水道民営化の源流~その7~
- 2021/05/17
- 14:22
漂流か定住か 都市から始まる水の自主管理(前編)
山本喜浩
プロローグ
「先生はホームレスになったの?」
女の子は主人公の女性を見上げて訊ねます。
「いいえ、違います。私はハウスレスになっただけですよ」
女性は笑みを浮かべて応えました。
2008年のリーマン・ショックは彼女が代用教員を務めていた人口300人ほどの小さな街を直撃しました。石膏採掘とその加工工場で栄えた企業城下町―ネバタ州の砂漠に隣接する陸の孤島―エンパイアは企業倒産で立ち行かなくなり、全員で肩を組めた親密な共同体は崩壊、町は地図上の単なる地名になりました。
町を追いやられた60歳過ぎの主人公は、生活必需品と目いっぱいの想い出をキャンピングカーに詰め込みノマド(放浪者)の道を走りだしたのです。
2021年アカデミー賞を獲得した映画「ノマドランド」(注1)のシーンです。

(映画「ノマドランド」より)
2008年9月、アメリカの一投資銀行にすぎないリーマンブラザーズの経営破綻は、巨大隕石が落下したごとくに金融クラッシュの波紋を広げ、世界規模の金融危機を招きました。
日本では、大量の非正規労働者が派遣切りに遭って路頭に迷い、その年の年末日比谷公園に「年越し派遣村」が設営されます。
震源地のアメリカでは年金(401K年金が暴落)を失う人、住宅ローンを払えずに家を追われた人が続出、中間層の下落が止まらずに格差社会が拡大します。車社会アメリカならではの車上生活をするノマドも急増しました。
ノマドは資本主義社会からのエクソダス(脱出者)であり、現代版の逃散者(注2)でもあります。そしてコロナ禍の現在、潜在的な逃散者が世界でも日本でもその数を増やし続けています。
漂流か定住か スペイン・バルセロナでの住まいと水の闘い
2008年9月。リーマン・ショックはEU加盟諸国にも深刻なダメージを与えました。特にギリシャとスペインは国が財政破綻寸前まで追い込まれます。
スペイン経済はGDP成長率3~4%と堅実に推移していましたが金融危機で一変。翌2009年にはGDP成長率はマイナス3.7%に急落。不動産バブルが弾けて人びとは家を失い、失業者が急増しました。
政府は、不良債権を抱え込んだ銀行を救済するために膨大な公的資金を注入します。その結果、国の財政は悪化。EUの財政規律(財政赤字を対GDP比3%以内に抑える)(注3)を守るため公務員の賃金カット、年金の切り下げなどを皮切りに、福祉や教育そして医療などの公共サービス予算を大幅に削減しました。
ようするに、スペイン政府は既存の体制を維持するために人々の生活を踏みにじったのです。
2012年2月。スペインの失業率は21.3%に上昇。さらに青年の失業率は43.5%(翌年には55.7%まで上昇)にのぼりました。住宅危機は深刻で約40万もの家族が立ち退きを迫られ、340万件の不動産が空き家になりました。アメリカ同様にハウスレスが街にあふれ出し、人々の怒りは沸点に近づいています。そんな状況のなか・・
2013年2月5日。住宅危機問題の政府広聴会が開かれます。証言台に立った住宅ローン被害者の会(PAH)の代表・アダ・クラウ・バリャーヌは家を失った人々の惨状、政府の住宅政策の貧困を10分ほど証言したところで、原稿を伏せます。
そして視線を、彼女の前に証言していたスペイン銀行協会の書記長代理に向けると、こう言い放ちました。

「この男は犯罪者です。彼は金融の専門家なんかではありません。住宅ローン問題などの経済危機を引き起こして、経済を崩壊させたスペイン金融機関のトップの1人です。みなさんは、こんな男を『金融専門家』と呼ぶつもりですか」
会場は一瞬静まり返り、直後に騒然となります。
議長はアダ・クラウに向かって、「非常に重大な個人攻撃である」と撤回を求めますが、
彼女はゆっくりと首を振り無言で拒否しました。
この「犯罪者呼ばわり」はメディアで大きな反響を呼び、アダ・クラウは一部では批判されますが、1週間後の世論調査では国民の90%が彼女とPAH(住宅ローン被害者の会)を支持していることが判明します。
2013年7月。アダ・クラウ・バリャーヌが下着姿で機動隊に連行される衝撃的な写真がバルセロナの新聞紙面を飾りました。

