CDの音質オタク

Philips-SONYの作ったCD-DAという規格は、以下の数字によって規定されています。

  • 44.1KHzサンプリング周波数
  • 量子化ビット16bit(65536段階)
  • 2チャンネル独立

チャンネルはスピーカーが2つで、人間の耳も2つなのでまあ妥当な範囲でしょう。
量子化ビットは切りのいい数字(コンピュータ的には)だからこの際置いておくとして、44.1KHzという数字がどこから出てきたのかというと、人間の可聴範囲周波数が約20KHz以下であるということと、CD1枚で74分(650MByte)をとっておくための大きさから導き出されています。
実際にはCD-DAは結構記録面ぎりぎりまで扱えるので77分くらいまでいけるんですが、74分というのはカラヤンが「ベートーベンの第9が1枚で入らないとね」という話をした…というのが定説になっています。どこまで本当か知りませんが。


で、44.1KHzのサンプリング周波数だと、サンプリング定理から22.05KHz以上の音に関してはエイリアシングが起こってスペクトルが低周波方向に反射するような感じになります。すると、本来なっていないはずの音が聞こえてきてしまってうまくないので、22.05KHz以上の音は録音時にあらかじめローパスフィルタをかけておいて(アンチエイリアシング、といいます)音を聞こえないようにしておく必要が出てきます。昔はアナログ回路でやっていたのでぴったり22.05KHzで切ることなんかできませんでしたが、今ならFIRフィルタとかできっちり殺すことができるので、「記録できる範囲内では」原音に忠実にするとかいうことが可能ですね。
ところで、昔のテープやレコードに収録されている音に関しては22.05KHz以上の音も入っていたこともあるようです。が、何せアナログな記録媒体ですのでピックアップ自体の質量やヘッドの磁性ヒステリシス、また、記録媒体側での変化がそれに追随できていたかというとなんとも。また、再生するアンプやスピーカーも22.05KHzなんて限りなく超音波に近いところを再生できるようなつくりにはあんまりなってなかったと思われますので、普通の機械を使って普通に聞いている分にはCDよりも低い周波数までしか記録できていなかったと考えるのが妥当でしょう。
起動警察パトレイバーWXIIIで、「レコードを使っているから可聴範囲外の音がクラブから聞こえた」というネタは、ちょっと無理があるなー、と思ってみたり(スピーカーが対応してなさげ)。ま、蛇足ですが。ちなみに、あの映画で「音楽を流していた」機械がDATなのにはきちんと意味があって、DATは普及機で24KHz、専用機だと48KHzまで出せるのです。


とはいえ。
どんなに高周波が聞こえようと、どんなに量子化ビットがこまかろうと、聴く側の人間の耳が対応してないことには無意味です。人間の音を解析する蝸牛器官はコーン状の筒をぐるぐるを丸めたもので、これの中心に通っている神経が「太さにちょうどぴったりの」固有振動数を持つ音を聞くときに触覚として音を感じ取ります。なので、この太さがある程度までしか小さくならないというのがつまり可聴範囲であり、この太さが子供のほうが小さく、大人は大きいので「子供のほうが高い音を聞き取れる」ことになります。また、神経も徐々に劣化してくるので高すぎる音や低すぎる音は微妙に聞き取れなくなってくるので、年齢が進むと耳の聞こえが悪くなるのは仕方ないですね。
で。
やっと本題なのですが。
CDの音質で不満に思ったことはほとんどありません。48KHzのサンプリング周波数の曲や、量子化ビットがもっと高い曲をきちんとしたスピーカー…は難しいので、それなりに周波数帯に対応しているヘッドホンで聴いたりしてみたことはありますが、盲検法でわかるほどのものではありませんでした。むしろ、それがアナログで録音されたものなのか(つまり、音を取り上げた時点ですでに劣化している)、ディジタルで録音されたものなのかの方がよっぽど効きます。特に、ディジタルでなおかつサンプリング周波数が高い録音をして、きちんとアンチエイリアシングをかけたものの方が圧倒的にいい音がします(これは、さすがに盲検法でも露骨にわかる。唸るの)。
で、いまどきのクラシックのライブレコーディングは96KHz,20bit位のマスターをきちんとフィルタをかけてトラックダウンするので、そうじゃなかったころのものと比べると露骨に音が違います。クラシックのCDをみていると「DDD」とか「ADD」とか書いてあったりしますが、これは「録音:ミキシング:マスタリング」をそれぞれアナログでやったか、ディジタルでやったかの表記です。「ADD」でも、よっぽどいい機材を使ってアナログ録音したものはきれいな音がしますが、通常「DDD」のものにはどうやってもかないません。CD-DAはどうせ最後にディジタルになるので最後の1文字は必ず「D」ですけど。
というわけで、楽譜を片手にパートや和声を聞き取ろうという不毛な試みをしている私にとって、「ADD」か「DDD」かはすごーく意味があるのでした。
ちなみに、CD-DAとMP3の192Kbpsでは違いはわかりません。128Kbpsだと判ります。マスキングしている音が見えるので矩形波みたいなきれいな波形だとディチューン部分がにごるんですね。ま、矩形波でオーケストラやろうなんて馬鹿はいないのであまり気にしても仕方ないんですけど。
そんなこんなで、店頭だの図書館だのでいつの録音なのか(録音時期で機材の見当がつく)、どこのメーカーなのかをとっかえひっかえ調べるオタクと化している今日この頃なのでした。
もう、あきらめて「ADD」のパルジファルでいいかなぁ。一応ディジタルリマスターらしいし。でも、「1960年版バイロイトのニーベルング」みたいなのもあるしなー。うーむ。