マンダロリアンはユダヤ人の暗喩

 ディズニー+で配信中のスターウォーズドラマ「マンダロリアン」はまもなくシーズン3の最終回を迎える。このシーズン3が始まる前に流れた予告編を見たときに、「あれ?マンダロリアンってユダヤ人では?」と思ったんだよね。
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「俺たちは散らばってる、銀河の星のように。教義を失えば、存在価値もない」
いやこれ、ユダヤのディアスポラじゃん。ローマ帝国に信仰のよりどころである神殿を破壊され、徹底的に滅ぼされて世界に離散し、「ユダヤ教」という教義のみを民族の存在意義にして生き残ってきたユダヤのありようを投影してるじゃん。
 思い起こせば「ボバフェット」で語られたマンダロア大粛清「千の涙の夜」。あれは銀河帝国が惑星マンダロアを徹底爆撃、生存者の掃討を行った大戦争で、まさにユダヤ戦争の再現である。
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 シーズン3の1話では、アーマラー率いるマンダロリアンカルト集団「チルドレンズ・オブ・ウォッチ」が子供を新たなマンダロア戦士にする通過儀礼が描かれる。岩だらけの河で水をかけようとする儀式は、ユダヤ教エッセネ派に関係の深かったとされるヨハネの「水のバプテスマ」を連想させる。ヨルダン川で、イエスがうけた洗礼だ。

マンダロリアンの洗礼

 マンダロリアンの母星である惑星マンダロアは、大粛清で使われた融合兵器によって汚染されており、誰も立ち入れないと宣伝されていた。それは帝国によるもので、マンダロリアン達も母星は失われたと思っていた。これは、ローマ帝国が、ユダヤ戦争後のユダヤを、完全に支配し、ユダヤ人の立ち入りを禁じた歴史をなぞっている。なお、ユダヤ王国の故地が「パレスチナ」となったのは、ローマがユダヤ人の仇敵ペリシテ人の土地だとしたことによる。紀元60~120年頃、ローマは属州ユダヤの反乱に対して、恐ろしいほど徹底した粛清を行った。これはまさにスターウォーズにおける銀河帝国のやり方にふさわしい。
 そして、先週配信されたシーズン3最終話の一個前。「スパイ」。この話で明確にスパイだったのは、帝国残党のモフ・ギデオンの手下の女だけだったが、サブタイトルの「スパイ」は英語版では「SPIES」と複数形だったために、様々な憶測を呼ぶことになる。チルドレンズ・オブ・ザ・ウォッチのリーダー、アーマラーがスパイだとか、ボ=カターン率いるナイトオウルの副官で反抗的なアックスがスパイだとか、さまざま言われていて、そういうこともあるかもしれないと思わされるが、この回のサブタイトルでの「スパイたち」がなにかといえば、これも旧約聖書から推測できる話がある。
 この回のストーリーでは、反目していたチルドレンズ・オブ・ザ・ウォッチとナイトオウルが合流し、いよいよ母星マンダロアを奪回しようとする。マンダロアは融合爆弾の影響で大気圏の磁場が乱れており、惑星に降りると宇宙と通信が繋がらなくなる。なので少数のメンバーを募って先行偵察に行くことになる。ここで偵察隊に立候補したメンバーが主人公たちを含む12人。この人数で惑星マンダロアに降下するのだけど、これも旧約聖書にでてくるエピソードに合致してるのだ。エジプトを脱出したユダヤ人たちが、約束の地カナンに入る前に、モーセが12人のスパイをカナンに送り、カナンの状況を探らせるというのが民数記にある。すなわち、先行偵察部隊の12人が「スパイたち」なのである。

 「マンダロリアン」を制作した、デイブ・フィローニと、ジョン・ファブローが、マンダロリアンにユダヤ人の歴史を投影したのはあきらかだと思う。