科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!


 久しぶりに10℃を越える
 厳しい寒さも一休み。関東地方は19日、冬型の気圧配置が緩んで広い範囲が高気圧に覆われた影響で、各地で気温が上昇、3月下旬並みの暖かさとなった。東京都内で気温が10度を超えたのは8日ぶり。

 気象庁によると、21日ごろまでは気温が平年を上回る日が続くが、その後は再び冬型の気圧配置が強まり寒くなるという。それにしても今年は寒い。暖かいとされるここ湘南でも、10℃を越したのは久しぶりだ。

 世界各地でも寒波が到来しており、ドイツでは大雪のため、交通網がマヒ、孤立化している村がある。また、暖かいスペインにも大雪をもたらした。フロリダでは寒さのため気絶したウミガメが、多数保護された。地球温暖化と言われるが、ここのところの寒さはどういうわけだろう? 

 30年ぶりの寒波
 気象庁は昨年12月半ばから欧州や北米、アジアなど北半球を襲っている寒波について、北極圏で寒気が蓄積と放出を繰り返す「北極振動」という現象が原因とする分析を発表した。

 ここ30年間で最も強い寒気の放出が1カ月以上続く状態で、日本にも大雪をもたらしている。寒気の放出は弱まってきているが、北極振動は予測が難しいといい、気象庁は引き続き注意を呼びかけている。

 気象庁によると、先月16日以降の最低気温は、ポーランド・ワルシャワ氷点下19.2度(平年値は氷点下5度)▽ノルウェー・オスロ同17.9度(同6.5度)▽ソウル同15.3度(同6.7度)▽ベルリン同14.4度(同1.3度)−−など各地で30年に1度の異常低温となった。積雪はワシントンで41センチ、ソウルでは26センチを記録した。

 北極振動は北極圏で寒気が蓄積と放出を繰り返す現象。放出が続いているのは、北極圏の気圧が高く、中緯度帯の気圧が低い状態が維持され寒気が流れ込みやすくなっているため。寒気放出の強さは比較できる79年以降で最も顕著だという。

 北極振動のメカニズムは解明されておらず、寒気の放出が強まった原因ははっきりしない。今後について、気象庁気候情報課は「数日程度で寒気の放出は収まるとみられるが、その後再び放出される可能性もある」としている。(毎日新聞 2010年1月18日)

 北極振動とは?
 北極振動(ほっきょくしんどう、Arctic Oscillation:AO)とは北極と北半球中緯度地域の気圧が逆の傾向で変動する現象のことである。

 1998年にデヴィッド・トンプソン(David W. J. Thompson)とジョン・ウォーレス(John M. Wallace)によって提唱された。彼らは北半球の海面気圧の月平均の平年からの偏差を主成分分析して、第1主成分としてこのような変動が取り出されることを提唱した。

 この変動は冬季に顕著に現れ、日本など中緯度の気候と強く関連するため赤道側のエルニーニョ現象と並び近年注目されている。南半球においても南極と南半球中緯度の気圧が逆の傾向で変動する現象が見つかっている(南極振動(AAO))。

 北極の気圧が平年よりも高いときには中緯度の気圧は平年よりも低くなる。主成分分析の結果得られるこの偏差の程度を表す値を北極振動指数という。

 北極振動指数が正の時、北極の気圧が平年よりも低いことを表す。変動は複雑で数週間程度から数十年程度までのさまざまな周期を持つ変動が重なっていると考えられている。特に6〜15年程度の周期の変動が顕著で準十年変動と呼ばれている。

 北極振動発見以前から知られている北大西洋振動(NAO)と北極振動の指数の符号は良く一致しているため、同一の現象(AO/NAO)として扱う場合もある。また、環状構造に注目して北半球環状モード(NAM)と呼ばれることもある。なおこの現象は地上付近だけでなく、成層圏にまで及ぶ大規模な現象である。

 北極振動の影響
 北極振動指数が正の時は北極と中緯度の気圧差が大きくなり、その結果極を取り巻く寒帯ジェット気流(極渦)が強くなる。この結果、極からの寒気の南下が抑えられユーラシア大陸北部、アメリカ大陸北部を中心に平年より気温が高めとなる傾向があり日本でも暖冬となる。

 逆に北極振動指数が負の時はジェット気流が弱くなるため極からの寒気の南下が活発となり、平年より気温が低めとなる。特に北極振動指数が負を示した2005年冬(同年12月〜2006年2月)は日本でも寒冬となり、日本海側に記録的豪雪をもたらした平成18年豪雪の原因になったとされている。

 このように北極振動は北半球の冬季の気候に大きな影響を持っていると考えられている。また冬の気温の変化によって海氷や積雪の量が変化することにより中緯度の夏季の低気圧や高気圧の消長に影響し、夏季の気候にも影響を与えていることも指摘されている。日本付近では前の冬に北極振動指数が正であるとオホーツク海高気圧の勢力が増し、冷夏になるとされている。

 北極振動の原因
 北極振動より以前から知られている南方振動が海面水温の変動であるエルニーニョ現象と強く関連しているのに対して、北極振動への海面水温の影響は今のところはっきりしていない。

 しかし大気内部の現象は通常、数ヶ月程度しか続かないため準十年振動のような長期の変動は大気内部だけの現象とは考えにくく海洋の影響はあるものと考えられている。北極振動が始まる原因は現時点でははっきりしておらず北極振動自体も一つの物理的な現象なのか、NAOや太平洋・北米パターン(PNA)など複数の振動が重なりあって統計的に取り出された見かけ上のものなのかについても研究途上である。

 北極振動が変化する要因の1つとして太陽活動との関連が知られる。また、太陽活動は成層圏準2年周期振動(QBO:quasi-biennial oscillation)との関連も指摘されている。これら太陽活動と気候変動の関係を調べる研究は徐々に認知されてきており、北極振動における励起因子の解明の鍵となる可能性もある。

 1980年ごろから北極振動指数は正の値を示すことが多くなっているが、これについては地球温暖化との関連が考えられている。(出典:Wikipedia)

 

異常気象の正体
J・コックス
河出書房新社

このアイテムの詳細を見る
異常気象―地球温暖化と暴風雨のメカニズム
マーク マスリン,三上 岳彦
緑書房

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ  ランキング ←One Click please