なぜキリスト教は世界を席巻できたのか (扶桑社新書)
12月25日はイエス・キリストの生まれた日ということになっているが、そんなことは聖書に書いてない。これは古代ローマの冬至の祭である。ただイエスという人物が実在したことは事実だと多くの人が信じているが、これも最近の研究ではあやしくなっている。

新約聖書を素直に読むと、最初の福音書にイエスの言行録があり、それにパウロ書簡が続くので、イエスの言葉を聞いた弟子の言い伝えをもとにパウロが手紙を書いたようにみえるが、実際の順序は逆である。

最初に書かれたのはパウロ書簡で、西暦50年以降と推定されているが、パウロはイエスの弟子ではなく、初期には教団を攻撃する側だった。書簡にもイエスの行動は「最後の晩餐」と処刑と復活しか書かれていない。これもパウロが見たわけではなく、旧約の預言の実現として書かれ、「十字架の神学」の論拠としてあげられている。

著者はブッダは実在しないと推定している。ゴータマ・シッダールタと呼ばれる王子が紀元前500年ごろいたことは事実だが、彼が「ブッダ」だったかどうかは確認できない。それは「目覚めた人」という意味の普通名詞で、1次史料でも複数形で出てくることがある。

イエスも当時のユダヤではありふれた名前で、福音書や口承(Q資料と呼ばれる)が複数の人物を合成した可能性もあるが、それは本質的な問題ではない。ユダヤ教の律法を超える普遍主義を信じる教団が古代ローマに生まれて迫害に生き残り、やがてローマ帝国の国教になったことが、キリスト教が世界宗教になる決定的な要因だった。

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