アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(4)

「アメリカで注目を集めている“Inbound marketing”とは何か(3)」はこちら

顧客化までのプロセスを設計するのがInbound marketing

前回までの3回の記事では、Inbound Marketing Summit 2012 San Franciscoの様子について書いたが、きっと読者にとってもInbound marketingとはなんなのか? そして今なぜ注目されているのか? についてはまだまだわからないかもしれない。そこで今回はそれらを紐解いていきたいと思う。

Inbound marketingは、ある一つのプラットフォーム/メディアや、ある一つの手法を表すものではない。まずこれを理解しておく必要がある。Inbound marketingに含まれるものをざっと書けば、SEO、Web PR、ソーシャルメディアマーケティング、CMS、コンテンツ制作、ブログ、ランディングページオプティマイゼーション、パーミションマーケティング、Eメールマーケティングなどがあげられ、正直なところ、これらを理解しておかなければInbound marketingをうまく行うことは難しいだろう。しかも、それぞれを個別に理解していてもはっきりいって役に立たない。有機的にこれらを結びつけて、


 潜在顧客に見つけてもらう
   ↓
 潜在顧客にサイトに訪れてもらう
   ↓
 潜在顧客にメール登録をしてもらう=潜在顧客の見込み客化
   ↓
 見込み客への定期的なコンタクト
   ↓
 見込み客の商品・サービス購入
   ↓
 見込み客の顧客化

といった過程に貢献するスキームを構築しなければならない。Inbound marketing は、「get found(見つけてもらう)」マーケティング・コンセプトばかりが注目されているが、実際はその先、顧客化プロセスまでのマーケティング・チェーン・マネジメントのことを指すのである。

検索の普及で購買プロセス/情報行動が変わった

Inbound という言葉は、B2B業界では、outbound call (企業側がかける電話営業)、inbound call(企業側に見込み客からかかってくる電話)といったように、既に使い古されたレガシーな言葉である。しかしながら、この言葉が今注目されるにはもちろん背景があるわけで、その文脈とともにInbound marketingは理解されるべきだろう。最も重要なのは、「購買プロセス/情報行動の変化」にかかる部分が大きい。レガシーな考え方では、


 認知 → 興味形成 → 理解 → 購入意向 → 購入

という流れだったが、Googleが提唱する「ZMOT」でも語られているように、「検索」という行為が出てきた結果、


 カテゴリーへの興味発生 → カテゴリー名での検索 → 情報の発見 → サイト訪問 → 認知/理解 → 購入意向 → 購入

のように、「最初に認知ありき」の購買プロセス/情報行動の法則が崩れている。つまり「***という商品を知ったからそれについて調べる」という行為よりも、「***というカテゴリーに興味を持ったので調べる」という「最初にカテゴリーへの興味ありき」からスタートするほうが「検索」が普及した結果増大している購買行動のプロセスなのだ。

例えば、“がん保険”について興味を持ったときはそれぞれの商品名や企業名から調べるのではなく、“がん保険”というカテゴリーに興味が湧いたわけだから、キーワードも“がん保険”と場合によってはその複合語で検索される。この「カテゴリーへの興味」からスタートする購買プロセスにおいて検索行動に至る割合が多いゆえ、その検索結果ページに表示されるかどうかは、ビジネス拡張において非常に重要なポイントだ。だからこそ「コンテンツ」というものが重要になってくる。

イギリスの社会学者である、David Gauntlett が「Making is Connecting」と言ったように、「何かを作らなければつながりはつくれない」。Inbound marketingでブログが重要視されるのは、継続的なコンテンツ発信に便利だからであり、かつSEO的に考えれば、静的な企業の本体サイトよりも、動的かつ継続的にコンテンツが更新されるブログのような簡易CMS的なもののほうが影響を及ぼしやすい。

例えばHubSpot によれば、SEOの効果を100%とすると、On-Site SEOと呼ばれる自社サイトでのSEOは25%であって、Off-site SEOと呼ばれる他サイトからのリンク(=被リンク)は75%の影響を与えるという。つまり、他のサイトにリンクされるようなコンテンツの配信は、ブログのように、他サイトに引用されるようなプラットフォームのほうが適しているというわけだ。

SEOやWeb PR、ソーシャルメディアの活用で、例えば検索結果ページにて上位にあがり、get foundされやすくするのは、至上命題ではあるが、そのあと、顧客とつながり、コンタクトをとれる仕組みが無ければ最終的なセールスまで結びつきにくい。なので、サイトを訪れた人々との継続的コンタクトのために、パーミションマーケティングやEメールマーケティングの知識が必要になってくるのである。

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高広 伯彦(スケダチ代表/マーケティングコンサルタント/ユニバーサルプランナー)
高広 伯彦(スケダチ代表/マーケティングコンサルタント/ユニバーサルプランナー)

1996年博報堂入社。その後、博報堂DYメディアパートナーズ、電通で主にイン
タラクティブ・マーケティング領域のビジネス開発や広告主のキャンペーンに携
わる。2005年にグーグル日本法人に入社し、新しい広告のインフラづくりに取り
組む。2009年1月に独立し、「スケダチ 高広伯彦事務所」として活動。広告主の
プランニングやビジネス開発を支援する。

株式会社スケダチ: http://sukedachi.jp/
個人ブログ: http://mediologic.com/weblog/
Twitter: @mediologic, @sukedachi_jp
Facebook: sukedachi

高広 伯彦(スケダチ代表/マーケティングコンサルタント/ユニバーサルプランナー)

1996年博報堂入社。その後、博報堂DYメディアパートナーズ、電通で主にイン
タラクティブ・マーケティング領域のビジネス開発や広告主のキャンペーンに携
わる。2005年にグーグル日本法人に入社し、新しい広告のインフラづくりに取り
組む。2009年1月に独立し、「スケダチ 高広伯彦事務所」として活動。広告主の
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