夏場の節電対策 正式に決定
5月5日、北海道の泊原子力発電所が止まって、全国の原子力発電所がストップした。もし今夏、原発が再稼働せず、一昨年並みの猛暑になった場合を想定すると、8月に関西、北海道、九州の3電力管内が電力不足に陥る。特に関西はピーク時に15.7%(473万キロワット)不足するというから深刻だ。
政府は関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させれば、関西の不足分を0.9%に縮小できるとの見通しも示したが、すぐに稼働できるかどうかは難しい問題だ。そこで、政府は、5月18日、原子力発電所の運転が再開しない場合の、夏の節電対策を正式に決定した。
それによると、数値目標を設定した自主的な節電の要請については、いずれもおととしの需要に比べ、関西電力管内では15%以上、九州電力管内は10%以上の節電を要請する。
さらに、関西や九州に融通する電力を確保するため、供給力に比較的余力がある西日本の中部、北陸、中国の各電力会社管内にそれぞれ5%以上、四国電力管内には7%以上の節電を求める。
また、北海道電力管内では7%以上の節電を要請する。節電を求める期間は、いずれも一部の期間を除いて、中部、関西、北陸、中国、四国、九州では7月2日から9月7日まで、北海道では7月23日から9月14日までの間で、平日の午前9時から午後8時までとしている。
このうち、北海道では9月10日から14日については平日の午後5時から午後8時に節電を求めるとしている。一方、関西電力管内で検討するとしていた法律に基づく電力の使用制限は行わない一方、電力需給が厳しい関西・九州・北海道・四国の各電力会社管内では計画停電の準備を行う。
さらに、沖縄電力管内以外の東京電力と東北電力の管内を含む全地域には、7月2日から9月28日まで、一部の期間を除いて平日の午前9時から午後8時まで数値目標を設けない節電を求めるとしている。
今回の節電対策は、原発の運転再開がない前提で、政府は今後、関西電力大飯原発の運転再開を巡る動向しだいでは西日本を中心に対策の見直しを検討することにしている。(NHKnews 2012年5月18日)
電力完全自由化で、競争原理導入
一方、経済産業省の「電力システム改革専門委員会」は5月18日、電力小売りについて家庭向けを含め、全面的に自由化することで一致した。
人件費や燃料費などに一定の利益を上乗せする「総括原価方式」も撤廃し、電力業界に競争原理を導入する。電力会社の発電事業と送配電事業の分離など電力自由化も加速する。一般家庭の電力購入の選択肢が増え、電気料金の引き下げにつながる可能性がある。
家庭向け電力の自由化は、政府が今夏にまとめる新たなエネルギー基本計画に盛り込む。電力業界も受け入れる方向で、来年春にも電気事業法の改正案を国会に提出する。周知期間を経て早ければ2015年前後に実現する。
電力の小売りが全面自由化されれば、消費者は電力会社のほか安価に電力を提供する新電力(特定規模電気事業者=PPS)や再生可能エネルギー専用の小売業者などから自由に購入先を選択できる。
総括原価方式の撤廃で、経産省による料金値上げの認可制もなくなる。この結果、自由な料金設定が可能になる。電力会社の発送電分離などの電力自由化も加速させるのは、規制がなくなった後も、電力会社による事実上の地域独占が続き、電気料金が高止まりしないようにするためだ。(2012年5月19日 読売新聞)
LED照明、蓄電池で対応する企業も
関西の15%節電対策は厳しい。関東は節電目標はないということだが、電気料金も7月1日から値上げするので、節電は考えねばならない。各企業では、クールビズやサマータイムの導入や前倒し、照明のLED化促進、店内空調温度の設定を控えめにするなどの対策を始めている。
日産自動車は1日、夏の電力不足対策として、6月30日から9月30日まで、東京電力管内にある2工場の稼働時間を変更して事実上の「サマータイム(夏時間)」を導入すると発表した。自動車業界は、休業日を土・日曜から木・金曜に変更する方針を決めているが、工場の稼働時間の変更は初めて。
ソフトバンクグループは、電力使用のピークタイムには、オフィスのPCの電源を切り、全社員に支給しているiPadを使った業務を推奨する。オフィスの消費電力は前年比30%以上の削減を目指している。
大手住宅メーカーの大和ハウス工業は、電力不足と節電に備えるため全国の事務所や工場で合わせて1000台の蓄電池を導入する。1台の蓄電池で、10人分のパソコンと卓上のLED照明の電力を賄うことができ、大阪の本社ビルには262台を設置する。午後11時から午前7時までの夜間に蓄電池に電気をため、電力需要が増える午後1時から午後6時までの間、ためておいた電気を使う。これによって、ピーク時に使用する電力を5%カットできるという。
さらに、本社ビルで働く2000人全員に卓上用のLED照明を配り、天井の照明は、日中、すべて消すことにした。この会社では、こうした対策によって、おととしの夏と比べて30%の節電を行う目標を掲げている。大和ハウス工業の中村武さんは「去年よりも厳しい電力不足で心配しているが、何とかやるしかない」と話している。
