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本シリーズ記事では、個人的に所有している写真用 交換レンズの発売年代別で対戦を行っている。 今回、第9回記事においては、ミラーレス機用の レンズを紹介(対戦)するのだが、既に本シリーズ 第7回記事で、「ミラーレス初期編」と称して 2009年~2013年の期間に発売されたレンズ群を 取り上げている。今回はそれに続く時代として 2014年~2020年の間で発売されたミラーレス機用 レンズ群、計10本での対戦を行う。 この期間は、前半期では一眼レフ陣営が盛り返し それまでのミラーレス機の伸びが鈍化した時代だ。 そして後半期では、多くのメーカーのミラーレス機 がフルサイズ化等で「高付加価値化」された時代だ。 これを「ミラーレス中期」と称する事とする。 「高付加価値化」に関しては色々と問題がある。 そこは記事中で述べていく事とするが・・ この「高付加価値化」において、この期間の後半に 新規に展開されたフルサイズ・マウント機には 個人的に全く興味が無い、コスパが悪すぎるからだ。 よって、新規マウント(Z,R,L)機および、その 交換レンズについては、一切、この記事には登場 しない事は、予め断っておく。 なお、マニアを自称する私であるが、ここまで メーカー側の思惑(=高付加価値化)と、ユーザー側 のニーズ(=優秀で安価なカメラが欲しい)が、乖離 (かけ離れる)してしまうと、もうマニアといえども、 新規ミラーレス機には全く興味を失ってしまいかねない。 (というか、既に興味が無い) とりあえず、本シリーズ記事でのミラーレス機編は 本記事までで終了するし、将来的にもこのカテゴリー での続編(つまり「ミラーレス後期編」)や補足編を 書く事も、残念ながら、まず無いだろう。 それほどまでに、「現代のカメラ市場は不条理だ」 と、強く思っている次第だ。 で、今回も対戦レンズが多い為、個々のレンズの紹介 文章は短めで、試写掲載も最小限としていこう。 紹介順は、発売年代に拘らず任意(順不同)とする。 なお、今回登場のレンズの大半は「特殊レンズ」 である、何故ならば、前述のように、高付加価値化 された新鋭システムには、全く魅力が無いからであり、 そういう世界(メーカー側の儲けが出て売りたいもの) とは無縁のレンズしか、欲しいとは思えないからだ。 ---- では、まずは1本目のミラーレス中期レンズだが、 こちらはMF特殊効果レンズである。 レンズは、Lomography New Petzval 55mm/F1.7 MKⅡ (新品購入価格 41,000円) カメラは、SONY α7(フルサイズ機) 2019年に発売されたMF標準「ぐるぐるボケ」レンズ。 フルサイズ対応であり、逆に言えばフルサイズ機で 使わないと、この手の「ぐるぐるボケ」レンズは 効能をちゃんと発揮できない。 (参考記事:レンズ・マニアックス第82回 「ぐるぐるボケ・グランドスラム」編 →旧ブログ) この手のレンズが、何故「ぐるぐるボケ」が出る のか?を説明し始めると長くなるので、簡単に。 その原因だが、基本的には「収差」(像面湾曲および 非点収差)である。一般の高画質レンズでは、諸収差は レンズの描写力上の弱点と見なし、それを目立たなく なるように補正しているが、ペッツヴァール改型構成を 始めとする、各種(数機種のみである)「ぐるぐるボケ レンズ」では、逆に、収差を増強させる設計を行い、 特殊な描写傾向を意図的に生成している。 さらなる詳細は、レンズマニアックス第37回記事 「ペッツヴァール対決」や、匠の写真用語辞典第6回 項目「ぐるぐるボケ」を参照されたし。(旧ブログ) まあ、原理はともかく、効能としてはとても面白い。 特に、本PV55/1.7は「BC環」というレンズ後群の 分離機能を持ち、それにより像面湾曲・非点収差 の発生度合いをコントロールできる。すなわち ぐるぐるボケの度合いを制御出来る、という、とても 面白いレンズである。 テクニカル的エンジョイ度は非常に高いレンズでは あるが、ユーザー側のスキル(知識、技能)に依存 するレンズでもある。ここは重要な注意点だ。 あまり安易に買ってしまうと、上手く使いこなせず、 無駄になってしまう、という特殊なレンズである。 ---- では、2本目のミラーレス中期レンズ。 