
インドネシア、スラウェシ島での発掘で、およそ7000年前にさかのぼるふたつの遺物が発見された。それは、武器用に刃物として加工された大型のイタチザメの歯だ。
『Antiquity』誌(2023年10月24日付)に発表されたこの発見は、サメの歯の加工品からなる、複合的な武器の使用を示す世界最古の考古学的証拠だ。
これまででもっとも古いサメの歯でできた刃物は、せいぜい5000年前のものだった。
イタチザメの歯で作られた7000年前の刃物
研究チームは、科学分析、実験再現、昨今の人間社会の観察による判断を組み合わせた結果、加工された2本のサメの歯が、かつて刃物の取っ手に取り付けられていたものであることを突き止めた。
これらは儀式や戦いに使われた可能性が高いという。
この2本のサメの歯は、インドネシアとオーストラリアの共同考古学調査プログラムの発掘中に発見された。
このふたつの標本は、およそ8000年前からスラウェシ島南西部に住んでいた謎の狩猟採集社会、トアレ文化を起源とする考古学的状況で見つかった。

これらサメの歯は、体長2mほどのイタチザメのもので、大きさはほぼ同じ。両方とも、孔が開けられている。
イタチザメは大型のサメの一種で強靭な歯を持ち、ホホジロザメに次いで危険なサメの1種とされている。
複数の歯列を持っており、使われた歯が抜けると何度でも次々に新しい歯が生えてくる。これにより、常に鋭い歯を維持することができる。
レアン・パンニンゲの洞窟遺跡で発見された完全な歯には、下のほうにふたつの孔があけられている。
もうひとつは、レアン・ブル・シポン1の洞窟で見つかり、孔はひとつだが、壊れており、もともとはふたつあったと思われる。
これらの歯を顕微鏡で調べたところ、植物ベースの糸と接着剤のような物質で取っ手にしっかりと固定されていたらしいことがわかった。この接着剤は、鉱物、植物、動物性物質を混ぜて作られていた。
同じような取り付け方法は、太平洋全域で使われている現代のサメの歯の刃物にも見られる。

サメの歯のナイフは戦いや儀式に使用されていた可能性
それぞれの歯の縁を調べたところ、肉を突き刺したり、切り取ったり、骨から削り取ったりするのに使われていたらしいことがわかった。
この歯は、サメがエサを食べることで自然につく疵よりも、かなり損傷が大きかった。
こうした痕跡は、トレアの人たちが、物を切断するナイフとしてサメの歯を使用していたことを示しているように見えるが、民族誌(近年のコミュニティの観察)、考古学、実験データの観点からは、別の面も示している。
実験によって、イタチザメの歯の刃物を戦いなどで攻撃に使うと、新鮮な豚肉を解体するときと同様、相手の皮膚に長く深い傷を負わせるのに効果的なことがわかったのは、驚くことではない。
唯一のマイナス面は、サメの歯の刃物は、比較的すぐに切れなくなってしまうことだ。日常生活で毎日、実用的にこの刃物を使うには、あまりに効率が悪い。
サメの歯がすぐになまくらになるという事実と、敵に深い傷を負わせることができるということが、現在や比較的近い過去において、なぜ、サメの歯の刃物が、戦いの武器や儀式活動の道具に限定されたのか、その理由を説明していると思われる。

サメの歯を使った刃物は世界で活用されていた
世界中の多くの社会が、物質文化の中でサメの歯を活用している。とくに海岸線に住んでいたり、積極的にサメをたくさん釣りあげるような人々は、たくさんのサメの歯をさまざまな道具に取り入れている傾向がある。
現在のコミュニティを観察してみても、装飾品として使われていない場合は、サメの歯は戦いや儀式的な戦いも含めた祭祀のための刃として広く使われていたことがわかる。

