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所有しているカメラについて、マニアックな 分析を行う、本「カメラマニアックス」シリーズ。 不定期連載として「機体別用途編」を掲載して いるが、その第4回目記事であり、通算では第22回 記事となる。 今回は、「SONY NEX-7の用途」編とする。 これは、2012年に発売された「不遇の名機」 であるSONY NEX-7の、ただ1機種を母艦として、 10種類の全く異なる特性を持つ多種多様のレンズ 群を装着し、NEX-7を、より広い用途に活用する 為の提案や紹介を行う記事だ。 レンズの機種数が多いので、長文記事となる。 ただ、NEX-7のオーナーはもとより、何故、この種の、 一見時代遅れのAPS-C機が必要であったり、その利点 が何処にあるのか? それを理解する上では、長文の 記事を読む意味もあるかも知れない。 --- では、まず今回最初のNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7(APS-C機) (2012年発売、発売時実勢価格約13万円) (中古購入価格 35,000円) (以下、全ての母艦はNEX-7とする為、詳細省略) レンズは、SONY E16mm/F2.8 (SEL16F28) (2010年発売)を使用する。 このレンズは、最初期のNEXの発売時点、つまり NEX-3/NEX-5(2010年)において、そのキット (付属)レンズとしての販売形態(NEX-3A およびNEX-5A)での、AF広角単焦点である。 当初のミラーレス機は、コントラストAF機構 のみの搭載であり、精密ピント合わせ型レンズ (大口径、マクロ、望遠等)を装着する事は 困難であった。キットレンズも同様であり、 広角気味、小口径気味、最短撮影距離が長い、 といったレンズ(広角単焦点や標準ズーム) をキットとするしかなかった。 後年のミラーレス機では、像面位相差AF機構や 空間認識AF機構といった、新技術が搭載されて いった為、初期のような、こうした制限事項 (キットレンズの仕様を選ぶ)は減った。 本レンズE16/2.8は、換算24mmの(超)広角 画角であり、このレンズだけで汎用的な被写体 全般に対応する事は、比較的難しい。 よって、最初期のNEX機から、ほぼこのレンズ 専用とも言える機能として、最大10倍もの 拡大率があるプレシジョン・デジタルズーム 機能が搭載されていた。 それを用いれば、本レンズは換算24~240mm の汎用的な画角が得られる次第だ。 だが、デジタルズームは、3倍を超えるあたり から画質の大幅な劣化を伴う点が、まず1つの 課題であり、第二に、その機能は当初のNEXでは 本レンズ(又は、同時代の純正単焦点レンズ) でしか動作しなかった。 後年の、例えば本機NEX-7では、その制限は 撤廃され、あらゆるレンズで(AFレンズのみならず マウントアダプターを介したオールドレンズでも) プレシジョン・デジタルズーム機能が利用できる。 (注:依然、最大拡大率は10倍と、やや過剰だ。 さらに後年のα7系機体では、最大4倍となった) 本レンズの長所は、小型軽量であり、描写力も 悪くなく、簡便に(超)広角画角が得られる点だ。 その類(広角小型機)の用法・用途としては、 銀塩時代より、RICOH GR1/GRデジタル系機が ハイアマチュア層やマニア層において一般的 ではあるが、ある意味、「それしか知らない」 または「市場から、そう思いこまされた」という 様相も見られる。 本機NEX-7に本E16/2.8や、あるいは2012年 からのSIGMA EX(ART)19mm/F2.8を装着すれば APS-C型のRICOH GR系機(2013年~)と、 同等のスペック、同等の小型軽量化、および GR系機と同等以上の多機能が得られる為、 実用的には、そういう選択肢も十分にありえる、 という事実は強調しておこう。 --- さて、2つ目のシステム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、SONY E18-55mm/F3.5-5.6 OSS (SEL1855) (2010年発売)を使用する。 初期のNEXシリーズの、キット(標準)ズーム である。前述のE16/2.8とは、また別の販売形態 あるいは、両レンズを同梱したダブルレンズキット という販売形態も存在した。 キットレンズは、(特に、ミラーレス機等の 新規のマウントでは)入門層等が購入し、最初に 手にするレンズである為、これの性能が低いと 「SONY NEXはダメだ!」といった悪評判が流れて しまう。そういう状況を避けるために、各社の キット標準ズームは、いずれも高描写力だ。 また、高性能化(高付加価値化)にも努めていて 本レンズは、OSS(手ブレ補正)内蔵である。 その為、本レンズは、NEX最高機種である本機 NEX-7(=発売時実勢価格が13万円もした。 これは当時の中級デジタル一眼レフよりも ずっと高価な値付けである)においてさえも 本E18-55がキットレンズとして採用された次第だ。 ただ、その高描写力や高性能は、あくまで 初級層に向けての要素である。描写力と言って も、ビギナー層が望むのは「開放からシャープ」 である事くらいであり、ちょっとうるさい事を 言う初級マニア層あたりでも、「歪曲収差」や 「周辺減光」が少ない事を評価する程度である。 一般ユーザー層では、それ以上の細かいレンズ性能 については評価する術を持っていない為、そこまで が合格ならば、良いレンズだ、と判断する。 だが、中級層やマニア層では、それ以外のレンズ の要素(性能や仕様)も気になってくるため、 いずれ、キット標準ズームは物足りなくなるか、 飽きられてしまい、より高価な小三元・大三元 ズームであるとか、開放F1.4級の大口径単焦点、 あるいは高性能マクロ、超望遠ズーム等を志向 するようになってくる訳だ、 まあ、そうして消費者層に高価なレンズを買って 貰わないと、メーカー側は(価格競争により、 コストがぎりぎりで、利益が少ない)カメラだけ を売っていたら儲からない次第であるので、 キット(付属)レンズの性能や仕様は、中級層が 不満に感じるか感じないかの、ギリギリのレベルで 留めておく事が普通(=それが商品戦略)である。 そうなると、付属標準ズーム等は、いずれは 高級機材への代替等の理由で不要になってしまう から、中古市場においては、単品、あるいはカメラ とのセットで、極めて多数が流通する事となる。 価格(中古相場)は当然ながら安価であり、性能 から比べるとコスパは最強に近い状態となっている。 そうであれば「キットズームだから」と、馬鹿に してかかる必要もなく、「最強コスパのレンズを どう活用するのが良いか?」