レンズは、SONY FE 100mm/F2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM)(中古購入価格 129,000円) カメラは、SONY α6000(APS-C機) 2017年に発売された、アポダイゼーション光学 エレメント搭載AF中望遠レンズ。 定価188,000円+税、という高額レンズである。 ただまあ、希少な「アポダイゼーション」レンズで ある為、価格が高価でも、パフォーマンスの高さで コスパ評価の減点は最小限に留まっている。 本レンズの話は、様々な他記事にも詳しく、重複 する為、今回は割愛する。興味があれば、旧ブログ: 特殊レンズ第0回「アポダイゼーション・グランドスラム」 レンズ・マニアックス第31回「新旧STF対決」 等の記事を参照されたし。 さて、ここからは少し余談となる。 本記事の冒頭に記載した、この時代の特徴を示す 「高付加価値化」とは、かなり穏便な表現であり、 実際には「酷い値上げ」だ。 例えば、この時代の後半(2010年代後半)からの 新型ミラーレス機の価格は50万円前後にも達する 事となる。(2020年代では70万円~90万円だ!) いったい、そんな高価なカメラ等は、商品として、 成り立つものなのであろうか? 何故そんな酷い値上げが発生したか?は、要は この時代、ミラーレス機に限らず、カメラ全般が 全く売れていないからだ。 カメラ業界からは消費者層に悪印象を持たせないよう、 あまりズバリの数値を発表する事は無いのだが、 台数ベースでは恐らく、2010年代の10年間で 数分の1まで縮退している。 (さらに、2020年コロナ禍で、どん底を迎えている と思われる。2020年の夏ごろ「カメラの売り上げが 上昇した」というニュース発表があったのだが、 そりゃあ、殆どゼロ近くまで落ち込んでいた状態 だから、ちょっとでも売れ行きが復活すれば、 一応そういう事にはなるだろう。だが、実際に 売れた台数を調べると、目を覆うばかりの有様だった) だから、減少した販売数を利益でカバーする為、 この時代のミラーレス機も、一眼レフも、それらの 交換レンズも、全てが「高付加価値化」という 弁明による、不要な迄の機能・性能の搭載により、 事実上の「酷い値上げ」となってしまった訳だ。 でも、そんな高価なカメラを買う消費者が居るので あろうか? まあ、市場では、あの手、この手で 「新しいミラーレス機は、良い(凄い)」などの 情報をネットで流すが・・(注:カメラ誌の多くは この時代に絶滅してしまっている)それを読んで 「そうなのですか、凄い性能ですね、では買います」 と思えるのは、カメラの価値感覚を理解していない、 全くのビギナー層だけであろう。 よって、この時代、ピカピカの新鋭機を持って 写真を撮っているのは、殆どがビギナー層だけ、 という極めて不自然な市場状況になってしまった。 中上級者のベテラン層とか、職業写真家層ですら、 やや古い時代の機体を、騙し騙し使っている状況 である。 まあ、それもそうだろう、例えば職業写真家層は、 写真を商売で撮っている訳だから、設備投資として、 例えば、新鋭システムに100万円の予算が必要なので あれば、その分の利益を撮影で稼ぐのは容易では無い。 であれば、腕前(スキル)はあるのだから、旧機種で 撮れば十分な訳であり、その方が収支決済が有利だ。 趣味撮影でのハイアマチュア層でも、それは同様だ。 新鋭機でのフルサイズ化、手ブレ補正、高速連写、 超高感度等の性能が無くても、腕前があればある程、 そんな機能に頼らなくても写真は撮れる訳だ。 ここまでは、本ブログでは繰り返し述べている 現代のカメラ市場の課題であるが・・ 言いたい事は、 要は「商品が売れないから値上げする」という、その 安直な発想自体に疑問がある訳だ。 過去においても、カメラが売れなかった時代はある、 1970年代後半の時代(=物価が酷く上昇した) 1990年代後半の時代(=バブル崩壊と、大震災に より、消費者層の金銭感覚や価値観が激変した) でも、それらの時でも、メーカーは色々と工夫や 努力を重ね、カメラの低価格化を図ったり、 新規の路線のカメラを開発したりして、消費者層 の購買意欲を高めたりした訳だ。 だが、2010年代後半の市場縮退では、メーカー 側は、そうしてはいない。 一応、2018年~2019年に、新規のフルサイズ ミラーレス機の市場展開を始めたメーカーも いくつかあったが、これもまた同様に高付加価値化 製品であり、今までの路線(一眼レフ)を否定 しながら新製品を高額化するとは、いくらなんでも、 「はいそうですか、では、そっちを買います」 などと素直に従う既存消費者は、どこにも居ない。 