カテゴリ
【熱い季節】ドラゴンボート・ペーロン 連載中:カメラマニアックスEX第二部 連載中:レンズマニアックスEX第三部 完了:フィルムカメラで撮る 完了:レンズグルメ入門編第一部 完了:カメラマニアックスEX第一部 完了:歴代カメラ選手権 完了:カメラの変遷・総集編 完了:デジタル名機対決 完了:お気に入りカメラ選手権 完了:レンズマニアックスEX第一部 完了:レンズマニアックスEX第二部 完了:年代別レンズ選手権 完了:年代別マクロ選手権 完了:続・特殊レンズマニアックス 完了:続・レンズマニアックス・プラス 完了:続・匠の写真用語辞典 旧ブログへのリンク
最新の記事
ブログジャンル
以前の記事
2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 検索
|
本シリーズでは、所有している古いデジタルカメラ (一眼レフ、ミラーレス機)の名機等で、時代の 近いものを、2機種~4機種程度選出して、対決 (というよりも、むしろ解説)をする記事群である。 今回は「2013年注目ミラーレス機」編として、 OLYMPUSおよびSONYから2013年に発売されて、 注目された、ハイエンド機OLYMPUS OM-D E-M1と 史上初のフルサイズ・ミラーレス機SONY α7の 2台の対決(説明)記事としよう。 では、まずは、OLYMPUS機。 カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機) (2013年発売、発売時実勢価格約14万5000円) (中古購入価格 43,000円) 紹介記事:ミラーレス・クラッシックス第14回 (注:紹介記事は、いずれも旧ブログ) レンズは、COSINA Carl Zeiss Milvus 50mm/F1.4 (2016年発売)(以下、Milvus50/1.4)を 使用する。 本機は、μ4/3機であってもプロユース(≒業務 撮影や本格的撮影)に使える事を証明するが為の 超本格機であり、この当時に考えられる、ありと あらゆる機能や性能を盛り込んだ高性能機だ。 詳細は、追々述べていく事とし、対戦機を先に 紹介する、次いでSONY機だ。 カメラは、SONY α7 (フルサイズ機) (2013年発売、発売時実勢価格約15万円) (中古購入価格 72,000円) 紹介記事:ミラーレス・クラッシックス第13回 レンズは、SIGMA 85mm/F1.4 DG HSM | ART (2016年発売)(以下、A85/1.4) 電子アダプターは、SIGMA MC-11を使用する。 本機は、α7R(高解像度機)と合わせて発売された 史上初のフルサイズ・ミラーレス機である。 こちらについても、詳細は追々説明していく。 以下、適宜、これらの機体(システム)で撮影した 写真を挟みながら、記事を進めていく。 (下写真は、OM-D E-M1 + Milvus 50/1.4) ではまずは、これらの機体が発売される直前の時代 2010年前後における、国産各社のミラーレス機の 展開(歴史)について簡単に説明しておく。 2008年:PANASONICが史上初のミラーレス(μ4/3)機 DMC-G1を発売 2009年:OLYMPUS、μ4/3機PEN EP-1を発売 :RICOH、ユニット交換型(準)ミラーレス機 GXR本体と交換ユニット数本を発売 2010年:SONY、APS-C型(薄型)ミラーレス機 NEX-3/5を発売 2011年:PENTAX、1/2.3型(超小型)ミラーレス機 PENTAX Qを発売 :NIKON、1型センサー(小型)ミラーレス機 NIKON 1(V1/J1)を発売 2012年:FUJIFILM、APS-C型ミラーレス機 X-Pro1/X-E1を発売 :PENTAX、APS-C型 Kマウント互換ミラーレス機 K-01を発売 :CANON、APS-C型ミラーレス機 EOS Mを発売 ・・とまあ、今回紹介機の発売前の時代では、 国内カメラメーカーの全てがミラーレス機市場に 既に参入している。(注:SIGMAを除く) (注:この時代の代表機の10台程は、旧ブログ 「ミラーレス・クラッシックス」で紹介済みだ。 