という、別の観点が 出て来ても当然であろう。 個人的な本レンズの用途は、記録撮影(業務/実用) における、「消耗用レンズ」である。 安価であるから、過酷な、あるいはラフな使用環境 において、傷だらけになっても、あるいは不調に なっても、最悪は壊してしまっても、問題は無い。 そして、記録撮影等では、「ボケ質が」だとか、 「最短撮影距離が」等のシビアな性能も要求される ケースは、まず無い。又、小口径標準ズームでは、 カメラのAF性能との組み合わせバランスにおいて、 ピントを外す事も、まず無いので、記録撮影での 大量/即時撮影において、ピンボケ等の歩留まり 低減のリスクを減らすメリットも大きい。 注意するべきは、日中屋外での逆光耐性くらいだ。 そこにだけ留意して使えば、実務用消耗用レンズ として最高のパフォーマンスを発揮できるのが こうした、キット(標準)ズームであり、私は 各社・各マウント機用での、その手のレンズを 所有している。ただ、仕様が似ていたり、時代が 異なるものを何機種も持っていても、あまり意味が 無いので、トータルでの所有数は、さほど多く無い。 そして、面白い事に、「消耗用」と考えて、ラフに 使っていても(例、雨天やら酷暑やら、潮風や 砂埃等)、まずそれらが故障してしまう事はない。 価格が安価で、長年使え、かつそれらで、いくばく かの撮影報酬も得る事ができるならば、それはもう 「利益率」という視点では、最強クラスのレンズと なる。 世間一般層が思うように、「プロ(職業写真家層) とかでは、最高の性能の機材を使っている」は、 それは、正しい解釈(想像)とは言い難い。 つまり、同等品質の写真を納品して、同等の報酬や 利益を得るならば、撮影機材は、安ければ安いほど 設備投資の金額が減って、利益率が向上し、実務 (ビジネス、事業)として成り立ちやすくなる訳だ。 したがって、「プロも使う道具(高級カメラや 高級レンズ)だから良いものだ」という解釈もまた 誤りであり、それは消費者・ユーザー側での希望的 な観測であるか、あるいは製造・流通の販売側での、 そうした「広告宣伝戦略」に過ぎないわけだ。 世知辛い状況(≒現実的すぎて、夢も希望も無い) ではあろうが、世の中とは、そんなものだ。 --- さて、3つ目のNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、smc PENTAX-M 40mm/F2,8 (1970年代後半頃発売)を使用する。 オールドレンズである、しかも希少な パンケーキ(薄型レンズ)でもある。 しかし、パンケーキレンズは、一時期(1990 年代後半)に、大ブームとなったものの、その後 の時代では(人気が)廃れてしまった。 理由は、「性能(描写力や最短撮影距離)が低い」 「操作性が悪い」「投機対象となって高価すぎる」 が代表的なものであろう。 私も、ブーム直前に、入手可能なパンケーキは ほぼ全てを所有していたが、実用性の低さに辟易 して、すぐに、その殆どを手放してしまっていた。 やや後の時代に売却すれば、転売利益が出たかも 知れなかったが、カメラやレンズにおける、そういう 措置(投機)は、個人的には賛同していないので 別に、それ(譲渡等の処分)を後悔する事も無い。 さて、それでも、何本かの歴史的価値の高い パンケーキは処分せずに所有を続けている。 本M40/2.8も、そうした中の1本だ。 本レンズを現代において使う上では、 性能や操作性の低さの課題は確かにあるが、 最大の問題点はそこでは無い。 「パンケーキ型レンズを機体に装着した際に 得られる、ファッション性での主張」が、 ミラーレス機では無理なのだ。 理由は、マウントアダプターが必須となる為、 薄型レンズの薄型である特徴が得られないからだ。 (注:PENTAX のデジタル一眼レフに装着する 場合では、近年の機体においては、A型以前の MまたはP/K/無印のKマウントのMFレンズは、 開放でしか撮れないか、又は、実用性の低い 極めて繁雑な操作を要求されてしまう) パンケーキが何故流行したのか?は、当初は その観点(見せるシステム)であった次第だ。 特に、大型のカメラ(旗艦機等)に、薄型の レンズを装着したシステム性が格好良い、という 新たな文化(他者に主義を主張する)が生まれた 事は、カメラ史においても特筆すべき事だ。 そもそも、1970年代前後に各社から発売された パンケーキレンズが、何故絶滅してしまったのか? は、まあ、複雑なAEやAF機構を入れる事が薄型の レンズでは技術的に難しかった点はあるのだが、 それよりも大きな要因として、「カメラは周囲に 経済力や技能をステータスとしてアピールする 道具である」という、当時の世間での価値観が 極めて大きい。 よって、「カメラやレンズは、どど~んと、 大きいもので無いといけない。さもないと 薄型のレンズ等は、安物に見えて貧相だから、 そんなものをつけていても周囲から尊敬されない」 という価値観が、ごく普通であったから、結局 パンケーキは売れず、絶滅してしまった訳だ。 しかし、バブル経済もはじけた1990年代前半 ともなれば、「(バブリーな)華美で高価な凄い モノだけが、良いものではない」という風に、 消費者層や世間での価値観が激変してしまった。 だから、その時代に「パンケーキを使う事は、 主義主張である」という風に、まずマニア層から そうした新たな価値観が生まれてきた次第だ。 だが、全ての消費者層が、新たな価値観を持った 訳でも勿論無い。したがって、ほんの数年後には 「今人気のパンケーキを持っていれば、将来に 値上がりし、転売して利益が稼げる」といった 「おいおい、数年前の土地や株のバブルと、その 崩壊で、もう懲りているのではなかったのか?」 という風な「投機的措置」が、はびこってしまい マニア層は、いの一番に、パンケーキブームからの 離脱を図った次第だ。 ブームに乗り遅れた、初級マニア層やシニア層等 では、そうした高額なパンケーキを、その意味や 価値や歴史もわからずに買わされる羽目になり、 外から見ているだけでも不憫な状況であった。 勿論、デジタル時代に入った数年後では、その パンケーキバブルも完全に崩壊してしまっていた。 ただ、それでも「変な価値観」は、現代でなお 続いている。 四半世紀も出遅れた、あるいは 当該ブームに超乗り遅れた新規マニア層では 「パンケーキって、良いのだろう? 先輩から聞いた」 等と言って、古くて、誰も見向きもしなくなった ものを探したりするが、現代カメラの機材環境では 正常に利用できなかったり、あるいは、せっかくの 薄型の特徴を発揮できないアダプターシステムで 使うしか無いなど、ちょっと的外れな状態だ。