カテゴリ
【熱い季節】ドラゴンボート・ペーロン 連載中:【空想中古店・沼カメラ】 連載中:カメラマニアックスEX第二部 連載中:レンズマニアックスEX第三部 連載中:レンズグルメ入門編第二部 完了:フィルムカメラで撮る 完了:カメラマニアックスEX第一部 完了:歴代カメラ選手権 完了:カメラの変遷・総集編 完了:デジタル名機対決 完了:お気に入りカメラ選手権 完了:レンズグルメ入門編第一部 完了:レンズマニアックスEX第一部 完了:レンズマニアックスEX第二部 完了:年代別レンズ選手権 完了:年代別マクロ選手権 完了:続・特殊レンズマニアックス 完了:続・レンズマニアックス・プラス 完了:続・匠の写真用語辞典 旧ブログへのリンク
最新の記事
ブログジャンル
以前の記事
2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 検索
|
本シリーズ記事は、「写真用(等)の交換レンズ に興味を持ち、それを収集したり実用とする趣味」 つまり、俗称「レンズグルメ」の趣味への「入門編」 であり、入門層/ビギナー層等を対象とした説明内容 にしている。 今回第19回目は「APO銘レンズ」編とする。 これは、”各社での「APO」という名称を冠する/ 銘打つレンズ”という意味であり、”名レンズ” (=優秀なレンズ)の代わりに、本来”名玉”と 書くべきものを”銘玉”記載とする考え方ではない。 つまり、APO銘とは、APOという名前が入っている という意味であり、APOと名が付く優れたレンズ という意味では使っていない。 (注:なんで、冒頭から、こんな、ややこしい 説明をしないとならないのだろうか・・? ごく普通のレンズを”銘玉”とかと記載して、より 高く転売しようする投機層が多い事が問題な訳だ。 --- まあ、「”銘玉”と書いたほうが、"名玉”よりも、 さらに優れていたり貴重だったりする印象を与える」 から、投機(転売)の際にはそういう風に書くのだろうが、 これはもう、”優良誤認”(→広告等で、実際よりも 商品の価値を高く思わせるような記載をして、消費者を 欺く。勿論、違法)に限りなく近い、グレーゾーンでの トリック的な記法だ。 --- 商品販売サイトで直接の過剰評価をすると問題になるので わざわざ別サイト(WebやSNSで転売をサポートする目的)で、 売りたい商品の事を美辞麗句で褒めまくる訳だ。 仮に、何か言われても”銘玉”も”名玉”もいずれの 表現も日本語ではあるから、問題にはなりにくい。 だが、殆どの人達にとって、商品等の説明が過剰評価で ある事を知れば、強い不快感を持つだろう。 --- なお、ファンタジー小説やRPG等において、アイテムや 武器を”最上級”としても、それに留まらず、その上に さらに、”希少級”、"伝説級”、”神話級”だとかの、 際限無く上位の区分名称や概念が出てくる雰囲気にも 良く似ている。 そこからは、いわゆる”厨二病”だとか”語彙力の無さ” のような様相も、そういった言葉の使用から見えてくる。 ---- まあ、ひと言でいえば「オーバーな表現」だ。 近年の本ブログでは”銘玉”記載を自主的に禁止とする 措置を取っている。投機層だとか「転売サポートサイト」 だと勘違いされたくないし・・・) ・・(そのAPO銘レンズ)を所有範囲から9本集め、 それらを順次紹介していく。 ではまず、最初のAPO銘レンズ。 レンズは、MINOLTA HI-SPEED AF APO 200mm/F2.8 (中古購入価格 44,000円(以下、APO200/2.8) カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機) 1990年代のAF単焦点望遠レンズ。 では、ここから以下は「仮想問答」とする。 仮想問答とは、初級層等が疑問に思うだろう事を、 1人の仮想人格、「ビギナーのB君」の質問内容に 集約した、架空の対談だ。 B「APOって、”アポダイ・・何とか”だったか? それとも、”アポクロマチック”だったか??」 匠「この場合は”アポクロマート”(Apochromat)だよ。 で、”アポダイゼーション”とは全然違うよ」 B「なんで、こんなに言い難い名前なのだ?」 匠「日本人だからだろう? 外国人には言い易いのかも知れないぞ(笑) これに含まれる”クロマ(chroma)”という単語は、 ”色”と類似/等価の意味(又は、色の濃さ、彩度) として、英語圏のみならず様々に使われているしな。 で、アポクロマートは、異常低分散ガラス系の 新硝材を用いて、色収差等を低減した設計仕様 のレンズの事だ。(前にも説明したな?) ただ、これを「APO」と称したメーカーは、銀塩 時代では、LEICA、CONTAX、MINOLTA、SIGMA、 COSINAの5社程度しか存在せず、他社ではAPOとは 称せず、ED、AD、LD等の特殊ガラス素材を表す 名称であったり、または「L」や「★」等の、 高画質称号の中に含まれていた状況でもある」 B[ふむ。で、確か、もう特殊ガラスの利用は各社で 当たり前となったから、2010年代以降では ”APO”と名乗るレンズは少なくなったのだったな?」 匠「その通りだ、現代2020年代では、COSINA、 それとLEICA、中国のLAOWA等、かなり限られた メーカしか”APO"銘を採用していない」 B「でも、APOと名乗らないまでも、中身には必ず 特殊ガラスを使っているのだろう?」 