メインコンテンツにスキップ

ワンクリックで不思議と謎の世界へ!公式アプリ

昆虫界で起きているカタストロフィ。昆虫種の40%が個体数を急激に減らしている。3分の1が絶滅の危機へ。

記事の本文にスキップ

53件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る

 小さな島国の浸水、山火事や台風の増加、北極の氷の融解など、このところの気候変動はさまざまな困った事態を引き起こしている。

 そして、ある国際的評価からまた新たな非常事態が判明した――全昆虫種の40%が減少傾向にあり、3分の1が絶滅の危機に瀕しているというのだ。

広告の下に記事が続いています

 これまでにも世界各地でクモやムカデを含めた昆虫が苦境にあるらしいことは知られていたが、それがはっきりと確認された形だ。

 その評価によれば、激しさを増す熱波と昆虫の減少とには強い関連が見受けられるという。

 仮にこれが正しければ、世界の生物多様性とっておそろしい意味を含んでいることは想像に難くない。

昆虫界で起きているカタストロフィ

 1970年代、プエルトリコのカリブ諸島で、手つかずの熱帯雨林で生きている昆虫などの節足動物の総バイオマス(ある場所にある生物の量)の計測が試みられた。

 それから40年後、まったく同じ場所をまったく同じ手法で、再度バイオマスの計測がなされた。

 その結果、驚いたことに、節足動物のバイオマスは70年代のそれの8分の1から60分の1にまで激減していたのである。

 だが大虐殺はそれにとどまらなかった。そうした昆虫をエサとするトカゲ、鳥、カエルの類も同様に激減していたのだ。

 生態学者の脳裏には、紛れもない終末の予感がよぎった。昆虫の減少は、過去5億年間で6回目となる「大量絶滅」の兆候かもしれないというのだ。

・6度目の大量絶滅まであと100年くらい?我々は今、大量絶滅の最中にある。 : カラパイア

 昆虫に介在されて行われる受粉は、私たちにとって最も重要な作物や無数の植物にとって不可欠である。

 またタネを撒き散らし、栄養を循環させ、生命全体の網を維持し、食物連鎖のつながりを形成するのも彼らだ。

 こうした生態系の普遍性は、昆虫がわんさかいるからこそ可能になる。

この画像を大きなサイズで見る
pixabay

 1940年代、イギリスの進化生物学者、J・B・S・ホールデンは「神は甲虫を大いに愛したまう」と冗談を飛ばしたが、地球上で確認されている種の少なくとも3分の2は節足動物である。

 世界を支配しているのは人間だと思われがちだが、総数で考えれば地球は昆虫のものと言えるかもしれない。

さらなる熱波が昆虫を襲う

 プエルトリコで昆虫が激減しているという事実を知った研究者は、その原因について、殺虫剤から生息地の減少までさまざまな可能性を検討した。

 だが証拠が指し示していたのは、気温の上昇であった。

 プエルトリコの気象台は、過去数十年で徐々に気温が上昇し、平均2度暑くなったことを示している。

 だが研究者がことさら懸念しているのは、こうした徐々に進行する気温の上昇ではなく、深刻さを増す熱波である。

 というのも、ほとんどの生物には耐えられる温度の閾値(いきち)というものがあるからだ。

 たとえばオーストラリアでの研究では、オオコウモリは41度になると熱による強いストレスを受け、必死に日陰を探し、どうにか体温を下げようとばたばた羽ばたくことが分かっている。

 ところがである。そこからたった1度ひょいと温度が上昇してしまうと、突然死んでしまうのだ。

 11月、クイーンズランド州北部を襲った42度を超える熱波によって、そこに生息していたメガネオオコウモリのほぼ3分の1が死んでしまった。

 コウモリのコロニーがあったところの下には、おびただしいほどの死体が散らばっていた。献身的にコウモリを救おうとした人たちもいたが、助かったのはごくわずかだった。

Bats fall from trees amid extreme heatwave in tropical Queensland | ABC News

エルニーニョ現象とのつながり

 太平洋の海面温度の変動であるエルニーニョ現象は、世界各地に異常気象をもたらす。

 だが、このことはほんの一面の話にすぎない。長い間、不明とされたエルニーニョ現象と温暖化のつながりがどうやら明らかになったからだ。

 『Nature』と『Geophysical Research Letters』に掲載された研究では、温暖化によってエルニーニョ現象が強まっていることが示されている。

