小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

歴史小説(日本編)のくくりから12選!

 

 1年前も年末年始の特別編として(番宣がてら💦)行いましたが、昨年末にちょうど歴史小説の日本史編が終了したこともあり、12のくくりから私の気に入っている記事を取り上げたいと思います。こちらも前回と同様、小説の優劣ではなく記事の好みで選出しています。(なお前後編で掲載した作品は、全て後編をアップしました)

 

1 司馬遼太郎 日本を俯瞰する20選

 

  個人的にも大好きな小説で、昨年NHKのドラマが再放送されたことをいいことに(?)、再掲した記事。書評をまとめる際、日露戦争を描く小説の開始がなぜ明治維新なのかを改めて考えました。俳人の子規を含めた数多くの登場人物たちが、「開花期」を迎えた日本で自分の居所を探し、そして結果を出していく姿に感銘を受けました。

 そして40年周期で迎える日本の「断層期」。間もなく訪れる次の周期に不安がよぎります。

 次点は「燃えよ剣」。若い時はチャンバラ時代劇と感じたタイトルが、再読して土方歳三の生き様そのものと、ようやく思い至りました。

 

 

2 池波正太郎 世の闇を照らす20選

 

 

 倒幕まではあれだけ才能を輝かせた西郷が、西南戦争では判断を放棄したかのように桐野利秋らに「丸投げ」してしまいます。その理由として様々な理由が考察されていますが、自分なりの考えをここでまとめました。加えて同級生の司馬遼太郎と「陽」と「陰」に別れて歴史小説を率いた役割分担を思い、同じような役割を担ったコンビの思いをはせました。

 次点は「英雄にっぽん」。池波正太郎「らしくない」作品の真意をうまく汲み取れたか、今でもちょっと不安は残ります。

 

 

3 藤沢周平 市井に寄り添う20選

 

 この作品は初読の時から感動しました。主人公と作者の「伝える思い」を想像すると、万感胸に迫ります。またイザベラ・バードが米沢盆地の美しさを謳っていることも知っていたので、すぐにイザベラと作品が結びつきました。上杉鷹山の思いが英国人に、そして明治以降の財界人に「伝わった」ことが感動につながりました。

 次点は「橋ものがたり」。橋を通して見せる様々な人間模様は作者の真骨頂であり、挿入された古地図が更に思いを深めました。

 

4 歴史小説・古代(弥生~平安)20選

 

 タイトルの字「日御子」に疑問を抱きましたが、言葉を大切にする通訳を主人公とした、一族250年に及ぶ物語とは思いませんでした。「卑弥呼」だけでなく「邪馬台国」や「奴国」も別の文字を使っています。また9代に及ぶ一族の名前も見事で、つい自分で系図を作るほどに。こちらは長い時間をかけて「伝わる」感動を味わいました。

 次点は「望みしは何ぞ」。藤原道長の子ながら全く無名の藤原能信を狂言回しとして、摂関政治から院政に日本政治を変革した、薄幸な、気高い、そして天真爛漫な「女系三代」の隠れた物語。

 

 

5 歴史小説・中世(鎌倉~室町)20選

 

  当初は感想が書きづらく、取り上げるのに迷った作品。しかし歴史に埋もれた「結城家」を掘り下げるうちに、どんどんと興味が膨らみました。主人公たちの「愚直の決断」は志が敗れても、その後古河公方、結城秀康、そして里見八犬伝と繋がり、現代にまで通じていると考えると、感動を禁じ得ません。

 次点は「蝦夷太平記 十三の海鳴り」。津軽半島の付け根にある十三湊を巡る、鎌倉後期の物語。新たな知識の発見は、司馬遼太郎の「北のまほろば」につながりました。

 

 

6 歴史小説・戦国(戦国武将編)20選

 

  悲劇の将軍、足利義輝に見事息吹を吹き込んだ作品。特に2人の天才、塚原卜伝と織田信長に交差する描写に感服し、その感動が書評になっています。この作品から、小説や映像で登場する足利義輝の「格」が上がったと思います。また塚原卜伝の特徴ある教授法は、池波正太郎「夜の戦士」でも別の形で描かれています。