匠「近代での高級(高性能)レンズの場合は、まあ、 間違いなく特殊硝材か非球面レンズのいずれか、 又は両者を必ず搭載しているが、廉価版レンズの 場合では、そうとも限らない。 また、COSINA社等には”復刻版オールドレンズ”の ような新製品もあり、その場合は、特殊ガラスは 勿論、(企画意図にそぐわない為)採用していない」 B「よくわかった。 じゃあまあ、どの新鋭レンズを 買っても、たいてい、”APO"仕様な訳だから、 その名称自体には、拘らないようにしよう」 匠「それで良い。単に名前だけを聞いて性能等を 判断する等は、最も戒めるべき消費行動だ。 だがそれでは、この記事のテーマとならない(笑) 本記事では、あえて”APO"銘が付いている製品を 選んで、それを紹介する事としよう」 B「了解した。じゃあ、このレンズはどうなのだ?」 匠「Hi-Speed AF APO Teleと、レンズ上に記載がある。 Hi-Speed = ”高速シャッターが得られる”という 英語的な婉曲表現であり、これは日本語で言えば ”大口径”と等価だ。 ただ、焦点距離によっても”大口径”の定義は 異なるし、あるいは時代によってもそれがある。 現代において、単焦点レンズであれば、どれも F1.4級程度で無いと”大口径”とは呼び難い。 そういえば、近年の市場では開放F2.8固定ズーム の事を”大口径ズーム”と呼ぶ比率が減ってきた。 代わりに”明るいズーム”とかと呼んでいるな。 まあ、近代の世情では、開放F2.8あたりの仕様 では、とても”大口径”とは呼べないからな。 AF=これは、MINOLTAが、1985年の「α」から 使っているレンズ型番(製品名称)であり、 これが直接的に、オートフォーカスという意味や 性能等を示すものではない。また、商標でもない。 APO=前述の通り、アポクロマート仕様の事。 Tele=望遠レンズの一般名称。Teleは”遠くの” という意味を持ち、テレスコープ、テレビジョン、 テレワーク等のように用いられる」 B「ハイスピードAFというのが、肝となるな」 匠「その通り、これは前述の通り、”大口径レンズ” という意味と”AF型番”という意味しか無いが・・ 日本人が、これを読むと、”高速のAFかあ・・ じゃあ、いわゆる爆速AFであって、ビシバシと ピントが合うレンズに違いない”と勘違いする」 B「あはは・・ 恐らくは、そう勘違いさせる為の 確信犯だと思うぞ」 匠「その通り、だから、後年に至るまで、ビギナー層 のみならず、中上級マニアや評論家層に至るまで、 ”このレンズはAFが速いレンズだ”と大きな勘違い をしていた状態だ」 B「勿論、そんな事は無いよな? 超音波モーターも まだ実用化されていない古い時代のレンズだ」 匠「その通りだ。まあ、超音波モーターは、既に CANON等では1980年代から使っていたが、まだ 一般的な価格帯のレンズには非搭載だった。 本レンズの場合では、むしろ、大質量の内部 光学系をカメラ側の貧弱なAFモーターで廻して 動かすので、AFは、かなり遅い。 イライラするので、用法はMF撮影が主体だ」 B「このレンズを使った事が無いのに、AFが速い、と 評価するのか? 酷い話だなあ・・」 匠「このレンズに限らず、市場での評価なんて、昔から たいていそんな感じだ。使ったかどうか?は、まあ、 使っていたとしても、決して「所有している」レンズ では無いだろうな・・(果たして、そんな状態での 評価内容がアテになるのだろうか?)」 B「確か、後年のSONY版には存在しないレンズだ」 匠「詳しいな。その通りだよ。 2006年にKONICA MINOLTAがカメラ事業から撤退し SONYにα一式(カメラの設計やレンズ製品)を 移譲した際、多くの(KONICA)MINOLTAレンズは SONY版として再発売(ただし、若干の値上げあり) されたのだが、本レンズはラインナップから 落ちてしまった。 恐らくだが、”大三元ズーム”(70-200mm/F2.8級) が存在するから、”これは200mm/F2.8でスペック 被りとなるから、不要だ”と思われたのだろう。 あるいは、SONYは、もう高価な製品しか売りたくない と考えての判断だったかも知れない」 (注:近年のビギナー層等における通称の「大三元」は、 その語源の麻雀の役の場合と同様に、広角、標準、望遠 の3本の、開放F2.8固定ズームを全部揃えないかぎり 「大三元」とは決して呼べない。 だが、定価で総額百万円前後となる「大三元」を所有 できるビギナー層等は、金満家でも無いと殆ど不可能な 話なので、たった1本のF2.8ズームを指して「大三元」と 呼ばれるようになってしまった。せっかく通称/俗称を 広めたのに、それが実現困難な事ならば、そもそも そんな呼称を拡散させる必要があったのだろうか・・? 仮に、3本を揃える事自体が自慢や見栄の目的なので あれば、なんとも奇妙なユーザー心理だ) B「スペック被りとなるから、ラインナップ上で不要? ううむ、その言い方だと、実際にはそうとも言えないの だろう? こっちの方が軽量で良く写るとか?」 匠「AF70-200/2.8(G)を所有していないので、正確な 比較はできない。 ただ、恐らくその推測は正解だ。 F2.8級望遠ズームに比べ、本レンズは、小型軽量、 高画質、安価、等の複数のメリットがある。 ただし、最短撮影距離は1.5m と、まあこれでも 200mmレンズの焦点距離10倍則を下回っているが、 AF70-200/2.8の方は最短1.2mだ」 B「するとSONYとして、利点も多い、このレンズを 生産完了としてしまったのは、あまり適切では 無かったかも知れないな・・ ユーザー層は怒っただろう?」 