 このために、この現象による天候不順で苦労させられてきた地域は、いっそうひどい干ばつや熱波に脅かされているという。

 このことはプエルトリコの件とも関係がある。というのも、昆虫の大量死は、異常なまでに強烈なエルニーニョの熱波が原因だとみなされているからだ。

 この仮説が正しいのだとすれば、温暖化は銃であるが、その引き金を引いたのはじつはエルニーニョ現象だったということになる。

この画像を大きなサイズで見る
pixabay

懸念すべきは熱波のみにあらず

 昆虫の激減が生じているのはプエルトリコだけではない。ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアなどの各地で行われた調査では、いずれも大幅な昆虫の減少が確認されている。

 そして気候変動がこうした激減を引き起こしている一方で、生息地の破壊、殺虫剤、病原菌の侵入、光汚染といった他の環境の変化も強く関係していることがはっきりしている。

 地球レベルで見ると、昆虫はさまざまな環境要因に翻弄されている。彼らの数ががたがたと減り続けている原因は1つだけではない。

 私たちはこの世界をさまざまに変えてきた。地球で織りなされる生命の布地で多大な役割を果たしている小さな仲間たちは、この危機にもがき苦しんでいる。

References:sciencealert / theconversation/ written by hiroching / edited by parumo

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 53件

コメントを書く

  1. 3分の1が絶滅の危機という事実はもはや予兆とかいうレベルじゃないな
    なんでもそうだが壊れ始めると一気に壊れる
    もう取返しがつかないところまで来ているのではなかろうか

  2. 子供の頃は庭には蛇が出た。
    金木犀には小鳥の巣があり、庭石に大きなカタツムリも沢山。
    今はいない。

    1. ※2
      自分ん家の庭では、見慣れなかった鳥まで多数が飛来し縄張り争いが激化している。
      数年に一度くらいは巣を見かけていたものが、毎年の様に作られ卵が割られるなど日常茶飯事。
      昆虫や節足類も種類が増え、ギョっとする事も度々だ・・妙にカラフルなものやデカいの、ハチの巣が多くなった気がする。
      変な草木も増えた・・鳥の糞に種が含まれているせいかな。

      地域差なのか、新しい住宅には庭が無いものが多いせいかは分からないけど。

  3. なんか、昔あったパニックスリラーの「ダスト」が現実味を帯びるような記事だな。

  4. 食糧難を昆虫食が救うとか言ってたけどもはやそれもダメだな。やはり合成栄養素食品だとか人工的な食材の育成技術を開発しないと手遅れになるんじゃね?まぁ3Dプリンタで食品作ってるみたいだしなんとかなるか

    1. 冬異様に寒くなってるのに夏異常に熱いのはそう言う事なのか…
      ※4
      食品作る為の素材が取れなくなりゃただの素材ゴミだぞそれ

  5. じゃけん絶滅前にウナギ獲りつくしましょうねぇ~
                              アホか

  6. これが事実だとしたら人類滅亡もいよいよ現実味を帯びてきたんじゃないのか?
    今は75億もいるホモサピエンスも100年後は絶滅危惧種となっててもおかしくないな

    1. >>11
      こればかりはね~。
      ある湖水地方にいた時、外に出た途端、1m3あたり30匹ほどの蚊が飛んでいて、なぜ刺されても反応しないワクチンがまだ出来ないのかと…

  7. 熱波に耐えられる生物種以外は淘汰されるんじゃないかな。
    今までも大気の組成が変わったり気候が変わって生物が絶滅したなんて何度もある。
    人間は大気中の窒素と天然ガスから化学肥料を合成して食物を作れるから
    ある程度の先進国では飢えることはほとんどない。
    この技術が発明されたことで、この100年ほどで人口が16億人から70億人にまで増えた。

  8. 何か危機的状況を煽ってるけど昆虫界は平常運転です
    毎年数千~数万絶滅して、毎年数千~数万種の新種が見つかってる
    日本でも多い年は400~500種見つかってるそうですよ
    出て来たり消えたり、増えたり減ったりを繰り返すのが自然です。
    ユカタン半島沖に隕石が落ちた時には全生物種の75~80%が絶滅しましたし
    その状況が人間に都合が良いか悪いかで判断してるだけなので話半分で聞いておいた方が宜しいかと思います

    1. ※13
      まさかとは思うが「新種」というのが突如自然界に誕生したものだとお思いで…?

