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痴漢冤罪は多いのだが、本件を感情的に論ずるよりも判決文を読む事。(西武池袋線痴漢冤罪小林事件)

2013-08-29 のコメント欄より。

luckdragon2009 2013/08/29 22:00
まじめな話、判決がどういう論理構造で事実認定したのかが気になりますが、閲覧に行くほどの気力ないし、判例検索に引っかからないと、お手上げだなあ。(刑事事件の場合、関係者以外の閲覧拒否になってたりするし...。)

luckdragon2009 2013/08/29 22:04
なんとなくですが、事実認定は手が固まったままに行為に及ぶことはできた、と認定していそうな気がします。
推測なんで、本当の判決文読まないと何とも言えませんが。

luckdragon2009 2013/08/30 04:38
気になってちょっと調べたのですが、被告側の情報しかないですね。
この wiki にも判決文ないです。
> http://www44.atwiki.jp/kobayashiinochi/pages/14.html

ただ、判決日がありましたので、裁判所の判例検索にて調べてみました。
最高裁 H22.07.26 ですね。
ていうことで、見つけました。

> http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010.action;jsessionid=59CBBE3B74B9DBDEB824AC4D3FE700D0
> http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110330143731.pdf

公文書なので、著作権気にしなくてもよいので、推定部分等をコピーします。
全文は長いので、該当分を読んでみてください。(私のブログには書く予定ですが)
///
同医師の
外来診察録への記載,同医
師が作成した診断書のい
ずれにおいても,右示指,左中
指についての記載はあるも
のの,右中指についての
記載はないことなどからすれば
,同医師の上記供述は,右
示指の診察結果から推測
したことを交えて説明している
ものとうかがわれ,その説
明内容の正確性には疑問
の余地がある。
///
?については,法廷意見4(2)が検討していることのほか,本件当時,被告人は手
品や尺八の講座に通っており,当日は,
前年4月から通っている手品教室の継続
受講料を支払っていること,かばんの中
には手品用の紐,ハンカチ,カードコレ
クションが入っていたことなど記録上認
められる事実を総合すると(仮に,被告
人はそれらを「膠原病のため動きにくく
なった指の運動を兼ねて」たしなんでい
たのであるとしても),被告人の弁明を
排斥して本件犯行を行うことは不可能で
はなかったとした原判決の判断は不合理であるとはいえない。
///

luckdragon2009 2013/08/30 04:42
連投になっちゃいますが、要するに医師の意見は事例の指に関する記載ではなく、事件の事実においては推測にすぎず、事実認定されないとの判断です。
今回の件の判決日が不明で、それがどう判断されたかがわかりませんが、元々の判決文は医師の診断を否定ではなく、医師の推定を事実認定しなかった、ということです。

長々とすみませんでした。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20130829

本件の情報に関しては、「指が動かないのに痴漢の犯人にされる」等の結構感情的な意見が多くて、私も、そうなんだ...と素直に考えていたのは、ちょっと事件の原告被告*1側の意見からのバイアスかかってしまっていたのかな、と思います。
この事件の wiki もありますが、原告被告*2側の作成であり、被害者側の視点はありませんので、そのバイアスを意識して読まれることを勧めます。→ 裁判の経緯(時系列) - 西武池袋線痴漢冤罪小林事件@wiki - アットウィキ
私は神様でもないので、起きた事件の真相がどうであるのか、実際には冤罪*3なのか、それとも事実認定が正しかったのか、それは分かりません。
ただ、この件に関して、どうも判決文の事実を正しく伝えていない情報があるようにも思えますので、判決文自身の著作権が公文書であり、無いことも考えて、全文を私のブログ*4に掲載しておくことにします*5。
私のブログが、何かの参考になったのであれば幸いです。
判決文の検索結果 → 平成20(あ)333 強制わいせつ被告事件  平成22年07月26日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所
判決文(主文) - 平成20(あ)333 強制わいせつ被告事件  平成22年07月26日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所 より、判決文の全文*6。