匠「怒りはしないが、このレンズの中古相場が高騰して しまった」 B「それを”怒る”と言うのだよ。 既に所有していれば良いが、もうSONY版が無いので MINOLTA版を買おうとしたら、中古品が高価すぎて 買えない。これは当然”怒る”だろうな・・」 匠「無くなってから慌てて買おうとするのでは手遅れだ。 欲しければ、普通に売っている段階で何故買わない?」 B「そこは、おっしゃるとおりで・・ 確かに、入手しにくくなってから探すのでは ”にわかマニア”だよなあ・・(汗)」 匠「もういいよ。 現代になって、この古いレンズを 必死に探している人も居ないだろうし、中古品は あいかわらず流通が少ないが、とんでもない高値には なっていないと思うぞ。 だが、SONYのα Aマウントも既に終焉しているので このレンズは非推奨、それで終わりだ」 B「え~、まだ聞きたい事は山ほどあるが。 まあいい、どうせ入手困難ならば、やむを得ない」 では、2本目のAPOレンズ。 レンズは、SIGMA APO ZOOM 75-300mm/F4.5-5.6 (中古購入価格 500円) カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機) 詳細不明、恐らくは1980年前後と思われる MF望遠ズーム。ほぼジャンク品だ。 B「古いなあ・・ 銀塩MF時代のズームではないか。 むしろ、そんな時代からAPOが存在していたのは 驚きだ。当時では相当に高額だったので無いのか?」 匠「残念ながら資料がなく、当時の価格がわからない。 だけど、低価格帯市場を狙っていたSIGMAだから、 あまり高価な値付けにする事もできなかったとは 思われる」 B「写りはどうなのだ?」 匠「まだ未成熟だ。ズームレンズそのものの設計技術が 未成熟の時代なので、まあ、やむを得ないとも言える」 B「それでも、”APO”だから、他社のズームよりマシ とは言えないのか?」 匠「1980年前後に発売された、主にワンハンド方式の MF望遠ズームは、研究目的で多数を購入している。 機種毎に性能のバラツキは大きいが、他の大きな 要因として、望遠端が200mmか?300mmなのか? があり、全般的に200mm級MF望遠ズーム(開放 F値がF4前後のもの)は、概ね描写力は実用 範囲であり、300mm級は厳しい(=低描写力) つまり、1980年代当時としては、300mm級の MFズームの設計は、各社とも、だいぶ無理をした もの(スペック優先)が多かったと思われる」 B「ふむ、機種毎の性能差よりも、300mmか否か?の 方が描写力の差異が発生しやすかった、という事か」 匠「そういう事だ。極論を言えば、当時の200mm級MF ズームは及第点だが、300mm級は、少々NGだ」 B「了解した。そういう事であれば、APOかどうか? よりも、むしろ基本設計の差異がある訳だな」 匠「ともかくMFの300mm級オールドズームは、あまり 推奨できないよ。そこだけ覚えておいてくれ」 では、次のAPOレンズ。 レンズは、SIGMA AF ZOOM 75-300mm/F4.5-5.6 APO (中古購入価格 1,000円)(以下、APO75-300) カメラは、NIKON D300 (APS-C機) 出自不明、恐らくはAF最初期の1980年代末か 1990年頃にかけて発売されたAF望遠ズーム。 B「またしても、300mm級、しかも同じSIGMA製だ。 300mmは、ダメなのではなかったのか?」 匠「時代が違う。上のレンズから、10年程度が 経過していると思われる。 1990年代はAF化とともにズームレンズの改良が 続いていた時代だ。 「AF一眼レフ+ズームレンズ」をメーカーや流通が 推す理由としては、「それまでのMF一眼レフ+単焦点 レンズの時代とは、全く違うのだよ」と、消費者層 にアピールする事で、新規レンズ市場を盛り上げよう (→ズームを多数売ろう)としていた様相がある。 つまり、AF一眼レフ+AF単焦点レンズだったら、あまり これまでの撮影環境と大差があるものでは無いし、 一部のマウントのMF単焦点レンズは、AF一眼レフにも 装着できたから、「じゃあ、MFの単焦点で撮るから、 新製品はいらないよ」と思うユーザー層も居るだろう。 そこに有無を言わせない為、ズームレンズを持ち出し 「AF一眼レフとズームレンズが、新しいスタンダード なのです!」と言い張れば、まあ、多くの消費者層は それに乗って来る。 だけど、ハイアマチュア層や職業写真家層、マニア層 等では、「とは言っても、ズームレンズは単焦点に 比べて、大きい、重い、開放F値が暗い、寄れない、 画質が悪い、おまけに高価だ」と思うのであれば、 やはりズームは売れない。だから、ズームレンズも 画質や、その他の課題を改善しつつ、価格も下げて いかなくてはならない。 バブル経済崩壊後の時代だったので、消費そのものが 低迷していたしな。それが、その時代の世情だ」 B「なるほど、そういう事から、ズームレンズの性能が 急激に進化した訳か」 匠「おまけに、こういう世情だったので、1990年代に 単焦点レンズの新発売は極めて少ない。 単焦点は、標準レンズ等だと1970年代~1980年代 に、ほぼ設計上で完成の域に近づいていた。 AF化は行われたが、中身の光学系は、下手をすれば 1970年代~2010年頃まで40年間前後も、ずっと 同じものであったケースも多々ある。 