試技１回の時間はわずか３秒。パラリンピック・パワーリフティングでは下肢障害や低身長の選手が力を競う。その表情を天井に設置したカメラで追った。
　障害により通常のベンチプレスのように足で踏ん張ることができないため、上半身の筋力とバランスを保つ高い技術が求められる。
　人物像はアメリカンコミックのヒーローに憧れていたり、料理が趣味だったりと個性豊か。元水泳選手や美容師もおり経歴も多様だ。
　バーベルを挙げる３秒に全力を振り絞る。その姿は選手がここに至る道のりと、人生を想像させる。

共同通信写真部パラリンピック取材班

＊写真・記事の内容は、２０２４年９月までの取材を基にしています。

男子８０㌔級（運動機能障害）５位　２００㌔に成功し、大喜びする英国のマシュー・ハーディング（２５）。競泳でのパラリンピック東京大会出場を逃しパワーリフティングに転向した。以降は競技にのめり込み、パラ出場の夢をかなえた＝２０２４年９月６日、パリ（共同）

試技前、天に向かって祈るようなしぐさを見せるメキシコのアマリア・ペレスバスケス（５１）。「女子の競技を盛り上げたい」と１８歳で始めて３０年超。６１㌔級（運動機能障害）で銅メダルを獲得し、７大会連続のメダリストになった＝２０２４年９月６日、パリ（共同）

エジプトの退役軍人や戦争犠牲者が集まるクラブに所属するサファー・ハッサン（３８）。頭髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」を身に着けて競技に臨み、女子７９㌔級（運動機能障害）で銅メダルを獲得した＝２０２４年９月７日、パリ（共同）

女子６１㌔級（運動機能障害）４位　料理が趣味というモロッコのナジャト・ガラー（４２）。「自分の限界を広げるチャンス」と競技を始めた。大事なことは「常に勝つことではなく、自分の持てる全てを出し切ること」＝２０２４年９月６日、パリ（共同）

男子７２㌔級（運動機能障害）７位　パラ競泳の選手だったトルコのウウル・ユムク（３５）。引っ越し先でプールを見つけられなかったことから、パワーリフティングの道へ。仕事終わりの午後５時以降に３時間のトレーニングをしている＝２０２４年９月６日、パリ（共同）

女子７９㌔級（運動機能障害）銀メダル　ナイジェリアのボース・オモラヨ（３５）は美容師として１５歳から働き、自分のサロンに客として訪れたコーチから競技に誘われた。「私はファッションが大好き。でもパワーリフティングは私の人生に新しい意味を与えてくれた」。３児の母＝２０２４年９月７日、パリ（共同）

女子７３㌔級（運動機能障害）銅メダル　トルコのシベル・ジャム（上・３４）はエレベーターのないアパートに住んでいた頃、自分を背負ってくれた母に感謝している。「私は他の人と変わりません。唯一の違いは足で歩くか車いすに乗るかということ。『無理』だといわれることも私にはできる。涙を流したことはありません」＝２０２４年９月７日、パリ（共同）