結局、縮退市場において、企画が萎縮しまって いる訳だ。「商品に魅力が無いから売れない」が いつのカメラ縮退期であっても同様の状況であり 決して「インフレが・・、バブル崩壊と大震災が・・ スマホの普及が、コロナ禍が、ロシア侵攻が、円安が」 等と、他の要素を、”カメラが売れない事の理由” として押し付けてしまうようなスタンスは、あまり 正しい市場解釈とは思えない。 ・・その点、本FE100/2.8等は、本当に魅力的な スペックを持つ商品(レンズ)であると思う。 だから、多少高額でも買ってしまう訳であり、 それが本来の「付加価値」の意味であろう。 消費者層が「欲しい」と思うから、高い金額を出して も商品を買う、それが正しい市場倫理だ。 ユーザーから見て魅力が無い不要な性能を並べ立てた 「付加価値」は、単なる「メーカー側から見た利益」 にすぎず、そういう発想は、必ず、消費者層からは 受け入れられなくなる時が来る。 (・・というか、この記事で紹介している時代は、 まさにそういう状況であった) ---- さて、次は、MFのトイレンズである。 レンズは、HOLGA LENS 10mm/F8 HL-PQ (新品購入価格 3,000円) カメラは、PENTAX Q(1/2.3型センサー機) 2014年頃に発売された、MFトイレンズ。 PENTAX Qシリーズ専用であり、画角はPENTAX Q/Q10 の場合で約55mm相当。PENATX Q7/Q-S1の場合は、 約46mm相当と、いずれも標準画角となる。 固定焦点では無く、一応ピントリングがついているが それは簡素な構造であるし、被写界深度もかなり深く、 殆どの場合、パンフォーカス位置を示す指標に合わせて おけば、ピント合わせの必要は殆ど無い。 ただし、描写力は、あくまでトイレンズ相当のLo-Fi (低精細、低画質)である。 PENTAX Qシステムに備わる優秀なエフェクト機能と 組み合わせ、Lo-Fi志向で楽しむのが良いであろう。 Lo-Fiとは何か?という事を、ここで語ると長くなる。 「匠の写真用語辞典第5回記事、項目Lo-Fi」や、 「特殊レンズ超マニアック第3回HOLGA LENS編」等、 旧ブログの多数の記事で、詳しく書いてあるので 今回は、説明は省略する。 ---- さて、4本目のミラーレス中期レンズ。 レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/F3.5 Macro (中古購入価格 22,000円) カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機) 2016年発売のμ4/3機専用AF標準1.25倍マクロ。 OLYMPUSでは、本レンズがμ4/3機専用なので、 最大撮影倍率がフルサイズ換算で2.5倍のマクロ となる事を売り文句としている(いた)が・・ まあ、いつも言うように、現代の機材環境では、 マクロの最大撮影倍率を競っても殆ど意味は無く、 例えば、本レンズを、デジタル拡大機能が豊富な Panasonicのμ4/3機に装着すれば、トリミング編集 無しでも、最大で何と20倍(!)もの撮影倍率となり、 もはや実用レベルを遥かに超えてしまう。 でも、こういうのは単なる「数字の遊び」であるから 2.5倍より20倍が優れるとか、そんな単純は事は言えず ある意味、どうでも良い話である。 本レンズだが、かなりの小型軽量(フィルター径φ46mm、 重量128g)であり、今回のようにPEN-FやPanasonicの DMC-GX7系等の、薄型機(レンジ機ライクな形状)に 装着しても、システムとしての重量・外観バランスが 悪くならない点も長所であろう。 薄型機での常用レンズとして、標準(相当画角) マクロ系の選択は悪くない。近接撮影のみならず、 一般撮影においても汎用性の高い画角となるからだ。 まあ、それに本レンズの場合は、スペック上の近接撮影 能力は高いが、実用上では、近接撮影におけるAFの 精度不足と、加えて無限回転式ピントリング(距離指標 なし)では、MF技法が殆ど使えず、すなわちAFもMFも NGであるから、実用近接撮影に使い易いシステムには 成り得ない。 ・・だからこそ、普段は標準レンズ代わりとして用い、 「いざとなれば、いくらでも寄れる」という感じで、 軽い意識で用いる方が良い、という事になる。 つまり、「マクロ撮影をするぞ~!」