下写真は、初のミラーレス機PANASONIC DMC-G1) 高付加価値型(=高級/高価)の一眼レフを主力商品 とするCANONやNIKONまで、この市場に参入したのは、 この時代のミラーレス機市場が、まさしく「飛ぶ鳥を 落とす勢い」で急成長していた為、この市場を無視 する事はできなかったのであろう。 ただ、この時点では、まだまだ本業である一眼レフの 売り上げに影響を及ぼさないように、と、そうした メーカーのミラーレス機は、同社の一眼レフに対して は、明らかな「仕様的差別化」が施されている。 (例:NIKON 1は、1型の小型センサーの仕様。 EOS MはEVFを持たず、コントラストAFのみの仕様) (下写真は、SONY α7 +A85/1.4) それから、NIKONやCANON等の一眼レフメーカーが ミラーレス機を始めるという事は、一眼レフの方でも ミラーレスとの差異をはっきりさせ、「そちらの方が 良いものなのだ」という意識を消費者層に訴求して いかなくではならない。さもないと、新規消費者層が 安価なミラーレス機を買った時点で「NIKON/CANONの カメラを買ったぞ!」と満足してしまい、それ以降の ビジネスの展開(=より高価な商品を買って貰う)が 途絶えてしまう。 この為、2012年には、私が「フルサイズ元年」とも 呼んでいるように、各一眼レフメーカーから、比較的 低価格のフルサイズ機が出揃った。 (参考:匠の写真用語辞典第31回「フルサイズ化元年」) この市場戦略の為に、メーカーや市場関係者等は、 この時代「フルサイズは良いカメラだ」という概念を 消費者層/ユーザー層に「刷り込もう」として、大量の その手の情報が流された。ビギナー層や入門層では フルサイズ機の得失(勿論、長所も短所もある)迄は 理解不能な為、ただただ、その流れてくる情報を元に 「よし、お金を貯めてフルサイズ機を買うぞ!」とか、 いざ、フルサイズ機を買ったならば、周囲のAPS-C機 やμ4/3機を「下に見る」風潮まで出てきた。 この、意図的に造り出された概念は、その後の時代の 2010年代全般を通じて広まり、あるいは現在でも その傾向は抜けていない、とも言えるかも知れない。 (=必ずしも適切だとは言えない「フルサイズ信奉」が 根付いてしまった) しかし、この戦略は、確かに一部の消費者層に対して 高価なフルサイズ機を販売する事は出来たのだが・・ 全体的視点から見れば成功したとは言えず、これ以降、 2010年代後半を通じて、一眼レフの販売数は大きく 右肩下がりを続ける事となる。あまりその実態は、 広くは知られていないかも知れないが、まあ、とても 悲惨な状況である。 (下写真は、OM-D E-M1 + Milvus 50/1.4) さて、少し時代は戻り、2012年時点だ。 一眼レフはまあ、フルサイズ化等で高付加価値化した、 とは言え、この時代の「花形」はミラーレス機である。 ただ、あまりにもミラーレス機の市場が急激に 立ち上がった為、各社ともミラーレス機をいったい 誰(=どのような消費者/ユーザー層)に向けて、 どのような撮影目的(用途)に使って貰うべきかは、 まだ不明なところが多かった。 そこで、OLYMPUS、PENTAX、NIKON、CANONでは、 とりあえずは入門層(エントリー層)の新規ユーザー つまり、女性、学生、ファミリー、シニア層等を ターゲット(売るべき相手)とした、製品企画と 市場戦略が行われていた。 対して、RICOH、FUJIFILMは、マニア層に向けた 製品企画であり、本格的、あるいは個性的な機能や 仕様をカメラ・システムに持たせている。 それから、PANASONICとSONYでは様々なユーザー層 に広く対応する為の「広角打法」的なラインナップを 展開する。すなわち機種毎に、大きく仕様を異ならせ そのどれが「ウケる」かを探っていたと思われる。 (注:これは家電メーカー的な発想で、興味深い) だから、これらの初期ミラーレス機は、製品企画と そのターゲットが合わずに、すぐに終了してしまった シリーズ機種も多々あるし、残っているシリーズでも、 入門層等にミラーレス機が十分に行き渡った後では その製品企画を変えていかなくては、継続的な事業 (=ミラーレス機や、その交換レンズを売る事)が 出来ない。 