不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

専任媒介から一般媒介に切り替え、借地権付き一戸建てを希望価格で売却/東京都大田区Mさん(30代)

東京都大田区Mさん(30代)/専任媒介から一般媒介に切り替え、借地権付き一戸建てを希望価格で売却

2022年10月に住まいの買い替えを決めたMさんは、築6年の自宅一戸建ての売却活動をスタートしました。しかし思いのほか反響は鈍く、しばらくして仲介業務を依頼する不動産会社を再検討。専属専任媒介契約をやめ、複数社と一般媒介契約を結ぶと状況は一変、内見者が続々と訪れたといいます。

不動産区分 一戸建て(借地権)
所在地 東京都大田区
築年数 6年
間取り・面積 土地面積…約44m2・延床面積…約73m2・3LDK
ローン残高 約3700万円
査定価格 4700万円~5480万円
売り出し価格 5480万円
成約価格 5200万円

育児休業中に魅力的な物件に遭遇し買い替えを決意

東京都大田区のMさんが家を買い替えようと決めたのは、2022年10月のことです。

「年末が近づいてくると、今年は宝くじが当たるかもしれない、もし当たったらどこに住もうかな、なんて考えながら物件を見るのが好きなんです。ちょうど第二子の育児休業中に近所を散歩していたら、売り出されたばかりの分譲一戸建てに遭遇。広さも環境も魅力的だったので、不動産会社の担当者にいろいろ聞いてみると、今なら私の自宅が買ったときより高く売れるというんです。それを聞いて、一気に買い替えられるかもと期待感が膨らみました」

育児休業中に買い替えを決意

Mさんの物件は築6年の借地権付き一戸建てです。最寄駅から徒歩7分に立地し、周辺は静かな住宅街ながら、スーパーや病院、小学校にも近い便利な環境だといいます。

「第一子が生まれた頃に買った家です。夫と二人で買うより、看護師の私一人のほうがローン審査に通りやすいということで、私名義で購入し、返済期間35年で組んだ住宅ローンがまだ3700万円ほど残っていました。ただ、子どもが2人になって育児に手がかかり、これまで通りの働き方はできないかもしれません。今の家を売ってローンを清算し、夫婦共有名義で新しい家を買えたらいいなと漠然と考えていたところでした」

さっそくMさんは、新居候補の分譲住宅を販売する不動産会社(A社)に査定を依頼。すると、5480万円で売り出してはどうかと提案されたそうです。

「予想以上の価格でした。多少値下げしたとしても、5000万円以上で売れれば住宅ローンの残債を清算して新居の頭金もできます。迷わず売却することに決めました」

新居の購入を先行し、専任媒介で売却活動スタート

散歩中に見つけた物件が気に入ったMさんは、売却より新居の購入を先行。2022年10月に新居の契約を済ませると、自宅の売却活動に取りかかりました。

「新居は翌年6月に完成予定なので、それまでには何としても売らなければいけません。とはいえ、半年もあれば売れるだろうとそれほど心配はしていませんでした」

Mさんは新居の売主でもあるA社に売却の仲介業務を依頼。専属専任媒介契約を結び、居住中の家を5480万円で売り出しました。

「A社にとって私が新居の買主でもあるので、いろいろと便宜を図ってくれるはずだと思いました。そのため、他の不動産会社を検討することなく、専任で仲介業務を任せることにしました。担当者によると、自社に登録している顧客に私の物件を紹介する、不動産ポータルサイトに情報を掲載するなどの方法で買い手を探すということでした。ところが、売り出し直後こそ内見が入ったものの、その後はぱたりと動きが止まってしまったんです」

売り出して1カ月後、A社の担当者はMさんに価格変更を提案。早く売りたかったMさんは、提案に従って5380万円に価格を変更、そして2カ月後にはさらに価格を5200万円に下げました。

「それでも反響はなく、このままA社に任せていていいのかと不安になってきました。そこで、『不動産売却』のキーワードであれこれ調べ、大手の不動産仲介会社2社に査定を依頼、さらにネットの一括査定も利用して、早く返事が来た5社に現地査定を依頼。いろいろな不動産会社の担当者と話してみて感じたのは、広告が不足していたということです。私の物件の情報を広く流通させるためには、複数の不動産会社に仲介業務を依頼したほうがいいと判断しました」

