新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

毎年恒例のアニメ話数単位10選を今年も選出しました。

関連記事:【お知らせ】「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」の集計を今年も「aninado」で行います!

『負けヒロインが多すぎる!』、第11話、「結果責任についての話をしようか」

脚本:横谷昌宏
絵コンテ:北村翔太郎
演出:村瀬貴一郎、川岸和樹
作画監督:三浦琢光、竹田茜、摺木沙織、仁井学
総作画監督:川上哲也

3年生が引退し新たに部長になることが決まった小鞠だが、部長会議の発表練習がうまくいかず追い詰められていく。人前で緊張して頭真っ白になる感覚、頑張って練習してもどうにもならないもどかしさ、でもそれを他人に指摘されるのが(たとえ温水に悪気は無いとしても)めっちゃ辛いという感情…。ありとあらゆる描写があまりにも吃音症への解像度が高くて胸が締め付けられる。小鞠も温水もどうしようもなく不器用で、でも、どんなにカッコ悪くても、どんなにたどたどしくても、相手のためを思い、必死に自分の気持ちをぶつけ合った先に道は開ける。そんな2人を暖かく見守る八奈見や檸檬の描写も含め、まさにクライマックスにふさわしい回だった。

『響け!ユーフォニアム3』、第12話、「さいごのソリスト」

脚本:花田十輝
絵コンテ:小川太一
演出:山村卓也
作画監督:髙橋真梨子、引山佳代
総作画監督:池田和美

部長として、一人の奏者として、麗奈と並び立つためにどうしてもソロの座を勝ち取りたい黄前久美子と、ただ楽しく合奏ができればいいと言ってオーディションを辞退したいと言い続けてきた黒江真由。性格も考え方もまるで違う2人の最終対決を前にして、才能と努力、運と実力、空気に抗うということ、部活というものの理不尽さ、リーダーの在り方…、これまで響けユーフォニアムが掲げてきたありとあらゆるテーマが集約してゆく。原作とはあえて違うストーリー展開とすることで、黄前久美子の決意と成長をはっきりと描き出して見せた文句のつけようのない神回。

関連記事:大切なことはすべて黒江真由が教えてくれた - 新・怖いくらいに青い空

『ガールズバンドクライ』、第10話、「ワンダーフォーゲル」

脚本:花田十輝
絵コンテ:酒井和男
演出:友田康
作画監督:山﨑智加

自分を曲げることが大嫌いで周りと対立してしまう井芹仁菜と、教育者として古い家族像に縛られ仁菜に厳しく接することしかできない父親。どうしてもぶつかり合ってしまう2人の間で、それでも決して消えることのない強固な絆。感動的な親子愛のストーリーを通して、伝統的な家族観の解体と、仁菜の成長がしっかりと描かれ、ガールズバンドクライという作品がより一層深みを増したように思う。

『ダンダダン』、第5話、「タマはどこじゃんよ」

脚本:瀬古浩司
絵コンテ:西山壮海
演出:西山壮海
作画監督:山本真夕子、牛丸圭華、マッケルゴ ニック、塚本あかね、王晨陽、羽田浩二
総作画監督:恩田尚之

はじめてオカルトや幽霊の話ができる友達ができたという喜び、相手ともっと話したいけど気持ちが空回りしてしまうもどかしさ。桃とオカルンのあまりにも初々しくいじらしい関係性を前半でたっぷり見せてくれる上に、ギャグも最高に笑えて大満足の回。サイエンスSARUらしいド派手なアクションと演出が光る作品だからこそ、こういう繋ぎ的な回がいっそう光って見える。