おりしも、ミラーレス機の販売数も、そろそろ 頭打ちとなってきている。このままだと、まるで 「一過性のブーム」となってしまう恐れすらもある。 まあ、「流行(はやり)の商品」というものは 他の市場分野でも、いくらでも前例があるが・・ カメラの新規開発には、莫大なお金や手間がかかる。 せっかく苦労して作った新型カメラに、もし誰も 見向きもしなくなれば、メーカーや市場は壊滅的な ダメージを受けてしまう。 そうならないように、新しいミラーレス機は、慎重に マーケティングや製品企画を行わないとならない。 (下写真は、SONY α7 +A85/1.4) その「ミラーレス市場戦略の転機」となったのが、 今回注目する2013年である。 既に前年迄で、各メーカーの全てでミラーレス機が 出揃い、そして、一眼レフも高付加価値化した。 では、これからのミラーレス機は、何処に向かって いくべきなのだろうか? それに対して、OLYMPUSが出した回答が、今回紹介の OM-D E-M1であり、SONYの回答が、α7(/R)だ。 両機の存在、発売意義、歴史的価値は極めて高い。 「名機であるか否か?」という(世間一般での どうでも良い評価)以前に、両機の「立ち位置」が、 ものすごく重要な訳だ。 (参考:この2013年時点では、OLYMPUS社の筆頭 株主はSONYとなっていた。今回対戦している両機は ターゲットが異なる様相があるが、これが、偶々で あるのか? あるいは市場戦略的に、被らないような 政治的な措置であるか?は、良くわからない。 企業間の水面下の事情は、ユーザーとしてカメラを 使っているだけでは計り知れないものがあるので、 本記事では、そのあたり(OLYMPUSとSONYの関係性) については言及しない事とする) 結局のところ、一眼レフはもとより、ミラーレス機も 今後、市場が縮退していく事は、この時点では誰もが 予想がついていたと思われる。 2000年代末頃からスマホの普及が始まり、従前の 携帯電話カメラと合わせ、皆が「簡便なカメラ」を 携行した状態で、既に生活しているからである。 さらにはSNSも普及し、写真を撮る事で多くの人達と 「映像コミュニケーションを取りたい」という ニーズも世界中に広まっていく。 「いつでも、どこでも、何でも、撮る」という生活の スタイルが定着していけば、あまり大げさなカメラ、 つまり一眼レフやミラーレス機を常時携行する訳にも いかないだろう。 中には、「より綺麗な写真を撮れるならば、より 映像コミュニケーションが、やり易くなる」 (つまり、周囲から認めてもらえる、イイネを貰える) と考える人達の割合も多かった事であろう。 まあ、だから、「携帯電話カメラやスマホよりは 高画質だ」と思われる(想像できる)、ミラーレス機 が売れたのだろうし、もっとさらに高画質だと予想が 出来る、フルサイズの高画素の一眼レフは、そうした 一部の層のニーズには合致した。 だが、実際にミラーレス機や(フルサイズ)一眼レフ を入手してみると、携帯電話やスマホのカメラで、 ただ単にシャッターボタンを押していた状態とは、 難易度に格段の差がある事に気付く。 「絞り? 露出モード? ISO感度? 何それ??」 となり、せっかくのそうしたカメラ設定も、何も 使わず、ただ単に全自動のモードで撮影するだけだ。 一部の人達は、「やっぱ一眼レフの写真は綺麗だ」 という風に言っただろう。まあ、画質や被写界深度 等の差異がわかる人であれば、そうかも知れないが、 多くは、「高価な機器を買ってしまった事に対する 自己弁護」であったかも知れない。 (下写真は、OM-D E-M1 + Milvus 50/1.4) そうこうしているうちに、スマホでの暗所や夜間に おける撮影性能が向上し、ビギナー層等が一眼レフ 等でブレブレやピンボケ写真を撮ってしまう状態 よりも「むしろ、スマホで撮った方が綺麗だよ」 という評価まで現れる。 まあ、それはそうだろう、スマホの搭載カメラを 開発する方でも、ビギナー層等が撮影した際に、 一眼レフやミラーレス機では上手く撮れないだろう 状態を想定し、そうした被写体条件でも綺麗に撮れる ように、スマホのカメラを重点的に改良するからだ。 