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2021-07-01 (Thu) 05:11

『ショートショート千夜一夜』今年はお祭りに行けるかな?

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「毎日、お祭りというわけにはいきませんわよ」は、
作家・モーパッサンの言葉です。
毎日お祭りじゃないからこそ、お祭りに心が躍るのです。
今回はお祭りや蚤の市が開かれる神社を舞台にした短編集、
『ショートショート千夜一夜(田丸雅智:著)』を紹介します。



短い短いお話=ショートショートが20篇収録されています。
すべて「多魔坂神社」が絡んでいます。
どうやらこの神社では不思議なことが起こりやすいようです。

「神輿の神様」を紹介します。

子供会の行事で多魔坂神社に来ていた竜夫は、
空いた時間にぶらぶらしていたら、
知らない男性に捕まり、神輿の中に入れられてしまいました。

男は訳のわからないことを言います。

「そりゃあ、神様のお気持ちも分かりますよ。
ほかのお仕事に比べると、お清めはあまり楽しいものではないでしょうからねェ。
ですが、何とか人間たちのためとお思いになって。
1日だけですから、ね?」
この男、竜夫を神様だと信じ込んでいるのでした。


御神輿担いでワッショイやっていくのは、
町中を神様に清めていただくため。
大切に守られてきた伝統行事です。

神様目線でいくと、
あの乗り物、乗り心地はあまり快適とは言えなさそうですよね。
めっちゃ揺れるし。酔う神様もいたりして(笑)

このお話、本物の神様はこの仕事が嫌で逃げ出してたんです。
そんな時もあっていいかもしれませんね。


去年はどこもお祭りは中止になりました。
当然、御神輿も出てこなくて。
今年はどうでしょう。
見れないと寂しいものです。見たいですね。

華やかな屋台。笛や小太鼓。提灯の道。
鳳凰をいただき金色に輝く見事な神輿。
古くから脈々と人間の内に流れつづけてきた
祭りの血が、激しく騒ぐ。

ワッショイ、ワッショイ
ワッショイ、ワッショイ

人間たちの躍然たる熱気に満ちた、煌びやかな小宇宙。
そのすべてと繋がって、共鳴し合っていたのである  。


この本を読んだら、お祭りに行きたくなってしまいました。
子供の頃ほどお祭りが好きとは思えなくなっている私ですが、
とくに今年は行きたいなあと思います。
お祭り特有の、すべてが良いものに感じるようなあの空気を
味わいに行きたいです。





他にも、
人の心を安らがせる「燈明様」
夕陽を焼いたお菓子を売る「夕焼き屋」のお話や、
不思議な物を売る蚤の市のお話たち。
コントのような可笑しなものや、心緩ませてくれるもの、
凝った脳をほぐしてくれるお話たちでした。


寺山修司はこんな言葉を遺しています。
「人生はお祭りだ。
いつもどこかで おはやしがなっている」
モーパッサンとどちらがお好みでしょう?




最終更新日 : 2021-07-01