番組の存在は、『クウガ』以降の平成ライダーの歴史を偽史に改変してしまい、その力をライドウォッチという形で一手に集めてしまう。同時に、『ジオウ』以降の「オーマジオウ未来」においては新しいライダーが生まれることもなく、平成ライダーの歴史はここで途絶えてしまう。

 

だからこそ士は、自らが再編成した平成ライダーというコンテンツを守るために、そして、それをこれからも継続させるために、『ジオウ』という物語を観測している、と。彼がこのままオーマジオウとして「平成ライダーを滅ぼす」のであれば、ディケイドは黙っていられない。平成ライダーの代表(?)として、『ジオウ』を滅ぼさなければならない。

 

士が自らが再編成した平成ライダーを結果的にでも「守る」立場にいるとするならば、それだけで俗に言う「エモさ」が限界突破な訳だけど、さあ、この予想はどれほどの確度を有しているのだろうか。

 

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約束の場所へ

 

白倉プロデューサーって、よく炎上商法だのライブ感だのといった語り口で語られるのだけど、私は氏はかなりのロマンチストだなあ、という印象を持っていて。それこそ昨今の表現でいえば「エモい」なのかもしれないが、ロマンチックな展開、エモーショナルな話の流れを好み、その一点に向けて物語を持って行くような作りをする人だなあ、と。

 

例えば『ファイズ』は、一年間の放送の中で大きく二度ほど、主人公である巧の精神的復活劇が描かれる訳だけど、そこに向けてその前の数話をかけてジワジワとエモーショナルさを溜め込んでいく。物語的な、例えば誰を倒すとか、新フォームが出てくるというよりも、主人公の精神的な葛藤とその到達点をゴールとし、逆算した感情の動きや他者との関係性を積み上げていくイメージ。そしてそのゴールにシチュエーションとしてもロマンチックさが漂う印象もあって(この辺り、タッグを組むことが多かった井上敏樹氏の筆圧にもイメージが引っ張られているかもしれない)、こう、儚くも美しいことを描くのに意識を向けているというか・・・。

 

仮面ライダー555(ファイズ) Blu-ray BOX3<完>

仮面ライダー555(ファイズ) Blu-ray BOX3<完>

 

 

そういう意味で、今回のソウゴとゲイツの関係性って、本当に長く長く仕込まれたゴールだったなあ、と。『ジオウ』の番組としての面白さは、レジェンド要素や、絵的な手数の多さなど、色々ある訳だけど、やはり物語としてはソウゴとゲイツの人間関係が一番の魅力で。

 

「最低最悪の魔王になる」ことが運命づけられたナチュラルクレイジーな主人公と、その主人公を抹殺するためのエゴに満ちた使命を帯びた直情型の疑似相棒。「お前を倒す」一点張りだった冒頭から、「こいつは本当に倒すべき魔王なのか?」、そして、「魔王になったら俺が倒してやる」へ。新たな未来の可能性を前に更に悩みを繰り返し、ついに、「倒すべきか否か」から、「奴は魔王にならない、俺たちがさせない」へ。ここまで半年強。本当に長かったし、だからこそ、実に感慨深い・・・!

 

ずっとゲイツは、「倒すべきか否か」で悩んでいたんですよ。盟友であるツクヨミの凶行を目にして、自分の決心の甘さを後悔したゲイツ。そんな彼がついに、「ソウゴを魔王にさせない」という意思に辿り着く。これぞ、若き王を導く側近のマインド。これですよ!ゲイツ!これなんだよ!!ゲイツリバイブの負担で血が流れる設定により、目から流れた血がまるで涙のようで、泣きながら前に進む彼の想いを体現していましたね。

 

とはいえ、「各々がボロボロになっても約束の場所に向かう」というプロットがせっかくこれだけ美しいのだから、その「約束」をメールの描写で済ますのではなく、ジオウⅡとゲイツリバイブの初戦辺りで面と向かって「約束」して欲しかったな、という感じもある。あと、ゲイツがついに決心した背景もソウゴは知らないはずなので、この辺りをもう少し情報共有させて、「ゲイツがソウゴを倒す決意を固めた理由」をソウゴもちゃんと把握した上での、「俺が魔王になるって確信したんだよね?」の方が、もっともっとエモーショナルだったのかなあ、などと。

 

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連続アーマータイム!