    2. ※13
      新種が見つかるということは新しい種が生まれるということではないし、絶滅した種の代わりになるわけでもない。

    3. ※13
      「見つかってる」というのは「データとして記載された」であって、新たに種が生まれて個体数が増えたわけではないですよ。「誰も調べてなかった種を調査した」というのがほとんどです。
      昆虫だと記載された種は約100万、未記載は約400万といわれてますね。

      1. ※34
        >新たに種が生まれて個体数が増えたわけではないですよ。

        そんなのは言うまでも無い話で、既知の種の中で増えた減ったって騒いでるだけで、全体を100としたら10とか20、30とかの中の話なんですよ。
        調査済みの物、調査はされてるけど未だ記載されていない物、推測される全体から見て調査すらされていない物の三種類ですけど、最後の三つ目が膨大だって推測されてます。

        つまり、その他の80は人知れず「居た痕跡はあるけど、いつの間にか居なくなってた」なんてのはザラにある話で、既知の物が増えた減ったは予想される全体から見れば大した問題では無い。昆虫各々はともかく、全体からすれば昆虫は淘汰圧に強い物なので、人間の生活云々の影響があったとしても、長いスパンで見ればそれは微々たる変化に過ぎない。繰り返しになるけど、この手の話は人間の生活に影響があるなしを前提として話してる事が多く、それは自然からみれば大して意味は無く、自然や生物を考えるなら額面通りに受け取るのはちょっと待った方が良いですよって話。
        人間本位主義の人にとっては大問題でしょうけど

        1. ※35
          地球に住んでる地球人なので、同居人が突然失踪すれば気にしちゃうんですよ。申し訳ない。

          1. >>37
            おたくの住んでる市単位くらいで
            入居と転居が繰り返されてるだけの話やで

            • -3
        2. >>35
          関東の平野部だけど、昔飛んでた蝶々が今はまったく飛んでない。

          1. ※44
            それは最近の話じゃなくて、だいぶ前から少なくなってる見なくなってるって言われてる。
            1970年代頃からだね。
            有名なのはモンシロチョウで、原因は山野や宅地開発、河川の整備、農薬等が原因だと言われてる。
            まれに見かけるよって言う人が居たりするんだけど、それはモンシロチョウじゃなくてスジグロシロチョウっていう別物の事が多い。
            ともかく、何らかの複合的な原因の為に、昆虫に限らず昔居た生物がそこから見かけなくなるというのはままある事です。それと、見かけなくなった物が何らかの原因があってまた見られるようになったってのもままある事です。

            • -1
          2. ※44
            確かに、アゲハチョウやカマキリも見かけなくなったね。

            • 評価
        3. ※35
          ほんとうに記事読んだ?
          ある地域の節足動物の総バイオマスを比較してるでしょ。既知の種数や既知の種の個体数だけを比較してるんじゃないよ。総バイオマスの意味わかってる?
          仮に、あんたの言うように既知の種の増減を調べたんだとしても、既知の種が減少しているんなら、同様の要因によって同地域の未記載種も減少していると推定するのが普通だろ。それとも、同じ昆虫でも記載された種は減少しても、人間が記載しないかぎりは影響を受けないとでも思ってるの?

        4. ※35
          ホント何目線で話してるんだこの人…
          ここ見てるのは人間しかいないんやで?

