令和6年度 新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)
【Introduction(主催者)】
世界中のオペラの見どころ聴きどころをお届けするオペラストゥディオのリサイタル
二人の実力派指揮者・演出家により選りすぐりの10 シーンをご紹介!
名作オペラから、ドイツのジングシュピールやオペレッタ、スペインのサルスエラ、今回日本初演となるアメリカの室内オペラまで、歌と芝居が溶け合って描き出す極上の 人間ドラマの数々。
指揮にはキャスリーン・ケリー、ウィーン国立歌劇場初の女性音楽指導主任も務めた重鎮を、演技指導・演出にはタラ・フェアクロス、米国各オペラハウスでの演出と大学での指導者として定評のある演出家を迎え、次代を担う若きオペラ歌手一人一人の感性、「声」の個性が活かされたシーンを作り上げます。
どうぞご期待ください。
【日時】2024.7.25.(木)18:30〜
【会場】NNTT小劇場
【公演日程】
2024年7月25日(木)18:30
2024年7月27日(土)14:00
2024年7月28日(日)14:00
【予定上演時間】約2時間(休憩含む)
(原語上演/日本語字幕付)
【曲目】
①W.A.モーツァルト 『魔笛』より
(W.A. Mozart from Die Zauberfiste)
侍女:有吉琴美 侍女II:島袋萌香侍女Ⅲ:牧羽裕子 タミーノ:矢澤遼 パパゲー:小野田佳祐
② E.カールマン 『伯爵令嬢マリツァ』より
(E. Kálmán from Grüfin Mariza)
タシロ:松浦京語 合唱:研修生 ヴァイオリン:増田加寿子
③0. ニコライ 『ウィンザーの陽気な女房たち』より (O. Nicolai from Die lustigen Welber von Windsor)
シュペールリヒ: 永尾渓一郎 カーユス博士:中尾奎五 フェントン:矢澤遼 アンナ:渡邊美沙季
ヴァイオリン:増田加寿子
④R.シュトラウス 『ばらの騎士』より
(R. Strauss from Der Rosenkavalier)
元帥夫人:大竹悠生 オクタヴィアン:後藤真菜美 ソフィー:冨永春菜 ファーニナル:小野田佳祐
《20分の休憩》
⑤P.L.チャイコフスキー 『イオランタ』より (P.L. Tchaikovsky from Iolanta)
イオランタ:野口真瑚 ヴァイオリン:增田加寿子
⑥P.L.チャイコフスキー 『エウゲニ・オネーギン』より
(P.L. Tchaikovsky from Engene Onegin)
オネーギン:中尾奎五 タチヤーナ:冨永春菜 女声合唱:研修生
⑦M.F.カバリェーロ 『アフリカの女』の二重唱 (M.F. Caballero from El dúo de "La africana")
アントネッリ:谷菜々子 ジウッセピー二:永尾渓一郎
⑧J.ヘギー 『スリー・ディセンバーズ』より
(J.Heggie-from Three Decembers)
ビー:野口真瑚 チャーリー:松浦宗梧
⑨M.アダモ 『若草物語』より
(M. Adamo from Little Women)
ジョー:後藤真菜美 メグ:牧羽裕子 ベス: 島袋萌香 エイミー谷菜々子
⑩J.シュトラウスⅡ世『こうもり』より
(J. Strauss II. from Die Fledermaus)
オルロフスキー公爵:後藤真菜美 アデーレ:渡邊美沙季 アイゼンシュタイン:松浦宗梧
フランク:中尾奎五 ファルケ博士:小野田佳祐 ロザリンデ: 有吉琴美 イーダ:谷菜々子 合唱:研修生
※以上の作品より名シーンを抜粋上演
○スタッフ・キャスト
【指 揮】キャスリーン・ケリー
【演技指導・演出】タラ・フェアクロス
【ピアノ】石野真穂 髙田絢子
【ヴァイオリン】増田加寿子
【オペラ研修所長】佐藤正浩