アダ・クラウは銀行から立ち退きを命じられた家族と共にバリケードを築いて立て籠もり、機動隊に強制連行されたのです。
バルセロナにおいてPAHの運動がここまでラジカルに走ったのには国際観光都市ならではの事情がありました。
バルセロナ市はかねてから観光誘致事業を積極的に打ち出します。その一環として個人住宅を宿泊施設に転用する民泊を奨励しました。そのため賃貸アパートの多くが利益率の高い民泊に乗り換え、バルセロナのアパートの物件不足を招き、家賃が高騰します。
そんな観光都市をリーマン・ショックが直撃。スペインの中でも最も深刻な住宅危機にバルセロナは陥ったのです。
ところで、住宅ローンを支払えない人や立ち退きを迫られる人々の権利を守るためにラジカルに闘う女、アダ・クラウ・バリャーヌ(47歳)はどんな人物でしょう。
アダ・クラウはフランコ独裁政権末期の1974年、バルセロナに生まれます。
バルセロナはスペイン内乱時には反フランコの拠点になった都市ですが、それ以前から労働運動・組合運動が市民生活に根付いている港街で、アナーキストのアクティビストを数多く輩出したことでも知られています。そんな背景のある街で育ったアダ・クラウは15歳で湾岸戦争反対の抗議デモを経験。
バルセロナ大学に進み哲学を専攻。一時演劇に熱中しますが26歳の時に「反G8運動」に関わったのを機に、欧米の市民と一体となった反グローバリゼーション運動(注4)に身を投じていきます。
世界銀行への抗議活動、イラク戦争反対闘争、地球温暖化阻止のための気候正義などスペイン新左派運動の先頭に立ち続けました。そして、2009年。
リーマン・ショックで露呈した住宅危機に直面して「住宅ローン被害者の会」(PAH)を設立。
それから5年後にはPAH代表を辞任。地域政党の設立に奔走。2014年5月に政治団体「グアニェム・バルサローナ」(勝ち取ろうバルセロナ)を立ち上げます。
2015年2月。「バルセロナ・イン・コモン」(共同バルセロナ)(注5)と党名変更。主な公約を住居の権利拡充、エネルギー(電気・水)の地域主権の確立、市民生活を犠牲にしない観光都市の再建などを掲げて地方選挙に臨みました。
結党まもないバルセロナ・イン・コモンは11議席を獲得して第1党に躍り出ると、
2015年5月24日。アダ・クラウはバルセロナ・イン・コモンの代表として
バルセロナ市初の女性市長に選出されました。

この時アダ・クラウ41歳。一児の母でもある彼女はガウディのサグラダファミリアにほど近い簡素なアパートに暮らし、市長2期目の現在もそのアパートから市庁舎に通っていると伝えられています。
始まりは バルセロナ水道の市民管理への運動から
“世界一ラジカルな市長か”というタイトルで英紙ガーディアンが特集を組んだほど世界の顔となったアダ・クラウですが、彼女の運動母体であるバルセロナ・イン・コモンの出発点には水道をめぐる粘り強い市民の活動がありました。
2008年のリーマン・ショックはバルセロナの住宅危機と同時に水の危機をもたらしました。押し寄せる不況で水道料金を払えない所帯に対して水道事業者は水道を止めました。
バルセロナ市の水道事業は永いことフランスの水メジャーのスエズ社の現地法人アグバー社が占有してきました。しかも、水道料金は同じカタルーニャ州内の公営水道下の自治体よりも平均で22%も高く、もっとも安い自治体の水道と比較すると91%(注6)も割高でした。
バルセロナ市で水の貧困家庭が続出。人々の怒りは市民団体「命の水市民連合」を誕生させました。命の水市民連合は後にバルセロナ・イン・コモンへと発展するのですが・・この続きは後編でお伝えします。
エピソード
「この家で暮らさないか?」
車上生活で知り合った男が主人公に好意を寄せ、定住を勧めます。
「君の部屋も用意する。どうだい」
彼女は静かに首をふります。
とにかく、あらゆるしがらみから自由でありたいとでも言うように男の申し出を断り、季節労働者として生活費を稼ぎなからアメリカ南西部を放浪し続けます。