単焦点レンズでは、新しい付加価値(消費者から 見た魅力)が作りだせないのであれば、メーカー側 も、ますますズームレンズの改善に力を入れる事と なるだろう」 B「なるほど。 で、このAPOズームも、MF時代より進化したと?」 匠「描写性能的にはそうだ。 だが、まだ未成熟だ。特に逆光耐性が低く、多くの 撮影条件で低コントラスト描写となる課題がある。 ただ、この件については、1990年代迄のSIGMA製 レンズは、内部のコーティングや接着等が経年劣化 しやすく、私の所有レンズでも何本かが、低描写力 化している。本レンズでも、その傾向があるので、 その経年劣化の部分は、さっぴいて評価する必要が あるが、とは言え、他者が、このレンズを買っても やはり、程度の差はあれども経年劣化は起こるだろう から、その弱点も含めて評価しておく事が妥当かも 知れない」 B「わかった、1990年代のSIGMA製レンズを買う際 には注意しておこう」 匠「恐らくだが、2001年頃以降からのSIGMA製レンズ では、その課題は出ないと思う。 製造工場か、部品調達企業か、製造の手法が変わった のかも知れないが、情報がなく、詳細は不明だ」 では、次のレンズ レンズは、SIGMA 70-300mm(D)/F4-5.6 APO DG (中古購入価格 5,000円) カメラは、NIKON Df (フルサイズ機) 2005年に発売されたAF望遠ズーム。 B「またSIGMAのAPOかあ。しつこいのでは?」 匠「これが、SIGMAのAPO銘付き、70-300mm級ズーム での最終型となる。 いままでの旧シリーズ製品での課題は、ほぼ全て 解消されている優秀なレンズだ」 B「じゃあ、これだけを使っておけば良いのでは?」 匠「ほぼ10年毎の製品のサイクルにおいて、どこが どう進化したのか?を研究する目的のレンズだ。 実用上では、確かに、このレンズだけを使って おけば良いが、古いものから年代を追って比較する 事で、より細かい部分(や歴史)がわかってくる。 そのノウハウや研究成果は、シリーズにおいて最も 新しいレンズを使った際でも、十分に活用できる」 B「なるほど・・ と言いたいところだが、あまりに マニアックな研究テーマだ。普通は、そこまでやる 必要は無いと思うぞ」 匠「幸いにして全4機種のSIGMA APO70-300mm級ズーム の合計取得金額は、約7,000円程度と安価だった。 だから、別に、莫大な予算を掛けている訳でも ないし、安価に興味深い研究が出来るならば、 それはそれで、良いでは無いか・・」 B「まあね・・ そこまで安ければいいか。 しかし逆に、何故、そこまで安価なのだ? APO銘が付いている高性能ズームレンズとしては 破格の中古相場なのでは無いのか?」 匠「面白い事に、中古、しかもジャンク品だったり すると、APO銘が付いていても、いなくても、 (注:これらSIGMA製の4機種には、同時代に、 ほぼ必ず、APO銘なしの廉価版が併売されていた) ・・その中古(ジャンク)相場は同じなのだよ。 APO銘がついているから、といって高くしたりは していない。 多分、販売側も、APOの有り無しが、どういう差異を もたらすのか?を理解していないのだろう。だからその 名称は無関係で、同じ”捨て値”で販売してしまう」 B「SIGMAとしては、せっかく、APOの有り無し製品を 併売して、”APOは高性能なのです、凄いのです” という事を広めたかったのに、結局、後年には、 同じ”古いモノ”と見なされてしまった訳ね・・ それは、SIGMAは、さぞかし残念だっただろうな」 匠「まあだから、2010年代からは、SIGMAの高性能 レンズは、APO仕様であっても、決してAPOとは 名乗らない。結局、消費者層は勿論、流通市場に すらも理解されない名称だった訳だからな」 では、次のレンズ。 レンズは、LAOWA 100mm/F2.8 CA-Dreamer (Ultra) Macro 2X APO (LAO0042) (新品購入価格 58,000円) カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機) 2019年に発売されたMF中望遠2倍マクロレンズ。 B「LAOWAは中国製だろう? 中国のメーカーでも 特殊ガラスを使えるのか?」 匠「中国の多数のレンズメーカーが、格安レンズで 日本市場に参入したのは、2010年代後半の話だ。 その時代、日本製のカメラやレンズは値上げが 著しく、安価な機材が無くなり、低価格帯市場が 空洞化した。つまり、安いレンズが欲しくとも そういう製品が何も無いのだから、消費者層は 不満が大きくなる。 そこを突いて、多数の中国等のレンズメーカー が日本の市場に食い込んできたわけだ」 B「ふむ、それは成功したのか?」 匠「成否は半々くらいかなあ。 日本製品の価格高騰により、この時代にマニア層 やハイアマチュア層は激減してしまった。 市場に残った消費者層は、モノの価値を自力では 判断できないビギナー層ばかりになってしまった。 そうしたビギナー層は、中国製のレンズの実力値を 見抜けず、「安い中華レンズが良く写る訳が無い」 といった”思い込み評価”により、あまり積極的に それを買った様相が無い。 仮に安さに惹かれて買ったとしても、MFのレンズ を上手く使いこなせるはずもなく、高/好評価は 誰も下さないよ」 B「残念な話だな・・ じゃあ、LAOWAはどうなんだ?」 匠「LAOWAは、2016年頃からの日本市場参入だが、 創業者が、元、日本のメーカーの設計部門の技術者 であり、日本のレンズ製品の課題等を熟知している。 