  9. これ、保護地域のみの調査結果だよね?開発地域の昆虫は環境適応して、新たに繁栄してたりはしないのかな。どうもあの適応能力の高さを思うと、そう簡単に消える種族だとは思えなくて。

  10. どうせ数千万年したら回復するさ。
    問題は人間に悪影響があるかどうか。
    受粉ができなくなるのはかなり恐ろしい・・・

  11. 多様性なんて軽く言っているけど
    大気があって磁場で守られていてたまたまハビタブルゾーン内に存在する地球が奇跡中の奇跡な存在なんだってありがたみを忘れているんでないかなみんな?

    1. >>17
      そこに「ヒューマン」は無いかもしれないけどね。まぁ今いる誰もが関係ない遠い未来か…

  12. と言ったって経済活動は止まらないし、昔ながらの生活には戻らないし、世界の舵取りしてる人は関心ないだろうし、後進国はそれどころじゃないし…人類終わりましたじゃない?

  13. そんな状況でも、昆虫達より先に人間含む哺乳類が滅びるんだろうなあと思う
    いずれ対応して乗り越えるでしょ彼らは

  14. 話のレベルやスケールが全然違うんだけど、うちの周りの野鳥や昆虫が激減してる。
     
    以前はうじゃうじゃ居た夏鳥も冬鳥も、全く姿を見なくなった種が多い。
    夏の夜の街灯にたくさん集まっていた昆虫の数が激減してる。大きな蛾が全くいなくなった(LEDではない昔ながらの街灯)。
     
    周囲の自然環境は変わっていないように見える田舎町なのに。

  15. 種の絶滅と進化適応は表裏一体で、生物というものの根幹の機能が正常に働いている証拠だろうとか
    そもそも虫の仲間だけで生物多様性の3分の2を占めている状態は本当に健全なのかだとか(一応そうなる理由はある)
    言いたいことは多々あるが、バイオマスが減っているという件は気になるかな。
    単に局地的な観測結果に留まるのか、地球全体での傾向なのか。
    70年代との比較だと人類が扱う総エネルギー量も結構変わっているはずだけど、そのあたりとバランスしてる可能性も考えられる。

    何にせよ、地球の危機!を標榜して煽っていくやり方は1999年時点で捨て去ってほしかったけど、世間は中々そうもいかないんだろう。

  16. 人間はエアコンと冷蔵庫発明出来ててよかったな
    空調が存在しない世界線を生きてたらと思うとゾッとする
    ただそっちの世界のほうが温暖化対策に真剣に取り組んでただろうけど

  17. 去年の夏は暑すぎて蚊が熱中症(?)で人を刺せなかったっていうくらいだから、なんとなくわかる気はする

  18. 閾値(いきち)で笑ってしまった
    キャプション付けるなら正しく書いてくれよー頼むよ

  19. 神の視点でも持ってるつもりのがいて草
    そう遠くない将来の人間の生活環境に影を落とすデータだから問題視されている
    人間に興味がないなら問題ないだのなんだの口挟む事自体やめておけばいいものを

  20. 雪上プランクトンを食ってる昆虫もいるしな
    全体的にはしぶといよ

  21. 半世紀で〇分の1なんてペースじゃ適応すらままならんのでは
    地球の気温なんて人間に操作しようもないし、熱に弱い種はどんどん絶滅しそう

  22. >節足動物のバイオマスは70年代のそれの8分の1から60分の1にまで激減していたのである。
    やべぇじゃん!

    蜂が減って農業が壊滅するかもって話も有るのに。植物界と昆虫界を守らないと動物の多くは餓死やで

  23. 昆虫は、エビ・オキアミ・ミジンコなどと同じ節足動物です。昆虫を殺せる農薬・殺虫剤なら、他の節足動物も殺せます。世界中で使われている化学物質が、プラスチック同様に川から海に流れています。近年、多くの種類の魚が不漁ですが、昆虫カタストロフィと同じ現象だと思います。

  24. ウナギとワカサギの激減、殺虫剤が原因 という報告もあります。
    National Geographic の、2019.11.16付けの記事も参照してください。

  25. シュッとひと吹きで虫がいなくなるスプレーとか、ああいうのホントやばいと思うわ
     

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

昆虫・爬虫類・寄生虫

昆虫・爬虫類・寄生虫についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。