また、市場では「スマホユーザー層に、絞りやISO感度 等の写真の概念を教え込むのは無理だ」と判断した だろうから、スマホのアプリでは、簡便に「画像加工」 ができるものが増えていく。(まあこの時点で、既に もう、それらは「写真機」とは言えなくなっている) 一眼レフやミラーレス機のオーナー(ユーザー)も スマホは数年毎に買い換え、さらなる性能・機能向上 の恩恵にあずかれるが、一眼レフ等はそのままである。 上手く使いこなせず、大きくて重いカメラは、もう、 外に持ち出す事も減り、だんだんと活躍の機会が 無くなっていく。 中には、「それでは勿体無い」と思って写真教室等に 通おうとする人達も居る。でも、それは全体の中の 比率としては1%にも満たないであろうし、そういう 向上心のある人達は、別に写真教室に行かない迄も、 自力で、一眼レフやミラーレス機を使いこなす為の 勉強や練習をする事であろう。 でも、大多数の人達は、「もう一眼レフやミラーレス は、いらないよ。スマホがあれば十分」と思う訳だ。 メーカーや市場(流通)も、カメラが売れないと 事業(商売)が継続できずに困ってしまう。 これの対策は、簡単に言えば、値上げをするしかない。 しかし、ただ単に、同じカメラの販売価格を上げたら、 消費者層からの反感が爆発してしまう。 だから、入門層やビギナー層が本格的カメラに対して 持つ不安や不満。つまり、使い方が良くわからない 為に、「ピンボケする、手ブレする、→結果的に、 低画質の写真を撮ってしまう」という課題に対して、 その不安を払拭するような高性能を持たせようとした。 具体的には、「フルサイズ化、超高画素化、超高感度、 超高速連写、超高性能AF、高性能な手ブレ補正機能、 高解像度動画撮影、被写体認識型AF」等である。 これらを「超絶性能」と、本ブログでは呼ぶ。 ただ、これらは「値上げをする為の付加価値」でも あるから、ハイアマチュア層や実践派マニア層等 には不要とも思われる機能も多々ある。 他分野の例を挙げれば、「普通のハンバーガーで十分だ」 と思っているところに、ちょっと変わった具材が追加 されて挟まっている事だけで、値段が2倍にも3倍 にも跳ね上がってしまうようならば・・ 「いや、オレは普通のハンバーガーが食べたいのだ、 肉の味を楽しむ為には、余計な具はいらないよ」 と、ハンバーガー好きならば、好きなほどに、そう 思う人達の比率は高まっていく事であろう。 カメラやレンズも同様であり、「余計な具材が トッピングされた事で、高価になってしまった」と 感じた上級層等は、この時代に急速に、新鋭の高価な カメラに魅力を感じなくなってしまっていく。 とは言え、ハンバーガーだったら、シンプルな商品も 併売されてはいるが、カメラのシンプル製品は、もう 存在しない、安価なカメラを売っても儲からないからだ。 (注:2010年代中頃までは、一眼レフ等では低価格帯 製品をラインナップしていた。しかし、それら低価格機 は、上位機種との「仕様的差別化」が激しく、要は、 「より高額な機種に、消費者層の目を向ける」為の 捨て駒的な商品であった。だが、そうした、ある意味 無駄とも言えるラインナップは、市場戦略的に効率的では なく(→無駄となっている低価格機の開発・販売経費が 尋常では無い)結果的に2010年代後半では、そうした 市場戦略も皆無となってしまっている→低価格機は、 ほどんどが生産中止となっている) まあ、非常につまらない世情だ・・「不条理」と言っても 差し支えないであろう。そして、こうして、2010年代 を通じて、(この市場のつまらなさが理解できる) ハイアマチュア層やマニア層は、激減してしまった。 まあ、趣味として、写真を撮る事や、カメラを買う事に、 お金がかかりすぎることが最大の原因である。 そうした層の実数は、さほどは多くは無かったと しても、その層が市場に与える影響力は大きい。 例えば、ビギナー層が、新鋭の高額機材等の実際の ユーザーの意見を(ネットや口コミ等で)収集しようと しても、もう、そういう情報が何も存在し無かったら・・ すなわち、ネット上にある情報は売る為の「宣伝記事」、 値段を吊り上げて利益を得る為の「情報操作」、そして ビギナー層による信憑性の低いレビュー記事ばかり となってしまった。