未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

コードには力がある。世界を変える力がある。

先日、思わぬことからGree主催のオープンソーステクノロジー勉強会でお話をさせていただいた。一応テクノロジー系の勉強会なのでお題としてPostgreSQLにおけるスケーラビリティのお話を用意したのだが、本音で言うと高速道路時代を生きる若手プログラマの皆様に向けてのヨタ話の方が主題であった。
当日の様子・ログはGreeのページないし参加者の皆さんのトラックバックなどを読んでいただきたい。多くの方にコメントやら感想をいただいた。参加者の1〜2割の方がなんらかの形でブログで意見表明をするという場に居合わせたことに自分自身うれしく思うし、ブログを書いていただいた皆さんに素直に感謝したい。*1

懇親会で車座になりながらビールを飲みつつさらに皆さんと時間を共有した。その場でもいろいろ参加者の皆さんからコメントをいただいたのだが、技術的な話で言うとRDBMSをはじめとするミドルウェアの性能チューニングの方法論がほとんど知られていない。実践されていない。王道、定石と言うのがまったく伝承されていない。基礎的な体力がまったくない。日々の業務に追われてTipsレベルの知識は山のようにあるが、それはもちろんGoogleによって検索可能な知識の断片であるが普遍的な定石パターンがほとんど共有されていない。わたしのようなおじさんが基本の重要さを説いて回らないといけないのだろうか?飲み会では、ぜひそういうようなことを教えてください、と熱望されてしまった。*2

おじさんが若者に技術を伝承するというプラクティスが実践されていないのは(少なくともわたしのまわりではあんまり見かけないのは)、日本と言う地域では40過ぎて技術バリバリのエンジニア、プログラマというのがほとんどいなくて、仮にいたとしても会社の中で若手と一緒になってわいわいやるという場がほとんどないというような状況だからのような気がする。同じ会社の人だとどうしても上司部下みたいな感じになって若手は質問したくても質問できなかったりあるいは上司は若干説教じみた物言いになったりしていて若手に届く言葉、共感を呼ぶ言葉にならなかったりする。おじさんももっと謙虚になって若い人の知恵を貰えばいいのにと思うのだけど立場が邪魔をしてなかなかそうもならないというのがあるのかもしれない。

技術的な知識、ノウハウ、Tipsの伝承はいろいろなチャネルを通して、例えば勉強会みたいなものを通じてできなくはないと思う。

今回皆さんと話して、またブログでの感想とかを読んでいて思ったのは若い現場のエンジニアへのおじさん世代からの励ましが最も求められていると痛感した。

シリコンバレーにいるころ若いプログラマ志願者が宴会の席で私に聞いた。

プログラマになるにはなにをしたらいいんですか?
中略
わたしは若者に言った.プログラムをたくさん読む事だ.人に負けないくらいいっぱい読む事だ.いいプログラマはいいプログラムをいっぱい読んでいる.

きみが小説家になろうとしていたら,人の作品を読んで読んで読みまくるはづだ.映画監督になりたかったら,映画を見て見てみまくるはづだ.どうして人のプログラムを読まずにそれ以上いい作品を作れると言うのだ.ちまたにはフリーのいいプログラムがソースコードごとごまんと転がっているではないか?なぜそれを読まない.読んで読んで読みまくるんだ.

それを楽しめるか?それを好きでやれるか?やれるんだったらそれを10年続けてみる.そうしたら一人前のプログラマになっているだろう.読みつづける事だ.それがひょっとしたらいいプログラマになるコツかもしれない,などと偉そうにヨッパライのおぢさんは,へらへら笑いながらその若者に言ったのだった.
1998年4月12日、シリコンバレー日記
http://web.archive.org/web/20010530084301/www.best.com/~yoshioka/d/98/i980412.html
(文字化けしたときはブラウザーの文字コードをshift_jisに変更してお読みください。)

10年続けようなんてことを10年近く言っているのだ。(進歩がない??)コードを読むことの楽しさを共有するためにカーネル読書会を始めて7年。ウェブで世界に向けて情報発信(お笑いネタだったんだけど)して11年。

Greeの山田さんに、こんなことをわたしは言った。*3あなたの作っているもので世界は変わっちゃっているんですよ、こうやってこの場にあなたやわたしや参加者の皆さんが集ったのは、まさにあなたが作っているSNSによってなんです。勉強会で時間を共有すると言う奇跡をおこしているのは、あなたのコードなんです。コードには力があるんです。社会をよくする力があるのです。

Greeやらmixiやらはてなやらインターネットのおかげで出会うことのなかった人々が出会って時間を共有している。それを作っているのはあなたのコードなんです。一人一人のプログラマが作っているコードなんです。

おじさん世代が若手プログラマのやっている仕事を認め、励まし、それを楽しむ。

わたしが若手プログラマに伝えるべきことがあるとしたら、それは彼ら彼女らを励ます言葉をかけ続けることだと思う。

コードには力がある。世界を変える力がある。それを書き続けてほしい。

追記:Greeの山田さんの名前を間違えて記していました。ごめんなさい。お詫びして訂正します。

*1:年齢層が高いところで講演してもブログでの反応と言うのはほとんどないので、手ごたえがイマイチなのである。質問すら出てこないもんなあ。やっぱりブログ世代とお話をするのは楽しいなあ。

*2:開発基盤WGでやった、障害解析の手順・ツール評価編というドキュメントというのは、アプリケーションの障害時の解析手順をまとめたもので最初のステップとしては参考になると思う。「あとで読む」でもいいけどブックマークだ。

*3:彼女はGreeのバリバリのプログラマだ。メガネ娘だ。萌えである。あ、セクハラっすね。ごめんなさい。ぺこり