、 ・・はたまた、前述の「1970年代の見えっぱりな カメラの用途」を、半世紀も過ぎた現代でも、 まだなお、そうした価値観を持ち続けていて、、 例えば、振り回す事も写真を撮る事もできない ような大型望遠レンズを持ち出して、三脚を立てて 1日中待機して(注:どこにもレンズを自由に 向けれないから、写真など一切撮れない)いて、 通りがかりの誰かが「凄いレンズですね、プロの 方ですか?」と、嬉しい誤解の言葉を投げかけて くれる事を、ずっと待ち望んでいる状況を、よく 見かける次第である。 もし万が一、誤って声を掛けてしまったら、もう ずっと機材自慢だとかの、つまらない話を聞かされる 状態になるので(汗)声をかけないで無視をして 通り過ぎる事が賢明であろう。 今時は誰でもがカメラを持っている時代であるし、 いやもう既に、皆、スマホで写真を撮るから、 カメラなど持っていなくても良い時代でもある。 つまり、高級カメラや高級レンズなど、今時では 何の自慢にも主義や個性の主張にもならない。 そんな世情である。でもまあ、時代が変わったとは 言っても、依然、古い時代の価値観を持ち続けて いる人達は少数ながら存在する訳だ。 さて、総括だが、(オールド)パンケーキレンズ と本機NEX-7とのマッチングやバランスはあまり 良くない、そこはむしろ「良くない用法」を 説明するために、本システムを紹介している次第だ。 なおNEX-7は、高度な「動的操作系」を持つ機体 ではあるが、時代(技術)の狭間のカメラであるから 世間一般の評価では「AF性能が低い」等の、表面的 な評価だけに終始してしまい、その抜群の操作系や オールドレンズ使用時等での高効率化については 残念ながら全く評価されないで終わってしまった。 「終わってしまった」とは、翌年のSONY α7系の 発売により、マニア層等は、オールドレンズの 母艦を、そちらにシフトしたからである。 ただ、フルサイズ機であるメリットは、オールド レンズ使用において必須の要件とは言いがたく、 加えてα7系機体では、一部のオールドレンズで 画間反射(注:TAMRON社用語)による、盛大な ゴーストやフレアが頻繁に発生する為、けっして 万能なオールドレンズ母艦には成り得ない。 α7系を、その用途に推奨したのは、むしろオールド レンズ等の販売を促進したい、流通・販売側の 戦略であり、マニア層が好んでそうした訳では 無いと思う。現代では、様々な「情報戦略」が 蔓延する時代であるから、消費者層は世間一般での 通説だけを単純に信じてはならない、ここは鉄則だ。 その点NEX-7では、APS-C機の構造上、画間反射 は極めて発生しにくく、汎用的な母艦特性を持つ。 加えて、オールドレンズにありがちな周辺収差の 増加を嫌い、APS-C機で周辺をカットして画面全体 の平均画質を高める効能もある。(注;フルサイズ 機をクロップすると、仕様上、画素数の低下が大きい。 SONY機では、演繹補間(デモザイク)処理にクセ があって、高画素では、解像感が低下する弱点を 持っているので、小画素(RGGBのベイヤー型配列 の原理からは、最大記録画素数の1/4である事) での撮影時でも、ある程度の画素数が確保できる 状態(例:本機NEX-7では小画素でも600万画素が 得られる)が望ましい。 よって、本機NEX-7は、今回のパンケーキは ともかく、オールドレンズ全般におけるシステム バランスは、決して悪く無い。 そして・・ 「AF性能が物足りなければ、MFで使えば良い」 これは簡単な解決策であり、かつ無理な話ではない。 「パンが無ければ、ブリオッシュを食べれば良い」 と、世間知らずのフランス貴族が口をすべらして 民衆の反感を買い、フランス革命に発展する等の、 無茶苦茶な失言では無い訳だ。 --- では、次のシステム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、HOLGA LENS 60mm/F8 HL-O (4/3機用) (2010年代前半頃発売)を使用する。 HOLGA LENSは、中国製のトイレンズであり、 Lo-Fi(低描写力)型レンズの代表格である。 ただし、低描写力だから使い物にならないのか? と言えば、それはむしろ逆であり、一般的なHi-Fi (高描写力)型レンズでは決して得られない映像 表現を構築する事ができる為、海外では1990年代 (注:ロモグラフィー宣言以降)より、そして 国内では2000年代前半において、こうしたLo-Fi システム(他には、LOMO=旧ソ連/オーストリアも 著名である)は、大きな流行となった歴史がある。 HOLGA LENSとは、元々は中判(6x6判)カメラが 主体であった(HOLGA 120等)物の、搭載レンズ を単体レンズとして、一眼レフ用やミラーレス機 用に販売したものである。 今回使用レンズは、元々の中判用の焦点距離で 60mmのものだ。これは中判機では準広角画角と なるが、APS-C機であるNEX-7に装着した場合は 90mm相当の中望遠画角となってしまう。 Lo-Fi映像表現の実現には、広角系技法の方が、 若干の有利を感じる次第だ。 画角の変化よりも問題なのは、中判用のレンズ であれば、イメージサークルが広くて、HOLGAの 最大の特徴であった周辺減光(=周辺光量落ち、 ヴィネッティング等。ただし「トンネル効果」の 呼称は俗語であり、他の技術分野との専門用語被り がある為に、本(旧)ブログでは完全に非推奨) ・・(周辺減光)が、小センサー(APS-C以下)機 では、発生しない(or し難く)なってしまう。 周辺減光効果が出ないと、Lo-Fi用途には使い難い。 この問題への対応の為、最初期(2010年前後) のHOLGAレンズを除く、後期型においては、同社で BC(ブラック・コーナー・エフェクト)と呼ぶ 蓮根状に穴の開いた特殊な絞り部品を、レンズに 搭載する事で、「周辺減光効果」を実現していた。 その、切り替わりの時期では、一眼レフ用の HOLGA LENSでは「BC」の型番が付与されていた 時もあったが、後年ではBC型番は省略されている。 なお、BC機構搭載型のHOLGA LENSは、口径比の 表記こそ(開放/固定)F8であるのだが、実効F値 (≒T値)は、T10~T11程度に暗くなる。 (注:暗くなった場合、手ブレや被写体ブレの リスクが増大するが、これはLo-Fi表現を得る 為には、むしろ歓迎する点であり、意図的に ブレを含んだ映像表現とする作画も常識的だ) また、2010年代中頃からは、ミラーレス機専用 の短めの焦点距離を持つHOLGA LENSも発売されて いて、25mm/F8タイプ(APS-C、μ4/3機用) 10mm/F8タイプ(PENTAX Qシリーズ用)もある。 