メールマーケティングの目的はメールを送ることではない
メールによる継続的な利益を生みだすためには効果検証が必須
この記事では、特集の第2章で取り上げたPDSサイクルの、Seeフェーズあたる「効果検証」に該当する内容を説明していく。理想としては、Plan、Doフェーズを解説した前回までの記事に目を通したあとで、今回の記事を読み進めてほしい。
プランニングのフェーズで、どんなユーザーにどんなコンテンツを送り、どのような効果を期待するのか、またメールコミュニケーション全体で何を実現することをビジネス上の目的とするのかを設定し、そのプランニングに基づいた原稿制作、メール配信を行ってきた。
その後に行うべき課題は、配信を行った結果、プランニングで設計した効果がどの程度あったのかを「効果検証」することである。
効果検証には2種類のデータを使い分けよう
メールマーケティングの効果検証では、定量データ(エラー数や開封・クリック数など)と定性データ(ユーザーの声など)の2種類のデータを用いて効果検証を行う。
定量データ(配信ログやクリック状況)
メール配信を行った結果、取得することができる配信システムサーバーのログは、メール配信システムによって多少の違いがあるものの、基本的に以下のような内容が含まれる。
配信ログ
メールを配信した結果、配信が成功したか、失敗したかを表すログ- 配信成功数
- 配信エラー数
開封ログ
受信したメールを開封したか、しなかったのかを示すログ(開封状況はPCのHTMLメールでのみ取得可能)- 開封数/率
※ただし、現在の多くのメールソフトがデフォルトで画像表示がオフになっているため、画像が読み込まれない場合が考えられる。その場合は、メールを読み進めていたとしても「開封した」というログは残らない。
クリックログ
メール中のリンクをクリックしたかしないかを示すログ(クリック率は何人がクリックしたかという「ユニーククリック率」と何回クリックされたのかという「のべクリック率」の2種類ある。)- メール全体に対するユニーククリック数/率
- メール全体に対するのべクリック数/率
- URLに対するユニーククリック数/率
- URLに対するのべクリック数/率
配信ログはメール配信時に記録されるもので、このデータから有効なメールアドレスを判別することができる。効果検証では配信した件数ではなく、配信に成功した有効件数を把握する必要がある。開封ログやクリックログでは、開封率やクリックカウントからそのメールが配信後実際に開かれたか、また、読まれたかどうかを調べることが可能だ。
定性データ(アンケート調査など)
クリックログや配信ログといった定量データからは、そもそもメールは開封されているのか(開封率)、どのコンテンツの人気があるのか(クリック状況)といった実施した施策に対する評価を行うことはできるが、ユーザーがメールを見て受ける印象や、こんな記事が読みたいといったニーズを見つけ出すことまではできない。その点を補完するためには、定性データを活用することになる。
定性データの例としては、ユーザーアンケートなどの満足度調査を行い、現状のメールへの評価や新規コンテンツの可能性を探ることが主な手法である。メール配信の頻度は適切か、メール中の記事数や文章の長さ、デザインは見やすいかなど、実際の購読者に対して質問することで、定量データからは読み取れない部分まで調べることが可能になる。
メールマーケティングにおける効果検証の指標
では、いったい定量データや定性データをもちいてどのような効果を検証すればよいのだろうか。メールマーケティングでは、大きく以下の2つ視点での効果検証が考えられる。
- メールコミュニケーション自体の反応度
- CRMへの貢献度
メールコミュニケーション自体の反応度は、配信したメールのリンクをどれくらいのユーザーがクリックしてリンク先ページへと遷移したか、という短期的な効果を指す。CRMへの貢献度は、特に多彩なクリエイティブが提供でき、開封状況を継続してチェック可能なHTMLメールの場合に期待できる、中長期的な効果である。
ここで、メールマーケティングの効果検証の全体像をまとめてみたい。下の表は、定量データであるログ分析と、定性データであるアンケート分析、2つのデータから分析できる項目をどういった視点で検証すべきかを示したものである(表1)。
項目配信ログ分析 (定量データ) | アンケート分析 (定性データ) | |
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メールコミュニケーション自体の反応度 (短期的検証項目) |
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CRMへの貢献度 (中長期的検証項目) |
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ダイレクトレスポンスは、短期的な検証項目として活用できる項目である。配信ログやアンケートから数値として導き出すことで、クリック率が低かった箇所の文章や画像を差し替え、次回配信の際にすぐ効果を確認するといったことが可能となる。一方、ブランディングの場合は、1回、2回の配信で効果がでるものではなく、半年から1年かけてメールでのコミュニケーションを実施した結果から効果が見えてくる項目である。
詳細分析により有効な検証結果を導き出す
通常は、配信数や開封数・率、クリック数・率の推移を見るレポートが多いが、そこからわかることは全体の傾向に関するものであり、より個別に具体的な示唆を得たい場合は、詳細分析を行う必要がある。具体例をあげて説明していこう。
上記の図は、ユーザーの登録年月とクリック率を軸にしたクロス集計を行い、登録年月別にクリック率を配置し、その推移をみたものである。クリック率は登録年月が新しい(新しいユーザー)ほど高く、登録年月が古くなるにつれてその比率は次第に低下し、ある時点以前になると一定の比率を保っている。
この分析結果から言えることは次の2つだ。
新規ユーザーの獲得は必須
登録年月が新しいユーザーほどクリック率が高い。つまり、新規ユーザーの獲得がなければ全体のクリック率は低下することを意味している。全体のクリック率を上げる(維持する)には、新規ユーザーの獲得は欠かせない。新規ユーザーの反応ができるだけ落ちないようにするためのコンテンツの工夫も重要だ。ロイヤルユーザーの分析と獲得方法に検討の余地あり
会員登録から時間の経っているユーザーであっても、ある一定数のユーザーはクリックし続けている。つまり、このユーザーは自社にとってのロイヤルユーザーである可能性が高い層と言える。この層のユーザーがどのようなユーザーなのか(会員登録の経路やきっかけ、属性情報など)を分析し、将来のロイヤルユーザーを獲得するための施策を検討することがポイントである。
上記の詳細分析では登録年月とクリック率のクロス集計を行っているが、登録年月以外にも購入年月別や購入商品別、属性別などさまざまな軸でのクロス集計が可能である。常に、検証したいことは何か? を意識した有効な検証法を心がけるべきである。
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