備えあれ!東京の水害、死亡2000人、孤立100万人!?
首都圏を襲った広域氾濫は、依然として水がひかず、事態は深刻さを増している。
3日前にカスリーン台風並の大型台風に襲われた首都圏では、東京都墨田区で荒川の堤防が決壊したほか、各地で水が堤防を越えて住宅地に流れ込んだ。浸水は、江東デルタ地帯を中心に広域にわたり継続している。
3日経った今日現在、死者・行方不明は2100人に達しており、32万人が依然として孤立している。
警察や消防、自衛隊が持つ1900隻の船を投入して懸命の救出・捜索にあたっているが、排水のためのポンプは停止しており、全員を救出するには後6日程度かかる見込みである。
今回の災害では、約100万人が住む人口密集地が浸水し、被害は現在わかっているだけでも、床上浸水が41万世帯、床下浸水が7万5千世帯に上っている。
大型の台風の中、避難できた人が40%にとどまったことが、これだけの死者・行方不明と最大43万人という孤立者を出した原因であると指摘されている。さらに排水施設が大きな被害を受けたことが、長期化に拍車をかけている。
自衛隊が持つ1900隻の船を投入!
死者・行方不明は2100人、32万人が依然として孤立!
これ、地震や津波ではありません。
台風です。
今の東京は、超大型台風が来たら、かような規模の弩級被災地になってしまうおそれがあるんだよ、というシミュレーション。
上のくだりは、過日、地震災害関係の書籍をあたっている中、
『災害情報論入門』
という本の冒頭に、いきなり記してあったもの。
ナニコレ! 地震じゃなくても東京に激甚災害!?
かなり面食らいました。なにせ、当時は大震災騒ぎ一色でしたから・・・。
で、ここ数日アメリカ東海岸のほうで、超大型ハリケーンで200万人避難、とか騒いでいるわけで、ふと思いだして、東京が洪水になったらどんななんだべ、
『災害情報論入門』
は3年前の2008年に出た書籍だけれど、3年後の今も、同じ程度の被害予測のままなんだろうか、気になって調べてみた。
その結果。
河川氾濫による死者数は、最大約6300人の死者数が想定される。
浸水区域内人口は約663万人、要避難者数は約421万人と予測される。
う”わ。
本稿は、かつて2011年8月28日付で旧ブログに記した過去記事の復刻増補です。
平成22年4月内閣府発表の資料から拾ってきました。
去年のです。
平成18年に立ちあげられた「大規模水害対策に関する専門調査会」が、4年越しでまとめてくれたレポートです。
■資料1 平成22年4月2日内閣府(防災担当)
「大規模水害対策に関する専門調査会報告:首都圏水没 被害軽減のために取るべき対策とは」【PDF】
■資料2 平成22年4月 中央防災会議:大規模水害対策に関する専門調査会
「大規模水害対策に関する専門調査会報告:首都圏水没 被害軽減のために取るべき対策とは」概要版【PDF】
■まず利根川です
「例えばここが決壊したら」、の被災予想図なので、別の箇所が決壊したらまた異なる様相になってくるんでしょう。
浸水2m以上。もちろん、地下は水没。5m行くところもあるぞ。
はいこれ↑、半月以上も水たまりっぱなし地域。
2週間以上!も、ヒザの深さ以上の水が溜まったまんま。
葛飾区と江戸川区がグッチョングッチョンです。
次、利根川に並行する荒川を決壊させてみました。
荒川区と台東区が、たっぷり水深2m以上かぶります。
これ、どんな規模の「大規模水害」を想定しているのかな、とつらつら見るに(見逃したかな)おそらく、「200年に一度の規模の大規模水害」を想定しているのではないかと(少なくとも、地下鉄への被害想定で、200年に一度の規模を想定、と明記ある)。
200年に一度の規模。
おおー。
東日本大震災を経た今では、それってものすごく「今すぐにでも発生しそう」なリアルな数字でない?
