MR-Sとは、1999年から2007年にかけてトヨタ自動車が製造していたオープンカーである。言わずと知れた国産初のミッドシップスポーツカーであるMR2の後継車種[1]である。
デビュー時の「背中には二人を酔わせるハートがある」「スポーティー・パーソナルカー」というライトなキャッチコピー[2]に反してハイパワー化、本格スポーツカー化の道をひた走り、乗り手を選ぶピーキーな特性となってしまったMR2を反省し、当初のコンセプトに立ち返った「パワーに頼らないライトウェイトスポーツカー」として1999年に誕生した。
初代MR2の登場から15年間トヨタがもんどり打ちながら熟成を重ねた集大成と言えるミッドシップハンドリングと、Tバールーフではない完全なオープンエアーを誰もが楽しめる「Fun to drive」を体現したスポーツカーであったが、2000年代初頭のスポーツカー・スペシャリティカー市場縮小の波に飲み込まれ2007年に生産終了した。総生産台数は77,840台、その7割程度が海外向けと言われる。
MR-S生産終了後、トヨタブランドのスポーツカーは86の登場まで姿を消す事となる。
歴代MR2同様、大衆車用プラットフォームからコンポーネントを流用する方式で作られたシャシー[3]を採用しているが、徹底的な軽量化と後述する新世代エンジンの採用も相まって先代にあたるSW20型から300kg近い軽量化を実現。
サスペンション形式はトヨタ製ミッドシップスポーツカー伝統の4輪ストラットを採用する[4]。
また、MR2のアイデンティティであったリトラクタブルヘッドライトの廃止[5]、さらには車体後端のトランクを廃止[6]してまでオーバーハングを切り詰め全長を短縮しつつ、タイヤをボディの四隅に配してホイールベースを延長[7]し、高い回頭性と挙動の安定化という相反する要素を両立している。
軽量でコントローラブルなシャシーとMR特有の優れたトラクションが生み出すコーナリング性能は、国産車トップクラスの水準である。カートップ誌における筑波サーキット(コース2000)のノーマルカータイムアタックにおいて1分10秒58というタイムを残しているが、これと同等以上タイムを出している国産車は全てMR-Sよりも数十馬力以上ハイパワーな車両たちである。
過給機の設定が無くなり、SW20最終型NAモデルと比較しても大幅にパワーダウンした1ZZ-FE型エンジンは、俗に「カローラのエンジン」とも称されるように、スポーツカーのエンジンとしてはいささか馬力や迫力に欠けており、「MR-Sは1ZZを積んだから失敗した」と言われる事もあるなど評価は芳しくない[8]。
しかしながらこのエンジン、単体重量がたったの100kg程度しか無く、[9]可変バルブリフト機構のような複雑な仕組みもロッカーアームも持たないシンプルな直打式のバルブ駆動とすることで、高性能エンジンにありがちな重いエンジンヘッドにより重心が高くなる、という問題からも解放されている。[10]
また、エンジン単体スペック的には大した数字ではないが、そもそも960kg~という軽ハイトワゴン程度の車重かつトラクションに優れるMR方式の車体に組み合わされていることもあり、有名ビデオマガジンのゼロヨン企画において200馬力を誇るDC2型インテグラに並ぶタイムを叩き出すなど、加速力日本一に挑戦したSW20の後継に恥じない性能も秘めている。
デビュー当初は5速MTのみ[11]。中期型へのマイナーチェンジで6速となる。丈夫でアフターパーツが多い、という以外にこれといって特色は無いコンサバなトランスミッションである。
登場から1年後の2000年、SMTと呼ばれる日本初のシーケンシャルトランスミッションを搭載したATモデルが登場する。これは従来の5速MTのクラッチ操作とシフト操作を油圧式アクチュエーターで置き換えたもので、MTのダイレクトさを持ちながらクラッチ操作不要という新世代のトランスミッションであった[12]。ただし、自動変速機能が無く、アクセルを煽らないとクラッチが繋がらないため坂道発進時には後ろに下がる、というクラッチ操作が無いだけのMTと言えるような仕様となっている。こちらもマイナーチェンジで6速となった。
ちなみにこのSMT、走行不能となる致命的な故障が高確率で発生することがオーナー間では知られている。油圧アクチュエーターに使われている非トヨタ製の部品が非常に脆く、しかもASSY単位でのユニット交換しかできない、そのユニットすら生産終了で供給されなくなっている、という話もあり、もしSMTモデルのMR-Sの購入を考えているならば充分な検討を推奨する。
どことなくFRチックなロングノーズ・ショートデッキスタイルが抜けきらなかった先代までと比べ、キャビンが前進し強く寝かされたフロントウィンドウなど、よりミッドシップらしさを強調したデザイン…と言えば聞こえは良いが、不評の声が大きいというのが実情である。
