太陽系で新たな惑星を発見?
太陽系の暗い外縁部に、未知の惑星が存在している可能性が明らかになった。外縁天体の奇妙な軌道が、未知の惑星の存在を示唆しているという。
リオデジャネイロにあるブラジル国立天文台(National Observatory of Brazil)の天文学者ロドニー・ゴメス(Rodney Gomes)氏は、「望遠鏡など視覚的には遠過ぎる距離だ。“カイパーベルト天体(KBO)”の軌道の乱れから導き出す手法を採用した」と話す。
KBOは海王星軌道より外側でリング状に密集した小さな氷の天体の総称で、いくつかの準惑星も含まれる。
例えば、かつて太陽系9番目の惑星と考えられていた準惑星、冥王星は最大級のKBOで、直径は約2300キロ。ほかにも直径数百キロの天体が10以上あり、毎年新たに発見されている。そのほとんどが、太陽から60億~75億キロの範囲に散らばっている。
ゴメス氏の計算によると、外縁天体「セドナ」を含む6個のKBOが、既存の太陽系モデルでは説明できない奇妙な軌道を描いている。
その理由は複数考えられるが、「“惑星の質量を持つ太陽の伴星”と考えれば最も簡単に説明できるだろう」とゴメス氏は語る。つまり、太陽から非常に遠い軌道を周回しながら、KBOに重力的な影響を及ぼすだけの質量を持つ惑星という説だ。
謎の惑星は捕らえられた“はみ出し者”?
ゴメス氏はまず、92のKBOが描く軌道を分析した。さらに、新たな惑星が存在する場合としない場合、これらの天体の軌道がどのように乱されるかをコンピューターモデルで再現。分析結果をコンピューターモデルと比較した。
惑星が存在しないと仮定した場合、6つの天体が描く極端に細長い軌道は再現できないとゴメス氏は結論付けている。惑星の正確な大きさはわからないが、さまざまな可能性が考えられると同氏は述べる。
海王星(地球の約4倍)ほどの大きさで、2250億キロ(太陽・地球間の約1500倍)の軌道を周回する惑星であれば、6つの天体の軌道を乱すことができるという。
また、地球の約半分しかない火星サイズでも、軌道が極端に細長く、太陽から80億キロまで近づくことがあれば同じ現象が発生する。謎の天体は元の恒星系からはじき出され、太陽の重力によって捕らえられた「自由浮遊惑星」ではないかとゴメス氏は推測している。
あるいは、太陽に近い場所で形成され、ほかの惑星との重力的な相互作用によって外縁部まで押し出された可能性もある。しかし、このような惑星を実際に見つけ出すのは至難の業だ。まず、かなり暗い惑星だろう。しかも、ゴメス氏のシミュレーションでは、存在が予想される場所の手掛かりさえ得られていない。「どこにあってもおかしくない」と同氏は話している。(Richard A. Lovett in Timberline Lodge, Oregon for National Geographic NewsMay 14, 2012)
太陽系の第9惑星(惑星X)を探して
太陽系の未発見の惑星については、2011年2月、米ルイジアナ大研究チームが太陽系で木星より大きな惑星が新たに見つかる可能性を示す論文を、米専門誌イカルス2月号に発表している。それによると惑星Xの大きさは木星の4倍の巨大惑星だという。米航空宇宙局(NASA)は2月18日、「検証には少なくとも2、3年はかかる」という見解を発表した。
米ルイジアナ大のジョン・マティス教授らは、彗星(すいせい)の軌道の統計的分析から、彗星の動きに影響する未発見の惑星がある可能性を見つけた。太陽からの距離は、太陽と地球の距離の約1万5千倍、太陽と海王星の距離と比べても500倍ある。重さは最大で地球の約1200倍と推測されている。
惑星は、ギリシャ神話の女神と同じ名前の「テュケー」。木星のような巨大ガス惑星か恒星になれなかった星のようなものと考えられる。あまりにも遠いため存在がわからなかったが、チームはNASAが2009年に打ち上げた新型の赤外線宇宙望遠鏡「WISE(ワイズ)」の観測で見つかる可能性があるとしている。(asahi.com 2011年2月22日)
2008年4月、神戸大のパトリック・S・リカフィカ研究員と向井正教授は、太陽系9番目となる未知の惑星が海王星の外側に存在する可能性が高いことを、詳細な理論計算で世界で初めて突き止めている。今後、観測体制が整えば、10年以内にも発見されそうだという。
太陽系の縁では、「太陽系外縁天体」と呼ばれる1100個以上の小天体が、海王星軌道の外側を回っている。その多くは、8惑星と同じようなほぼ円形の軌道をとるが、なかにはそれと大きくずれている天体もあり、なぜそのような変則的な軌道を持つのかが大きななぞとして残されていた。