HOLGA LENSの全機種については、以下の記事を 参照されたし(旧ブログ) *特殊レンズ超マニアックス第3回「HOLGA LENS」編 *レンズマニアックス・プラス内、海外レンズ・ マニアックス第8回「HOLGA LENSマニアックス」 HOLGA LENSの特徴としては、これまで発売された 一眼レフ/ミラーレス機用の交換レンズの中で 最も(またはトップクラスの)Lo-Fiな描写が 得られる事である。 したがって、Lo-Fi表現を志向する上では、この HOLGA LENSは欠かせない。まあ、これよりも写りの 悪いレンズが発売された歴史が殆ど皆無だからだ。 ただ、Lo-Fiのレンズは、国産では、2013年に 発売された「PENTAX-07 MOUNT SHIELD LENS」 (PENTAX Qシステム用)以降では、発売例が無い。 というのも、そのレンズだが、PENTAX Qシリーズ の主要購買層は、入門層やビギナー層であったのが、 そうした層には、Lo-Fiレンズの存在意義や、 映像表現に応用する概念が、全く理解されなかった からである。 その為「何故、こんな写りの悪いレンズを販売する?」 とか「値段が安いから、写りも悪いのか?やむなし」 といった、完全に的外れの評価・意見が多数発生した。 まあつまり、日本の初級中級層では「写真は綺麗に 写っていないとならない」といった「映像記録」の 概念しか持っていない。これは、日本製のカメラが 工業製品として高性能を目指して、数十年かけて 発展して来た事にも理由があり、そのユーザー層も 「綺麗に写るカメラで、”ハレの日”(イベント、 旅行、冠婚葬祭等)を記録するものだ」という 概念から一歩も抜け出していなかった事が原因だ。 他の芸術分野(絵画、美術、工芸、書道、音楽等) においても、綺麗な、上手な、といった作品が 多くもてはやされる事となり、こうした傾向から 近年では「日本はアート後進国である」と、いう 辛辣な意見が、ジャーナリストや美術業界関係者 等からも、多く聞かれるようになった。 でも、これは批判的な意見ではなく、「文化的な レベルの大幅な低下」を危惧する声であり、 確かに、諸外国等と比べると、近年の日本での 芸術的な文化レベルの低下は間違い無いと思う。 「絵画に親しむ人は多い」等と思うかもしれないが、 人気のある展覧会は「ゴッホ、モネ、ルノワール」 といった、印象派の著名な画家のもの程度であり、 そういう展覧会には「名前だけ聞いた事がある」 という程度の観覧者が長蛇の列で並んで見学するが、 「芸術に親しんで、ハイソになったつもり」 という様相も見られる状況にも思えてしまい、 他の、少しマイナーな画家の展覧会等では、たとえ それが、美術史的に、どんなに優れた評価を得た 画家であっても、ガラガラにすいている状態である。 音楽もしかり、ネット配信等で一時的に人気になった 楽曲等は、ほんの1~2年で、世間から忘れ去られて しまう。対して、懐メロTV番組等で数十年も前の 名曲が流れて来ると、その楽曲の完成度の高さや、 長い期間を過ぎても、まだ色あせない曲調や歌詞等 に感銘し、評論家等の言う「日本はアート的に退化 し続けているのではなかろうか?」という意見にも、 賛同できるような状態となる。 写真はどうか? カメラ/レンズ市場の大幅な縮退 により、ビギナー層ばかりが現代の主力購買層だ。 だから、Lo-Fiのレンズ等は、ビギナーには理解 されず、PENTAXの意欲的な試みも(Lo-Fiレンズを 日本国内で初めて、2010年代前半に複数展開した) 後年には、その戦略は成り立たなくなってしまう。 HOLGA LENSもしかり、もう現代では全て生産完了だ。 小中学校等での図画工作や美術の授業においては、 綺麗に描けていれば高評価が得られるという状況も また課題なのかも知れない。個性的な画風や表現を 推進する事は、そういう画一的な授業形態の中では 困難であるからだろう。 でも、そういった結果、写真においても「高画質で ピンボケが無く、手ブレもしなていなければ、良い 写真だ」という風潮が、数十年間も続き、しかも 近年では、それがますます顕著になっていく状況は どうみても、「アート後進国」の様相が強いように 思えてならない。 総括だが、近代の高性能カメラや高性能レンズで Hi-Fiの写真を撮る事は、そう困難では無い。 だが、Lo-Fiの写真を撮るのは、その「映像表現」 の観点や「撮影技法」の要因からも、Hi-Fi写真の 数倍、あるいは数十倍も困難な事である。 だから、Hi-Fiの写真に飽き足らず、Lo-Fiの 写真表現目指する/志向する、という事は、初級 中級層のスキルアップの点でも、悪く無い話だ。 綺麗に写っているだけで撮影者の言いたい事が良く わからない写真や、「SNS映え」といった、撮影者 側に手柄や工夫が殆ど無く、被写体の魅力だけに 頼り切った写真に「イイネ」を送る事も、ちょっと 考え直す時代になってきているのではなかろうか? HOLGA LENS又はLo-Fiレンズと、本機NEX-7との 組み合わせであるが、MFレンズの母艦とする事は、 前述のように悪く無い選択肢だ。 だが、さしもの優れた「動的操作系」を持つNEX-7 であっても、ピクチャー・エフェクトの操作性・ 操作系だけは、若干の課題を持っている。 その選択において、トライダイヤルナビを、数多く 廻して操作しなければならないからだ。 又、操作の順番によっては、プレシジョン・デジタル ズームとの併用操作がやりにくいという課題もある。 まあでも、Lo-Fi用母艦として、全く使えないという 訳でも無いので、無い物ねだりをせず、なんとか 技能で回避して使うしか無いであろう。 --- さて、次のNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、Neewer 85mm/f1.8 (詳細不明、2010年代中頃から後半頃に発売か?) を使用する。 初級マニア層の間では「NeewerとMeikeは同一の メーカーである」という話も良く流れてはいるが、 個人的な感覚では、NeewerとMeikeは全くの別物だ。 その理由は、製造・企画の品質がまるで異なる からであり、Neewerは、悪く言えば「従前の中国 製品と同等の低レベル」であり、Meikeは、近代的 な品質基準を、ほぼクリアしている。 ただ、近代の中国(特に、深センや香港地区)の 光学製品の製造形態は複雑怪奇であり、加えて 日進月歩でもある。外から見ていたり、1つや 2つの格安レンズを入手した程度では、その全貌は 全く掴めない。 場合により、数年間程度でメーカーあるいは、製品の 企画方針や製造技術が、どんどんと変遷している ようにも思えてしまい、仮にNeewerとMeikeが 同一のメーカー、あるいは同一資本関係があったと しても、もはや、数年間でその状況は一変している のかもしれない訳だ。 