 次点は「叛鬼」。私が全く知らなかった長尾景春を知ることは、関東の戦国時代を知ることに繋がりました。

 

 

 

*戦国の三英傑、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康(ウィキペディア)

 

7 歴史小説・戦国(織田信長編)20選

 

 敬虔なクリスチャンの遠藤周作が描く戦国時代は、登場人物の「心のヒダ」をかき分ける、他の作家とは一線を画す作品になっています。前半は荒木村重を中心とした、織田信長を巡る武将たちの心の内を。後半は運命が翻弄される女たちのせつない人生を描いています。そしてどうしても名作「沈黙」に繋げたくなりました。

 次点は「天地雷動」。信長回心の棋譜「長篠の戦い」を、コンサルタントの目から描いた作品。その「捌き方」に深く同意。

 

 

8 歴史小説・戦国(豊臣秀吉編)20選

 

  初読の時は登場人物が錯綜して(しかも登場人物欄もない)、難渋した作品。しかし書評用に、主人公に絞って読み直したところ、初読時とは違ったイメージが湧きました。魅力的な主人公2人は「雛の国のファンタジー」のスターウォーズを連想し、やがて「君の名は」につながる破局へと向かっていきます。

 次点は「もろびとの空」。展望の見えない籠城戦で民を犠牲にする姿は、国民を犠牲にして戦争を続けようとした、太平洋戦争末期の軍部と重なりました。

 

 

9 歴史小説・戦国(徳川家康編)20選

 

  長きに亘った戦国時代編を締めくくるのは本多正純と、最初から決めていました。家康の謀臣として豊臣家滅亡にあらゆる知恵を絞ったにも関わらず、家康死後は恵まれず改易となります。けれども胸中を漏らすことなく、出羽の地で静かに死を迎えます。こじんまりした正純の墓を思い出すと、戦国時代編を締めくくる言葉も自然と決まりました。

 次点は「月を吐く」。静岡県に実際にあるおとぎ話のような地名「吐月峰」と、お姫様のような瀬名姫の物語は、「まんが日本昔ばなし」を連想しました。

 

 

10 歴史小説・近世(江戸時代編)20選

 

  加賀百万石を築いた前田利家、利長を継いだ、三代利常、四代光高、五代綱紀に及ぶ大河小説。前田利常は10代の時に一風変わった殿様の逸話を知りました。それからおよそ30年後にこの作品を読み、更には前田家代々の「特徴ある」墓所を見て、感慨にふけったことを思い出しながら書き進めました。

 次点は「覇剣・武蔵と柳生兵庫助」。「尾張柳生」に一時興味を持った時があり、この作品で塚原卜伝から続く剣豪の系統をまとめました。

 

 

11 歴史小説・近代(幕末~昭和編)20選

 

  太平洋戦争の幕を引いた鈴木貫太郎。本作品を読むと「この人しか終戦に導くことはできなかった」と思います。阿川弘之著「井上成美」で触れられた、敗戦後の20年先を見据えて次世代へ託す気持ちを汲んで、最後に昭和39年に開催された「平和の祭典」東京オリンピックの画を挿入することにしました。

 次点は「覚悟の人 小栗上野介」。悪者扱いされる小栗ですが、明治時代に繋がる近代化の礎を築き、また中間だった三野村利左衛門にきめ細かい交流をする人柄に感じ入りました。

 

 

12 文化と技術でつづる日本通史 20選

 

  「等伯を巡る因果が全て体内で交じり合い、作品に向き合う内に濾過されていく」

 「読むと観たくなり、観るとまた読みたくなる。「松林図」はそんな魔力を有しており、「等伯」はその魔力に憑かれた安部龍太郎が、渾身の力を出し切って著わした傑作である」

 この本文の引用が全てを語っています。

 次点は「白鷹伝」。戦国時代から江戸時代の技術者や文化人を描いた山本兼一、衝撃のデビュー作。主人公と鷹の「親子」のような交流とその別れに涙を誘います。

 

 

*千年に亘り日本政治の中枢を担った京都御所(京都観光Navi)

 

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