消費電力50%削減をめざし、 独自の省エネ対策に取り組む「王将フードサービス」
光や熱のエネルギーを、大量に使うのが外食産業であるが、独特の省エネ対策で取り組むのが「王将フードサービス」。関西を中心に全国で622店舗(2012年3月期末店舗数)を展開する人気企業だ。
王将フードサービスが地球環境対策に本格的に取り組み始めたのは2000年。外食産業では早いほうだ。昨年度は震災直後ということもあり、電気を使用するエコキュートシステムの導入を控える一方、電気を必要としない自動ドアを新たに導入。加えて店舗での節電を徹底するなど省エネ、節電に取り組み、対象店舗では消費電力と電気代が12~15%程度の削減となった。
今年度は電力供給がさらに厳しくなることが予想されるため、省エネ、節電対策を一層強める。とくに東京電力管内は電気料金の低減、関西電力管内は電気のピークカット対策を強化する方針だ。
店舗では、空調、厨房、照明の3つのカテゴリーで省エネ、節電を実施する。空調設備については夏場の冷房機器、厨房では冷蔵庫、冷凍庫のほかショーケース、レンジフードなど、照明では店内外の照明、看板照明が対象。なかでも夏場の冷房にかかる消費電力の負担が大きく、冬場に暖房をほとんど使わない半面、お盆を挟む約1週間は年間電気使用量のピークになるという。
ただ、同店はオープンキッチンになっていて厨房の熱気が客席に流れやすいため、ホールの温度管理は売上げにも影響する。そこで、空調設備にデマンド制御システムを導入。ピーク時に自動制御することで消費電力を低減する。
窓の遮熱対策も行っている。窓ガラスに塗装コーティングするタイプで、透明度を維持しながら遮熱効果が高いメーカーの製品を採用している。さらに、一部の店舗ではエアコン・ドレン水再利用システムを導入した。空調から流れ出る排水を再利用して室外機を冷やし、冷房効率を高めるもので、「餃子の王将宝ケ池店」(京都市)などに採用されている。
電気が要らない照明、自動ドアのほか冷蔵庫の省エネにはドライアイスを活用
照明については、7年前からLED(発光ダイオード)などの省エネ型照明を導入。200店舗以上で年間約300トンのCO2削減効果をあげてきた。今年から新たに導入したのが、電気をまったく使用しない太陽光照明システム。屋根上に設置した特許技術の採光ドーム型レンズが太陽光を採り込み、鏡面加工した特殊なチューブを通って店内を照らすというユニークな照明だ。真夏の強過ぎる日差しを遮り、有害な紫外線をカットするほか、真冬の太陽光も最大限に採り込める。センサー付きLED照明との併用で、主にトイレなどで使用する。
最後に、厨房の冷蔵庫・冷凍庫については経年状態に応じて省エネ効率の高い製品に交換するが、基本的には既存設備を使いながら可能な対策を講じていく。今夏からドライアイス製造機を店舗に設置。冷蔵庫の上段にドライアイスを置くことで庫内の温度を下げ、無駄な電力を消費しないよう工夫する。
他には、電気の要らない自動ドアも導入。テコの原理を利用し、踏み台に乗ると重みでドアが自動的に開閉するというもの。現在、「梅津段町店」(京都)、金沢東店(石川県)など4店舗で設置済みだ。
「バックヤードや休憩室の無駄な電気を消したり、空調を止めたり、店舗でできることは実践しています。設定温度も一律ではなく、店長がお客様にとって快適な温度を判断するなど、店舗毎に対応しています。当社では、コスト管理を各店舗に任せているので節電によって利益が改善できれば、店舗の評価になり、報奨金をもらえる仕組みになっています。だから自然と従業員の節電意識も高い」
今後は電力供給がさらに厳しくなることから、節電だけでなく発電設備の導入も進めている。すでに本社屋と京都市内、滋賀県内の店舗4施設に太陽光パネルを設置。震災前まで年間20店舗への設置を予定していたが、計画を変更し、今後は太陽光パネルより省エネ効果の高い対策を優先する。
そこで注目されているのが、調理時の排熱を活用した独自開発の発電システム。同社と関連メーカー数社が共同開発したもので、発電効率、費用対効果ともに高いことから大きな期待が寄せられている。導入は今年5月の予定だ。
他には、ダクトから排出される風を利用した小型風力発電機や井戸水を利用する水力発電も検討中。天然ガスを用いて発電するガスコージェネレーションシステムは、既設店舗が94店舗に達している。中期計画では、店舗の新設や既存店の改装で環境配慮型店舗を拡大し、従来かかっていた電力負荷の半減をめざす。
参考 SC JAPAN TODAY 5月号:「餃子の王将節電対策について」
快適節電 エコ生活マニュアル (タツミムック) | |
クリエーター情報なし | |
辰巳出版 |
暮らしを見直す 夏の節電対策 (NHKまる得マガジン) | |
クリエーター情報なし | |
NHK出版 |
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