例えば具体的には、Neewerは中国国内市場向けでの 格安レンズ(その根拠として、旧来の一眼レフ用の マウント版が多い)だったのが、国際市場を目指す にあたり、新たなブランド(Meike)を立ち上げたり ミラーレス機用のマウント製品を追加したり、 世界基準に見合う品質の向上を目指した(ただし それにより、若干でもコストアップはしている事で あろう。しかし、それでも国際的に見れば安価だ) のかも知れない。 さて、本Neewer 85/1.8の品質や性能は、そういう 経緯や意味で未成熟な部分も多々あるのだが、 そういった「難しいレンズ」を使う上では、本機 NEX-7は、様々な弱点回避技法を用いる為の 有益な母艦(カメラ)となる。 NEX-7の基本性能は全く不足しておらず、かつ 優れた動的操作系により、使用が困難な品質や 性能レベルのレンズを、なんとか使いこなそうと する上で、他のカメラには無い効率性を得られる。 簡単に言えば「難しいレンズを使う研究用母艦」 として、NEX-7は最適であり、今回の記事においても 半数以上の装着レンズが、「難しい、ややこしい レンズ」な訳だ。 これについては、より近年の高性能カメラでは 全く対処できないケースも多い。 要は、新鋭カメラは、そのメーカー製の新鋭の レンズを装着し、ごく一般的な撮影技法を用いた 場合のみ、高性能が発揮できる仕様となっている 次第であり、ややこしい、難しい、面倒臭いレンズ を使った場合、その高性能の大半が発揮できない どころか、むしろ使いにくいカメラとなってしまう。 ただ、だからどっちが良いとか悪いとかいう話では なく、「レンズにはその使用に適したカメラがある」 という概念が正解であろう。 ちなみに「カメラには、それに適したレンズがある」 では無い。あくまで主体はレンズであり、カメラは そのレンズを有効に活用する為の機械でしか無い訳だ。 だから、正しい撮影機材の購入手順(思考法)は、 まず撮りたい被写体や、その為の撮影技法を考察し、 それに見合うレンズを選び、最後にそのレンズの 性能や特徴が活かせるカメラを選ぶ。 よって、場合により、レンズを買った後で、その レンズの特性に見合う専用のカメラ(母艦)を 買い足しするケースすらもある。 一般の初級中級購買層では、この考え方の手順を 持っておらず、「まず、最高性能のカメラが欲しい」 となって、装着するレンズや、撮りたい被写体や 撮影技法、映像表現等の事は、当初は、ほとんど (全く)考えていない。 これはまずいであろう、今からでも遅くないから、 カメラ本体の事よりもレンズ(や被写体そのもの) を優先して、購買行動に繋げる事を強く推奨する。 ちなみに、「難しいレンズの実験・研究用母艦」 としての適正のある機体は、本機SONY NEX-7の 他、ミラーレス機では、PANASONIC DMC-G6、 SONY α7、CANON EOS M5あたりのみと、 かなり限られる。 一眼レフでは、ほぼ全滅状態であり、あえて 少しでも特性のある機体を挙げれば、NIKON Df CANON EOS 6D(MF用スクリーン Eg-S換装必須)、 PENTAX K-5/K-30/KPあたりに留まると思う。 何故そうなのか?は、詳しくは冗長となるので 割愛するが、最大のポイントだけ挙げておけば 「オールドレンズ装着の汎用性が高く、かつ MFでちゃんとピントが合わせられる機体」 である事が要点だ。 フルサイズ機か否か?などは、ほとんど関係が 無い話だが、特殊効果レンズ(シフト、魚眼、 ぐるぐるボケ、等)を使用する場合には、 フルサイズ機である事が必須の条件となる。 又、言うまでも無いがコスパも重要であり、 カメラばかりが高価であっても意味が全く無い。 --- では、6つ目のシステム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、七工匠 35mm/F1.2 (2018年頃発売)を使用する。 本レンズは、μ4/3機用で購入しているが 電子接点を持たないMFレンズである為に、 マウント形状をμ4/3→SONY Eに変換するだけの 薄型マウントアダプターの使用で、Eマウント機 でも併用する事ができる。 レンズ側で、各社APS-C機用(SONY E、CANON EF-M、 FUJIFILM X、NIKON Z/APS-C等)が、ラインナップ されている場合では、それは勿論APS-C機の イメージサークルをカバーする共通設計であろうから μ4/3機用マウントのレンズを買ったところで、 他のAPS-C機で使えない(イメージサークルが足りない) という事態は、まず起こらない。 わざわざμ4/3機専用の設計とする事は、COSINAの NOKTON F0.95シリーズ等、限られたケースであり、 大量生産型の中国製格安レンズで、マウント毎の 別設計などは、基本的には有り得ない話だ。 だから、μ4/3機とSONY E(主にAPS-C型機)を 同時に所有している場合、この手の中国製の格安 レンズを購入する場合、μ4/3機用を選んでおく 事が賢明である。 さて、本レンズの課題は別にある。 この設計は「ジェネリック」であろう。 つまり、1970年代前後での、主に国産の一眼 レフ用の大口径(F1.2級)標準(55~58mm) レンズの光学系を、2/3程度のサイズにスケール ダウン(縮小)して設計し、後群を少々変更して 現代のミラーレス機のフランジバック長に合わせれば 簡単に、こうした仕様のレンズが出来上がる。 この手の設計手法を「ジェネリック・レンズ」と、 本(旧)ブログでは個人的に呼んでおり、こうすれば 「お手本」がある訳だから、全くの新規に時間と手間 をかけて新型レンズを研究開発(設計)する必要が なくなり、性能検証も最小限で済む事から、間接経費 や人件費を大幅に削減でき、結果的にレンズも安価に 販売する事ができる(=価格競争力のある商品を 短期間で開発・発売できる) 世間一般のビギナー層(や、中級層あたりまでも) 中国製のレンズが何故安いのか?の理由を理解できて いないから、「部品代等に手を抜いた低性能レンズ」 という思い込みしか持っていない。 その為「しょせんは中華レンズだ、良く写る筈が無い」 といった初級評価だけで終わってしまうケースが多い。 ここで、ジェネリックの仕組みを理解したところで 重要なポイントを述べておくが、それは、「こうした コピー設計レンズでは、元となった、お手本レンズの 長所も短所も、ほとんどそのまま引き継いでしまう」 という事実だ。 ならば、お手本が良ければ、性能が優れて、とても コスパが良いレンズとなる。 その実例としては、同社、七工匠製の55mm/F1.4 がある。そのレンズは、1970年代の、プラナー系 85mm/F1.4(高性能で、神格化された)の、2/3 縮小設計であり、元が良いから、ジェネリック版も 優れていて、「ミニ・プラナー」として実用性が高い。 