論理展開の出発点は、まず事実をできるだけ正確につかむところにある。
時折は重いテーマを語ろうということで、これから何回かに分けて、今現在の世界を表すキーワードを取り上げることにする。初回は「ピークオイル」(Peak Oil)である。日本ではマスメディアがサボっているのか、あるいは知性が足りないためか、報道されているのを見たことが無いが-されていたら、誰か教えてください-、昨年あたりから、これは、世界のこころある人と金儲けに狂奔している人の間で、最も重いテーマの一つとなっている。
ピークオイルとは最も単純に言えば、石油の生産量がもうこれ以上増えない頂点を指す。
Peak oil
is the point
at which
maximum production is reached.
米国では石油の国内生産は1970年にピークとなり、以降は増えつづける需要をまかなうために足りない分を輸入に頼ってきて、いまや需要の半分は輸入だという。まあ、米国はさておき、世界の石油がいまやこのピークに達しようとしていることだから、事は大変である。
ピークオイルの更なる定義は、石油地理学(oil geology)によれば埋蔵量の半分を使い切った時に始まるのだそうだ.
That critical point
tends to happen
when
resorvoirs are about half-empty.
まだ半分残っているから大丈夫とは言ってられないようなのだ。一つの油田で埋蔵量の残り半分を汲み上げるには前半のそれとは違って大変な労力を付加する必要があるらしい。この50年間、世界のトップ油田でありつづけ、今もサウディ(Saudi Arabia)の生産量の半分、日産500万バレル(5 million barrels)を受け持っているガワール(Ghawar)油田は毎日膨大な量の海水をぶち込んで何とか生産量を維持しているとのことだ。
私は地学や物理学に弱いため、この海水注入の話を聞いたとき、地下の石油湖にたまっている石油がだんだん底の方になったので、水を注げば水と油で石油が浮き上がり、そこをポンプで汲み上げているのだと想像した。大違い。石油は湖のようにたまっているのでなく、岩の間などにたまっており、地面に穴をあけると地面の圧力で噴出してくるのだそうだ。最もすぐにこの圧力は減っていくので、水で圧力をかけつづけているとのことだ。
アラビア半島の先端にあるオマーン(Oman)は2001年には日産100万バレルに達したのが以降、急に落ち込んで、いくら最新技術で手を打っても生産量は落ちっぱなしで今や80万バレルを切っているそうだ。世界はすでに埋蔵量の半分を消費してしまったそうだから、簡単に言えば先の定義のピークにすでに達したわけだ。
Although
as much as half of the world's recoverable reserves
are estimated
to have been consumed,
a trillion barrels
remain under ground.
1トリリオン(1000ビリオン)残っていると言っても、世界は今、毎年30ビリオン消費しているから、単純に計算しても30年ぐらいしかもたない。しかもオマーンやガワールの話でわかるように、残り半分を取り出すのはエライ話となる。へたすりゃ販売価格より汲み出す経費の方が高くなるだろう。
話が長くなったので、今日はここまでとするが、確実に言える事は、今から石油無しの社会(post-oil age)に向けて急いで準備しないと、日本中がホームレスになるよ、ということだ。
先にも述べたように日本のマスメディアでは報道されないから、生き延びるためには、英語で情報を集め、分析して策を練らなければならないと思うのだが。
(05.9.13. 篠原泰正)