luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

AED 使えば助かったのに、という起訴に感じる違和感。

勿論、報道のみなので、実態は違っているかもしれません。
でも、http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140703/waf14070321330029-n1.htm を読む限りでは、救命できて当たり前みたいな、嫌な感じを持ちます。

過呼吸などの症状が出て意識が低下*1した。

 学生トレーナーが救急車を要請し、6分後に心臓マッサージ*2を開始。14分後には救急車が到着し、救急隊員が他の部員が持ってきていたAEDを使った*3後に病院搬送したが、那須さんは4日後、脳に酸素が届かなくなる蘇生(そせい)後脳症で死亡した。

 原告側は「AEDの電気ショックが1分遅れるごとに救命率は7〜10%低下する。すぐにAEDを使っていれば救命できた可能性が極めて高く*4、大学側は監督義務を怠った」と主張

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140703/waf14070321330029-n1.htm

上記のように書かれていますが、AED というのは使えば万能に救命できるようなものではありません。「心室細動」になっている場合に救命するためのものです。*5
参考資料にあるように、心室細動になっていたからと言って、総て救命できるわけでもありません。あくまで「心室細動」になっていた場合に、救えるような状況の際に使ったら、救えるかもしれない道具なのです。
そもそも、緊急時には救急車を呼ぶのが一番でしょう。そして、既に心臓の鼓動が感じられないのであれば、すぐさま心臓マッサージを開始せねばなりませんし、その状態で手が空いていれば、AED を持ってくることが出来る、という状況になります。
一見、こういう風に書いておくと、簡単に見えますが、急に起きた出来事に現場は混乱しているでしょうし、当然ながら AED を持ってきて、作動開始させるためにも人手が必要です。既に心臓マッサージを開始していますし、気道の確保と、人工呼吸は開始していなかった*6としても、それを中断できませんので、そんなに簡単な事とは思えません*7。
基本的に、救急隊員以外の救命手順は善意のものですし、技術のある人が常にいるとは限りません。また、技術がある人が手順通りに出来たからと言って、確実な救命が出来る訳ではありません。後付けで、そうすれば救命できたはず、と主張するのは非常に危険な考えだと思います。そんな事を主張したら、技術を持つ人が緊急事態に関わりう事を避けるはずで、そんなの本末転倒です。


繰り返すようですが、救命行為はあくまでも「救うことが出来るかもしれない」という行為です。それを逆手にとって「救うことが出来たはずだ」と主張するのは、非常に危険な思想だと思います。どんな事態があったかは分かりませんので、あまり変な事を言うのは避けたいですが、実際の裁判では、その部分を十二分に吟味して頂きたいと思います。

*1:そもそも、ここで過呼吸が出ているという事は、元々何か起きている訳で、純粋に心臓異常が起きたわけではない。

*2:別に何もしなかったわけではなく、ここで心臓マッサージを始めている。

*3:ここで AED を使ったのを問題視しているようですね。

*4:つまり、心臓マッサージよりも救命できたから、との主張でしょうね。こう言っているのだから。

*5:参考 使うと必ず助かりますか?|AEDで助かる命|心臓病の知識|公益法人 日本心臓財団 心室細動とはどんな不整脈ですか?|AEDで助かる命|心臓病の知識|公益法人 日本心臓財団

*6:今の救急手順では、心臓マッサージが優先手順になってます。参考 http://www.city.yokohama.lg.jp/shobo/koho/4-3koho.html

*7:別のシチュエーションですが参考記事 私が救急車を呼んだときのこと。 ~AED使用遅れの訴訟の記事から - スズコ、考える。