不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

独身時代に購入した都心の大規模マンション。購入時と同じ不動産会社に託してスムーズに売却/東京都中央区Wさん(30代)

東京都中央区Wさん(30代)/独身時代に購入した都心の大規模マンション。購入時と同じ不動産会社に託してスムーズに売却

施設やサービスが充実した大規模マンションに住んでいたWさんは、家族が増えるのを機に手放すことを決意。資金計画の相談から新居探し・売却までをまとめて対応してくれる不動産会社と仲介契約し、スムーズに住み替えを済ませました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都中央区
築年数 築14年
間取り・面積 1LDK(54m2)
ローン残高 4090万円
査定価格 5780万円~6480万円
売り出し価格 6280万円
成約価格 5980万円

約3年所有したマンションを、家族が増えたのを機に売却することに

2019年、都内の賃貸マンションでひとり暮らしをしていたWさん(30代)は、東京都中央区にある1LDK・54m2・4980万円のマンションを35年ローンで購入しました。出張が多くて忙しく過ごす日々。かねてから、こう感じていました。
「家に居る時間がほとんどないのに、家賃を払い続けるのはもったいない。毎月、同じ費用をかけるなら、ローン返済に充てて自分の資産にした方がいい」
購入したのは2008年に竣工した大規模マンションの一室で、最寄駅まで徒歩約10分。当時住んでいた賃貸マンションより間取りも広さも充実しているうえ、職場へのアクセスがスムーズ。築11年(2019年当時)であるものの、状態がよいのがポイントでした。
何よりWさんの心を捉えたのは、独自の共用施設やサービスだったと言います。

「宅配ボックスや共用自転車が利用できるほか、コンシェルジュが常駐していてクリーニングの受付をしてくれたり、無料で使えるジムがあったり、1階には24時間営業のスーパーもあって、願ってもないほど便利でした」

快適に暮らしていたものの、2021年12月ごろから売却を考えるようになります。

「実は入居した後に結婚し、妻と2人で住んでいたのですが、子どもを授かり、部屋が手狭になることが見えてきたのです」

Wさんはこの先のライフスタイルを考えて住み替えることを決めます。

複数の不動産仲介会社に相談した末、かつてお世話になったA社と仲介契約

妻の体への負担や、今後の子育てのことを考えると「住み慣れたエリア」で「今より広めの家に速やかに住み替える」ことがWさんにとって欠かせない条件。そうなると、資金捻出のために少しでも高値で売却する必要があるうえ、住み替えをどのような手順で進めるかも重要でした。そこでWさんは、ベストな売却の道を探るべく「一括査定サービス」「知人の不動産会社」「過去に媒介契約をした不動産会社」の3方面に相談することにします。

「それぞれに査定をお願いしたところ、手堅い金額の査定額とは別に、通常より高めに設定した『チャレンジ価格』も各社から提示され、前者が5780万円~5980万円、後者が6280万円~6480万円でした。ここで飛びぬけて高額な会社があれば、選択は変わってきたでしょう。でも各社で大きな差はなかったため、このマンションを購入するときに媒介契約をしたA社に頼もうと思いました」

Wさんがそう判断するには、訳がありました。

「理由は3つあって、ひとつはマンションを入手したときのこと。売主側の不動産会社が、いわゆる“囲い込み“をしようとしていて、物件を簡単に買わせてくれなかったのです。しかしA社の営業担当が粘り強く交渉してくれたおかげで購入できた一件があり、信頼できたのです。
2つ目は、住み替えのサポート。『新しい家が定まらないことには売却できない』と思っていたところ、A社では新居探しの提案をしてくれました。3つ目は、仲介手数料を割引きしてくれること。これらが後押しとなり、A社にお願いすることにしました」

その後、Wさんは3カ月かけて次の住まいを決め、2022年3月にA社と媒介契約を結びます。

「わが家の状況を理解してもらえているのが心強く、すべてお任せするつもりで『専属専任媒介契約』を選びました」

■囲い込みとは

「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」では、売主は一社の不動産会社に媒介を託しますが、この不動産会社が買主を見つけることを「両手仲介」、別の不動産会社が見つけてくることを「片手仲介」といいます。前者だと不動産会社が得る「仲介手数料」は倍になるので、メリットは大。そのため、指定流通機構(レインズ)を見た他社から問合わせがきても、情報を隠して独占しようとするケースがあり、これが「囲い込み」といわれていれます。売主にとっては売り時を逃し、値下げせざるを得なくなることがあるため、注意が必要です。

チャレンジ価格を試みるも一向に売れず。2カ月後に300万円を値下げ

Wさんは極力、高値を目指しつつ、無理のない価格帯にとどめるため、チャレンジ価格のなかでも下限の6280万円で売り出すことに。もし売れなければ2カ月後に300万円、4カ月後に500万円値下げするシナリオをつくり、販売をスタートします。

A社では自社のホームページや不動産ポータルサイトに物件情報をアップ。見込み客にダイレクトメールを送り、訴求を試みます。
しかし、2カ月のうちに3組の内見者が訪れたものの、成約には至りません。

「相場より300万円~400万円高かったので、それがネックだったのだと思います。A社に『そろそろ値下げする時期です』と言われ、5980万円にダウンしました」

すると1週間のうちに立て続けに3組、内見の話がきます。

「3組別々に家に迎えたのですが、あまり気に入った様子は見られなくて。
でも、後になってA社から連絡が入り、最後に訪れた1組に買ってもらえることになりました」

2022年6月、Wさんは買主からとくに条件をつけられることなく、5980万円で売買契約を結びます。

段取りよく住み替えができて大満足。新しい住まいで快適に暮らす日々

Wさんは、売買契約をしたのと同じ月に住み替え先を購入し、2022年7月に引っ越し。
翌月に買主に物件を引き渡します。

「『この価格なら早く売れたのか』というのが、素直な感想。
少しでも高く売りたかったので、正直、本当は値下げせずに待ちたい思いがありました。でも、A社のおかげで無理なく資金計画を立てられましたし、買主に引き渡し日を交渉してもらい、滞りないスケジュールで住み替えができるよう、色々と便宜を図っていただきました。
これが最善だったのだと、心から満足しています」

「今の環境を維持するのが一番」と考えたWさんは、売却したのと同じマンションの別の部屋を購入。今度の住まいは、2LDK・70m2・7980万円の物件です。

同じマンション内での住み替えイメージ

2021年12月 ・マンションの売却を考え始める
・「一括査定サービス」「知人の不動産会社」「過去に仲介契約をした不動産会社」の3方面で査定
・住み替え先の物件を探し始める
2022年3月 ・住み替え先を決める
・A社と専属専任媒介契約を結ぶ
・物件を6280万円で売り出す
2022年5月 ・物件を5980万円に値下げする
・購入者が現れる
2022年6月 ・買主と5980万円で売買契約を交わす
・住み替え先の売買契約
2022年7月 ・住み替え先に引っ越し
2022年8月 ・マンションを買主に引き渡す

まとめ

  • 高値で売りたいときは、複数の不動産会社に査定してもらい、よく比較検討すること
  • 住み替えの場合は、売却以外に新居探しや資金計画も相談に乗ってくれる不動産会社に依頼できると安心
  • 時間に余裕があるときは、チャレンジ価格で売り出し、反響を見ながら値下げするとよい

取材・文/星野 真希子 イラスト/杉崎アチャ

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