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風評被害ではなかったかも知れない、かいわれ事件

調べていて、はたと見つけたこの記事。
『Re:風評を防ぐ? (#1596700) | 「謎の食中毒」が増加中 | スラド』

>かいわれの故事

うーん、あれも一応、裁判上では業者勝訴という形になりましたけど、実はこういう論文 [nih.gov]も出てまして。きちんと「科学的な」話をするならば、特定のカイワレ大根が原因食材だったというのは、単に疫学的な状況証拠だけでなく、実際に分離された細菌の遺伝子比較という物的証拠も出てる、というのが実際のところだったりします。

http://slashdot.jp/science/comments.pl?sid=456673&cid=1596700

...そうだったのですね。
裁判の結果を見て、自分の中では終わったつもりになっていました。けど、実際には当時の調査・発表が適正だったかどうかは別として、原因食材であっただろう、という事は言える、という事なのですね。
細菌の遺伝子比較は、かつてインフルエンザのタミフル耐性を探求した際に、遺伝子変異がどう継承されて、感染者間でどう拡散していったか、と調べました。
当然ながら、O157:H7 もトレースしたら、そうなった、という事だったのであれば、まさに原因食材であった、と言えるかと思います。


メカニズムは、以下の内容。

このように総合的に考えると、(1)牛舎から来たハエがカイワレ大根を栽培する水にO157:H7を持ち込み、(2)O157:H7がバイオフィルムを形成して生き残り、(3)少数の菌でも感染が成立するため、カイワレ大根が原因となった集団食中毒の発生につながった、と一応の説明は付いてます。

こういう風にメカニズムがきちんと判明することで、それに対する有効な対策(カイワレ水耕栽培場へのハエの侵入防止とか、バイオフィルムの付着のモニタリングなど)が可能になってくるわけでして。振り返って考えると、おそらく1996年当時に水耕栽培を行っていたところでは、問題になったカイワレ大根を作っていたところ以外でも、一般的な衛生管理は行っていたでしょうが、それでもO157:H7対策には不十分だったんじゃないかなぁ、とか思ったりしてます。

http://slashdot.jp/science/comments.pl?sid=456673&cid=1596700

増殖機構が解明され、衛生管理の体制も組み直された、という事であれば、今の対策としては、そういった対策の管理を保持していく、という事に尽きると思います。
...みだりにコスト削減などをして、また変な事件が起きたりしない事を切に願いつつ。


食品衛生の現場は、日々戦っているのだろうなあ、と遠い目をしたりして...。(微笑)

関係論文
『Massive outbreak of Escherichia coli O157:H7 infection in schoolchildren in Sakai City, Japan, associated with consumption of white radish sprouts. - PubMed - NCBI』
『EhaA is a novel autotransporter protein of enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 that contributes to adhesion and biofilm formation. - PubMed - NCBI』
『Differential binding of Escherichia coli O157:H7 to alfalfa, human epithelial cells, and plastic is mediated by a variety of surface structures. - PubMed - NCBI』