暢子は沖縄を離れるときにビーザンを履いていたが、東京に着いた時もビーサンのままだった。
当然、初めての東京のレストランに入る時もビーサンのままだ。
これを見た沖縄出身者は複雑な思いだった。
まず、沖縄ではビーザンとは呼ばない。
正式名称は「島ぞうり」と呼ぶ。
その昔、沖縄は貧しくて靴も満足に買えない不遇の時代に、古タイヤを再生利用したのが島ぞうりの発祥で、これを月星が事業承継して、現在でも島ぞうりを作り続けている。
今でも沖縄県民は島ぞうりが大好きで、10人ぐらいの寄り合いにも皆が島ぞうりを履いてくるので、新しいものがなくなる、という悲しい話は今でもあるそうだ。
そういえば、暢子を見送る時に、比嘉家の全員が島ぞうりを履いていた。それぐらいポピュラーな履物が島ぞうりということである。