これでは、消費者である入門層は、 いったい、どの情報を信じて、購買行動を起こせば 良いのだろうか・・? (下写真は、SONY α7 +A85/1.4) さて、市場の状況説明が長くなった・・ 時は戻って2013年、今回紹介の両機は、どのような 「付加価値」を消費者層に提示したのだろうか? (注:「付加価値」とは、消費者/ユーザー層から見れば 「その商品を欲しいと思う為の魅力」であり、逆に メーカー(や流通市場)から見れば「その商品を高額な 値付けとする為の大義名分」である) *OLYMPUS OM-D E-M1の特徴(付加価値) ・超絶性能を搭載している事 具体的には、機械式高速連写(秒10コマ)、像面位相差AF、 ローパスレス、1/8000秒シャッター、視野率100%EVF、 5軸手ブレ補正内蔵、充実したアートフィルター、等 ・旗艦機級カメラとして、最も小型軽量かつ安価である事 *SONY α7の付加価値 ・史上初のフルサイズ・ミラーレス機である事 ・一眼レフを含め、フルサイズ機で最も小型軽量である事 ・一眼レフを含め、フルサイズ機で最も安価な機体である事 両機の発売時実勢価格は、どちらも約15万円と同じだ。 SONY α7の方が1ヶ月程後から発売されているので、 OM-D E-M1の価格を見て、ぎりぎりの段階で価格調整が 行われたかも知れない(注:オープン価格なので、定価 という概念は無い) これらは、やや高価ではあるが、後年に、さらにとてつも なく高額となってしまったカメラの価格からすれば、 まあ、高性能機としては、買い易い「戦略的価格」 (≒市場シェアを稼ぐ為、良い製品を安価に売る) であったと思われる。 ただ、両者の、この「付加価値戦略」は、この時点では 互角と言えたかも知れないのだが、以降の時代の製品の 系譜(≒「ロードマップ」と呼ぶ)で、差異をもたらす 事となった。 では、両機の後継機の様子を見ていこう。 *OLYMPUS OM-D E-M1系列 OM-D E-M1 MarkⅡ(2016年)、OM-D E-M1X(2019年) OM-D E-M1 MarkⅢ(2020年) の3機種のみで、数年毎での更新と、やや寂しい。 また、後継機においても、特徴的な(=消費者に アピールできる)改善点がはっきりしていない。 (注:OLYMPUS時代のみ。後のOM SYSTEM時代は除く) *SONY α7系列 ・α7 系(2013年~) →史上初のフルサイズ・ミラーレス機の基本モデル。 Ⅱ型で手ブレ補正を搭載、Ⅲ型で高速連写機能を搭載。 Ⅳ型で記録画素数向上や動画性能向上。 ・α7R系(2013年~) →史上初のフルサイズ・ミラーレス機としてα7と 同時発売の、高解像度(高画素数)モデル。 Ⅱ型で手ブレ補正を搭載、Ⅲ型で高速連写機能を搭載、 Ⅳ型で記録画素数向上。 ・α7S系(2014年~) →α7シリーズの超高感度(ISO約40万)モデル。 Ⅱ型で手ブレ補正を搭載、Ⅲ型で高速連写機能を搭載。 ・α9 系(2017年~) →電子(撮像素子)シャッター機能を実用的なレベルに 高める為、高速読み出しが可能な積層型CMOSセンサー を採用。 Ⅱ型で機械シャッター時での高速連写機能を搭載。 ・α7C系(2020年~) →小型軽量な普及版フルサイズ・ミラーレス機。 また、既存のα7系機体が、どれも同じような外観 デザインを持つ為、デザイン面での差別化を図った 機体である。 ・α1 系(2021年~) →高画素、高速連写、高性能AF、高性能動画撮影機能 等の超絶性能を搭載した最上位モデル。 (注:超高感度性能は搭載されていない) *この間、各αのシリーズは段階的に値上げされ、 初号機のα7と、8年後のα1は、発売時実勢価格が 約6倍も異なる。 (参考:史上初のミラーレス機、PANASONIC DMC-G1 と、10年後のPANASONIC DC-S1Rも発売時実勢価格が 約6倍も異なる。まあつまり、カメラが売れないから 値上げをせざるを得なくなり、ますます売れなくなる という悪循環が発生している) ・・という訳で、まずラインナップの豊富さにおいて、 OM-D E-M1系列と、α7/9/1系列とは圧倒的な差があった。 