例えば、クイーンズランド北部全域で見つかっている戦闘用ナイフは、楕円形の堅木のシャフトにおよそ15本のサメの歯をずらりとはめ込んだ、1本の長い刃物になっていて、敵のわき腹や臀部を攻撃する。
ニューギニアやミクロネシアの本土では、サメの歯を使った槍、ナイフ、棍棒などの武器が知られているが、タヒチでは槍がいわゆる喪に服する身なりの一部として機能している。
さらに東、キリバスの人々は、サメの歯の短剣、剣、投げ槍、槍を使うことが知られていて、これらは高度に儀式化され、たびたび致命的な争いで使用されたという記録が残っている。
マヤやメキシコでは、サメの歯は瀉血の儀式で広く使われたと考えられていて、トンガ、ニュージーランドのアオテアロア、キリバスではタトゥーを入れる道具として使われてきたことが知られている。
ハワイには、隠し武器としての”サメの歯カッター”があり、死んだ酋長の遺体を処理し、その骨をきれいにする埋葬習慣のために使われた。

世界各地で発掘されるサメの歯の遺物
世界中で発掘されているサメの歯の遺物は、ほとんどが装飾品だとされている。
加工されたサメの歯は、古い時代から見つかっている。
ブアン・メラバク(ニュージーランド、パプア・ニューギニア)で見つかった孔がひとつあいたイタチザメの歯は、およそ3万9500年から2万8000年前のもの。
キル(パプア・ニューギニアのブカ島)から出土したひとつ孔の11本の歯は、約9000年から5000年前のもの。
ガリヴァルディーノ(ブラジル)からのものは、9400年から7200年前のものであることがわかっている。
しかし、これらはいずれも個人の装飾品で武器ではなかった。
新たにリスト入りした今回のインドネシアのサメの歯の遺物は、加工の具合と微細な痕跡から、ナイフに取り付けられていた加工品であるというだけでなく、儀式や戦闘と関連していた可能性が高い。
人や動物の肉をさばいたのかどうかにかかわらず、スラウェシで見つかったこれらのサメの歯は、アジア太平洋地域の特徴的な武器の一種が、私たちが思っている以上に古くから存在していたことを示す、初めての証拠になる可能性はある。
References:Shark-tooth artefacts from middle Holocene Sulawesi | Antiquity | Cambridge Core / Bringing a Shark to a Knife Fight: 7,000-year-old Shark-tooth Knives Discovered in Indonesia / written by konohazuku / edited by / parumo
本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。
ノコギリザメのノコギリ部分も使えそう
>>1
ノコギリエイの剣ならあった気がする、装飾用だろうが
イタチザメなんて現代でも怖がられてるんだから先史時代なら更に脅威の対象だったろうね
その歯を武器に持つ戦士ってそれだけで強そうだし御利益ありそう
サメ皮使った調理道具は古すぎて残ってないか
>>3
いやいやさすがに調理器具としては近年じゃないか?と思ったが、香辛料や香木・火付け用の炭とか物を削れば楽になる作業は多々あるか…
そういう場合に鮫皮を使うことも考えられるね。
鮫皮の利用方法を地域ごとに遡ってまとめればそれで論文を書けるかもしれない。
刃の部分を黒曜石に変えれば、マクアフティルやマカナと呼ばれる
メソアメリカ文明圏で使われていた刀剣ですね
どうやって歯に穴を開けたのか気になる
モンハンの武器を想像したが、クギバットみたいなもんか
引っ掛けてノコギリみたいに引けば痛そうだけど、盾や鎧で防げそう
肉は食用、歯は武器、皮は日用品。こうしてみるとサメって捨てるところが少ないんだな。骨が軟骨だからそこだけ使いにくいくらいか。
歯ではないけど日本刀の柄の部分はサメ革で覆ってあるね
>>11
実際のところは皮の質がとても良いツカエイの皮なんですが、
ツカエイは真鮫と呼ばれていたため鮫皮と言うらしいです。
海洋民族だったから、石よりサメの歯の方が入手性がよかったのかな?
お体に触りますよ…
デンタルウェポン
鮫の歯は脆いから、何度も付け替えるのが骨なんでしょうね💧