等と、変に気合を 入れると、思うように撮れず、がっかりしてしまう、 という意味だ。 そういう「軽い用途」に使うならば、価格も安価だし 描写力も低くはないので、悪いレンズでは無い。 ---- では、5本目のレンズもMFだ。 レンズは、七工匠 60mm/F2.8 Macro (新品購入価格 24,000円) カメラは、PANASONIC DMC-G1(μ4/3機) 2019年に発売された、各社APS-C以下ミラーレス機用 マウントのMF中望遠(相当画角)等倍マクロレンズ。 本レンズは発売予定日から、数ヶ月も遅れての 発売となった。 こんな場合に注意するべきは「初回ロット(=最初に 一定数をまとめて生産する事)において、何らかの トラブルが発生し、その対応・対策で発売が遅れた」 というパターンを警戒する事である。 国産商品であれば、こういうケースでは1~2年 待って、第二次、第三次で生産された製品を買う方が、 何らかの課題があっても、改善されているだろうから 安心である、という発想になるのだが・・ あいにく、海外製品では、ちょっと、そういう事を やっても意味が無いかも知れない。理由の1つは、 次回生産ロットで課題を改善する程に、まめな対応を してくる保証は無いし・・ それと、流通市場において、 初回ロット製品が全て短期間で売り切れてしまい、 次回生産品と入れ替わっていく保証も無いからだ。 まあ、「待っても意味が無い」と思ったので、 あまり高価なレンズでも無いし、発売後すぐにこれを 購入する事とした。 なお、2018年頃までは、国内の中古市場に、こうした 中国製等の新鋭メーカーの中古品が流通する事は あまりなかった。まあ、中古店側でも、製品品質が不明 で故障対応等の便宜も不明な中国製等の海外レンズを 取り扱う事には躊躇があったからであろう。 だが、新規参入の中国製レンズの品質が、そこそこ 良かったこと等で、2019年頃からは、大手中古チェーン 店等でも、これらを中古品として扱う事となった模様だ。 だから、しばらく待てば、こうした中国レンズも中古品 が出てくるかも知れない。中古品を安価に買った方が こうした「ちょっと出自が怪しい」レンズは、何か あった際にも、投資額の損失を抑える事が出来る。 しかし、意外な事に、中国製等の海外レンズの中古 相場は、新品価格とあまり変わらないケースが多々 あった。これでは中古買いのメリットが殆ど無い。 「レアもの扱いでの高額相場か?」とも思ったが、 まあ良く考えてみれば、1万円台のレンズを中古で 数千円等とかで売っているような商売では、レンズ 市場が縮退している中古市場(中古店)も、やって いけないのであろう。 例えば定価数十万円の高額カメラを、その30%程度 の価格で買い取り、60%程度の相場で中古販売 すれば、数万円とかの利益が出る。 しかし、数千円で下取りしたレンズを数千円で 売っていても、殆ど儲からないし、せっかくの 来店客が、そういう安い品物だけ買って、満足して 帰ってしまっても、それでは「販売機会の損失」に なってしまう。(だから、あまりに安価な中古品は 売買もしないし、店頭展示もしていない場合もある) まあ、中古店もシビアな経営をやっていかないと こうした縮退市場では苦しいのであろう。 状況は良くわかった、まあそうであれば、自分の 価値感覚に基づき、好きに購買行動をすれば良い、 「市場」は生き物であるから、ずっと同じ価値観が 通用するとも限らない訳だ。 さて、本レンズ七工匠60/2.8であるが、あまり 高描写力のMacroとは言い難い要素がある。 まあ、「ジェネリックレンズ」(=昔の一眼レフ用 の名レンズの設計を1/2~2/3程度に縮小コピーし ミラーレス機用等に焼きなおしたもの)を得意と する「七工匠」ではあるが、本60/2.8に関しては 設計のベースとなったオールドマクロを発見する 事ができなかった(注:探し難いだけで、原本は 存在しているかも知れない)ので、場合により新規 設計なのかも知れず、その為に初回生産時に何か 課題があったのではなかろうか?という推測も 無きにしもあらず、という状況だ。 ---- さて、6本目は、固定焦点型トイレンズである。 レンズは、GIZMON Wtulens 17mm/F16 (新品購入価格 6,000円 マウントアダプター付き) カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機) 2018年に発売された単焦点パンフォーカス(固定焦点) 型トイレンズ。 