(映画「ノマドランド」から)
映画「ノマドランド」の主人公には、ゆるぎない誇りと決意がみなぎります。
その決意はアメリカ社会への深い絶望に裏打ちされているかのようでもありますが、はたして彼女は資本の囲い込みから無事に逃げおおせるのでしょうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
注1) 映画「ノマドランド」:2021年アカデミー賞の受賞作。ドキュメンタリーとドラマがハイブ
レッドされた作品で、登場人物のほとんどが本物の車上生活者という斬新なスタイル。監督
は1982年北京生まれの中国女性で長編映画は本作が2本目での快挙です。前年のヒット映画
「ジョーカー」同様に格差社会アメリカをテーマにした作品が受賞、アカデミー賞の選考基準
が様変わりしています。
注2) 逃散:一揆とならぶ農民の抵抗運動。武士階級にとって村ごとの集団脱走(サボタージュ)
は脅威で各藩は厳しく取りしまった。逃散者の多くが江戸に逃げ込み、100万人都市に膨れ
上がったとも言われます。
注3) EUの財政規律:スペイン政府とEU官僚との関係は「水道民営化の源流・その4」ギリシャ
危機編を参照してください。
tokyo924mizu.blog.fc2.com/blog-entry-70.html
注4 )反グローバリゼーション運動:1999年米シアトルで開催されたWTO総会への抗議行動がそ
の嚆矢とされる。翌年のIMF年次会議の阻止活動など、資本“帝国”の世界支配に対する欧米
市民が連帯した反対運動。現在はグローバル・ジャスティス運動と呼ばれています。
注5 )バルセロナ・イン・コモン:現地表記ではバルセローナ・アン・クムー。市民団体が母体の
地域政党だが、緑の党、カタルーニャ統一左翼、ポデモスなどの政党も参加。
注6) 91%も割高:TNIトランスナショナル・インストテュ―トのHP。再公営化という選択 世界
の民営化の失敗から学ぶ~その第10章「スペイン、カタルーニャ地方で民主的な公営水道を
取り戻す市民運動の波」から。
www.tni.org/files/publication-downloads/chapter10_remunicipalisation.pdf
2021・5・17 記
山本喜浩
プロローグ
「先生はホームレスになったの?」
女の子は主人公の女性を見上げて訊ねます。
「いいえ、違います。私はハウスレスになっただけですよ」
女性は笑みを浮かべて応えました。
2008年のリーマン・ショックは彼女が代用教員を務めていた人口300人ほどの小さな街を直撃しました。石膏採掘とその加工工場で栄えた企業城下町―ネバタ州の砂漠に隣接する陸の孤島―エンパイアは企業倒産で立ち行かなくなり、全員で肩を組めた親密な共同体は崩壊、町は地図上の単なる地名になりました。
町を追いやられた60歳過ぎの主人公は、生活必需品と目いっぱいの想い出をキャンピングカーに詰め込みノマド(放浪者)の道を走りだしたのです。
2021年アカデミー賞を獲得した映画「ノマドランド」(注1)のシーンです。