まあそこは、どうせ全ての機体を買う訳にはいかないから 中上級層にとっては、どうでも良い話なのかも知れないが それでも「選べる」という消費者視点でのメリットはある。 (例:他の市場で言えば、衣服、携帯電話、乗用車、文房具 等が、商品に様々な「色」や「仕様」を揃えて、消費者の 購買意欲を喚起する、という事が一般的だ。 しかし、この戦略も、明らかに、売れる商品と、売れない 商品が出てくるだろうから、下手をすると無駄な(開発費や 製造原価が掛かったり、在庫になってしまう等)商品群が 多数出てきてしまうので、なかなか難しい市場戦略だ) で、OM-D E-M1系列は初号機(本機)から非常に高性能で あった為、その後の改良(付加価値の追加)の余地が、 ほとんど存在しない。そして、カメラが売れなくなった 状況で、E-M1→MarkⅡでは、発売時実勢価格約22万円 と、約7万円(約1.5倍)もの値上げを行ったが、もう そこで頭打ちだ。(MarkⅢでは、同等の発売時価格だ。 E-M1Xは、さらに高価(発売時約35万円)にしたが、 もうその価格帯だと、多数売れるような状態では無い) 対して、SONY機(α)の場合は、Ⅱ型、Ⅲ型機において 消費者層から見て簡単にわかる改善(手ブレ補正の内蔵や 高速連写機能の搭載)がなされたから、そこで大きく 値上げ可能となるし(Ⅱ型機の多くは40万円程度!) 場合により、ビギナー層等では、「手ブレ補正機能が 入っていないと、手ブレしてしまうのが怖い」とか言って α7Rを手放して、高価なα7RⅡに買い換えてくれるかも 知れない訳だ。 これはもう、「SONYの作戦勝ち」であろう。 OLYMPUSは、E-M1 MarkⅢの発売直後(2020年)に、 カメラ事業から撤退し、分社化をする事を表明した。 (2021年からは、OMデジタルソリューションズ社に よる、「OM SYSTEM」がブランド銘となっている) ただ、SONY機の「段階的ロードマップ戦略」は、個人的 には、「どんどんと値上げの理由をつけている」と、 好ましくないと思った。OLYMPUS OM-D E-M1系列の ように、高性能を最初から全て搭載しておらず、なんだか 「出し惜しみ」をしているように感じたからだ。 おまけに、市場での初級中級層は、まんまと、このSONY の戦略に乗せられてしまい、次機種が出れば旧機種から 買い替えで、中古市場に大量の旧型機が出回る。 しかし、そうした「お下がり」を欲しがる消費者も非常に 多いから、旧機種の中古相場が全く下がらない。あるいは 2020年頃から、むしろ旧機種の中古相場が上昇して しまっている(=他のカメラが売れず、αばかり売れる 状態だから、中古が高額相場でも、欲しがる人は多い) まあだから、α7/9系列機は、個人的な好みには合わず、 最初期のα7およびα7Sの購入に留まり、Ⅱ型機以降は 1台も購入していない。性能がうんぬん、というよりも 「売り方の方針や、市場での無理解が気に入らない」 という状態である。(つまり「ケチがついた」状態) 対して、OM-D E-M1系列機は、MarkⅡを追加購入して いて初代機とのローテーション使用だ、いずれMarkⅡが 古くなれば、E-M1XかE-M1 MarkⅢを買い増せば良い。 そんな風に、OLYMPUS機であれば、マニア層として 正常な論理で機材購入計画が立てれる訳だ。 (注:「OM SYSTEM」に変更以降は、その市場戦略は、 現状では不明である。一応OM-1が2022年に発売されて いるが、どうも明確な機材改良方針が見えて来ない) さて、本シリーズ記事での使用レンズは、対決する カメラと、できるだけ類似のスペックや類似の特性と している。 今回はμ4/3機E-M1には50mm/F1.4のレンズを 装着している為、フルサイズ換算では100mm/F1.4 となる。 また、フルサイズ機α7には85mm/F1.4を 装着し、両者の換算画角と開放F値を、だいたい 揃えている。 なお、勿論だが、換算スペックが同じであれば、 両者が同じような写りとなる訳では無い。 