 

そして、集大成とも言いたくなる連続アーマータイム。特に理由もなくフォームチェンジを繰り返して派手に戦っていく、坂本監督が十八番とするアクションも絵的に豪華なので好きなのだけど、今回においては「そのフォームでないと完全撃破できない」という理屈がそこにあるので、二倍増しで燃えますね。絵的に派手なだけでなく、その派手さに理屈が伴っている。

 

ジオウとゲイツの見事なコンビネーションも見応えがあったし、ファイズアーマーのようにCGをモリモリに使う面白さもあれば、アナザーオーズの背後ですでにアーマーチェンジが完了しているオーズアーマーの登場シーンなど、構図の凝り方も楽しい。ウィザードアーマーの「静」を基本としたアクションと、フォーゼアーマーの「動」が同タイミングで登場するのも、アクションのテンポの作り方として非常にきめ細かい。

 

そして、今回のラスボスであるアナザージオウ。「ジオウⅡの未来予知にスピードで対抗できる」ゲイツリバイブだからこそ、「ジオウⅡの未来予知による指示を全うできる」というアンサー。ゲイツリバイブがアナザージオウを圧倒できる描写に、これまた理屈がちゃんとある。こういうのがやっぱり燃えるんですよね。そして、その高速移動によって「その場で速く動いているけど速すぎて止まって見える」描写。この中二じみたカットが最高でした。

 

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神のシナリオ

 

びっくりするくらい突然話は変わりますが、約半年前から、ライムスターという日本語ラップを操るアーティストをずっと聴き込んでまして。彼らは、日本語ラップの黎明期からシーンを牽引してきた生けるレジェンドな訳ですが、そんな彼らの前途多難だった活動そのものを歌った、『Born to Lose』という曲があるんです。

 

Born to Lose

Born to Lose

  • RHYMESTER
  • ヒップホップ/ラップ
  • Â¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

誰からも「やめときな」と言われた日本語ラップという文化を、「生まれながらの負け犬」である彼らは、そのテクニックと胆力でもって広めてきた。そんなゼロからのスタートを歌った一曲なのですが、その曲の最後の方に、「神のシナリオからの脱走者」というリリックがあるんです。「日本語ラップなんて流行らない、文化して根付かない」。そんな神のシナリオから、俺たちは脱走してきたんだ、と。

 

この「神のシナリオから脱走する」という概念、様々なフィクション作品の面白さに繋がるなあ、と感じてまして。この場合の神は文字通りの神様ではなく、「どうせ無理だろう」「どうせこうなる」「ああなってしまう」という周囲が形成するムードやパターンを意味していて、そこから、俺たちは「脱走」するんだと。「打破」でもなく、「改変」でもなく、「脱走」。まるで逃走劇のような、一種のカタルシスと疾走感。登場人物が、観る側の感想・予想を含めた「神のシナリオ」から見事に「脱走」した時、その時こそ、これでもかと胸が高まる訳です。

 

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Over “Quartzer"(CD+玩具付)(数量限定生産)

 

 

話を『ジオウ』に戻すと、まさにこの物語は、「神のシナリオからの脱走者」を描くタイプの作品だな、と。最低最悪の魔王を運命づけられた主人公が、そのシナリオからいかにして脱走するか。そんな逃走劇は独りでは成立しないので、紆余曲折の末に仲間を勝ち取る。堪え、足掻き、そして脱走し、その先で新たなシナリオを描く。それこそが、『ジオウ』という番組の最後にあるべき、ロマンチックなゴールだと思うのです。

 

そこから逆算すると、今回の第28話は、脱走するためのチームがついに結成された回。ソウゴはゲイツという仲間を得て、ツクヨミと、そして黒ウォズと、今度は全員で神のシナリオからの脱走を図る。その流れがあってこその、すでに一部で情報公開されているトリニティフォームとして、3人のライダーの力を結束させるんだ、と、こういう訳ですね。

 

第一部で過去に行き、第二部では未来の可能性に振り回され、主人公・常盤ソウゴは、ついに塀の中での逃走チームを獲得した。信頼できる仲間と共に、これから、いかにしてオーマジオウの未来を回避するのか。そして、「信頼できる仲間」を描いたと思ったら、それをこれでもかと扱った『剣』のメンバーが登場する。この流れも非常に美しいですね。

 

しかしまあ、語りたいことが多すぎる。もう6,000字も書いてしまっているのに・・・。『剣』主要ふたりの血が赤いとか、剣崎の衣装が本編最終回のそれに似ているとか、色々気になるポイントは多いですよね。嗚呼、次回も楽しみだ!

 

仮面ライダージオウ DXジオウトリニティライドウォッチ

仮面ライダージオウ DXジオウトリニティライドウォッチ

 

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