具体的には、近年の日本国内メーカーの新製品の レンズは、特殊な仕様を持つものは皆無であり、 ほとんどが、ありきたりのスペックで高性能化 して、高価になってしまったレンズしか無い。 (→正確には”儲かるレンズしか売りたくない”) だから、そういうレンズには、ビギナー層は興味を 持つかもしれないが、マニア層は、もう完全に無視だ。 そこを良くわかっているLAOWAにおいては、参入当初 から、アポダイゼーション、高性能超広角、超マクロ 超広角マクロ、等の、極めてユニークな製品群を 発売し、マニア層に大きな興味を持たせる事に成功した。 特別な仕様のレンズならばマニアは買うさ、唯一無二 だからな。そこでは値段の高さは、あまり関係が無いし それが、本来の意味での「付加価値」だよ。 超音波モーターや手ブレ補正の搭載は、メーカーや 流通が「高価に売って、儲けたい」という、メーカー側 から見た「付加価値」であり、そこは消費者型の心理 とは相反する部分だ。 LAOWAは急成長し、中国メーカーの中では、いち早く 異常低分散ガラスレンズや非球面レンズ等を用いた レンズを開発し、それを高付加価値型の高性能レンズ として販売している。 他の中国レンズメーカーでは、そういう特殊硝材は 使おうと思えば使えたとして、例えばMeikeや七工匠、 TTartisan等が、10万円もするレンズを発売しても 誰も買おうとしないだろう。それらのメーカーには 高付加価値レンズを売る為の”ブランドバリュー”が 備わっていないからな。 LAOWAは、当初から特殊レンズを開発販売する事で ブランドに価値が生まれ、だからこそ、特殊硝材を 使った高額なレンズを販売できる立場になった」 B「ふうむ・・ 経緯はわかったが、でも、それって 結局、消費者層が何もわかっていないから、ブランド やらの問題点が出てくるのではないのか?」 匠「その通りだよ。有名だろうが無名だろうが、良いと 思える製品は買えば良い。それがマニア層の感覚だ。 だが、近年の市場ばビギナー層ばかりだ、だから、 中国製だと聞けば”安物の中華レンズ”といった、 やや見下した価値観しか持たない訳だ」 B「変な話だ・・ でもまあいい、ボクには関係が無い話とも言える。 ボクはボクで、自分が良いと思う機材を買うだけだ」 匠「そういう考え方で、何も問題はない。 じゃあ、このレンズLAOWA 100/2.8の話に進む。 APO銘が一応ついているが、超高描写力を期待しても ちょっとそれは早計だ。何故ならば、例えば類似の スペックで、MACRO APO-LANTHAR 110mm/F2.5 という国産レンズがあるが、それは異常部分分散ガラス レンズを贅沢に8枚も搭載した超高描写力マクロだ。 本レンズよりも高価ではあるが、ただ単に高描写力 を求めるならば、MACRO APO-LANTHARの圧勝だ。 本レンズに、そこまでの超高描写力は備わっていない。 じゃあ、本LAOWA100/2.8の利点は?というと、 こちらは、珍しい、最大撮影倍率2倍の超マクロ 仕様である事だ」 B「ふうむ・・ 超マクロで安価、そうなると選択は 微妙なところだな。 APO-LANTHARは高すぎるよ」 匠「そういう比較となる。だから、本レンズも決して 捨てたものでは無い。これの特徴が自分の用途に ハマるのであれば、買っても良いと思うぞ」 ---- では、6本目のAPOレンズ。 以下、3本のCOSINA Voightlander(変母音省略) APO-LANTHAR系レンズ(フルサイズ対応)が続く。 レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/F2.5 SL (新品購入価格 79,000円)(以下、MAP125/2.5) カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機) 2001年に発売されたMF望遠等倍マクロレンズ。 B「こちらは、先般の"マクロアポランター”の記事で 説明を聞いたな。 そっか、この系統のレンズも”APO”な訳か」 匠「ここから3本のレンズは、既に説明済みなので、 簡単に述べておくな。 まず、このMAP125/2.5は、使いこなしが非常に 難しいレンズだ」 B「ん? 以前の記事では”投機が入っているから 高価だ”という説明が主体ではなかったのか? 使いこなしが難しいとは?」 匠「”どうせ投機対象のレンズなので、このレンズを 買って実際に使う人など、誰もいないでしょう?” という観点で、実用性についての説明は、ばっさりと 省略していた。 APO-LANTHARと名前がつけば、史上最高の描写力で ある、と誤解してしまう方に大きな問題点がある。 まずは時代が違うのだよ、2000年代APO-LANTHAR は、”少し優れている”程度のレンズ群だ。 それに、”史上最高の”は、COSINA社が2017年 以降に使ったキャッチコピーで、一種のトリックだ。 過去にも、その詳細を何度も説明していると思う。 あと、何で、近年のレビュー記事は、メーカー側の キャッチコピーを、そのままコピペするだけの 内容になっているのかね? 全てが二次情報であり 評価者(ライター)の主張なんか、何も無いよ。 で、万が一、このレンズを実用的に使おうとすると、 恐ろしく難しいので、相当に難儀すると思う」 B「どこが難しいのだ?」 匠「元々は、一眼レフ用のマウントでの販売なので、 一眼レフで、そのまま使う場合だが・・ 1)まず、ピントが合わない。 