主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人田場暁生ほかの上告趣意は,憲法
違反,判例違反をいう
点を含め,実質は
単なる法令違反,事実誤認の主
張であり,被告人本人の上
告趣意は,事実誤認の主
張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ記録を調査しても
,被告人の犯人性に関
する第1審判決の
認定を維持した原判断に誤りがあるとは認められない。
1 原判決が是認した第1審判決認定の
犯罪事実の要旨は,「
被告人は,平成1
7年3月18日午後10時36
分ころから同日午後10時
40分ころまでの間,東
京都豊島区の西武池袋線池袋駅
から東京都練馬区の同線石
神井公園駅に向かって進
行中の電車内において,乗客で
ある当時19歳の女性(以
下「被害者」という。)
に対し,同女のスカートの中に
右手を入れた上,強いてわ
いせつな行為をした。」
というものである。
2 記録によれば,原判決が認定するよ
うに,本件当時電車内
は相当に混雑して
いたこと,被害者が,その左斜め前に被害者
に背を向けて立っていた男性(以下「犯
人」という。)から,上記強制
わいせつの被害を受けたこ
と,このとき被害者の前
方,犯人の右斜め前に被害者と
向かい合う形で立っていた
Nは,被害者から助けを
求められて上記被害の訴え及び
犯人を認識し,その後,電
車が次の停車駅である石
神井公園駅に停車した際,犯人
と認識した男性の左そでを
つかんで一緒に降車し,
駅事務所に連れて行ったところ,この男性が被告人であったことが明らかである。
3 所論は,Nが,犯人と被告人とを
取り違えた可能性があると主張する。
(1) しかし,Nは,第1審公判において,被告人を犯人として捕まえるに至った
経緯等について,「私が被害者
に『どうしたの。』と声を
掛けると,犯人は,電車
内を被害者から約2m離れた位
置まで移動したが,その際
,私は,移動する犯人の
背中に向かって,『おじさん次
で降りるからな。』と声を
掛けた。その後,私は,
電車が次の停車駅である石神井
公園駅までの間を走行中,
ずっとではないものの,
犯人をちらちらとたまに見て,
その背中を目で追っていた
。私と犯人の間には乗客
がたくさんいたが,周囲の乗客
が上記のとおり私が犯人に
声を掛けたことに反応し
て,犯人の周囲には若干の空間
ができていたので,犯人の
背中は見えた。電車が同
駅に停車する直前に,犯人に対
して『一緒に降りるぞ。』
と言い,停車と同時に,
ドアが開く前に,犯人の方に向
かい,その左そでをつかん
で一緒に降車した。この
とき降車する乗客の流れがあっ
たが,私が犯人のところへ
行くために降車する乗客
の流れに逆って進まなければな
らないところでは,周囲の
乗客が空けてくれた。捕
まえた犯人は被告人であった。」と供述している。
(2) Nは,たまたまその場に居合わせた乗客であって,被告人とも被害者とも格
別の関係を有しない第三者であ
り,殊更に被告人に不利益
な虚偽の供述をすること
は想定されない。
その供述内容は,痴漢被害を認識した経
緯,犯人を特定して声
を掛けた状況,石
神井公園駅に至るまでの犯人と
の位置関係,その間におけ
る犯人の視認状況,そし
て同駅で犯人とともに降車した
状況を通じて,不自然な点
はなく,信用性を疑うべ
き事情は見当たらない。Nの供
述する一連の経過に照らせ
ば,同人が犯人を別人と
取り違えた証跡はないものと認められる。
(3) 原判決は,○1 電車の走行中,Nが犯人を目で追った状況に関しては,Nが犯
人に声を掛けたことに周囲の乗
客が反応し,犯人の周囲に
若干の空間ができたとい
う供述には臨場感があり,この
状況を前提とすると,Nが
,断続的に犯人の背中を
目で追っていたので,犯人を見
逃していないというのは自
然であり,また,○2 電車
の停車時にNが犯人を逮捕した
状況に関しては,停車する
直前にNが犯人に対して
「一緒に降りるぞ。」と言った
ので,周囲の乗客はNと犯
人の動静に注目する状況
にあったことがうかがわれる上
,Nと犯人は約2mしか離
れていなかったことから
