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板橋が面白い① 区立美術館「レオ・レオーニと仲間たち」

最近、東京都板橋区を訪問する機会が増えています。どうして?それは、面白い文化企画が続いているからのようです。さて、それは何なのでしょう?(まぁ、単純にさいたま市の家から近いから、というのもありますが(笑) )

今、「板橋」が面白い?!①
区立美術館「レオ・レオーニと仲間たち」

撮影:2024年11月13日  Canon PowerShot SX710HS & iPhoneSE


1 平日の午前中に時間ができたので、板橋区立美術館で開催中の「レオ・レオーニと仲間たち」展を観てきました。板橋区立美術館は、torikeraお気に入りの美術館で、レオ・レオーニ展は数年前にも訪問したことがありました。
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2 レオ・レオーニと言えば、日本では「スイミー」(Swimmy)という絵本(1963年に出版。谷川俊太郎の翻訳で「スイミー ―ちいさなかしこいさかなのはなし」の邦題で1969年に好学社から出版)が有名でしょうか。オランダ生まれでイタリアやアメリカで活躍した芸術家です。板橋区立美術館のエントランス。
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3 同展覧会のチラシ(表 板橋区立美術館は、1996年に日本で初めてレオ・レオーニ展を開催した縁で、本人との関係が深まったようで、初公開作品の紹介や遺族からの作品寄贈がおこなわれていたようです。
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4 チラシ(裏)
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5 今回の企画展は、氏の生い立ちや、幼少の頃影響を受けた絵画などの紹介から始まり、タイトル通り、彼をとりまき影響を与えた「仲間たち」が丁寧に紹介されていて、人間レオ・レオーニの理解が深まりました。
初期のイタリア時代のデザイナー・イラストレーターとしての仕事作品です。

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6 同上
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7 同上
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8 同上 洗礼されたデザインとレオ・レオーニの優れたユーモア・批判精神が現れています。
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9 イタリアの著名なタイプライター会社「オリベッティ」の広告デザインも担当していました。
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10 1939年アメリカに渡り、様々な分野での広告デザインも担当
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11 放送関係のアートディレクターとしても活躍
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12 人気「絵本作家」の企画展ということで、混雑するだろうと予想し、平日の午前中の訪問でしたが、大正解で、静かに鑑賞できましたァ(^▽^;)
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13 プライベートで制作された作品。ファシズムを憎むレオの想いが表現されています。
レオは、1930年代イタリアで反ファシズムの思想を表明し、アメリカの大手広告代理店の仕事をしていた時も、左派政治運動に関わり続けたそうです。しかし、プライベートで制作した政治風刺昨品は生前には公表されませんでした。1950年代アメリカで、レオは要注意人物として政府から監視され、タイム社の社長には、レオを解雇するようマッカーシー(共和党上院議員、反共主義にもとづく政治活動で、多くの学者・言論人・芸術家・映画人を告発した)から手紙が届きますが、社長はレオを守ったそうですね。

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14 人気絵本作家の「エリック・カール」とも親交を深めていたそうです。
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15 絵本「あおくんときいろちゃん」とブリュッセル万国博覧会についての展示
この絵本は、レオの最初の絵本ですが、生まれる背景に、万博のアメリカ館パピリオへの弾圧があったと言われています。
レオはこのパピリオンの内容・デザインを担当し、環境や人種などアメリカの社会問題を取り上げ、「望まれる未来」として、様々な肌の色の子どもたちが輪を作り遊ぶ写真を展示したところ、異議を唱える議員の圧力で閉鎖されてしまったそうです。
この事が、その後のレオの絵本創作の原動力になったと言われます。