(映画「ノマドランド」より)
2008年9月、アメリカの一投資銀行にすぎないリーマンブラザーズの経営破綻は、巨大隕石が落下したごとくに金融クラッシュの波紋を広げ、世界規模の金融危機を招きました。
日本では、大量の非正規労働者が派遣切りに遭って路頭に迷い、その年の年末日比谷公園に「年越し派遣村」が設営されます。
震源地のアメリカでは年金(401K年金が暴落)を失う人、住宅ローンを払えずに家を追われた人が続出、中間層の下落が止まらずに格差社会が拡大します。車社会アメリカならではの車上生活をするノマドも急増しました。
ノマドは資本主義社会からのエクソダス(脱出者)であり、現代版の逃散者(注2)でもあります。そしてコロナ禍の現在、潜在的な逃散者が世界でも日本でもその数を増やし続けています。
漂流か定住か スペイン・バルセロナでの住まいと水の闘い
2008年9月。リーマン・ショックはEU加盟諸国にも深刻なダメージを与えました。特にギリシャとスペインは国が財政破綻寸前まで追い込まれます。
スペイン経済はGDP成長率3~4%と堅実に推移していましたが金融危機で一変。翌2009年にはGDP成長率はマイナス3.7%に急落。不動産バブルが弾けて人びとは家を失い、失業者が急増しました。
政府は、不良債権を抱え込んだ銀行を救済するために膨大な公的資金を注入します。その結果、国の財政は悪化。EUの財政規律(財政赤字を対GDP比3%以内に抑える)(注3)を守るため公務員の賃金カット、年金の切り下げなどを皮切りに、福祉や教育そして医療などの公共サービス予算を大幅に削減しました。
ようするに、スペイン政府は既存の体制を維持するために人々の生活を踏みにじったのです。
2012年2月。スペインの失業率は21.3%に上昇。さらに青年の失業率は43.5%(翌年には55.7%まで上昇)にのぼりました。住宅危機は深刻で約40万もの家族が立ち退きを迫られ、340万件の不動産が空き家になりました。アメリカ同様にハウスレスが街にあふれ出し、人々の怒りは沸点に近づいています。そんな状況のなか・・
2013年2月5日。住宅危機問題の政府広聴会が開かれます。証言台に立った住宅ローン被害者の会(PAH)の代表・アダ・クラウ・バリャーヌは家を失った人々の惨状、政府の住宅政策の貧困を10分ほど証言したところで、原稿を伏せます。
そして視線を、彼女の前に証言していたスペイン銀行協会の書記長代理に向けると、こう言い放ちました。

「この男は犯罪者です。彼は金融の専門家なんかではありません。住宅ローン問題などの経済危機を引き起こして、経済を崩壊させたスペイン金融機関のトップの1人です。みなさんは、こんな男を『金融専門家』と呼ぶつもりですか」
会場は一瞬静まり返り、直後に騒然となります。
議長はアダ・クラウに向かって、「非常に重大な個人攻撃である」と撤回を求めますが、
彼女はゆっくりと首を振り無言で拒否しました。
この「犯罪者呼ばわり」はメディアで大きな反響を呼び、アダ・クラウは一部では批判されますが、1週間後の世論調査では国民の90%が彼女とPAH(住宅ローン被害者の会)を支持していることが判明します。
2013年7月。アダ・クラウ・バリャーヌが下着姿で機動隊に連行される衝撃的な写真がバルセロナの新聞紙面を飾りました。

アダ・クラウは銀行から立ち退きを命じられた家族と共にバリケードを築いて立て籠もり、機動隊に強制連行されたのです。
バルセロナにおいてPAHの運動がここまでラジカルに走ったのには国際観光都市ならではの事情がありました。
バルセロナ市はかねてから観光誘致事業を積極的に打ち出します。その一環として個人住宅を宿泊施設に転用する民泊を奨励しました。そのため賃貸アパートの多くが利益率の高い民泊に乗り換え、バルセロナのアパートの物件不足を招き、家賃が高騰します。
そんな観光都市をリーマン・ショックが直撃。スペインの中でも最も深刻な住宅危機にバルセロナは陥ったのです。
ところで、住宅ローンを支払えない人や立ち退きを迫られる人々の権利を守るためにラジカルに闘う女、アダ・クラウ・バリャーヌ(47歳)はどんな人物でしょう。
アダ・クラウはフランコ独裁政権末期の1974年、バルセロナに生まれます。
バルセロナはスペイン内乱時には反フランコの拠点になった都市ですが、それ以前から労働運動・組合運動が市民生活に根付いている港街で、アナーキストのアクティビストを数多く輩出したことでも知られています。そんな背景のある街で育ったアダ・クラウは15歳で湾岸戦争反対の抗議デモを経験。
バルセロナ大学に進み哲学を専攻。一時演劇に熱中しますが26歳の時に「反G8運動」に関わったのを機に、欧米の市民と一体となった反グローバリゼーション運動(注4)に身を投じていきます。
世界銀行への抗議活動、イラク戦争反対闘争、地球温暖化阻止のための気候正義などスペイン新左派運動の先頭に立ち続けました。そして、2009年。
リーマン・ショックで露呈した住宅危機に直面して「住宅ローン被害者の会」(PAH)を設立。
それから5年後にはPAH代表を辞任。地域政党の設立に奔走。2014年5月に政治団体「グアニェム・バルサローナ」(勝ち取ろうバルセロナ)を立ち上げます。
2015年2月。「バルセロナ・イン・コモン」(共同バルセロナ)(注5)と党名変更。主な公約を住居の権利拡充、エネルギー(電気・水)の地域主権の確立、市民生活を犠牲にしない観光都市の再建などを掲げて地方選挙に臨みました。
結党まもないバルセロナ・イン・コモンは11議席を獲得して第1党に躍り出ると、
2015年5月24日。アダ・クラウはバルセロナ・イン・コモンの代表として
バルセロナ市初の女性市長に選出されました。