すれば,Nが犯人のところにた
どり着き逮捕することは,
降車する乗客の流れがあ
ってもそれほど困難ではなかっ
たというのは自然であると
して,Nの供述の信用性
を肯定した。
上記のとおりNが犯人に声を掛けたこと
に加え,被害者の第1
審公判供述によれ
ば,被害者が泣いており,周囲
の乗客が「痴漢,痴漢」な
どと話していた状況が認
められるのであって,
このような状況の下で,周囲の乗客が犯人を避けるようにし,
その周囲に多少の空間ができる
ことは,電車の混雑を考慮
しても,十分に考えられ
るところである。また,Nの供
述によれば,犯人とそれを
捕まえようとするNの存
在が周囲の乗客において容易に
認識できる状況にあったか
ら,周囲の乗客が犯人の
方へ向かおうとするNの進行の妨害とならない
ようにすることも十分に考えられる。
原判決の前記判断に不合理な点はない。
(4) なお,原判決は,Nの供述する犯人の身長や上着の色及び長さは,逮捕時の
被告人のそれと厳密に一致しな
いところがあるが,そのこ
とは当時の視認状況等に
照らしてNの供述の信用性を否
定するほどのものではない
とした上で,被害者が第
1審公判において供述する犯人
の後頭部の髪の特徴や上着
(白っぽいジャンパー)
は,逮捕時の被告人のそれと整
合するものであり,犯人と
被告人が同一人であると
いうNの供述を補強するものと
いえると判断しているとこ
ろ,被害者が周囲を見渡
したときに白っぽいジャンパー
を着ていた人は犯人以外に
いなかったと供述してい
ることなど,記録上認められる証拠関係に照らし,その判断は首肯できる。
4 所論は,本件当時,被告人は疾患に
より右手の示指及び中
指を動かすことが
困難であり,また動かせば強い
痛みが生ずるため,被告人
が右手指(被害者の供述
によれば右示指又は中指)を被
害者の膣内に入れるという
本件犯行を行うことは不
可能であったと主張する。
(1) 被告人の右示指に可動域の制限があることは証拠上明らかであるが,原判決
は,以下の理由から,少なくと
も被告人の右中指,薬指,
小指には可動域の制限は
なく,被告人が本件犯行を行うことは不可能ではなかったと認定した。
ア 本件の約1か月半後である平成17
年5月6日以降に被告
人の手の診察をし
た医師Bは,第1審公判供述及
びその意見書において,被
告人の右中指は右示指と
同様に可動域に制限があり,ま
た右中指を膣内に入れよう
とすると相当の痛みが出
るなどと説明するが,同医師の
外来診察録への記載,同医
師が作成した診断書のい
ずれにおいても,右示指,左中
指についての記載はあるも
のの,右中指についての
記載はないことなどからすれば
,同医師の上記供述は,右
示指の診察結果から推測
したことを交えて説明している
ものとうかがわれ,その説
明内容の正確性には疑問
の余地がある。
イ 本件の6日後に撮影された,被告人
が右手でかばんを持っ
ている写真では,
右示指はてのひらに付いていな
いが,右中指,薬指,小指
はてのひらに付くまで曲
げられており,これらの指に可動域の制限はなかったと認められる。
(2) 検討するに,上記(1)アについては,医師が,被告人の右中指に可動域の制
限があり,動かせば強い痛みが
生ずるにもかかわらず,そ
のことを診療録や診断書
に全く記載をしないことは考え
難いことに加え,記録によ
れば,本件以前の別の医
師による診療録の記載にも,右示指と左
中指の可動域制限の記載はあるものの
,
右中
指の可動域制限や痛みの記載は
ないことからすれば,B医
師の説明内容の正確性に
は疑問がある。また,上記(1)イについても,被告人が右中指,薬指,小指をてのひ
らに付くまで曲げてかばんを持
っている状況が撮影された
写真は,動かし難い客観
的証拠である上,同写真の被告
人の表情には苦痛の様子が
全く見られない。そうし
てみると,被告人が本件犯行を
行うことは不可能ではなか
ったとした原判断に誤り
はない。
5 以上のとおりであり,その他所論の
指摘を考慮して検討し
ても,被告人の犯
人性に関する第1審判決の認定を維持した原判断に誤りがあるとは認められない。
よって,刑訴法414条,386条1項
3号により,裁判官全
員一致の意見で,
