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最後の浮世絵師の娘・河鍋暁翠

※この記事は2015年9月18日に公開した記事の再録です。


 今回は浮世絵師でもあった河鍋暁翠を取り上げたいと思う。名前を見てもわかるように、暁翠は最後の浮世絵師といわれた河鍋暁斎の娘である。

 江戸時代と明治時代の境界である慶応3年に暁斎の長女として生まれた暁翠は小さな頃から暁斎に日本画の手ほどきを受けていたという。

 17歳の時には国内絵画共進会に出品するなどその実力は確かなものだったという。22歳の時に暁斎と死別後も作品は様々な展覧会に出品し評価されていき、明治時代後半には女子美術大学の初の女性教授となる。
 
河鍋暁翠 毘沙門天虎狩之図


河鍋暁翠「天の岩戸開き」暁斎の作品を模写


河鍋暁翠「朝鮮豊島沖海戦之図」


河鍋暁翠「五節句之内 文月」


河鍋暁翠「五節句之内 皐月」


 絵を見てもわかるように、父親に優るとも劣らない非凡な才能の持ち主であったことは一目瞭然である。
 実際、明治40年代までは錦絵や挿絵本も出版するなど、画家として幅広い活動を繰り広げている。
 しかし、娘の誕生後は生来の控えめな性格も手伝ってか、展覧会活動等は少なくなり、良家の子女や画道に関心を持つ趣味人に教える個人教授が、活動の主体となっていく。
 そして、1935年(昭和10)、出稽古先で脳溢血となり、帰らぬ人となっている。



 明治時代はもっとも女に対して抑圧的な時代だったと思う。当時女が絵だけで身を立てていくのは困難な時代だったと思われるが、彼女が絵の世界から身を引いたのは致し方のないことだったと思われる。

 暁翠は父の暁斎を超えられなかったので、娘にも絵を描くことを禁じていたというが、逆にあの暁斎を超えようとしていたのはすごいと思う。
 現在の感覚でいえば手塚治虫や石ノ森章太郎を超えようとしているようなものだろうか。
 手塚治虫や石ノ森章太郎を超えられなかったから絵を描かないんじゃ、自分もとっくの昔に絵を描くのを辞めてなきゃならないし、進撃の巨人の作者なんかどうなってしまうんだよと思ってしまう。

 もとい現在の日本の画壇には、河鍋暁斎どころか娘の暁翠を超える才能の持ち主は、多分ひとりもいないのではないだろうか。
 美人画家・松井冬子が現在の日本画家で一番売れてる画家という時点でお察しレベルである。 

 現在は暁翠の孫(暁斎の曾孫)に当たる眼科医でもある河鍋楠美院長が、河鍋暁斎美術館を設立して館長もしている。
 河鍋家は暁翠以降は完全に女系なのは姓名を見ても明らかだが、暁翠が人の母になった後に絵から身を引いた後も、河鍋姓を守りつづけたのを見てると、控え目だけど芯の強い女性であったのではないかと思う。

 因みに暁翠には腹違いの兄(暁斎の先妻の息子)もいた。暁翠の腹違いの兄暁雲もまた浮世絵師だったが、こちらは49歳の若さで没している。
 子孫の存在も確認されていないところから、暁斎の男系の血筋は途絶えているものと思われるが、暁翠の夫(婿養子?)が歴史上に名前が残っていないのを見ると、河鍋家は男の影が薄い家系だなと思ってしまう。 



参考資料: 河鍋暁斎記念美術館

猫バンバン





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非公開コメント

No title

ponch さん、こんにちは^^
昔の人の方が、気概を持っていた感じがしますね。
こちらも、気が引き締まる思いがします。

ところで、私の友人にも版画をやっていた人がいるんですけれど、やっぱり美術の業界で食べていこうと思うと「芸術」追求ばかりしてもいられないので、やめたんです。
でも、彼女は松井冬子くらいには美人だったんですよ。
本当に才能のある人は、外見なんて売り物にしないのです!
でも、画壇というところも正論の通らない業界なのでしょうね。
というか、いろんな業界がそうかもしれませんが、ほどほどの人たちが集まって、自分たちが食べていける世界を作っているのでしょうね。

前回のコメントの続きみたいになってしまって、すみません^^;

Arianeさん、こんにちは(^-^)

そうですね。父方の祖母(享年77)も明治生まれですが、外に出たら熊に遭遇するような場所で暮らしていた樺太復員組だったので、戦後世代よりも気概はあったと思います。
 というかとにかく気丈でしたね。熊の話は怖い話にも書いてありますので、よかったらそちらもご覧になってください。

 お友だちは版画されてたんですか。松井冬子並の美人とはすごいですね。
 辞めちゃったのは残念ですが、どこのギャラリーもびっくりするほど閑古鳥が鳴いてますから、致し方ないかもしれないですね。どんなに上手い絵でも、無名の絵描きの絵はびっくりするほど売れてませんし。

 ハッキリいって自分も辞めたいけど、50号の連作の下半分と、来年の個展が終わるまで、辞めたくても辞められません(;∀;)

スッパリ足抜けしたArianeさんのお友だちを見習って、自分もとっとと足抜けしたいです(;∀;)

No title

人の心をつかむ絵ってなんだろう(心理)

進撃の巨人は連載初期からやたらとプッシュされていた作品のようですね
あの爆発的ヒットの超気合い入ったアニメ化とかバックにすごい人達がいるんだなーって想います(;・ω・)