特に、今回のケースでは複雑な条件があり、 具体的には、 E-M1 ピクセルピッチ約3.75μm 要求レンズ解像力 約133LP/mm α7 ピクセルピッチ約5.96μm 要求レンズ解像力 約 83LP/mm のように、両者のセンサーサイズが、面積比で およそ4倍も異なる他、要求されるレンズ解像力も 大きく異なっている。 Milvus50/1.4は、超高解像力型レンズであり、 これは恐らく(推定)250LP/mm程度以上の性能だ。 だからこれは、μ4/3機E-M1にはバランスが良い。 (下写真は、OM-D E-M1 + Milvus 50/1.4) ART85/1.4も高解像力だが、恐らくMilvus程では 無いであろう、推定220LP/mmとした場合では α7のセンサーに対しては、だいぶ余裕がある。 (注:実測していないので、推定値はあくまで推測だ) そして、レンズは、必ず画面周辺に行く程に、 諸収差の増大により解像力性能が低下していく、 だから上記の推定LP/mm値は、あくまで画面中央部 での最良の値という訳だ。 その際、たとえ同等の解像力の(フルサイズ対応) レンズであっても、それをμ4/3機に装着し、 周辺収差をカットして撮影した場合は、つまり 「美味しい部位だけ」を使っている状態となり、 牛肉で言えば「サーロイン」や「テンダーロイン」 といった希少部位のような、贅沢なレンズの使い方 となる。 記録画素数は少なくても、画面全域での平均画質は 向上する訳だ。 対して、フルサイズ機α7にレンズを装着した場合 では、レンズの周辺まで目一杯使う事となる。 まあ、「ART LINE」は軟弱なレンズでは無いので、 このような場合でも十分に性能を発揮できるとは 思うが、低価格帯の85mmレンズ等だと、周辺部は 解像力の低下の他、周辺減光(≒ヴィネッティング) や、ボケ形状の変形(≒口径食)、ボケ質の劣化 (≒像面湾曲等)等が顕著に現れる場合すらある。 であれば、フルサイズ機でも、トリミングとか クロップや、デジタルズーム機能を利用するとかで 画面周辺を隠してしまう事も出来そうなのだが・・ こうした場合、画素数が減る事のみならず、 カメラ本体側で、そうしたクロップや「ビニング」 (≒複数の隣接画素を、まとめて扱う措置)を 行った場合、どのようにレンズの持つ光学特性が 変化するか?は、超専門的な話であり、下手をすれば そのような研究は、現代のデジタル光学においても あまり進んでいないかも知れない。 つまり、どういう風に写りが変化するか、あまり 皆がよくわかっていない状態だ・・ なんだか、とてもややこしい話であり、ユーザー (カメラマン)側が、悩まなくても良いとも思う。 こういう事は、光学の専門家や技術者が、しっかり 研究を行い、その成果を製品開発の際に十分に 意識すれば済む話であろう。 (下写真は、SONY α7 +A85/1.4) なお、両システムはカメラ単体だけでは同等の軽量だが、 いずれもレンズの方がボディより遥かに重い。 *OLYMPUS OM-D E-M1 497g(装備重量公称値) マウントアダプター 86g Zeiss Milvus 85/1.4 790g システム総重量 1373g カメラvsレンズ重量比 1:1.76 *SONY α7 474g(装備重量公称値) SIGMA MC-11 125g SIGMA ART 85/1.4 約1130g システム総重量 約1729g カメラvsレンズ重量比 1:2.64 ここで、重量比のバランスが悪いSONY α7の方が 使い難いか?というと、そういう単純な話でもなく、 SIGMA ART85/1.4はAFレンズであり、MC-11経由で 絞り値もボディ側からの制御である。 つまり、AFで撮るならば、左手はシステム重心を 支えているだけで、他に何の操作もいらない。 対して、OM-D E-M1装着のMilvus50/1.4はMFレンズ で、常時ピント合わせ操作が必要だ。 加えて、絞り環も存在し、そこで絞り値を調整する為、 左手の持ち替え(位置替え)動作が発生する。 しかも、システム重心がやや奥側にあり、ピントリング の操作も含めて、左手の適切な置き場所が無い。 