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16 ピッポとアニー、二人の孫のために書かれたと言われる、「あおくんときいろちゃん」の絵本
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※絵本の概要: あおくんときいろちゃんは一番の仲良しです。ある日、あおくんはきいろちゃんと遊びたくなって、あちこちさがしまわってようやく出会いました。二人は、うれしくてうれしくて抱き合って喜ぶうちに、緑色になってしまいました。いっぱい遊んで家に帰ると、あおくんの家でもきいろちゃんの家でも「うちの子じゃないよ」といわれてしまいます。二人は悲しくて泣いて泣いて全部涙になってしまいました。すると青い涙はあおくんに、黄色い涙はきいろちゃんに戻りました。
 丸くちぎっただけの色紙が本当の子どものように生きて動いて見えます。形のおもしろさ、色の美しさがお話の中に十分に生かされています。(鳥取県立図書館のサイトより引用しました)


17 エマヌエーレ・ルッツァ―ティとの交流より、ルッツァーティからレオに贈られたグリーティングカード!
ルッツァーティは、画家・イラストレーター・映画監督・アニメーターとして活躍した人ですが、このカードの楽しさ・美しさには惹かれました。こんなカードもらったら嬉しくて踊り出しちゃいますよね。(笑) ルッツァーティは舞台芸術を手掛けて、絵本作家としても活動していただけに、楽しませる工夫がたくさんあります。

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18 この奇怪な絵画や造形は何?!同じ作者によるものとは思えない奇抜な世界が、もう一つのレオの顔です。これは、「平行植物」と名付けられた架空の植物の姿なんです。
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19 こちらも「平行植物スケッチ手帳」のための原画です。レオは、学術論文のような文章を加え、実際に存在する植物のようなもの(平行植物)をリアルに描きました。「ことばから生まれる」植物グループを作ったり、分類学・発生学に独自の概念を作ったりして自由に独自の世界を作っていたのですねぇ。この原画も実に見ごたえがあります。
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20 「黒いテーブル」シリーズです。
レオが9歳の時に誕生日プレゼントとして叔父から贈られた黒いテーブルが題材です。この時叔父は、黒い色の上ではどんなものでも映えるからだ」と言ったそうですが、80歳を過ぎたレオが生涯を回顧してシリーズにします。素敵なシリーズですよね。

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21 そして、いよいよ、レオの絵本を集めた展示室に入ります。この部屋は実際に出版された絵本を手に取り見ることができるので、親子連れの姿が多かったです。前記の「あおくんときいろちゃん」を出版したのが1959年、その後1961年にイタリアに戻ると1年に1冊のペースで晩年まで絵本制作をつづけ、文・絵ともに手掛けた物語絵本は27冊出版されたそうです。
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22 「フレデリック」 ちょっとかわったねずみのはなし 
レオの絵本と言えば、「ネズミ」ですが、とてもシンプルな造形で、主人公も仲間も同じ姿ですが、その中から主人公を見つけることは容易です。そこにレオのデザイナーとしての技術やセンスが光っていますね。

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23 「うさぎをつくろう」 ほんものになったうさぎのはなし
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24 「だあれ?なあに?いつ?どこに?」「いろとかずであそぼうよ」「えいごであそぼうよ」「ぼくのだ!わたしのよ!」
レオの絵本には、たくさんの動物たちが登場しますが、物語の中で「言葉を大事にしよう」「他人の意見で行動するのではなく自分の意思が大切だ」「あらそいは対話でかいけつできる」「個性は仲間にすぐ理解されないが、やがて仲間の心を動かす」「大事なことを口にして伝えることが大切だ」など、レオの思想がたくさん反映されていました。

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25 「マシューのゆめ」 えかきなったねずみのはなし より 
今回の企画展を観るまで、レオの生い立ちや思想・仕事について、よく知らず、面白い絵を描く絵本作家という認識でした。ところが、作品に込められた作者の思いと、レオの経歴が重なる事で、彼の作品が一層魅力的なものに感じられるようになりましたぞ。(単純だなぁ!)

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26 最後にオマケの一枚!!ここはどこだぁ??美術館のトイレでしたぁ(◎_◎;)
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コメント

Re: No title

ytaka007さん!こんばんは!