いいなーパトロンほしーなー
生活に余裕あればずーーーっと描けるのに

はー

日本画ってまた独特ですよね。
普通の絵画にない不思議な魅力が
絵のコトはちっともわからないんですけど
この方は惹かれるモノありますぅ。
いい絵とか悪い絵とかってそれぞれで
MMみたいなおばかでもわかる絵が
MMにとってはいい絵なのかな~って
ぼんやり思ったりします。

こんばんは^^

『天の岩戸』は確か、日本神話の恐い話でしたよね?
その一方で、海戦の図なども描いていたり、結構多才な方だったんですねぇ・・・
浮世絵にも『歌舞伎』が描いてあったり、『山』が描いてあったり色々ありますが、自分はどうも、真っ先に『四谷怪談』とか『皿屋敷』とか『ろくろ首』の様な怪談物を、連想してしまいます^^;
親の意志を受け継いで、なおかつ親が偉大だと大変ですねぇ^^;
うちは親が底辺で、なおかつ自分も底辺で、超える気も全くないので楽ですが・・・^^;

No title

こんばんは

10代のうちから着実に作品を発表していたり
そのわずか数年後に暁斎と死別後も精力的に創作し続けて
初の女性教授になったり

バイタリティーとその芯の強さはすごいですよね☆

No title

みけねこさん、こんばん(=^ω^=)ノニャーン

そうですね、人の心をつかむ絵って何なのかは自分にもわかりませんが、
自分の心を掴んだ絵は骨太な絵が多かったように思います。

進撃の巨人は出版不況なのに超売れてますよねー。
アニメのバックには誰がいるのかまではわかりませんが、
脚本は小林靖子がやってたと思います。小林靖子はほぼ週刊ペースで脚本
描いてるので、脚本家のなかでは多分トップクラスだと思います。
自分の知り合いのイラストレーターの方が百倍上手いと思うのですが、
その絵が上手い知り合いは進撃の巨人の一万分の一も売れてないですしねー(^_^;)

ですよねー、自分もパトロンほしいですぅー(;´д`)

No title

MMさん、こんばん(=^ω^=)ノニャーン

ええ暁翠の描いた絵も惹かれますよね。
そうですね、世の中絵のことがわからない人間の方が多数派なんですから、
MMさんのいいと思ったものは、大概の人にとってもいいものだと思いますよ。

No title

剣中尉、こんにちは(・∀・)ノ

子供が生まれてからは絵の世界からは身を引いてるようですが、
多才な才能の持ち主だったのは絵を見れば一目瞭然ですよね。
ですよねー、親が偉大だと子供のプレッシャーもハンパないですよねー(^_^;)
暁翠は子供が生まれてからは絵の世界から身を引いた後も、
河鍋家の家督は守りつづけたようですが、夫は壻養子だったのか
影が薄いというより名前も残ってないようです。

まともな職歴を持たない作業所通いの自分も、これ以上はないくらい底辺ですよ。
行く末はのたれ死にか孤独死なのは必定だと思います。

No title

荒ぶるプリンさん、こんにちは(・∀・)ノ

そうですね、十代のうちに作品を発表したり、
日本初の女性教授になってますから、やはり非凡な絵の才能はありましたよね。
子供が生まれてからは絵の世界からは身を引いてるようですが、
絵の世界から身を引いた後も、河鍋家の家督は守りつづけていたので、
芯の強い才媛だったと思います。

No title

ponchさん、こんばんぽ(*´∀`*)ノん

すごい興味深いし勉強になりますヽ(´▽`)/
確かにお父さんは越えられなかったかもしれないですが娘さんの絵も女性ならではの繊細さがあるように見えます。
この超えるという問題は難しいかもですね。
手塚先生も超えられることを恐れて頑張ってこられましたがこういった芸術って超えるとかないのかもしれません。
人それぞれに個性や持ち味があって後は好みの問題で好きになるものもしくはあまり好きでないものとか別れるのかもしれないですね。
進撃の巨人やワンピースも好きな人もいればそうでない人もいますし。
僕は好みの問題だと思いますよ。
それより貴重な資料ありがとうございました♪
ponchさん、貴重な資料をけっこう持っておられるのでもしかしたら妖怪画とかも持っておられます?

No title

たらこさん、こんばん(=^ω^=)ノニャーン

そのようにいって頂けて自分も嬉しいです。
たらこさんの勉強になったようでよかったです\(^o^)/
そうですね、暁斎は偉大な浮世絵師でしたが、暁翠には暁翠の魅力があると思います。
そうですね、超える超えないよりも自分の持ち味を生かした方がいいんでしょうね。
たらこさんの言葉はまさに自分が常に悩んでることの本質を突いてます。
進撃の巨人はあの下手くそな絵で大ヒットしましたしねー。
マンガは絵の上手さじゃないですよねー。

いえいえこちらこそ過去記事にコメントありがとうございましたd=(^o^)=b
死霊の資料が大半ですが、妖怪の資料も多少は持ってます。
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ASDponch

Author:ASDponch
地上最強の芸術の場外乱闘者を目指し日々孤軍奮闘する自閉症スペクトラム障害(ASD)ponchの自堕落な日常と、社会からはみ出したアウトサイダーの駄話を書いています。
最近はすみっこぐらしにもハマってます。すみっこ仲間絶賛募集中ッッ\(^o^)/

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