だが、選んだ元レンズが悪い実例もある。 それは、やはり同じ七工匠製の本レンズ35mm/F1.2 である。 本レンズの元は、前述の通り1970年代前後の 55~58mm/F1.2級標準レンズだ。 だが、このクラスのレンズは、当時の各社にあった ものの、物価が大幅に高騰した1970年代当時 (その10年間で3倍も上がった)において、 より強力なスペック(開放F値がF1.4よりは、 F1.2の方が優れている)を提示して、商品の価格を 値上げする高付加価値化戦略か、または別の好意的 な見方をすれば、物価が上昇している世情において F1.4ではなくF1.2級と、高性能化したレンズを 同程度の価格帯で販売しなければ、消費者層は 買ってくれない、という商品戦略でもあっただろう。 したがって、当時の各社は「F1.2への大口径化 競争」を始めてしまい、6群7枚程度の、F1.4級 の標準と変わらないレンズ構成のまま、F1.2を 目指して、相当に無理をした設計となってしまった。 僅かに開放F値が0.2上がっただけ、とは言え、 諸収差の多くは、その開口径の比率の累乗 (最低でも比例関係、最大では比率の3乗)で 悪化していく。 したがって、当時の各社のF1.2級MF標準レンズの 性能は、それはそれは酷いものであり、絞り開放 近くでは、球面収差(これが一番、大口径化では 響いてくる)を始めとする諸収差(主に、コマ 収差、像面湾曲、非点収差と、色収差)の オンパレード状態となり、ボケボケの低解像感しか 得られない。 旧ブログでの「最強50mm選手権シリーズ」記事で 「MF50mm/F1.2級」のカテゴリーの予選リーグを 行ったのだが、実例試写を繰り返しても、いずれも 低描写力ばかりで辟易してしまい、途中でもう 投げ出しそうになったのだが、まあでも、予選を 行わないわけにもいかないので、我慢して続けた。 あくまで時代が、そうしたレンズ(開放F1.2)を 必要としただけであり、そのスペックでの実用性は 残念ながら皆無であった訳だ。 (注:現代のF1.2級レンズは、コンピューター 光学設計、および非球面レンズや、異常低分散 ガラスレンズなどの新硝材が利用可能となった為 その50年前の技術水準とは、全く異なっている) さて、本七工匠35mm/F1.2は、元にしたレンズが 悪すぎた、というジェネリック(縮小コピー) レンズである。 「では、そんなものを元にせず、もっと良い レンズを、お手本にすれば良かったのに」 と思うであろう。 まあ、その通り、だから、同じメーカーでも、 良いレンズをお手本とした55mm/F1.4が存在する。 だが、メーカーでの製品ラインナップというものは、 消費者が欲しがるように、あれも、これもと、色々な 商品を並べないとならないし、しかも、こうした 格安レンズを欲しがる人達は、ビギナー層の比率が 多い事も事実であろう。 そうであれば「この値段で、F1.2はスゲ~!」 といったビギナー的観点からでしか、購買行動を 起こさない訳でもあり、そうして購入したとしても このレンズの出自(正体)が何であるかも理解が 出来ないから、「ボケボケの写りだ、やはり 中華レンズはダメだな」で終わってしまう。 じゃあ、もうすこし、まともな意見/質問として 「この素性が悪いレンズを、どう使えば良いのだ?」 という話は、まだ聞くに値する。 だが、残念ながら、あまり有益な回答は出せない。 あえて言うならば、まず「絞り込んで使う」が 諸収差低減の為の最も有効な措置だ。 だけど、「せっかくの開放F1.2を、F5.6か 下手をすればF8以上に絞って使う」等は、 全く面白く無い措置であろう。それであればF1.2 のレンズを買う必要はなかった訳であり、開放から 諸収差の発生を抑えた設計のF2級レンズの方が 総合描写力は高まり、かつそうしたスペックの レンズは、大口径版よりも、より安価である。 第二に、低解像感が問題にならない被写体を選ぶ。 があるだろう、花の撮影や女性ポートレート等では カリカリではなく、むしろ柔らかな描写もまた 好まれるし、そういう映像表現もありえる。 第三に、高度ではあるが弱点を逆利用する手法だ。 例えば、古い町並みや、田舎の風景等を撮影する 際に、ちょっとオールドな写真(レンズ)っぽい 映像表現を狙って、モノクロ、セピア、または 他のエフェクト(画像処理)と組み合わせて、 「懐かしい」「ノスタルジックな」といった 表現の写真を得る事である。 まあ、第二、第三の対策は、そう簡単な話では 無いとは思うのだが、基本的には「どんなレンズ であっても、それに向く用法は存在する」と 思って、弱点を弱点にしない、あるいは逆用する 方法論(すなわち「用途開発」)は継続するべき だと思う。 さもないと、また「中華レンズは、ダメなレンズ」 という状態で終わってしまい、スキルアップなど 永久に期待できず、ずっとビギナーなままの状態 になってしまう。 本機NEX-7は、高解像度のEVFを備え、ある程度は 収差の発生状況も、撮影前に視認する事ができる。 難しい技法を行う為の母艦として適している事は ここまで述べてきた通りだ。 ただ、最高シャッター速度は、後年の機体の ように1/8000秒が搭載されている訳では無い。 開放F1.2級のレンズでは、日中の撮影では簡単に 最高の1/4000秒に到達してしまい、絞りを開けて 撮る事が不可能になってしまう。 そんな場合には、レンズ側に、ND4~ND8の 減光フィルターを装着するのが第一の解決策。 第二には、シャッター速度オーバーなど気にせず 超ハイキー(オーバー露出)の写真を撮ってみる 事も、1つの実験的要素としては面白いだろう。 どうせレンズ側の高性能(高描写力)は期待できない のだから、変わった映像表現を出してみる事は うまくすれば、個性的な写真が得られるかも知れない。 まあでも、一部の初級層や初級マニア層においては シャッター速度の限界など、まったく気付かずに オールドレンズで撮影し、たまたま超ハイキーと なった写真を「オールドレンズで撮った、個性的で 面白い写真だ」と、提示(公開)してしまう事も 極めて、よくある話だ。 意図的なシャッター速度オーバーならば良いが、 偶然での結果は、決して褒められた状態では無い。 何故ならば「再現性が無い」からである。 もし、超ハイキー写真が、その人の作風や個性と して認められたら、そのビギナー層は、いったい 次からどうするのであろうか? 次の日に撮った 写真は、曇天だったので、もうそんな状態には ならないかも知れない。「あれ、おかしいなあ・・」 と、無駄打ちを繰り返してしまうばかりか、 継続的な作風の提示、今時で言えば、サステナブル (=維持できる)な写真表現活動が出来ない訳だ。 