3カ月後に一般媒介に変更、週末ごとの内見を経て成約

2023年1月、MさんはA社との専属専任媒介契約を一般媒介に変更。さらに現地査定をした5社とも一般媒介契約を結び、売却活動を再スタートしました。

「5社から提示された査定価格は4700万円~5260万円。どの不動産仲介会社も5000万円を切ればすぐ売れるだろうということでしたが、いずれ値下げするにしても、もっと大勢の人に見てもらってからにしようと、価格はそのまま5200万円に。複数の会社とやり取りするのは面倒だと思う人もいるかもしれませんが、育児休業中で時間はあったし、こちらから動かなくても担当者が家に来てくれるので全然負担ではありませんでしたね。とにかく売らなければと必死だったので、やれることは全部やろうと思っていました」

5社による販売活動が始まると、内見の申し込みが次々に入ったといいます。

「各社が次々に購入検討者を連れてきてくれて、週末ごとに2、3組の内見がありました。対応はすべて不動産仲介会社に任せました。私たちは近所に引っ越すので後になって購入者と顔を合わせると気まずいかもと思い、家族みんなで外出していたんです。人はいないほうが家が広く見えると、不動産仲介会社からアドバイスもあったので。だから内見のある日は準備が大変でした。洗濯物は早めに洗って乾燥機をかけて、食器もいつもとは違う時間に食洗器をフル稼働して片付けて、子どもにはおもちゃを出さないように指示。猫アレルギーの人がいたら大変なので、飼い猫もキャリーに入れて一緒に外出していました」

そして2023年2月、ついに購入希望者が現れました。

「最初の3カ月も合わせるとトータルで13組ほど内見があり、ついに決まったという感じでした。値引き交渉はなく、成約価格は5200万円。ただし、退去前にハウスクリーニングに加えて、クロスの張り替えや床の補修など簡単なリフォームをこちら負担で行うことを条件として提示しており、費用の見積もりは約60万円。それがあったから購入者も納得してくれたのだと思います」

最初は5000万円を切ってもいいと思っていたMさんですが、途中から値下げは考えなくなったそうです。

「私の物件は借地権で、売却の際は借地権の譲渡承諾料を地主に払う必要があり、それが思ったよりかさむことがわかったんです。それまでの『早く売れればいい』から『この価格で売りたい』とスタンスを切り替え、納得の価格で売却することができました。2月に売買契約を交わし、6月に物件を引き渡す予定です」

複数の不動産会社と話したことで、こだわりある売却が実現

今回の売却を振り返って、「かかった時間は予想通り。売却益を新居の頭金に充て新しい家具の購入費用も出たので、価格にも満足しています」とMさん。ただし、反省点も多いとか。

「最初から一般媒介にしていればよかったというのが、いちばんの後悔ですね。ただ、不動産の売却について何もわからないまま売り出してしまったので、最初の3カ月はいろんな意味で勉強になりました。実は専属専任媒介契約の契約期間が3カ月だということも知らなかったんです。幸い2カ月目から一括査定を受けるなど動き始めたので、契約を延長せずに一般媒介に切り替えることができました」

いろいろな不動産仲介会社とやり取りしたことが収穫だったとMさん。

「頑張ってくれるところと、そうでもないところと、いろんな不動産仲介会社があることがわかりました。何より印象的だったのは、ある会社の担当者が売却できなかった時のことを心配して、新居の契約書を一緒に読み込んでくれたことですね。もしも売れなかったらローン特約で契約を解除できますよと、とても親身に相談に乗ってくれました。これから売却する人には、一般にするかどうかは別にして、いろんな会社に物件を見てもらって話を聞くことをおすすめします」

2022年10月 ・一戸建ての売却価格査定
・不動産仲介会社のA社と専任媒介契約を結ぶ
・5480万円で売り出し
2022年11月 ・5380万円に価格を変更
2022年12月 ・5200万円に価格を変更
2023年1月 ・A社ほか5社と一般媒介契約を結ぶ
2023年2月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 売却のパートナーになる不動産仲介会社選びは、複数の会社と話し比較検討することが大事
  • 初めての不動産売却は全体の流れやポイントを押さえたうえでスタートしたい
  • 不動産売却にかかる費用をしっかり把握したうえで、いくらで売りたいか考えよう

取材・文/小宮山悦子 イラスト/杉崎アチャ

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