まして、今般は、温暖化もしくは異常気象で、ますます台風は巨大化しやすくなってきているわけで・・・ うわお。
被災者数行きます。
利根川と、
荒川。
一ヶ月たっても、利根川氾濫で78万人、荒川氾濫で67万人が、水びたしの地域で孤立したまんま・・・って、なんかもう、数字がスゴすぎてわけわかりません。
これ、想定は「避難率0%」の場合です。レポートでは、水害はある程度、発生が事前に予測できるので、なんぼか避難は行われてさすがに「避難率0%」ということはないだろう、として、あくまで「最悪の事態」を描いた感じにしていましたが、・・・まあね、いまや「想定外」という言葉に往復ビンタ食らった我々としてはね・・・、想定はね・・・。
逆に、避難率100%もありえないんですよ。きっと、なんだかんだ、被災するエリアには住人なり勤務者なり通りすがりなりが残っていて、地下で、一階で、水没で、濁流で、被災する。
単純計算で、90%避難できていても、死者は数百人、一ヶ月孤立は万人単位。(!)
妥当な線で、避難対象地域内で避難できるのは、30〜40%ぐらいではないか。
江東5区大規模水害ハザードマップhttps://t.co/WJb92CzyIl
— 林司@るーしゃんず (@Archangel_HT) 2018年8月23日
「人口260万人中250万人が浸水想定区域にいる」「浸水が2週間以上続く可能性もある」「公的な広域避難場所は確保できない」「避難するにも河川に囲まれているので橋で渋滞する」というベリーハードモードっぽいですが皆さんお元気ですか
「大規模水害対策に関する専門調査会報告:首都圏水没」【PDF】より:
■ 利根川氾濫による死者数は、浸水深5m以上の地域を多く含む古河・坂東沿川氾濫において最大約6300人(避難率0%)の死者数が想定される。
■ 荒川氾濫では、江東デルタ貯留型氾濫において最大約3500人(避難率0%)の死者数が想定される。
■ 浸水深が3階以上等に達し、避難しなかった場合には死者の発生率が極めて高くなる地域がある。
また、建物の高さ等の状況から付近において安全な避難場所を確保することが困難であり、市区町村外への広域避難が不可欠となる地域がある。
■ 利根川、江戸川、荒川の堤防決壊に伴う浸水想定区域を検討した全てのパターンを重ね合わせた場合、浸水区域内人口は約663万人となる。
また、仮に広域避難の対象とすべき条件を、「居住空間が水没」することと、「浸水継続時間3日以上」であることとした場合、要避難者数は約421万人と予測される。
数百万人規模の避難。
アメリカ東海岸の『ハリケーン「アイリーン」上陸 230万人に避難命令』がもう、他人事じゃない事態に東京は見舞われうると。
狭い日本、そんなに急いでどこへ行く。
「大規模水害対策に関する専門調査会報告:首都圏水没」【PDF】より:
■ 200年に1度の発生確率の洪水により、荒川右岸21km地点の東京都北区志茂地先で堤防が決壊し、トンネル坑口や地下鉄駅等の出入口が現況程度の止水対策を前提とした場合には、地下鉄等は最大で17路線、97駅、延長約147kmが浸水する可能性がある。
2010年段階での試算です。昔の話じゃありません。今現在、かような脆さをもったままの都市であるのです。
ひとつ、海抜チェックに便利なサイトをご紹介しておきますね。
『 Flood Maps 』
東京の海面を、今と同じ0m、プラス5m、プラス7m、で描かせたのがこれ↓。
『 Flood Maps 』は東京だけじゃなく、世界各地の浸水状況もチェックできちゃいます。
札幌の我が家は、海面を5m上げたらヒタヒタになるっぽいです。
ふと中国を見ると、海面7m上昇で上海(シャンハイ)周辺がものすごい広範囲で水没してます。その広さ、九州以上!
水害想定訓練が必要な地域にお住まいですか?
水没した街に一ヶ月、ライフラインなしで孤立、想定できますか?
以上、2011年8月28日付で旧ブログに記した過去記事の復刻でした。
おまけ 令和の時代も
江戸川区公式「ここにいてはダメです!」 pic.twitter.com/OJFhE4g8YL
— 𝒏𝒂𝒌𝒂𝒎𝒖𝒌𝒂𝒆 (@komukaepapa) 2023年6月6日
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その6』
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その5』
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その4』
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その3』
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その2』
『ミニ特集:災害・防災研究の本 その1』
『ミニ特集:つなみ 津波の研究 その2』
『ミニ特集:つなみ 津波の研究 その1』
水害の世紀 [ 日経コンストラクション編集部 ]
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