銀塩時代の富士フイルム社製「写ルンです」の搭載 レンズ(単玉1群2枚非球面メニスカス)を、取り外し、 リサイクル(再利用)したトイレンズである。 (注:誤「富士フィルム」、正「富士フイルム」だ) その「写ルンです」レンズを1枚だけ使用した製品が GIZMON Utulens 32mm/F16 (2017年)であり、 2枚使用したものが、本「Wtulens」となっている。 一応フルサイズ対応であるが、2枚のレンズを 対称配置した事で、本来の「写ルンです」とは光学系 の特徴が、がらりと変わり、超広角化はできたが 「周辺減光が非常に大きい」という特性になった。 「周辺減光」は、まあ、使い方次第では、長所にも 短所にもなりうる訳であり、これはこれで良いと 思っている。必要に応じて、デジタルズーム機能の 利用、または事後のトリミング編集で周辺減光の 度合いを調整する事が望ましい。 他にも、開放F値がかなり下がってしまった事もある (注:銀塩「写ルンです」は、機種によりけりだが、 だいたい開放F10前後である)ただこれは、単に 2枚のレンズを用いたから開放F値が暗くなった事 のみならず、収差を低減する為に、簡易絞り機構を 入れていて、その為に開放F値が下がった理由もある) また、銀塩「写ルンです」は、かなり描写力が 高いシステムであったという印象もあるが、 本WtulensやUtulensでは、そこまでの高描写力を 得る事は出来ない。(参考:銀塩の「写ルンです」 ではレンズで発生する「像面湾曲」収差を低減する 工夫として、フィルム面を湾曲して装填する仕組みと なっているが、デジタルではそういう措置は無理だ) まあ、あくまでトイレンズだと思って、「Lo-Fi」志向 として用いるのが賢明なレンズであろう。 ---- さて、7本目はマシンビジョンレンズである。 レンズは、VS Technology SV-1214H (新品購入価格 18,000円) カメラは、PENTAX Q7 (1/1.7型センサー機) 2010年代後半頃に発売の、2/3型センサー対応 Cマウント、マシンビジョン(FA)用単焦点汎用レンズ。 型番が示す通り、12mm/F1.4の仕様であり、 PENTAX Q7に装着時は、数値の上からは約55mm/F1.4 相当のレンズとはなるが、写真用レンズの感覚で 「大口径標準レンズ」のように、その数値を捉える事は できない。 まあ、この手のマシンビジョンレンズについて説明を すると冗長になるので、大幅に割愛する。 そして、仮に詳細を書いたところで、この分野の理解 には高い専門性が必要だ。が、その専門性は、カメラ 分野との接点は殆ど無いので、たとえカメラに詳しい人 でも理解が厳しいかも知れない。 ばっさりと説明は省略しよう、興味があれば、例えば 特殊レンズ第1回「マシンビジョンレンズ」編記事 等を参照されたし。(旧ブログ) ただし、上記記事に本レンズは登場しない、 本レンズは、高い近接撮影能力(最短10cm)を持つ 新鋭高解像力レンズであり、上記記事の執筆後に、 どうしても欲しくて新品で購入したものだ。 その「購入」に関しても、この手のレンズは業務用途 専用であり、一般の「個人」では、まず買えないので 念の為。 (追記:「Raspberry Pi」(通称「ラズパイ」)という、 電子工作の趣味用のマイコンボードが存在するが・・ 近年「Raspberry Pi HQ(High Quality)」カメラという SONY製IXM477 CMOS撮像センサーを搭載した1200万 画素の高画素型カメラが、別売品として発売されている。 このカメラには工業用のCマウント版があり、その為に、 ごく近年では「ラズパイカメラ用Cマウントレンズ」の 販売が、主に通販等で行われている。 それらのCマウントレンズを入手すれば、今回の用法の ように、PENTAX Qシリーズ・デジタルカメラや、 ミラーレスμ4/3機(+2倍テレコン)で活用が可能だ) ---- では、8本目、これも特殊レンズだ。 レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 56mm/F1.2 R APD (中古購入価格 112,000円) カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機) 2014年に発売された、史上初の「AF対応」の アポダイゼーション光学エレメント搭載型、 APS-C機/FUJI Xマウント専用、中望遠画角レンズ。 