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相続税評価額の調べ方は? 不動産(土地・建物)・株式などの計算方法を解説

相続税評価額の調べ方は? 土地・不動産・株式などの計算方法も解説

親族が亡くなって相続が発生したときは、相続税を収めるために相続税評価額がいくらなのかを知らなければなりません。相続税評価額は相続する財産によって計算式が異なります。

この記事では相続税評価額の概要や調べ方を示し、土地、建物、株式といった代表的財産について相続税の計算方法をわかりやすく紹介します。

記事の目次

相続税評価額とは

相続税評価額とは、被相続人から受け継いだ財産にかかる相続税や、生きている人から贈与された財産にかかる贈与税を計算する際に必要となる評価額です。相続税評価額で用いられる財産の評価方法は、財産の種類ごとに規定されています。つまり、土地、建物、株式というように財産の種類が異なれば、相続税評価額の調べ方や計算方法が変わります。そのため、納める税金額を把握するには、相続や贈与の対象となる財産を分類したうえで、種類ごとに計算しなければなりません。

【土地】相続税評価額の調べ方・計算方法

土地の相続税評価額の基準

それではまず、不動産相続税でよく問題となる土地について相続税評価額を調べてみましょう。土地の評価額を決める際に基準となるのは、宅地や山林というような土地の用途(地目)、交通の便の良さや商業施設の充実など土地周辺の状況、土地の形や道路への面し方など土地の使い勝手の良さ、土地上の建物の有無などです。土地の相続税評価額は1年間に起こりうる価格変動に配慮して、土地取引の実情を見ながら、国土交通省が毎年1回公表する公示価格よりも約2割安くなるように設定されています。

土地の相続税の計算方法

土地の相続税を計算する場合には2種類の方式、つまり路線価方式または倍率方式のうち、どちらか一方を用いて相続税評価額を算出します。

路線価方式

路線価方式では、毎年7月1日に国税庁が改定する路線価を用いて相続税評価額を計算します。路線価とは、国税庁が課税対象となる財産を評価するための基準のひとつであり、主要道路に面する標準的な宅地1平米あたりの価格です。路線価は日本全国に存在するすべての道路に設定されているわけではありません。したがって、相続税評価額の算出で路線価方式が使えるのは、路線価が公表されている道路に面する土地だけです。路線価方式による相続税評価額の基本的な計算式は、次の式のようになります。

相続税評価額=路線価×各種補正率×土地の面積

相続税評価額は土地の形状や道路への面し方によって決まり、形がいびつだったり、間口が狭かったりする使い勝手の悪い土地は評価額が下がります。土地の使い勝手の悪さを評価額に反映させる役目を担うのが、各種補正率です。多様な補正率のなかでも特に使用頻度が高いのが、奥行距離によって決まる奥行価格補正率です。

それでは、路線価が1平米あたり12万円というひとつの道路にだけ面する宅地の場合を例にとって相続税評価額を計算してみましょう。評価を行う宅地は道路に面する部分が10m、奥行が9mという長方形で、普通住宅地区に存在すると仮定します。国税庁が公表をしている奥行価格補正率表を参照すると、普通住宅地区で奥行9mの場合、奥行価格補正率は0.97です。

相続税評価額の計算例

これらを上記の式に入れて計算すると、相続税評価額は1047万6000円となります。

相続税評価額=12万円×0.97×10×9=1047万6000円

(式1)はひとつの道路にだけ面している宅地で使える式であり、面する道路が2つに増えると計算が複雑になるので、ここでは割愛します。
なお、実際の土地取引によって決まる価格を実勢価格と呼び、路線価とは異なるものなので、相続税評価額を計算する際に間違えて使用しないように注意しましょう。

倍率方式

路線価が公表されていない地域の土地について相続税評価額を調べる場合には、固定資産税評価額に国税庁が地域ごとに設定した倍率をかけて算出する倍率方式を選択します。倍率方式で用いる倍率は土地が存在する場所や地目によって異なるので、国税庁のホームページなどで評価倍率表を参照し、倍率を確認しなければなりません。

例えば、北海道函館市で宅地の倍率を見てみると、岩戸町の倍率は1.1倍、鉄山町の倍率は1.0倍、鶴野町の倍率は0.9倍です。したがって、岩戸町のように倍率が1.1倍ならば固定資産税評価額×1.1で、鶴野町のように倍率が0.9倍ならば固定資産税評価額×0.9で相続税評価額が計算できます。