ポルシェ・ボクスター風な大型ヘッドライトユニットが特徴的なフロントマスクはボンネットが低く抑えられ、一方でタイヤハウスが盛り上がるレーシングカーのようなスタイルではあるが、運動性能の為に徹底的に切り詰められたオーバーハングの短さは寸足らず感を醸し出す。また、直線基調でイタリアンスポーツカーの様だったMR2から曲線基調に切り替えた事も先代のユーザー離れを加速させたと言われ、「見た目が良ければもっと売れたよ」とは多くのMR-Sオーナーの共通認識である。
また、インテリアに関してもバイク風の3眼メーターパネルやパイプを配した遊び心のあるデザインではあるものの、軽量化と低価格化の反動で硬質プラスチックを多用した質素な質感となってしまっている。
一方で、この車は外装部品が基本的にボルトだけで取り外せるようになっており、様々なパーツと交換して簡単に見た目を変えて楽しめる、という特徴があり、いくつかのワイドボディキットがTRDやアフターパーツメーカー販売されていた。トヨタ公式からもモデリスタを経由してVM180ザガート、カセルタといったコンプリート・カスタムカーが発売され、ノーマルとは大きく異なる印象的なデザインから、現在でもマニア間で高値で取引されている。
1999年:発売
5MT→6MTへ、リアタイヤを215/45R16に大径化、ボディ剛性の強化、20kg程度重量増
2006年:生産終了をアナウンス。Fianl Editionを発表
2007年:生産終了
車両形式名 | TA-ZZW30 |
全長 | 3885mm |
全高 | 1235mm |
全幅 | 1695mm |
地上最低高 | 135mm |
ホイールベース | 2450mm |
トレッド | 前:1475mm 後:1460mm |
室内長 | 895mm |
室内高 | 1055mm |
室内幅 | 1350mm |
車両重量 | 前期型:970kg 後期型:1020kg |
乗車定員 | 2名 |
エンジン形式名 | 1ZZ-FE |
排気量 | 1794cc |
気筒数 | 直列4気筒 |
吸排気弁構造 | DOHC |
内径×行程 | 79mm×91.5mm |
圧縮比 | 10 |
最大出力 | 140PS/6400rpm |
最大トルク | 17.4kgmf/4400rpm |
燃料供給装置 | EFI(燃料噴射装置) |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
燃料タンク容量 | 48L |
燃費(国交省10・15モード) | 14.8km/L(後期型6MT仕様) |
サスペンション形式 | F:マクファーソンストラット R:デュアルリンクストラット |
駆動方式 | MR |
トランスミッション | 5速MT,5速SMT(前期型) 6速MT,6速SMT(後期型) ※SMT仕様はAT限定免許で運転可能 |
タイヤサイズ |
掲示板
23 ななしのよっしん
2023/07/04(火) 23:23:41 ID: K2MJ3+gOnV
MR2の記事と比べて余りにも質素な内容のまま放置されてたんで、思い切って加筆修正しました。
なるべく一般的に言われてる記述内容に留めましたが、一部どうしても主観を無くしきれなかった部分もあるんで、問題点とか諸々あったらご指摘頂ければ。
24 ななしのよっしん
2023/09/19(火) 10:18:06 ID: ZFCltuXjFp
>>23
シャシーの定義が古いと思った。乗用車のシャシーは「タイヤからサスアームまで+操舵系」の事なので、正確性を期すならシャシーとボディは分けた方がいいと思います。
https://
あとボディ(トヨタ的にはボデー)が流用というのは広く知られたデマで、MR-Sのボディは専用設計。これはカタログにも新型車解説書にも書いてあるのでそろそろちゃんと書いてあげても良い気がする。
シャシーの解釈があやふやなのと、当時はこういう車をけなすのが分かってる奴の流儀だったのもあって、いつの間にか「バックしてるヴィッツ」みたいになっちゃったんだと思う。
25 ななしのよっしん
2024/05/29(水) 17:54:59 ID: EkrJotLRAG
2ZZで軽くて安全な車作ろうとしたら値段がエリーゼになっちゃう
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/23(月) 00:00
最終更新:2024/12/23(月) 00:00
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