発売後、依然、本レンズは、アポダイゼーション 搭載レンズ中、最も明るい口径比を誇るが、 実効F値(T値)は、T=1.7となる。 とは言え、T1.7でも明るすぎる。アポダイゼーション では絞りを開放にした際に最大の効能を発揮できる為、 絞って使う用法は、あり得ない訳だ。 (注:本記事の2本目、SONY FE100mm/F2.8STF もアポダイゼーションである為、絞って使っては ならない。”絞ると効能が減る”という初級レビュー を良く見かけるが、勿論、原理的に、そういう用法は 行ってはならない。レンズは、基本的には、その特徴 や効能を最大限に発揮する使い方を目指すべきだ。 あえて、そうしないケースも勿論ありうるが、そうした 用法は自己責任であるから、そうした使い方を弱点と 見なす評価は公正では無い。→そういう基本がわかって いないならば、「ビギナーだ」と見なさざるを得ない) ・・で、絞って使わない為、シャッター速度オーバーの 課題を防ぐ為、本レンズにはND8(減光3段)フィルター が最初から付属している。 今回使用機のX-T1には、シャッター速度オーバー時に 自動的に最速1/32000秒の電子(撮像素子)シャッター に切り替える機能がついている(=そう設定ができる) が、高速電子シャッターは、ローリングシャッター歪 により、動体撮影および手ブレ時には向かない為、 面倒でも付属のND8フィルターを装着した方が良い。 本レンズの描写力は、アポダイゼーション搭載の 高額レンズながら、さほど優れたものでは無い。 ただ、MINOLTAおよびSONYの両STFが超絶的な描写力 を誇る為、「それらに比べると見劣りする」という程度 であり、本レンズの絶対的描写力は、他の一般レンズ と比べるならば、そう悪いとは言えないランクだ。 課題はむしろAF/MF性能にある。大柄のレンズで 内部質量も重いと思え、たとえ像面位相差AF搭載の X-T1であっても、AFの速度・精度ともに不足し、 MFの場合は、レンズ側での無限回転式ピントリングの 操作性の悪さ、およびカメラ本体側でのMF性能不足 (ピーキングは低精度、半押しまたはモード変更で ピーキング停止。画面拡大操作系は悪い、等)で、 まあつまり、何をしてもピントが合い難い。 まあでも、歴史的価値は高いレンズである。 本レンズ登場(発売)まで、私はFUJIFILM Xシステム ミラーレス機を無視していた(性能が低く、コスパ が悪いと見なしていた)のであるが、本レンズの登場 により、Xシステムを無視できなくなってしまった。 まあつまり、欲しいレンズがあるから使用マウントを 増やすのであり、レンズの事を考えずに、新マウント の機体(本体)ばかりに注目してはいけない・・ という思考法を強く推奨しておく。 ---- では、次はMFレンズだ。 レンズは、安原製作所 ANTHY 35mm/F1.8 (新品購入価格 35,000円) カメラは、SONY α7S (フルサイズ機) 2019年に発売されたE(FE)マウント・フルサイズ対応 MF準広角レンズ。 レンズ構成は、銀塩レンジファインダー時代の名玉 「ビオゴン」と類似だが、開放F値を明るくしたり 最短撮影距離を短く(最短29cm)した新設計で、 現代的スペックであり、悪くない。 ANTHYシリーズは、この35mm以降も色々と発売される 予定だったと聞いていたが、たった一人で安原製作所 を運営していた「安原伸儀」氏は、非常に残念ながら、 2020年春に急逝、本レンズが遺作となってしまった。 あまり変に褒めて、本レンズが「投機対象」とも なってしまったら、故人にも失礼な話であろう。 安原氏は、ちゃんと写真を撮るエンジニアでもあった、 同社のWeb等での作例は、安原氏本人が撮影をしたもの も多々あると思われた。カメラやレンズを、ちゃんと 実用としたからこそ、安原製作所の製品はユニークで アイデアがあり、かつ、カメラマンの心理を理解した 商品が多かったように思える。 決して、「カメラやレンズを、写真も撮らずに、単に 個人等で売買して利益を得る」等の行為は、安原氏も 好まなかった事であろうと思う・・ ---- さて、今回ラストのミラーレス中期レンズだが、 こちらもMF特殊レンズである。 レンズは、Voigtlander NOKTON 60mm/F0.95 (注:独語綴りの変母音は省略している) (新品購入価格 113,000円)(以下、NOKTON60) カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ (μ4/3機) 2020年発売のμ4/3機専用超大口径MF望遠画角レンズ。 