2024年5月14日、首都高池袋線下り線の美女木ジャンクション付近でトラック4台と乗用車3台が絡む事故が発生、6人が死傷する大事故となった(写真:共同通信社)
昨年5月、首都高速の美女木ジャンクションで発生した大型トラックによる追突多重衝突事故。複数の車が炎上し、3名が死亡、3名が負傷するという大惨事となった。事故から1年が過ぎた今年5月20日、東京地裁でようやく始まった刑事裁判では、被告のトラック運転手のLINE履歴とともに、事故数日前からの信じがたい行為が公開された。7月24日の第2回公判を前に、初公判で明らかになった事実を、ノンフィクション作家の柳原三佳氏がレポートする。
(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
トラックを片手運転、もう一方の手で不倫相手にLINE
5月20日、東京地裁で「美女木JCT追突炎上死傷事故」の初公判が開かれました。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われているのは、本件事故を引き起こしたトラック運転手・降籏(ふりはた)紗京被告(29)です。
この日の法廷では、冒頭、降籏被告が運転する大型トラックの前方に装着されていた事故当日(2024年5月14日)のドライブレコーダー映像が、約30秒にわたって傍聴席にも流されました。
交通量の多い朝の首都高速、前方で渋滞が起こっているにもかかわらず、トラックはスピードを全く落とそうとせず、ノーブレーキで車列の最後尾に突っ込んでいきます。次の瞬間、大きな衝突音と共にトラックのフロントガラスは激しく破損し、蜘蛛の巣状のひびが広がりました。
次に流されたのは、首都高速に設置された監視カメラの映像です。こちらには、被告のトラックが突っ込んだ後、前方で押しつぶされた被害車両から黒い煙と炎が立ち上る様子までがしっかりと記録されていました。後ろから突然大型トラックに激突された被害者にとっては、まさに避けることも、逃げることもできない一瞬の出来事です。
事故の被害者・杉平裕紀さんが乗っていたハイエース。原形をとどめないほど大破し、炎上した(遺族提供)追突された車の中には、それぞれ仕事先へ向かう人たちが乗っていました。しかし、一人の男の漫然運転によって、その先の人生を断ち切られ、大切な家族と過ごす時間を永遠に奪われたのです。
(参考記事)【6人死傷の玉突き事故】遺族慟哭、「高熱のまま大型トラックで首都高をフラフラ走行」が危険運転じゃないなんて…(2025.5.1)
検察官は冒頭陳述で、以下のような事実を読み上げました。一部ですが内容を抜粋します。
●(被告は)事故の3日前から発熱し、当日は38度の発熱で頭がくらくらする状態だったが、運送会社に借金があるため迷惑をかけたくないという理由で運転した。
●追突事故を起こす直前、ふらつきながら運転し、車線を逸脱すると音が出る車線を20回以上踏んでいたが、停止することなく、時速75キロから80キロで衝突した。
●事故当日の朝、運転中に片手でハンドル操作をしながら、女性(*妻ではない人物)に多数のLINEを送っていた。
●事故後は救助活動に参加しなかった。
拘置所からTシャツ姿で法廷に現れた降籏被告は、これらの内容について、「間違いありません」と認めました。