近接撮影での被写界深度は紙のように薄い状態 であり、一眼レフでの光学ファインダーはもとより ミラーレス機のピーキング機能でも精度不足で 僅かに残存する(球面等)収差で、近接撮影時での ピント合わせは、まさに至難の業だ。 2)次いで、手ブレしやすい。 仮に、一眼レフ(デジタル)やミラーレス機に 手ブレ補正機能が入っていたとしても防ぎ難い。 理由は、近接撮影では被写体の前後方向に体が ブレている事が多く、これは手ブレ補正機能では 防げない方向だし、この状態は、手ブレと言うより も、むしろ、ピンボケと同様の課題となる。 前後方向以外にも、望遠マクロでは各方向や回転軸 にも手ブレを起こしやすく、優秀な手ブレ補正機能 搭載機でも、なかなか防げない。 また、”露光倍数”が係る。つまり、光学原理上、 近接撮影時に、開放F値や設定した絞り値よりも、 見かけ上のF値が低下する事(暗くなる)が、上記の 問題に加えて、手ブレ等を誘発する大きな課題となる。 3)それから、ピントリングの回転角が異様に大きく、 私の手指では、最短撮影距離と無限遠との間で ピントリングを平均14回も持ち替えて廻さないと ならない。 近接撮影オンリーとかでは、あまり課題には ならないが、様々な被写体距離による一般的撮影 ではピントリングを廻す指や、カメラを支える 右手が大きく疲労してしまい、長時間の撮影が 困難となる。 ・・まあ、だいたいこんな感じか。 あまりに難しいレンズで、しかも使用すると疲れる 為、旧ブログでは、これを”修行レンズ”と称した」 B「確かに、相当に面倒そうなレンズだ(汗) 投機的とか言う前に、ボクはいらないよ・・」 匠「それが良い。あまり薦められないレンズだ」 では、7本目のAPO銘レンズ。 レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/F2.5 (新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5) カメラは、SONY α7(フルサイズ機) 2018年に発売されたMF中望遠等倍マクロ。 B「こちらが、上のマクロアポランターの 後継レンズだったな? 以前の説明では”画質が良いが、あまり売れて いない”という話だったかな?」 匠「そうだ。 APO仕様も、ここに極まる、という 感じであり、14枚の構成レンズ中、8枚が異常部分 分散ガラスを使用していて、画質的には申し分が 無い。ただし、高価なので、あまり売れていない 事も確かだ」 B「そこまでの話は、以前にも聞いたよ。 では、前機種の125mmは、使いこなしが難しいと 先ほど言っていたが、このレンズはどうなのだ? やはり難しいのでは無いのか?」 匠「前機種MAP125/2.5に比べて、本MAP110/2.5は 使い難さが、だいぶ改善されている。 先のMAP125/2.5の問題点が、本レンズで どのように改善されたか?を述べておくと、 1)ピント問題 →一眼レフ時代の前機種とは異なり、本レンズは ミラーレス機用マウントであり、高精細のEVF、 画面拡大ピント確認機能、ピーキング機能等を 併用する事で、ピント歩留まりが向上する。 特に、SONY Eマウント版での発売であり、SONY機の ピーキング機能の精度は、現状、他社機に比べて 高い方の部類に属するので、ピントの課題がかなり 低減している。 2)手ブレ問題 →前機種の発売時点は、銀塩末期であり、 低感度のISO100やISO400のフィルムを入れた場合 前機種での手ブレは、まず防げなかった。 本レンズの場合は、ミラーレス機の時代であり、 高感度性能も高まり、高感度ノイズも減った機体 では、ISO感度を数千から数万程度に上げて、 シャッター速度を稼ぐ対策も容易である。 また、手ブレ補正機能を内蔵している機体も多く、 および/または、ISO AUTO時の低速限界設定を 適正にしておけば、さらに手ブレのリスクは減る。 この状態でも、撮影者の前後ブレは防げないが、 高速連写機能を持つ母艦を用いて、その連写を、 ”失敗写真を無くす為のMFブラケット”技法として 応用すれば、確実に成功カットを捉える事ができる。 3)ピントリングの回転角がとても大きい。 →前機種MAP125/2.5の、”持ち替え14回”に対して 本レンズMAP110/2.5では、”持ち替え8回”と なっている。 依然、やや回転角が大きいとも言えるが、前機種 からは、ほぼ半減しているし、太い鏡筒で廻しやすく トルク感も(レンズ個体差もあるかも知れないが) 適正で、前機種よりも格段に快適で、疲労も少ない。 元々、MFレンズは、ピントリングが容易に廻って しまう事からのピンボケを防ぐ為、ある程度の トルク感(=ピントリングの重さ)と、適正な ピントリング回転角(操作性を悪化させない程度) が必要だ。 ・・まあ、だいたい、こんな感じだ」 B「ふうむ・・ 前機種の弱点が、ことごとく改善 されている訳だな。 つまり、もう”修行レンズ”では無い訳だ」 匠「そうだ。それでも若干難しいとは言え、前機種と 比べると大差がある。 私の感覚でも”修行レンズ”では無くなっているし 実用的にも及第点だ。そして勿論、描写力は高い」 B「あとは値段(の問題)だけだなあ・・」 匠「そうだな。中古流通が豊富ならば良いのだけど ほとんど中古も出回っていないしなあ。 新品で買うのは、ちょっと辛い値段だよ」 B「よくわかった。宝くじでも当たったら買おう(笑)」 では、次のAPOレンズ。 レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 180mm/F4 SL Close Focus(新品購入価格 54,000円) カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(μ4/3機) 2003年発売のMF単焦点小口径望遠レンズ(近接可) B「また、以前の記事での紹介レンズか。 クドくないか? このレンズは、フォクトレンダーのAPOでは 最も望遠なのだろう? そしてレア物だから 中古相場が高騰している、と。そうだったな?」 匠「記憶力が良いな、その通りだよ。 そして購入当初(約20年前)は、あまり好みの レンズでは無かったが、母艦側が進化してくると なかなかバランスが良い事が発覚し、特に ピクセルピッチが恐ろしく狭い近代のμ4/3機 と組み合わせると、なかなか良いレンズだと 思うようになり、近年での、お気に入りだ」 B「ピクセルピッチって、何だっけ?」 匠「撮像センサー、CCDやCMOSの1つの画素の大きさ の事だよ。普通は「正方画素」と言って、縦と 横のサイズは同じだ。 近代の一眼レフだと、最も小さいもので、 4μmくらい。 ところがμ4/3機だと、3μm あたりに達する機種もある」 B「マイクロメーター? どういう単位だ?」 匠「マイクロメートルだよ。 マイクロと言うのは 100万分の1の事。 1メートルの1000分の1が ミリメートルであり、マイクロメートルは、 1000分の1mmの事だ。 旧称は”ミクロン”、こちらの方が良く知られた 呼び名だな。 まあ、単位名称の改正で、”ミクロン”は公式には 呼べなくなった古い単位名だけど、技術者や研究者の 間では、”マイクロメートル”では言うに長いので、 普通は”ミクロン”で会話するよ」 B「すごく小さい大きさだなあ。 そんなに”画素”というものは小さいのか・・」 匠「ここで、とても重要な注意点を挙げておくな。 (ただし、数字を挙げて計算をすると、すぐに 多くの人達は”さっぱりわからん”と逃げ出す ので、数字や計算式を用いた説明は避けておく) 概念だけ説明する。 そこまで小さいセンサーの画素に対して、レンズ が、そこまで細かく写せなかったら、どうなる?」 B「そりゃあ・・ 綺麗には写らないだろうな。 ん・・? もしかして、画素数の大きいカメラは 良く写らないのか?」 匠「そうだ、レンズの性能(像面解像力)が、低い場合 では、そうなってしまう。 良く気づいたな。 フツー、ビギナーの全員は「画素数の大きいカメラ の方が良く写るに決まっているから、それが欲しい」 とか言っているぞ」 B「ふむ・・ じゃあ、高画素のカメラを買ったら、 その4ミクロンだか、3ミクロンだかを分解して 写せる凄い高性能レンズが必要になるのか?」 匠「うん、基本的には、その通りだ。 (注:ベイヤー配列型センサーの場合において、 「デモザイク処理/演繹補完演算処理が入るから、 そこまでの像面解像力は必要ない」とかいった 専門的で面倒な話は、割愛する)」 B「なんだ、単純に画素数が大きいカメラを買えば 良く写るのだとばっかり思い込んでいたよ。 ちょっと、新型カメラばかりに興味を持たず、 レンズの事にも、もっと注目しないとならないな」 匠「そうだよ、だから、このシリーズ記事では、 レンズの話をしている訳だよ」 B「よくわかった。少し真面目に話を聞こう」 匠「今まで、ちゃんと聞いていなかったのか(汗) (まあそうだよな。ビギナー層とかにレンズの話を しても、何十回説明しても、まったく理解できない ので、ちょっと辟易しているくらいだ)」 では、次は今回ラストのAPO銘レンズ。 レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/F2.8 EX DG OS HSM (中古購入価格 58,000円)(以下、APO150/2.8) カメラは、NIKON D500(APS-C機) 2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。 B「望遠マクロか? まったく知らないジャンルのレンズだなあ。 花壇の外から、花を大きく写すレンズだろう?」 匠「まあ、今時「望遠マクロ」というカテゴリーの 現行レンズは、殆ど(全く)存在しないしな。 でも、これについては以前にも説明しなかったか? ”いくら望遠マクロだからと言って、そんな撮り方 が、できる訳が無い”と説明したはずだぞ」 B「さあ、覚えてないな(汗) まあ、持っていないから、わかる筈が無い」 匠「開き直ったな?(笑) じゃあ、その、どこの誰が言い出したか良くわから ないような話の、「花壇の外から大きく花を撮る」 という撮影条件を考えてみよう。 フルサイズ機を使って、花壇の外、例えば5mの 距離から、仮に「等倍撮影」つまり、フルサイズの センサーと同じ3.6cmx2.4cmの範囲が写るように したいとしよう。 その際に必要な、望遠マクロレンズの焦点距離は いくつくらいになると思う?」 B「さあ・・ 計算方法なんて、知らないよ。 ヤマ勘だが、300mmくらいか?」 匠「この条件では、5000mmだよ」 B「何っ! そんな超超超望遠レンズが必要なのか? そりゃあ確かに、望遠マクロごときの焦点距離 では、花壇の外から大きく花を写す、などと言う 事はできる筈が無いな。 