『小市民シリーズ』、第5話、「伯林あげぱんの謎」

脚本:内海照子
絵コンテ:川畑喬
演出:高野やよい
作画監督:豊田暁子、金甫旻、さのえり、香田知樹、川上暢彦、高橋道子、赵煜恵、廖菲
総作画監督:具志堅眞由

原作シリーズの短編集『巴里マカロンの謎』の中でも特に印象深い一話をアニメ化。冒頭の意味深なシーンの後、延々と推理を重ねた末にたどりつくあまりにも可愛すぎるオチ。ただひたすらに小佐内さんが可愛いっていうだけの話のために丸々1話費やす構成が素晴らしい。

『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』、第6話、「いわゆるひとつの間接キス」

脚本:山田由香
絵コンテ:吉川博明
演出:大迫光紘
作画監督:鈴木彩乃、金慧秀、加戸菜弥、歩宇、鈴木水彩、山野雅明、板倉健、曾我篤史、立口徳孝
総作画監督:熊谷勝弘、迫由里香、納武史、板倉健

アーリャと周防有希の間でついに政近を巡るバトルが勃発。学校にいるときの清楚な感じでも、政近といる時のはっちゃけた妹キャラでもない、狡猾な有希の姿。それに圧倒されそうになりつつも必死に押し返してみせるアーリャ。魅力的なヒロインどうしの緊張感あふれるバトルはまさにこの手のラブコメの醍醐味だと思う。

『夜のクラゲは泳げない』、第5話、「コメント欄」

脚本:屋久ユウキ
絵コンテ:河原龍太
演出:河原龍太
作画監督:伊澤珠美、迫由里香、山本蓮雄、金慧秀、菊池愛、曾我篤史、久保茉莉子
総作画監督:谷口淳一郎

百合的にエモーショナルなシーンの連続の中で、まひるの「めんどくさい」性格が浮き彫りになり、創作活動を描くアニメとして避けては通ることのできない、承認欲求とコンプレックスというテーマへと繋がっていく。創作の葛藤を乗り越えた後のクライマックスでのエモすぎるキスシーンなどを筆頭に、夜クラの中でも特に印象深いシーンが多い回。

『葬送のフリーレン』、第27話、「人間の時代」

脚本:鈴木智尋
絵コンテ:刈谷暢秀
演出:イムガヒ
作画監督:刈谷暢秀、吉田奏子、藤中友里
総作画監督:長澤礼子

ゼーリエ、フリーレン、フェルン、それぞれの想いが交差すると同時に、明らかになるフリーレンとヒンメルの過去の出会い。憎まれ口を叩きつつも人の良さを隠し切れないリヒターを筆頭に、脇役も実に良い味を出してる。その一方で、何故かシュタルクに話しかけてくる謎の爺さん、やけ食いするフェルン、完全にデンケンの孫と化してるラオフェン、など、ギャグ描写もキレキレで素晴らしい。

『ゆるキャン△ SEASON3』、第3話、「出発!吊り橋の国」

脚本:ピエール杉浦
絵コンテ:小島正士
演出:島亜里紗、井之川慎太郎、本田遼太郎
作画監督:北島勇樹、石山直美、吉田隆太、モリタユーシ、向川原憲、A-NIN、竹内アキラ、りゅっち、赤尾良太郎、大野薫乃、日影工房
総作画監督:豊田暁子、松尾真彦、まじろ、いか、かいち、よぴ、瀬川健寿

志摩リンと土岐綾乃、正月に一度会っただけなのに何故か馬が合う不思議な関係性。大井川の雄大な景色と吊り橋を巡る、マイペースな2人旅。それをただ見ているだけで気持ちが和らいでくる。

『菜なれ花なれ』、第3話、「いつもこの顔だから」

脚本:綾奈ゆにこ
絵コンテ:今泉賢一
演出:ソガメグミ
作画監督:矢野康平、小笠原憂、降籏秀吉、佐藤好
総作画監督:関口可奈味、三浦菜奈

第2話までは無表情で何考えてるか全く分からなかった小父内涼葉。第3話では、小父内さん視点から前回の話を回想することで、ようやく彼女の内面が明らかとなるという見事な構造に唸らされると同時に、小父内さんの可愛さが爆発した回。