F0.95という超大口径が特徴の、レンズ(シリーズ) である。 このシリーズは2010年代初頭から展開されていて、 10.5mm,17mm,25mm,42.5mm,60mmの5機種 が発売されている。(注:現在も生産継続中。 少ロット生産製品が多いコシナ社としては異例だ。 なお、コシナ製品が少ロット製品である事を知らない から、買いそびれる初級マニア層や金満家層が出て、 後年になって、そうした「レア品」が、投機対象と なってしまう訳だ。これはもう、それほどに欲しい のであれば、売っている期間に買わない方に100% の問題がある。さらに言えば、「誰かが”良い”と 褒めない限り、自身では、何もレンズの価値を判断 する事ができない」という現代の大多数の消費者層の 状況にも多大な問題がある。まあつまり「目効き」が 出来ていないという状態であるし、「価値感覚を 持っていない」とも言うことが出来るであろう・・) で、私は、このシリーズでは25mm/F0.95(初期型、 2011年頃)、42.5mm/F0.95(2013年頃)と、 本NOKTON60を所有しているが、最も新しい本レンズ においては、描写力、特に解像感がかなり向上している。 旧来の25mm、42.5mmは、いずれも、開放近くでは (収差の多大な発生により)ボケボケの写りにしか ならなかったのだ。 理由を調べてみると、25mm、42.5mmの両者とも 通常レンズのみで構成されていた。すなわち 非球面レンズも、異常(特殊)低分散ガラスレンズ も、何も使っていないオーソドックスな設計だ。 これだと、ちょっと、収差補正が行き届かない 可能性も多々ある。(つまり、設計の未成熟、 もしくは、コストダウンの為、とも言える) 本NOKTON60に関しては、「異常部分分散ガラス」 を硝材としたレンズを2枚使用している。 まあ、たったそれだけで高描写力化する訳でも 無いのだが、すなわち、最初のNOKTONが発売されて から10年近くの間にコンピューター光学設計等も 進歩し、より高性能なレンズの設計が可能になった、 という事なのであろう。 (注:その分、勿論、価格も上昇している) NOKTONのF0.95シリーズは、広角タイプを除き、 いずれも「最短撮影距離が短い」という特徴を持つ。 本NOKTON60も、最短34cmであり、1/4倍マクロ (注:フルサイズ換算で最大1/2倍の撮影倍率。 また、カメラ側のデジタル拡大機能と組み合わせ、 さらに撮影倍率を高める事が可能である) という優れた性能だ。 マクロレンズ的に近接撮影を行うと、被写界深度 が、どんどんと浅くなり、この超大口径レンズの 「独特の世界観」を得る事が出来る。 弱点は、大きく(フィルター径φ77mm)、 重く(重量860g)、高価(定価145,000円+税) な「三重苦レンズ」である事だ。 「上級マニア層御用達」ともいえるレンズなのかも 知れないが、基本的には、なかなか悪く無い。 (個人レンズ評価DBでも、平均4点を越え、これを 「名玉」と判断している) ---- では最後に、このミラーレス中期の期間での 最優秀(優勝)レンズを、独断で決めておく。 優勝:Voigtlander NOKTON 60mm/F0.95 評価:実は当初は「SONY FE 100mm/F2.8 STF」 を、最優秀レンズとするつもりでいた。 だが、FE100/2.8STFは、他の過去のいくつかの 選手権(系)記事で、最優秀レンズや優勝等の 栄誉に輝いている。いつも同じレンズばかりが 勝ってしまうのも面白く無い為、今回は独断で 次点のNOKTON 60mm/F0.95を最優秀レンズとする。 前述の通り、超大口径による独特の世界観を 演出できるレンズだ。発売時点では、F0.95を 持つレンズの中では、最長の実焦点距離である。 (NIKON Z58mm/F0.95より、わずかに望遠だ) 近接撮影も可能なので、もはや言う事は無い。 弱点は「三重苦レンズ」である事、ただそれだけ である。 ---- では、次回の本シリーズ記事は、 「年代別レンズ選手権~近代レンズ編」の予定。
by pchansblog2
| 2022-11-27 07:34
| 完了:年代別レンズ選手権
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