「一発勝負」が通用した、銀塩時代でのフォトコン や展示会文化であればよかっただろうが、現代の SNS時代では、継続的な作風の維持は必須要件だろう。 --- さて、次のNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、GIZMON Wtulens 17mm/F16 (2018年発売)を使用する。 これは銀塩「写ルンです」の搭載レンズの 再利用品のトイレンズであり、当該1群2枚 非球面メニスカスレンズを2枚対称構成に配置し それで超広角化を図った設計だが、ちゃんとした 光学設計では無いために、若干の口径比(F値)の 低下、および、残存する諸収差の低減の為に 簡易絞り構造を入れた為、そこでも若干のF値の 低下が起こり、結果、F16と、少々暗いレンズと なった。 加えて、広義での口径食、およびコサイン4乗則 も加わり、「周辺減光」が顕著に現れる。 だが・・・ 基本的にLo-Fi型のトイレンズである。 一般的な観点からの性能低下は、むしろLo-Fi表現 においては、それが積極的な武器と成りえる。 もう、何度も同じ話を繰り返しても無意味であろう。 Lo-Fiは難しい撮影技法であるから、難しいレンズ の実験用母艦として、本機NEX-7の存在意義が 出てくる訳だ。 で、同じNEXであっても、最初期のNEX-3を利用 するとか、あるいは、本Wtulensのマウントは、 基本的には、ライカL39スクリュー(ねじ込み) マウントの互換品であるから、他機での利用が 容易であり・・ 例えば、トイレンズの母艦として適する旧型の ミラーレス機、具体的には、SONY NEX-3の他、 OLYMPUS E-PL2、FUJIFILM X-E1、PANASONIC DMC-GF1等を母艦としてしまうと、それらは 基本性能が低く、低機能であるから、普通にトイ レンズの(低い)性能に頼った低描写力としての Lo-Fi描写までならば実現が可能ではあるが・・ それ以上の高度なLo-Fi表現を求めようとする 場合、もう限界点に到達してしまう訳だ。 具体的にはEVFを持たないミラーレス機では、 細かい映像表現を事前に(プレビュー)確認する 事は困難であるし、上に挙げた初期ミラーレス機 では、エフェクト機能すらも持っていない。 だから、難しい/複雑な事をやろうとするならば、 少なくともNEX-7、または後継機とも言えるSONY α6000系機体でないと無理だ、という事にも 繋がってしまう。これは他社機でも同様であり、 同様に、トイレンズ実験母艦は、後年(2015年 前後の)高機能機で無いと無理である、 --- では、次のシステム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/F2 (注:独語綴りの変母音は省略) (2017年発売)を使用する。 フルサイズ対応の超本格的なMFハーフ(1/2倍) 中望遠(?)マクロである。 SONY Eマウント版のみの発売だ。 個人的に、本レンズをα7系のフルサイズ機を、 あまり母艦にしてない理由はいくつかある。 第一に、ハーフマクロでは撮影倍率的に不満を 持つ場合も多々あるので、最大撮影倍率を0.75倍 (ただし、さらにデジタル拡大は容易だ)に する為。 第二に、本レンズは、珍しく絞り環がレンズの 前部にあるタイプである。その為、絞りとピントの 操作を多用する、MFかつマクロのレンズにおいては、 レンズ+カメラのシステム重心位置を左手で保持 しながら、両操作ができなければならない。 さもないと、左手の持ち替え動作、およびその瞬間 での右手のグリップへの重量負担が蓄積していき 体力や集中力の消耗を招いてしまうからだ。 本レンズは、65mm/F2と、普通のスペックながら 同等仕様のTAMRON SP60mm/F2 MACROの2倍程度 大きく重い重量級のレンズである。 したがって、重心位置と操作性に対する配慮は 必須となり、色々と母艦を変えて試した結果、 最適解は、SONY α7系のフルサイズ機ではなく、 NEX-7になった、という次第である。 第三に、勿論、MFレンズであるから、母艦の AF性能は一切関係ない(NEX-7でも問題は無い) 加えて、α7系以降の機体では、動的操作系が (一般層に向けては複雑すぎたからか?)撤廃 されてしまい、安易な静的(変化しない)操作系に ダウングレードされている。結果、α7系機は 中級層にヒットしたので、市場戦略的には結果オーライ なのだろうが、純正のAFレンズで、ごく普通の操作 (絞り値の変更、露出補正、測距離点の変更のみ) しか行わない中級層であれば、それで良かったの かもしれないが、MFオールドレンズや、さらに 難易度の高いMFの「修行レンズ」とか、はたまた トイレンズを高度な用法に使うケース、それから 本MAP65/2のような、高度な用法を要求される マクロレンズにおいては、α7系機体の操作系では 物足りない、あるいは非効率的になってしまう次第だ。 まあ、これ以上の詳細な説明は本記事では冗長に なる為に割愛する。 本ブログや旧ブログの 様々な記事で、部分的な説明を繰り返しているので 本ブログの読者であれば、言わずもがなであろう。 それでも「フルサイズのα7系の新鋭機の方が 高性能なので良い写真が撮れる」という事を 信じてしまっている初級中級層においては、 その新鋭機体の購入予算の1/10以下で買える 本機NEX-7を、試しに追加購入してみて、もし 自身が本MAP65/2や、それに相当する高難易度 レンズを持っているならば、そのα7Ⅳやらと レンズ付け比べ、撮り比べて試してみたら良い。 きっと、中級層以上であれば新型機での撮影が あまり効率的にはいかないことに理解が及ぶで あろう。 ただし初級層では、こういう難しいシステムでは そもそも撮影をする事自体が困難であろうから、 比較する意味があるかどうか?は微妙だが・・ まあでも、難しいシステムで練習してスキルアップ するという意味では、無駄にはならない事は確かだ。 --- では、9本目のNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、SIGMA 85mm/f1.4 DG HSM | ART (2016年発売)を使用する。 電子アダプター(マウントコンバーター)は、 SIGMA MC-11を使用しており、このシステムでは、 AFが効き、絞り操作もNEX-7本体側から制御できる。 レンズは超本格的な高描写力レンズであるが 大きく重く高価な三重苦であり、このレンズを 軽量なNEX-7に装着すると、レンズ側がおよそ 3倍以上もの重量となる。 当然ながら、システム重心は、完全にレンズ側に 移動する。