リカフィカ研究員らは、太陽系ができ始めて間もない40億年前から現在までの惑星や太陽系外縁天体の軌道の変化を、最も有力な太陽系形成理論にもとづいてコンピューターで計算した。その結果、水星から海王星までの8惑星では変則的な外縁天体の軌道を説明できず、新たな「惑星X」を仮想的に加えて計算することで初めて、それが可能になることがわかった。 (2008年2月28日 読売新聞)
カイパーベルト天体(KBO)
エッジワース・カイパーベルト(Edgeworth-Kuiper Belt:EKB)、または単にカイパーベルト(Kuiper Belt)は、太陽系の海王星軌道(太陽から約30 AU)より外側の黄道面付近にある、天体が密集した、穴の空いた円盤状の領域である。外側の境界はあいまいだが、連続的にオールトの雲につながっていると考えられる。AUは、天文単位の単位で1AUは、1.5億キロメートル。
便宜上、狭義では48~50 AUまで、広義では数百 AUまでと定義される。48~50 AUより外側を散乱円盤という。太陽系外縁天体のうち、エッジワース・カイパーベルトに位置する物をエッジワース・カイパーベルト天体 (Edgeworth-Kuiper belt Object, EKBO) ともいい、短周期彗星と、おそらくはオールトの雲の起源だと考えられている。
エッジワース・カイパーベルトは、正確には、単なる太陽との距離ではなく、軌道要素の軌道長半径と近日点距離で定義される。 エッジワース・カイパーベルトは、古典的エッジワース・カイパーベルトと散乱円盤 (Scattered Disk) に分けられる。加えて参考として、E-SD (Extended Scattered Disk) についても述べる。
なお、内側の境界である海王星軌道を別として、以下の区分は大まかなものであり、違う数値がとられることもある。エッジワース・カイパーベルトにある天体をエッジワース・カイパーベルト天体 (EKBO)、またはカイパーベルト天体 (KBO)、エッジワース・カイパー天体 (EKO) などという。主に水の氷からなる小天体で、便宜上、小惑星として扱われる。なお、日本学術会議による2007年4月9日の対外報告(第一報告)では、「エッジワース・カイパーベルト天体」および「カイパーベルト天体」を「TNO(太陽系外縁天体)」の別名としている。
太陽外縁天体(TNO)とは?
太陽系外縁天体(trans-Neptunian objects (TNO))とは、海王星軌道の外側を周る天体の総称である。エッジワース・カイパーベルト(KBO)やオールトの雲に属する天体、かつて惑星とされていた冥王星もこれに含まれる。
1990年代になると海王星軌道より外側で次々と天体が発見され、冥王星を含むそれらの天体を総称して「trans-Neptunian objects (TNO)」と呼ぶようになった。2007年4月9日、日本学術会議はTNOの日本語表記を太陽系外縁天体または外縁天体を推奨した。
似たような言葉に、準惑星(dwarf planet)と、冥王星型天体(Plutoid)がある。準惑星は、太陽の周囲を公転する惑星以外の天体のうち、それ自身の重力によって球形になれるだけの質量を有するもの。国際天文学連合(IAU)が2006年8月24日に採択した第26回総会決議5A(以下、決議5Aと略)の中で「惑星」を再定義した際に、同時に定義された太陽系の天体の新分類である。
冥王星型天体(Plutoid)は、太陽系外縁天体 (trans-Neptunian objects, TNO) に属する準惑星 (dwarf planet) である。つまり、準惑星には海王星より遠いところにあるものと、海王星より近いところにあるものがある。海王星より遠いものを冥王星型天体というのである。太陽系外縁天体は、海王星の外側の、太陽系の天体すべてのものをいう。
参考HP Wikipedia:エッジワース・カイパーベルト(EKB) アイラブサイエンス:未知の巨大惑星が太陽系に存在する?
太陽系に未知の「惑星X」が存在する! (講談社プラスアルファ新書) | |
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夜空からはじまる天文学入門―素朴な疑問で開く宇宙のとびら(DOJIN選書 25) | |
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