板橋区立美術館も、所蔵作品展は全て撮影OKですが、企画展では撮影禁止の事が多いデス。

おおむね、他の美術館や個人から提供された作品は著作権の関係か撮影禁止になります。

今回は。(所蔵作品以外も多いので)試験的に撮影OKにしていたようです。さらに、受付で撮影やSNS投稿への注意メモが配られるなど、気を使っていました。

アートの世界も多様になり、様々な表現法が駆使されているようですね。
それでも目先を変えても感動しない世界もありますね。(^▽^;)

Re: やるじゃん、板橋

BUSYBEE-GAEI さん!こんばんは!

そうそう、昔はTVコマーシャルも流れていたような気がしますね。有名なブランドでした。

今や絵本作家としての名前が有名ですが、元々はデザイナー・イラストレーターとして活躍していた方です。

伝えたいモノを持っているからこそ、絵本を作り続けてることができたのではないでしょうかね。(*^^*)

No title

こんばんは、とりさん

板橋区立美術館内は撮影OK。
浦和美術館は展覧会内部は禁止です。
作品はイラストになるんでしょうか。
美術の傾向、多分野になっているようです。
一つがポップアート、日本には優れた作家がいると認識してます。
横尾忠則が元祖か。
今のものは色彩が非常にきれいで素人にもよくわかります。
美術の心を揺さぶるような表現、凄いものです。


やるじゃん、板橋

「オリベッティ」とは懐かしい!!
妹が大学に入学と同時に、タイプ部に入り、
わが家にオリベッティがやってきました。
No.8も11も面白い作品ですね。
私は絵本より図鑑の子どもだったので、
児童文学などに疎いのですが、
主張する作品と可愛い作品と幅が広い
作家さんだと思いました。

Re: タイトルなし

たいやきさん!こんにちは!

我が家からは、アプローチしやすい地理条件なので、頻繁にでかけている美術館です。江戸狩野派などのコレクションが目玉ですので、良く所蔵品展をやってくれます。所蔵品展の際は、入定無料になる、太っ腹でして、その際には見逃さないようにしています。

板橋区ゆかりの画家の作品もときどき紹介してくれます。

さらに、いつ立ち寄っても、おおむね人がいません。気の毒になるほどです。しかし、私にはこれが至福の時間でして、気に入った作品に張り付いて、何分でも観ている事ができます!!(^▽^;)

今回トイレにネズミがいたので、驚いて(喜んで)撮影しておきました。こういうのも「盗撮」になるのだろうか(笑)

Re: タイトルなし

大原かずのりさん、こんにちは

絵本の世界では、日本でもそれなりに有名な画家だと思いますし、ファンの方も多いと思います。

絵本作家になる前も、アメリカやイタリアでは、デザイナーとしてはすでにトップクラスの承認を得ていたのではないでしょうか?

ご覧の通りセンスも抜群だと私は思います。(*^^*)

板橋区は23区でも北の方にあって、荒川を越えると埼玉県ですので、さいたま市民から見ても身近な東京都23区なのですねぇ。

ここは、中仙道という街道が通っていて、川を渡った先には戸田宿、蕨宿、浦和宿、大宮宿と宿場が続き、昔はにぎわった界隈だと思います。

板橋区側には、江戸時代は加賀藩の下屋敷があり、高島平という河川敷では、当時最新の兵法(大砲や鉄砲の実践)を実験した場所もありました。

なかなか面白いエリアだと思います(*^^*)

この画家は知りませんでした!
当時としてはかなり斬新なデザインだったのでしょうか。今見てもなかなか面白そうです。
板橋区、調べたら埼玉の側ですね。
相変わらず土地勘ないですが(^o^;)、23区はいつか制覇したいです。

板橋区の美術館はいつも展示が変わっていますね
他とは違う視点で見せたいものを選んでいるのでしょう
来て欲しいもあるのですが、それよりも見せたい気持ちがまさっている気がします
気取っていないところもいいですね
トイレまで飾っているのも面白いですね

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Author:torikera
季節の野草や身近な自然の写真のご紹介、トレイルランやポタリング、マウンテンバイクの記事、掘り出しモンCDアルバムなど音楽の話題、美味しい日本酒や蕎麦について、最近は庚申塔・石仏・富士塚・力石など石や塚などにも興味津々!とりとめのない記事ばかりですがよろしくお願いします。

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