それは失礼しました(汗) 結局、望遠マクロ なんて、誰も持ってもおらず、使った事も無いから、 デタラメに、”そうできたら良いな”という程度の 話が拡散されているだけなのだな・・(?)」 匠「本APO150/2.8の最短撮影距離は38cmだ。 一般的な中望遠90mmマクロの場合は、最短撮影距離 は30cm程度だから、それに”毛が生えた”位だ」 B「じゃあ、なんで、これを使う? どうせ、大きく重く高価な”三重苦”なのだろう?」 匠「アハハ・・・ 確かに”三重苦”が、本レンズの 最大の弱点だ。 何故使うか? まあ、中望遠マクロとの最短撮影 距離の差は、大きなモノだとは言えないけれど、 約8cmの差は、近接撮影の”間合い”の差としては 結構大きい。 そして、母艦の選択もある。D500は、APS-C機で あるが、1.3倍クロップモードを搭載している。 そのモードを用いた場合、このレンズを使うと 300mm相当、最大2倍の、超望遠超マクロとなる。 勿論、そこまで撮影倍率を上げない状態であっても 実焦点距離自体の差で、中望遠マクロよりも遥かに 遠くから、被写体を大きく写せる。 おまけに、D500は、高速連写機だ。 だから、被写体に、あまり近づけない場合・・ 例えば、珍しい蝶が花に止まって蜜を吸っている、 人間が近寄ると、蝶は飛んで逃げてしまう。 その際、望遠マクロをクロップモードで使い、 1m以上も離れた(蝶が逃げない)場所から、毎秒 10コマの高速連写で蝶の羽ばたきを捉える訳だ」 B「なるほど・・ その撮影技法は理解したが、でも、そんな珍しい 蝶が居る時に、たまたま/いつでも、望遠マクロと 高速連写機を持っている訳では無いだろう? 普通のマクロレンズだったら撮れないではないか」 匠「それでは考え方が正反対だよ。 望遠マクロと高速連写機を持ち出している時にのみ そうした、その機材で無いと撮れない被写体を 重点的に探すのだ。 持っているのが他の機材だったら、珍しい蝶などは 諦めるよ、撮れる筈が無いしな」 B「ふうむ・・ その時に持っている機材に適した、 または、その機材で無いと撮れない被写体を 探すのか・・ なるほど、それは”目から鱗”の話だ。 ボクなんぞ、全く逆に、”どんな珍しい被写体に 出くわすかわからないから、高倍率ズームを 持っていこう”と考えてしまう。 なるほどなるほど、確かに、ボクの考え方は 全く逆だな。こういう考え方では、シャッター チャンスなど、永久に巡ってこないや」 匠「その”シャッターチャンス”という俗語ほど、 世のビギナー層、または非カメラマン層から 誤解をされている言葉/概念は無いくらいだ。 世間が思う”シャッターチャンス”とは、 ”撮影者が、たまたま出くわした珍しい状景や 光景に対して、すぐさまシャッターを切る” という、そんなイメージだろう? でも、そんな時、ほんの0.5秒で写真が撮れるのか? ビギナー層では、1枚の写真を撮るまでに1分も 2分もかかってしまう事が普通だ。 上級カメラマンでも、およそ撮る迄には3秒かかる、 だが、さらに鍛錬すれば、それは1~2秒となる。 ちなみに、カメラを構える迄の時間も含めてだぞ。 そして、パンフォーカス&ノーファインダー等の 特殊技法を使って、ようやく1秒を切る位だ」 B「なるほど、シャッターチャンスと言っても、 すぐには撮れない訳だな」 匠「それだけじゃあないよ。そもそも、被写体の方から 自分の方に飛び込んでくる、などというのは、 撮影者の意図とかが全く無い、”受動的な偶然” とか”他力本願”ではないか・・ 中級層以上のカメラマンならば、そんな考え方は 絶対にしないよ。”被写体は自らが作り出す状景” だと、皆がそう思っているし、それが正解だよ。 だから、中上級者以上の人達であれば、正しい シャッターチャンスという概念については・・ ”自らが望み、意図した状景”であり、それは動く 被写体等の場合、少し先の瞬間に、それが訪れる ならば、それを事前に想定して、その状況を待つ。 自分が望む瞬間の構図や状景となった時、遅れず に、速やかにシャッターを切る。 これが、正しい「シャッターチャンス」の概念だ」 B「ううむ・・(汗) ボクの考え方は、全く間違っていた訳だな」 匠「早く気づいてよかったじゃあないか。 世間では、何十年写真をやっていても、それに 気づかない人達が、ほぼ全て、という状況だしな」 B「今日は色々と勉強になった」 匠「こういうのが勉強なのか? あくまで実践の中から 学ばないと、2~3日もしたら、もう忘れているぞ」 B「望遠マクロと高速連写機を買った方が良いのか?」 匠「まさか・・ そこまでは言わないさ。 あくまで自分が必要とする機材を買えば良い。 まあでも、このレンズに関して言えば、 一応はAPO仕様であり、異常低分散ガラスレンズ (注:SIGMAでは、特殊硝材に、いくつかの独自 分類を行っていた、そこではSLD(特殊低分散) と呼んでいる)を3枚使った計13群19枚という 複雑な構成であり、結果的に、かなり高画質の 望遠マクロとなっている。 だから、適価な中古を見つけたら、買っておいても 悪く無い。 あ、ちなみに現在では生産完了だからな。 手に入らなくなった頃に、”あれが欲しい”と 言い出すなよ・・ ちなみに、他の望遠マクロの 製品も、もはや殆ど何も残っていないしな」 B「良くわかった。今まで何もわかっていなかった事で 色々と反省事項満載だ(汗)」 ---- では、本記事は、このあたりまでで。 次回記事の内容は未定としておく。
by pchansblog2
| 2024-12-25 20:11
| 完了:レンズグルメ入門編第一部
|
ファン申請 |
||