【主 催】新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)
【出演】第 25・26・27 期生
1.第25期生(3年次)
ソプラノ大竹悠生
ソプラノ冨永春菜
テノール永尾渓一郎
ソプラノ野口真瑚
バリトン松浦宗梧
2.第26期生(2年次)
メゾソプラノ後藤真菜美
ソプラノ谷 菜々子
バリトン中尾奎五
ソプラノ渡邊美沙季
3.第27期生(1年次)
ソプラノ有吉琴美
バリトン小野田佳祐
ソプラノ島袋萌香
ソプラノ牧羽裕子
テノール矢澤 遼
【主 催】新国立劇場
【上演の模様】
NNTTオペラ研修所の舞台上演は、卒業生を中心として、一つの演目を決めて上演されたのは、見たことがありますが、今回は、1〜3年生の混成チームが、様々なオペラの場面の抜粋を10〜20分程度の寸劇演技を伴って歌うという斬新な試みに惹かれて聴きに行きました。前半・後半合わせて10シーンの上演は、さすが、オペラの世界に飛び立とうとする、新人歌手たちのフレッシュな意気込みと気迫に溢れていて、見ごたいある場面が多くありました。其れ等全部を記することはここではしませんが、特に印象的だった演目をニ、三挙げれば、先ず前半では、やはり
④R.シュトラウス『ばらの騎士』の第3幕の「夫人、オクタヴィアン(=薔薇の騎士=偽名マリアンデル)、ゾフィーの三重唱」として知られる名場面です。それぞれが自分の想いを独白で歌う三重唱で、オクタヴィアンは一目惚れしたゾフィーに気持ちが向き、でも先日まで愛し合っていた元帥夫人にも未練があって、ジレンマに陥って歌っているし、ゾフィーはゾフィーで、求婚者オックス男爵に裏切られ、自分を救ってくれると信じたオクタヴィアンが格上の元帥夫人と愛人関係にあることを見抜き、傷ついています。オクタヴィアンをつなぎとめることも出来たはずの元帥夫人は夫人で、いつまでもオクタヴィアンを手元に留めておくのは不可能であることを痛感し、潔く若い二人を結び付かせて祝福し、自分は身を引く決意をし、かなり感傷的気持ちでかつ厳然とした態度で歌っているのです。この場面はゾフィー役ではなく、元帥夫人役の歌手にとっての聴かせどころの一つと見なされています。今回の寸劇では、お三方とも演技は役になり切っていて、良く雰囲気が出ていたと思います。歌唱は、ゾフィー役富永さんの歌声が、若々しいソプラノを綺麗に張り上げていたのが強く印象に残りました。最終場面でピアノの奏する、如何にもシュトラウスらしい節回しの旋律が何回か聞こえるのもいいですね。
《20分の休憩》
を挟んで後半では、最初の演目、
⑤P.I.チャイコフスキー『イオランタ』の盲目の王女役、野口真瑚さんの悲しみを帯びた、それでいて最後の結末の目出度さを秘めた様なソプラノの歌声が耳に残っていますし、また、
何と言っても最後の演目、
⑩J.シュトラウスⅡ世『こうもり』の第二幕フィナーレの場面。
「ワインの王様」であるシャンパンを讃える陽気な合唱の歌です。 オペレッタ内では「泡立つワインの王様とその家来に乾杯!」と言う掛け声とともに音楽が始まり、シャンパンの歌をオルロフスキー公爵役後藤真菜美さんが一番手として歌い始め、二番手はアデーレ役渡邊美紗季さん、そして三番手はアイゼンシュタイン役松浦宗梧さんと歌のリレーが続きました。それぞれの歌い振りには、特徴がありましたが、細かいことはさて置いて、会合(オペレッタ上の晩餐会&今回の「サマーリサイタル」)のフィナーレの華やかさを、皆さん演技も交えて十二分に発揮出来ていたと思いました。
連日の酷暑を忘れる様な明るく華やかな終演でした。
尚、今回は、指揮者、キャスリーン・ケリーさんが、最初から最後までピット内で精力的に二人のピアノ奏者と一人のヴァイオリン奏者、それから歌手及び多分合唱も指揮するという演奏形態を採ったことが斬新なものでした。また十の場面を演技指導・演出した、タラ・フェアクロスさんの努力あっての舞台なのだと、目立たないお二人の貢献が光っていました。