ITエコシステムという欺瞞
最近乱用されている気のする言葉。エコシステム。
エコっていうが環境問題の話ではない。
我々がここを作るから、あなたはここを作りましょう。補完しあって包括的な(IT)環境を構築し、利用者の利便性を高めましょう。これにより、利用者もハッピー、生み出される利益をあなたと私で分けあって、我々もハッピー。
こんな話だ。
プラットフォームベンダーがその上で動作するアプリケーションを開発するベンダーや接続されるデバイスを開発するベンダーなどとの関係を説明するときなどにこの言葉、エコシステムが使われる。そのために、そのプラットフォームのパートナーにはしかるべき技術資料やセミナーなどが提供されるし、マーケティング的な施策も行われる。
良い話ではないかなどと騙されてはいけない。
あなたと私は平等なパートナーではない。プラットフォームという農地に小作人として入ってくれという戦前あった農地のような話だ。私の農地を皆さん耕していいですよ、そのかわり年貢を収めてね、という話だ。不平等な地主と小作人、これがエコシステムという綺麗な言葉の本質だ。
小作人にも階級があり、極めて珍しい作物しか作っておらず収穫量が少なかったり、あまり売れることが期待できなかったりする場合には地主からの対応も悪くなる。良い土地を与えられなかったり、土地が限られている場合には出て行くことを要求されたりする。
しかも、土地の上でのルールや作物の販売のルールは地主が決める。どんなに不条理であっても守らないと追放される。
ある作物が人気になると、地主自らがそれを作り始める。自分が地主なので、自分が有利なようにルールを変えることも、一番良い土地を利用するようにすることも可能だ。パートナーが一夜にしてコンペティターになる。
その時に気づいてももう遅い。共存・共生などというのは幻想だったと。
エコシステム。この言葉をベンダーが使い出したら、貧乏農場*1を思い出すと良い。
*1:初期の人生ゲームにあった一生こき使われる農場