主文のとおり決定する。なお,裁判官宮川光治の補足意見がある。
裁判官宮川光治の補足意見は,次のとおりである。
私が法廷意見に同調する理由を述べてお
きたい。本件では,被
告人は一貫して否
認しており,本件公訴事実を基
礎付ける証拠としては,N
の証言(1審及び原審)
とこれを補強する被害者の証言
(1審)があるのみであり
,物的証拠等の客観的証
拠はない。また,記録上,被告
人にはこの種の犯罪性向を
うかがわせる事情は見当
たらない。したがって,本件に
おける事実認定は,専ら上
記各証言と被告人の弁明
の信用性・合理性の検討に依拠
することとなるが,当審が
法律審であることを原則
としていることにかんがみ,当
審は自ら心証を形成するの
ではなく,原判決の事実
認定が論理則,経験則等に照ら
して不合理といえるかどう
かの観点から審査するこ
ととなる(最三小判平成21年4月14日刑集63巻4号331頁)。
本件の重要な争点は,○1 Nが犯人と被告
人を取り違えた可能性があるか,○2 被告
人は右手指に可動域の制限と痛みがあり
本件犯行を行うことが不可能であったか
の2点である。
○1 については,Nは移動する犯人の背中
に向かって,「おじさん次で降りるから
な」と声を掛けており,記録によれば,
被害者は同時に「この人です」と言って
移動する犯人を指さすとともに泣き出し
た事実が認められ,これらによれば周囲
の乗客が反応して犯人の周囲に若干の空
間ができたことは自然であると考えられ
る。そして,本件犯行時点から電車が石
神井公園駅に到着するまでは6,7分の
時間であると認められるところ,この程
度の時間であれば,そうした空間が維持
されていたということは格別不自然では
ない。そうであれば,Nは約2m右後方
に移動した犯人をずっと注視していたわ
けではなかったとしても,見失う可能性
はないのではないかと思われる。また,
Nは,石神井公園駅に到着する直前に犯
人の方に向かい,いったんその左そでを
つかんでいるというのであるから,到着
後の乗客の流れの中で,犯人を見失うと
いうことも考え難いところである。Nの
証言は,犯人の服装の記憶について一部
不確かな点があり,逮捕者として自己の
行為を正当化する動機が働いている可能
性もないではないが,上記証言内容に関
しては自然であり,N証言を重要な根拠
として,同人が犯人と被告人を取り違え
た可能性はないとした原判決の判断は不合理であるとはいえない。
○2 については,法廷意見4(2)が検討していることのほか,本件当時,被告人は手
品や尺八の講座に通っており,当日は,
前年4月から通っている手品教室の継続
受講料を支払っていること,かばんの中
には手品用の紐,ハンカチ,カードコレ
クションが入っていたことなど記録上認
められる事実を総合すると(仮に,被告
人はそれらを「膠原病のため動きにくく
なった指の運動を兼ねて」たしなんでい
たのであるとしても),被告人の弁明を
排斥して本件犯行を行うことは不可能で
はなかったとした原判決の判断は不合理であるとはいえない。
(裁判長裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官
横田尤孝 裁判官 白木 勇)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110330143731.pdf

*1:刑事事件被告人なのに、何故か原告と間違えてました。恥ずかしい。

*2:刑事事件被告人なのに、何故か原告と間違えてました。恥ずかしい。

*3:これも実は嫌な言い方です。この言い方だと、罪に問われたのが現時点で間違っている、と決めてしまった言い方なので。実際には、「真相が不明である」としか言えませんよね。

*4:コメント欄に書かなかったのは、さすがに他者のブログのコメント欄を占有するのはマナー違反だと思いましたので。

*5:PDF ファイルって、結構読めない環境あるし、互換性のエラーとか出たりするので。こういう書式依存のファイル等ではなく、共通の変更されないファイル形式があれば理想なのだが。

*6:同一性保持のため、改行なども変更していません。機種依存文字と思われる丸数字のみ、置換してあります。