この時アダ・クラウ41歳。一児の母でもある彼女はガウディのサグラダファミリアにほど近い簡素なアパートに暮らし、市長2期目の現在もそのアパートから市庁舎に通っていると伝えられています。
始まりは バルセロナ水道の市民管理への運動から
“世界一ラジカルな市長か”というタイトルで英紙ガーディアンが特集を組んだほど世界の顔となったアダ・クラウですが、彼女の運動母体であるバルセロナ・イン・コモンの出発点には水道をめぐる粘り強い市民の活動がありました。
2008年のリーマン・ショックはバルセロナの住宅危機と同時に水の危機をもたらしました。押し寄せる不況で水道料金を払えない所帯に対して水道事業者は水道を止めました。
バルセロナ市の水道事業は永いことフランスの水メジャーのスエズ社の現地法人アグバー社が占有してきました。しかも、水道料金は同じカタルーニャ州内の公営水道下の自治体よりも平均で22%も高く、もっとも安い自治体の水道と比較すると91%(注6)も割高でした。
バルセロナ市で水の貧困家庭が続出。人々の怒りは市民団体「命の水市民連合」を誕生させました。命の水市民連合は後にバルセロナ・イン・コモンへと発展するのですが・・この続きは後編でお伝えします。
エピソード
「この家で暮らさないか?」
車上生活で知り合った男が主人公に好意を寄せ、定住を勧めます。
「君の部屋も用意する。どうだい」
彼女は静かに首をふります。
とにかく、あらゆるしがらみから自由でありたいとでも言うように男の申し出を断り、季節労働者として生活費を稼ぎなからアメリカ南西部を放浪し続けます。

(映画「ノマドランド」から)
映画「ノマドランド」の主人公には、ゆるぎない誇りと決意がみなぎります。
その決意はアメリカ社会への深い絶望に裏打ちされているかのようでもありますが、はたして彼女は資本の囲い込みから無事に逃げおおせるのでしょうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
注1) 映画「ノマドランド」:2021年アカデミー賞の受賞作。ドキュメンタリーとドラマがハイブ
レッドされた作品で、登場人物のほとんどが本物の車上生活者という斬新なスタイル。監督
は1982年北京生まれの中国女性で長編映画は本作が2本目での快挙です。前年のヒット映画
「ジョーカー」同様に格差社会アメリカをテーマにした作品が受賞、アカデミー賞の選考基準
が様変わりしています。
注2) 逃散:一揆とならぶ農民の抵抗運動。武士階級にとって村ごとの集団脱走(サボタージュ)
は脅威で各藩は厳しく取りしまった。逃散者の多くが江戸に逃げ込み、100万人都市に膨れ
上がったとも言われます。
注3) EUの財政規律:スペイン政府とEU官僚との関係は「水道民営化の源流・その4」ギリシャ
危機編を参照してください。
tokyo924mizu.blog.fc2.com/blog-entry-70.html
注4 )反グローバリゼーション運動:1999年米シアトルで開催されたWTO総会への抗議行動がそ
の嚆矢とされる。翌年のIMF年次会議の阻止活動など、資本“帝国”の世界支配に対する欧米
市民が連帯した反対運動。現在はグローバル・ジャスティス運動と呼ばれています。
注5 )バルセロナ・イン・コモン:現地表記ではバルセローナ・アン・クムー。市民団体が母体の
地域政党だが、緑の党、カタルーニャ統一左翼、ポデモスなどの政党も参加。
注6) 91%も割高:TNIトランスナショナル・インストテュ―トのHP。再公営化という選択 世界
の民営化の失敗から学ぶ~その第10章「スペイン、カタルーニャ地方で民主的な公営水道を
取り戻す市民運動の波」から。
www.tni.org/files/publication-downloads/chapter10_remunicipalisation.pdf
2021・5・17 記