借地の場合の計算方法

相続税は土地の所有権を相続した人だけに課せられるものではなく、借地権を相続した人にも課せられます。借地権とは地代を払っている土地に建物を建てた場合に、交わした契約にしたがってその敷地を借りる権利です。

借地上の建物を相続した場合には、土地の相続税評価額に借地権割合を掛け算して求めた金額が相続税評価額です。借地権割合は30%~90%の範囲で設定され、路線価図や評価倍率表に割り振られたA(90%)からG(30%)までのアルファベットを見て判断します。

借地の相続税評価額=土地の相続税評価額×借地権割合

電卓を使う男性のイメージ

(画像/PIXTA)

土地の相続税評価額を低減させる方法

土地の相続税評価額は、小規模宅地等の特例で大幅に下げられる可能性があるので要チェックです。小規模宅地等の特例は節税効果が大きく、設定された要件を満たすことで、被相続人が住んでいた家の敷地(特定居住用宅地)や事業用に使用していた土地(特定事業用宅地)が最大8割減で評価されます。

特定居住用宅地の相続でこの特例が適用されるには、相続する人が配偶者か被相続人と同居していた親族に該当しなければなりません。ただし、被相続人に配偶者も同居親族もいない場合に限っては、3年以上借家暮らしで自分の家を所有していない別居親族が相続する場合も認められます。
なお、特定居住用宅地で特例が適用される土地の面積は330平米まで、特定事業用宅地は400平米まで、両方利用すると最大730平米です。これを超える面積の分は評価額の減額はありませんが、広い土地の相続でもこれらの特例を利用すれば、大幅な減税が見込めるはずです。

【建物】相続税評価額の調べ方・計算方法

建物の相続税評価額の基準

相続した財産が建物の場合には、固定資産税評価額が相続税評価額の基準です。ただし、被相続人自身が利用していた建物、賃貸アパート、一軒家の貸家、マンションというような区分で相続税評価額の計算方法が変わってくるので、個別に計算方法を押さえておかなければなりません。

建物の相続税の計算方法

被相続人が利用していた場合

相続対象の建物を被相続人が自ら利用していた場合には、相続税評価額の計算式は次の式で表されるため、相続税評価額は固定資産税評価額と同額です。

相続税評価額=固定資産税評価額×1.0

固定資産税評価額は自治体から年に一回、固定資産税納税通知書と一緒に送付される固定資産税課税明細書で確認できます。固定資産税課税明細書の家屋欄に「価格」または「評価額」の項目があるので探してください。そこに書かれた金額が固定資産税評価額であり、相続税評価額です。

賃貸アパートとして貸していた場合

相続対象の建物を被相続人が賃貸アパートとして貸していた場合には、相続税評価額の計算式として、次の(※式4)を用います。

相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) (※式4)

ここで、借家権割合とは第三者に貸し付けている賃貸物件の相続税評価額を調整するための係数のひとつです。居住者のいる建物は空家よりも価値が低いため、評価額を下げる必要があります。そのため、借家権割合は全国一律30%に設定されています。
借家権割合の設定はその土地を管轄する国税庁が管理しています。将来的に変動する可能性もあるので、計算時には必ず国税庁のWebサイトで確認しましょう。

また、実際に貸している部屋の床面積合計を、建物の全部屋を合計した床面積で割って求める賃貸割合も、相続税評価額を下げるために使われます。

ここでどのように計算するのか、具体例を示します。建物部分の固定資産税評価額が2億円で、借家権割合が30%に設定されている賃貸アパートを相続することになったとしましょう。このアパートにある全部屋の床面積合計が500平米、貸している部屋の床面積合計が200平米だった場合に賃貸割合を求めると、200平米を500平米で割って40%となります。上記の式を用いて相続税評価額を計算すると、以下のようになります。

2億円×(1-0.3×0.4)=1億7600万円

電卓と一戸建てのイメージ

(画像/PIXTA)

一軒家など第三者に貸していた場合

次に被相続人が、建物を分割して複数人に貸す賃貸アパートではなく、一軒家などを所有して建物をまるごと第三者に貸していた場合について考えてみましょう。この場合の計算式は(式4)の賃貸割合が1となるため簡略化され、下記の式になります。

相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合) 