さらに言えば、撮影前、撮影後に速やかに電源スイッチ をON/OFFする習慣が付いている場合・・(つまり、 よりバッテリーを長く持たせる為の習慣だ) OLYMPUS機の電源スイッチは、カメラの左上部にある為、 ピントリング、絞り環、電源ON/OFFの、全ての操作で システムの全重量が、右手のグリップ部だけに集中する、 これは、なかなかしんどい(疲れる)操作性となる。 (注:グリップがやや大型化されているOM-D E-M1 MarkⅡ を母艦にすれば良かったか? と、やや後悔していたが 本記事は、OM-D E-M1の対決記事なので、やむを得ない) (下写真は、OM-D E-M1 + Milvus 50/1.4) カメラ自体の性能についての比較は冗長になるので 今回は割愛しよう。 詳細は、それぞれの機体の紹介記事本編(旧ブログ)を 参照されたし。 それに、両機は、仕様もずいぶんと異なり、使用目的も 大きく異なるであろう。また、オールドレンズや、特殊 レンズの母艦として利用するケースも多いので、両機の AFの性能等を比較しても、あまり意味が無い。 (下写真は、SONY α7 +A85/1.4) 最後に、本シリーズ記事は「対決」の主旨なので、 両機の個人評価点を上げておく。 この個人評価点は、ミラーレス機の場合においては、 「基本性能」「描写表現力」「操作性・操作系」 「アダプター適正」「マニアック度」「エンジョイ度」 「コスパ」「完成度」「仕様老朽化寿命」「歴史的価値」 の10項目を各々5点満点で評価したものの平均点である。 総合点3点が標準、3.5点程度あれば準名機、 4点近くにもなれば名機と言えるであろう。 *OLYMPUS OM-D E-M1 (2013年) 個人評価総合点:3.45点(なかなか良い、準名機) (参考:本ブログ「歴代カメラ選手権」第18位) *SONY α7(2013年) 個人評価総合点:2.85点(やや悪い) まあ、総合的点数は、納得が行く結果だ。 様々な高性能を「なんでも乗せ丼」としたOM-D E-M1 は、やはり、使用していて気持ちが良い性能であり、 おまけに中古価格が下落していて、コスパが恐ろしく良い。 (注:2021年以降では入手困難、詳細後述) 対して、SONY α7は、例の「ロードマップ戦略」と やらで、性能を出し惜しみしている為に、全般的にかなり 低性能であると感じてしまう。 ならば、オールドレンズの母艦にすれば良さそうなのだが、 α7には重欠点があり、それは、多くの大口径オールド レンズで、センサー面とレンズ後玉との間で「画間反射」 が発生し、それがモロにゴーストとなって出てしまう事だ。 まあ、フルサイズ機でないと効能を発揮できない特殊 レンズ、例えば、魚眼、シフト、ぐるぐるボケ等の レンズの母艦として、α7は、今後も使い続けるつもり ではある(注:それらでは画間反射ゴーストは出難い) ただ、それらの目的で長年酷使していて、さすがに、 結構ボロボロになっているので、いずれは別の機種に 代替する必要があるだろう(現在、その目的では α7Sを後継として使用中) でも、次に買うべきα機 が殆ど無い(いずれも魅力的では無い/コスパが悪い) という状態なので、ちょっと困ったものだ。 総括だが、カメラの性能的には、OM-D E-M1の圧勝。 しかし、市場戦略的には、SONY α7系の圧勝だ。 OM-D E-M1は、この時点の「勝負」には勝ったが、 大局的に見れば、商売に負けた事となり、それが 後年2020年の「OLYMPUSのカメラ事業からの撤退」 の遠因となってしまったのかも知れない・・ なお、コロナ禍以降、中古市場では、年式が古く 中古相場も安価な高性能機(例:OM-D E-M1)は、 ほとんど流通しなくなった。これは恐らくだが、 相場が安価な高性能機を販売しても、儲けが少ない からであろう、E-M1に限らずα7、も、だんだんと 中古流通が厳しく(=無く)なって行くと思う。 ---- では、今回の「デジタル名機対決クラッシックス(2) 2013年注目ミラーレス機」編は、これで終了。 次回は、デジタル一眼レフの対決記事となる予定だ。
by pchansblog2
| 2022-08-31 07:43
| 完了:デジタル名機対決
|
ファン申請 |
||