ぼくには数字が風景に見える

ぼくには数字が風景に見える

ぼくには数字が風景に見える


たくさんの人に読んでもらいたいなと思った本です。

本書は、サヴァン症候群でアスペルガー症候群の著者、ダニエルによる自叙伝です。彼は円周率22,500桁を暗唱し、10ヵ国語を話す天才青年です。数字に色や質感を感じる「共感覚」をもつことで驚異的な数学と語学の能力をもつ一方、人とのコミュニケーションにハンデをもち、それを家族や仲間とともにどう乗り越えてきたかが本人の言葉で語られています。


前半部の数字に関する話は興味深いです。

たとえば、1という数字は明るく輝く白で、懐中電灯で目を照らされたような感じ。5は雷鳴、あるいは岩に当たって砕ける波の音。37はポリッジのようにぼつぼつしているし、89は舞い落ちる雪に見える。

ある数を別の数で割ると、回りながら次第に大きな輪になって落ちていく螺旋が見える。その螺旋はたわんだり曲がったりする。割る数が違えば、螺旋の大きさも曲がり方も変わる。ぼくは頭の中で視覚化できるために、13÷97 のような計算も小数点以下第100位くらいまで計算できる。


また、53×131 を計算する際に心に見える風景(P15)や、πの小数点以下100桁までの風景(P206)なども絵として載っています。「共感覚」をもつひとのなかでも、それをうまく他のひとに伝えることができるのはとてもめずらしいことだそうです。

πの数字のなかでいちばん有名な部分は「ファインマン・ポイント」と呼ばれる、小数点以下762桁から767桁までの「...999999...」だ。(中略)ファインマン・ポイントの風景はとても美しい。紺色の光の分厚い縁取りが見える。


後半部は心が打たれます。

悩みながらも一歩一歩自立の道を歩むダニエルの真摯な姿と、障害についてまだあまり知られていない時期に彼を立派に育てた両親の姿が印象的でした。なんと9人兄弟姉妹!


円周率暗唱のヨーロッパ記録を樹立したのをきっかけに制作された、著者ダニエルのドキュメンタリー「ブレインマン」は40ヵ国以上で放送され話題を呼んだそうです。英語版はYoutubeに転がってました。日本でもすでに放送されたようですが、8月にNHK教育で見ることができるみたいです。



  • Daniel Tammet - The Boy With The Incredible Brain

http://www.youtube.com/watch?v=AbASOcqc1Ss (1/5)
http://www.youtube.com/watch?v=WfoGsXYLxcs (2/5)
http://www.youtube.com/watch?v=o7oEdE2XjXE (3/5)
http://www.youtube.com/watch?v=UqLzoiVzEY8 (4/5)
http://www.youtube.com/watch?v=qMz3gjl9x-M (5/5)

また、彼はその語学力を生かし、オリジナルの外国語学習プログラムを製作・運営をしています。

http://www.optimnem.co.uk/