計算例として、借家権割合が30%の地域で固定資産税評価額が3000万円の一軒家を貸していた場合を考えましょう。この場合は、以下のようになります。

相続税評価額=3000万円×(1-0.3)=2100万円

マンションの場合

被相続人が住んでいた分譲マンションを相続した場合には、相続税評価額を建物と土地に分けて算出する際に注意が必要です。建物部分については固定資産税評価額を相続税評価額としてそのまま流用できますが、土地部分はそうはいきません。土地部分は路線価方式または倍率方式でマンションの敷地全体の相続税評価額を計算しておき、それに敷地権割合をかけることで算出します。

マンションの場合

敷地権割合とは、被相続人が単独で権利を持っていた専有部分の床面積を、マンションの全専有部分の床面積合計で割って得られる割合で、持分割合とも呼ばれています。敷地権割合は、マンションの売買契約書や登記事項証明書で確認が可能です。

建物の相続税評価額を低減させる方法

建物の相続税評価額は、基本的に被相続人が亡くなった日の状況で決まり、対象の建物を被相続人の死亡日に第三者が借りていれば相続税評価額は下がります。賃貸アパートの場合には、被相続人の死亡日に空室があってもそれが一時的な空室だと客観的に判定されれば、空室を減らして賃貸割合を上げることで、相続税評価額の低減が可能です。

【株式】相続税評価額の調べ方・計算方法

株式の相続税評価額の基準

株式を相続した場合には、その株式が上場されているか、上場されていないかの1点で相続税評価額の計算方法が変わります。基本的には、株式を現金に換算するといくらになるかが相続税評価額を決めるポイントです。

株式の相続税の計算方法

上場株式

上場株式の相続税評価額は、1株あたりの金額×保有株数で計算します。しかし、株価は変動するものであり、一定していません。そこで1株あたりの金額は原則として、被相続人が死亡した日の終値、被相続人が死亡した月の毎日の終値を平均した価格、被相続人が死亡する前月の毎日の終値を平均した価格、被相続人が死亡する前々月の毎日の終値を平均した価格のなかから、最も低い価格を採用して計算に使用することが定められました。ただし、被相続人が死亡した日と市場の休みが重なった場合には、死亡日に最も近い日の終値を採用し、連休の中日に亡くなって該当する終値が2つある場合には、終値の平均値を採用します。

非上場株式

非上場株式の相続については、専門知識がないと株式を評価しにくいため、税理士の力を借りるのが一般的です。非上場株式の相続税評価額を算定する方法には、純資産価額方式、類似業種比準方式、配当還元方式の3種類があります。ここでは3種類の特徴を簡単に紹介するにとどめます。
純資産価額方式は会社の総資産や負債に基づいて株式の評価額を決める方法です。主に規模の小さな会社の株式を評価する際に用います。
類似業種比準方式は、評価対象の会社をその類似業種の上場企業と配当金額、利益金額、純資産価額という3つのポイントで比較することによって評価する方法です。類似業種比準方式は主に規模の大きな会社の評価に用い、中規模の会社を評価する際は類似業種比準方式と純資産価額方式を併用します。
配当還元方式とは株式の所有によって1年間に受け取れる配当金額の10倍を株式の評価額とみなして評価する方法です。

株式の相続税評価額を低減させる方法

中小企業の経営者が亡くなり、その後継者が非上場株式を相続している場合には、事業承継税制を利用できるかもしれません。この税制を利用するには「特例承継計画」を都道府県に提出し、定められた要件を満たしたうえで認定を受けます。さらに認定書の写しと申告書を税務署に提出する必要があるなどの高いハードルがあります。しかしこのハードルをクリアできれば、非上場株式の贈与・相続時に納税の猶予を受けられるはずです。
また、類似業種比準方式の評価に使われる配当金、利益、純資産を引き下げることによって、株式の評価額を低減させるという方法もあります。

まとめスーモくん

  • 土地の相続税評価額は、路線価が設定されている地域では路線価方式で、路線価がない地域は倍率方式で計算する
  • 建物の相続税評価額は、被相続人が居住していた家屋と第三者に貸していた建物では計算式が異なり、第三者に貸していた建物の方が相続税評価額は低い
  • 株式の相続税評価額は上場株式と非上場株式で異なる。上場株式については1株あたりの金額×保有株数で計算できる

取材・文/楠戸伊緒里

●監修/髙野 友樹さん (公認 不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士) 株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 不動産会社にて仲介、収益物件管理を経験した後、国内不動産ファンドでAM事業部のマネージャーとして従事。
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