もしこれがMFレンズだと、よほど厳密 にシステム重心を揃えないと、ピント操作と 絞り操作で破綻してしまうのだが、幸いにして AFレンズであるし、電子マウントコンバーターで レンズ側操作を省略しているから、左手は多くの ケースで、システム重心を保持しているだけで、 微動だにしなくて良い。 では、その際に、SIGMA MC-11の通信プロトコル であるとか、NEX-7の「像面位相差AF無し」の AF性能の課題により、AFが合い難かったとしたら この、アンバランスな重量級システムで、なおかつ MF操作が要求されると、もう、そこも根幹の用法が 想定と合わずに崩壊してしまう。 結果だが、「AF精度は不満ながらも、AF速度は HSMの搭載で思ったほどには低速化しない」である。 AF精度は、もうどうしょうもない、このシステムで 左手でのピント操作は、しんどい状態だ。 趣味撮影の中でも、極めて用途、あるいは撮影時間 を制限されてしまうことであろう。 本システムは、あまり推奨できない。 今回は「実験用の限界性能テストのシステム」だ と思っておくのが無難な様相だ。 --- さて、今回ラストのNEX-7システム。 カメラは、SONY NEX-7 レンズは、SONY FE 100mm/f2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM) (2017年発売)を使用する。 これも大型のレンズだが、前述のA85/1.4と 比べると、1廻りも2廻りも小さく、実用上では 及第点である。ただ、この場合は、フルサイズ機の α7系に装着する事も十分にアリだ。そちらの方が 重量バランスや、得られる画角に汎用性が高い。 そこで、本レンズの長所からなる用途を判断し それで母艦を選択する事が望ましい。 具体的には、本レンズはアポダイゼーション光学 エレメント搭載の希少なレンズであり、最強クラス のボケ質(ボケの綺麗さ)を誇るレンズである。 だから、一般的な用途として最適なのは人物撮影だ。 この場合では、フルサイズ機を母艦とする1択であろう。 第二の本レンズの特徴は、マクロモード手動切り替え により、最短撮影距離57cm、1/4倍マクロとして 利用できる。この場合、NEX-7等のAPS-C機に 装着すれば、換算150mm画角、最大撮影倍率が 0.375倍(+デジタルズーム可)の、準マクロレンズ として、自然観察撮影(草花、小動物、昆虫等) でも、素晴らしいボケ質と、高い解像感での撮影を 楽しむ事ができる。 NEX-7が母艦のAF性能的に物足りない、と言う 場合では、像面位相差AF機構搭載のα6000系 機体を使っても良いであろう。 ただ、近接撮影時では、どうせMFで使う事が主体 となる、母艦のAF性能など、どうでも良い話とも 言えるであろう。 でも、フルサイズ機での人物撮影用途の場合は AF性能に優れた像面位相差搭載機を用いる事は 必須となると思う。しかし精度はあまり要求 しても意味がない、あまりに被写界深度が浅い 状態では、AF性能に加えて、撮影者や被写体が 動かない事が条件となり、人間としてはそれは 無理であろうからだ。 そんな場合は、機械式シャッタ-高速連写や MFブラケット(≒ピントを少しづつ手動でずらし ながらの高速連写)技法を活用するなどとして 撮影の歩留まりを向上させる。人物撮影では 表情やポーズ等も重要であるから、いずれにしても 高速連写性能は必須となるであろう。 対してAPS-C機を用いた近接撮影用途においては これもまたMFで撮っていたとしても、ピントの 歩留まりは厳しい課題だ。 何故ならば、近接撮影ではさらに被写界深度が 浅く、撮影者は距離ブレを起こしやすく、被写体は 植物ならば風等で揺れ、動物であれば動いている。 (注:三脚を立てても、被写体ブレは防げない) だから、このケースでも高速連写は必須であり、 それで歩留まりを向上させるしか対策は無い。 NEX-7は、基本的な設定では、連続撮影(連写) モードで、秒3コマと貧弱な性能だ。 だが、速度優先連続撮影モードが存在し、これは 秒10コマとなり、及第点の性能だ。 このモードでは、AEとAFは固定、しかし、これは AFの微妙なズレを救済する為に使うモードである ので、AF追従型だと、むしろ、いつどこでピント が合っているか(精度不足で)不明となり、逆に ピント歩留まりが悪化してしまうのでこれで良い。 速度優先連続撮影モードでの他の性能制限は、 普段は使わないHDRやスマイルシャッター等に 限られるので問題は無い。また、一部のピクチャー エフェクトも、この連写速度で追従が可能だ。 すなわち、ほぼ全てのケースにおいて、最初から 速度優先連続撮影モードにしておいても、通常の 撮影技法の範疇では何ら問題はなく、効率的だ。 ちなみに、フルサイズα7系では、いずれも Ⅲ型機になるまでは、これだけの連写性能を 持っておらず、連写が遅い印象が強かった。 また、α7Ⅲは、購入検討対象機なのだが、 高速連写等での数万枚の撮影で、シャッター 機構が破壊されてしまうという耐久性の低さが 市場で広く指摘されており、米国ではこれで 集団訴訟が起こった事実もある。 まあなので、買おうか買うまいか迷ったあげく ずっと保留している次第だ。 NEX-7の秒10コマ、あるいは、α6000(2014年) の秒11コマならば、α7Ⅲの連写性能と 同等か、むしろ上回るくらいなので、それで 十分だとも思っている。 それ以上の連写速度が、どうしても必要だ、 という状況があるならば、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(2016年)を持ち出す事もある。 それは機械式で毎秒15コマの連写性能を持つ トップクラスの高速連写機であり、これに MF望遠レンズや、MF望遠ズームを装着すれば 飛びモノ(高速で飛ぶ遠距離の野鳥やら、 近距離での飛翔する昆虫等。勿論、飛行機や 車両等の高速動体もあるだろう)に無類の 適合性を持つ事となる。 OM-D E-M1 MarkⅡは、またそれの用途特集 の記事を書くかも知れない。 NEX-7は、そういう類の高速連写機ではなく、 用法が難しいレンズ、特にMFのレンズである 場合に、最適の効能を発揮する母艦だ。 「カメラは高価な新鋭のフルサイズ機を1台 持っていれば十分だ」という話には決して ならない、そこはカメラやレンズの事が よくわかっているマニア層やハイアマチュア層に おいては、言わずもがなの話であろう。 NEX-7には、このNEX-7でないと、出来ない事や 撮れない被写体も色々とある訳だ。 --- では、今回の記事はこのあたりまでで、 次回記事の内容は未定としておく。
by pchansblog2
| 2025-01-08 18:02
| 連載中:カメラマニアックスEX第二部
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